【南極ってどんな生き物がいるの?】環境も知って詳しくなろう!

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訪れるものをこばむ極寒の地。そんな南極にも厳しい環境に適応して暮らす生き物がいます。
また、南極大陸には日本の観測基地があり、日夜南極の環境を観測しています。
南極大陸の自然は、地球の歴史や地球環境の未来を考えるヒントにあふれています。
南極を調査する科学者の気持ちになって、親子で地球の生い立ちや環境問題などについて話し合ってみましょう。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

提供:国立極地研究所

南極にすむ生き物

陸地の生き物はわずか

大部分が氷におおわれている南極大陸は、一年のうちのわずかな期間だけ雪や氷がなくなる地域があるものの、その面積は全体の数%です。一時的に雪や氷がなくなるとはいえ、厳しい環境なので、見られる生き物はわずかです。
いっぽう、大陸の周辺の海は水温が-2℃以上あり、植物プランクトンが豊富に発生します。そのため、それを食べる動物プランクトンやさらにそれを食べる魚類や鳥、クジラなどの海洋性の哺乳類が豊富で、豊かな生態系が見られます。

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厳しい環境でしたたかに生きるペンギン

南極といえばペンギンを思い浮かべる人も多いことでしょう。
ペンギンは飛べない鳥で、南半球だけに生息しています。世界には18種類が生息しており、そのうち7種類が南極にすんでいます。コウテイペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン、マカロニペンギン、オウサマペンギン、イワトビペンギンの7種類ですが、南極で卵を産み、ひなを育てるのはコウテイペンギンとアデリーペンギンの2種類だけです。
コウテイペンギンはペンギンの仲間では最大で、体長が約1m以上もあります。コウテイペンギンは集団で密集して繁殖します。メスが冬に卵を1個だけ産むと、オスが約2か月間、足の上に卵をのせて温めますが、その間何も食べません。卵を産んだメスは100km以上もはなれた海に魚やイカなどをとりに出かけます。卵からひながかえるころにメスが戻り、海でたっぷり食べたえものをもどして、ひなに食べさせます。絶食していたオスはようやく子育てをメスにバトンタッチして、えものを求めてはるかな海へと向かっていくのです。
鳥類ではこのほかに、ナンキョクオオトウゾクカモメやマユグロアホウドリなどがくらしています。

集団で繁殖するコウテイペンギン。灰色の個体はひな

海と沿岸部の魚類と哺乳類

南極大陸周辺の海は、水温は低いものの、海藻や小魚などの食べ物は豊富です。そのため魚類が豊富で、約280種の魚類がくらしていることが確認されています。また、プランクトンや小型の甲殻類(エビ・カニの仲間)、魚類などを食べる哺乳類が23種類くらしています。
ザトウクジラ、クロミンククジラなどのヒゲクジラは、熱帯から亜熱帯の海で繁殖し、夏の間だけ、オキアミを求めて南極にやってきます。集団で狩りをするシャチの姿も見られます。
アザラシ類は、ヒョウアザラシ、ウェッデルアザラシ、カニクイアザラシ、ロスアザラシ、ミナミゾウアザラシの5種、オットセイ類はナンキョクオットセイの1種がいます。世界中のアザラシの約60%が南極付近の海にくらし、オキアミ、イカ、魚類などを食べてくらしています。
なお、シロクマとも言われるホッキョクグマは、その名のとおり北極圏でくらす哺乳類で、南極にはいません。

アザラシの親子(提供:国立極地研究所)

大昔の地球や太陽系を調べる手がかり

氷床コアを調べる

南極のぶ厚い氷床(広い地域をおおう厚い氷)は、数十万年という長い時間をかけて成長したものです。氷の中には、昔の空気や雪に含まれていたものが閉じ込められています。そのため、南極の氷を掘って、氷に含まれている物質を調べると、昔の地球の気候や大気のようすがわかります。
氷床をドリルで掘って取り出した円柱形のサンプルを氷床コアといいます。国立極地研究所では、氷床コアを掘り出し、先端技術を用いて中身の分析を進めています。その結果、過去の地球では約10万年周期で氷期と間氷期(氷期と氷期の間の比較的温暖な時期)が繰り返されたことがわかりました。このように南極の氷を調べることで、地球の環境変化がわかり、今後の気候変動の予測に役立ちます。

