多様な見え方に考慮した商品づくり―みんなが知らない幼児ワークの世界【第5回 色覚多様性(色覚特性)への配慮】

更新日: 公開日:

「みんなが知らない幼児ワークの世界」。入社4年目の編集部Fが、幼児向けの本制作に当たって、「なるほどそこまで考えられているのか…!」と感じた事例の一部をご紹介して参ります。

目次

いきなりですが、問題です!

これは何のためのメガネでしょう?

答えは記事内でご紹介します♪

ある日、メールでお客様からお問い合わせがありました。

前シリーズの「学研の頭脳開発 きりえこうさく」について

「はさみで切る線とイラストの線が似ていて、子どもが何度かまちがえて切ることがありました。」

(※またこうさくの話で、すみません…)

このお問い合わせを受けて、「学研の幼児ワーク こうさく」制作時は、似ている色、紛らわしい色が無いように注意をし、いくつか修正しました。(濃いグレーの切り取り線と、やや薄いグレーのストライプ柄が隣り合わないように、など)

ただ、自分が見て「まぎらわしくない」と判断するだけでは足りないのだったと途中で思い出しました。

私が「赤」と「緑」や「グレー」と「水色」と見えるものも、人によってはまったく違う色に見えることもある。

このことを研修等で教わっていたのに、うっかり進めてしまっていたのです。

今回は、そんな「色覚特性」と呼ばれる、多様な色の見え方に配慮した商品制作についてお話します。

第5回 「色覚多様性(色覚特性)」への配慮

男性の20人に1人が「色覚特性」のある人

「色覚特性」は、色の見え方が他の多くの人たちと異なる状態です。

ほとんどは遺伝が原因で、日本人男性の5%、女性の0.2%にあるといわれています。

目の中の「錐体(すいたい)」の特徴によって差があり、見え方によって「1(P)型」「2(D)型」等に分類されます。

※現状、色覚特性の診断名は「色覚異常」ですが、物の見え方の多様性の一つであり、個性です。

日本人男性の5%というと、20人に1人。

色覚特性は、たくさんの人に関係することなのですね。

ですので、何かを伝えるとき・物を作るとき・書くときなどは、色覚特性があるかたへの配慮が必要です。

※例えば今の学校現場でも、いくつか配慮があります。黒と赤の見分けが付きづらい人に配慮し、「黒板には白と黄のチョークを使う」「鉛筆と見分けやすいよう、細字の赤ペン等はあまり使わず、太い色鉛筆や、太い朱色のペンで添削する。」などです。

本の制作においても、誰にでも楽しんでもらうために、「識別しやすい配色で構成する」ことや、「色以外の情報も加える」ことが必要なのです。

編集部でやったこと(1) 識別しやすい配色で構成

「色覚特性メガネ」で見え方チェック!

お待たせしました! ここで冒頭のクイズの答えです。

こちら、「色覚特性のあるかたの見え方がわかるメガネ」なんです!

これをかけてページをチェックし、色の差が見えにくいものは調整しています。

色・明るさをかえたページ

<変更前>
「3-4歳 こうさく」より

※右は1(P)型での見え方を再現したもの。メガネをかけると、こんな見え方になっていました。

右の1(P)型の見え方だと、カメの周りの切り取り線(赤囲み部分)が見えにくいですね。

<変更後>
カメの背景色を変更し、線がはっきり見えるようになりました。

<変更前>
「4歳 たしざん」より

お花を色でわけると、いくつといくつになるか、という問題。

右の1(P)型での見え方だと、2種類のお花の色の差が微々たるものになっていました。

<変更後>
青色のほうの花を、見分けのつきやすい黄色に変えました。

これではっきり違いがわかりますね。

※最近は色覚特性の見え方が確認できるアプリもあって、それを使用してチェックすることもあります。

編集部でやったこと(2) 「色以外の情報も加える」

何かものの差をつけるために、色だけでなく、形を変えたり、模様を変えたりなどの工夫をすると、より区別しやすくなります。

たとえば昔の路線図は、色の違いのみで路線の差を出していました。しかし2003年からは、線の中にも路線名を書き込み、さらに線に白のフチがつけられました。

またリモコンのカラーボタンにも、それぞれ対応する色名も書かれるようになりました。(ぜひ、ご家庭のリモコンを確認してみてください!)

色の名前を加える

「学研の幼児ワーク ちえ」のまわりと同じ色を塗る問題です。

小さく「あお」「あか」などの色の名前を入れました。持っている色鉛筆やクレヨンの色名を見ながら塗ることができます。

マークを加える

こちら、「学研の幼児ワーク アルファベットabc・たんご」より、色の問題。

乗り物と同じ色の風船のシールをはります。

“blue”は青、”red”は赤など、色の単語はなじみがあり、はずせないテーマです。

このページには赤と緑と黒があり、「赤と緑」「赤と黒」が見分けにくい人には難しい問題になっていました。

そのため、まずは色の調整。「緑」を少し青っぽく、「赤」を朱色っぽく、「黒」はすこし薄くして、3つの色の差がつくように、調整しました。
(実は本書では、ページによって「緑」の色合いが微妙に異なっています。他の色との違いがうまくできるかどうか、を考えて、色味を調整した結果です。)

しかし、色味の調整だけではやはりまだ難しい。(絵をモノクロコピーしたと考えてみてください。これとこれは同じ色…かな?とちょっと自信が持てませんよね。)

そこで、乗り物と風船にトランプマークをつけました。

マークがあることで、色の判断を補足することができ、自信を持ってシールが貼れます。

(シールはこんな感じ↓)

学研の幼児ワークは、1人でも多くの子に楽しんでもらえることを望んでいます。もし、他にも不便が感じられましたら、お問い合わせいただけると幸いです。

参考
・「色弱の子どもがわかる本」かもがわ出版
・「色弱の子を持つすべての人へ」北海道新聞社
・文部科学省 色覚に関する指導の資料

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

あわせて読みたい

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事