氷床を掘り出す様子(提供:国立極地研究所)
掘り出した氷床コア(提供:国立極地研究所)

たくさん見つかる隕石

隕石は、地球が誕生したころからずっと宇宙に漂っていた岩石などが、燃え尽きずに地上に落ちてきたものです。したがって、隕石を調べると、太陽系ができたころのことを知ることができます。
南極は地球上で最も隕石がたくさん見つかる場所で、その多くは大昔に大陸に落ちてきて氷に閉じ込められていたものです。隕石をとりこんだ氷床はゆっくり海のほうへ動いていきます。やがて山脈でせき止められると、表面の氷は水蒸気となって消え、運ばれた隕石だけが氷床の上に姿を現すのです。
南極ではこれまでに2万5000個以上の隕石が見つかっており、中には月や火星からきたと考えられる石もあります。

提供:国立極地研究所

南極と地球環境

南極での観測で地球環境を知る

南極の環境を調べることで、地球環境の診断ができると言われます。それは、南極は文明が発達している地域から遠く、人間の活動による環境汚染が最も少ない地域であるため、わずかな変化でも見逃さずに観測できるからです。
地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素の濃度や、人間の健康にも被害をおよぼすオゾン層の破壊具合など、さまざまな地球環境問題の基礎となる情報を正確に集めることができる場所が南極なのです。

オゾン層破壊とは?

地球の上空には、オゾンという気体が多く集まっている層があります。これをオゾン層といいます。オゾン層は、太陽光に含まれる有害な紫外線から地球の生命を守る役目をしています。しかし、スプレーや冷蔵庫などに使われていたフロンという物質が大気中に放出されたことでオゾン層が破壊されてしまいました。特に南極の上空にはオゾンの濃度が低い部分があり、オゾン層に空いた穴のようであることから「オゾンホール」と名づけられました。これも、南極の大気の観測からわかったことです。
その後、フロンの使用が禁止されるなどの対策がとられましたが、大気中のフロンの影響が消えるには時間がかかり、現在も南極上空には季節によって(9〜10月に拡大する)オゾンホールが出現します。

地球温暖化の影響は?

二酸化炭素などの温室効果ガスの影響で、地球温暖化が進んでいるといわれています。地球の気温が上がると南極などの氷がとけて海水面が上昇すると考えられます。
国立極地研究所と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の観測によると、2022年2月に、南極域の海氷面積が観測史上最小を記録しました。これが地球温暖化の影響かどうかははっきりしませんが、引き続き観測や分析を進めていくことが重要でしょう。

南極についてもっと知りたくなったら

南極について、よりくわしく知るのによい本があります。

『北極と南極の「へぇ~ 」くらべてわかる地球のこと』
Gakken 中山由美/文・写真

北極と南極は、似ているようで違うところがたくさんあります。「どちらが寒い?」「氷の量はどちらが多いの?」「どんな動物がいるの?」など、ふたつの極地を比べながら、地球のすばらしさにふれる本です。

『南極大陸のふしぎ』
誠文堂新光社 武田康男/著

昭和基地で越冬を経験した著者が、南極観測隊時代に撮った美しい写真で、南極のふしぎな自然を紹介します。南極でしか見られない現象がふんだんに掲載され、それぞれにわかりやすく科学的な解説がついています。

南極を研究することは、私たちのくらしにも深く関係しています。
これからも関心を寄せていきたいものですね。

〈この記事への協力〉
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所

南極大陸と北極圏に観測基地を擁し、極域での観測を基盤に総合研究を進める。大学共同利用機関として、全国の研究者に南極・北極における観測の基盤を提供するとともに、共同研究課題の公募や、試資料・情報提供を実施するなど、極域科学の推進に取り組んでいる。

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