食物アレルギーがあるお子さんとママパパが、安心して入学準備ができるよう、学校のアレルギー対策の現状と、お子さんが安全に学校生活を送るために必要な知識について、NPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」の代表を務める栗山真理子さんにお話を伺いました。
お話/栗山真理子(NPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」)
文/大悠社
安全で楽しく過ごせる給食時間のために
「私は2人の子どもに食物アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎がありました。ですから、小学校入学を控えた食物アレルギーがあるお子さんとおうちの方の心配がよくわかります。
まず、学校給食にはしっかりした『ガイドライン』があることを知ってください。
文部科学省監修のもと、公益財団法人日本学校保健会から発行された『学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン』(※1)です。
この『ガイドライン』に沿って、学校とかかりつけ医、おうちの方がしっか連絡絡を取り合い、お子さん自身もアレルギーに対する正しい知識と対応を身につければ、安全で楽しい給食時間が過ごせます。
『ガイドライン』には、小学校入学時のアレルギー対応の流れの例が記載されています。
11月〜3月に行われる就学時健診や入学説明会の際に、学校から、アレルギー対応が必要な場合は申し出るように働きかけがあることが多いです。入学後の4月に通知する学校もあるので、不安に感じたら、おうちの方から学校へ問い合わせましょう。
保護者からの申し出に応じて、学校や教育委員会から『学校生活管理指導表』が配付されます。『学校生活管理指導表』は、かかりつけ医に記入してもらい、学校に提出します。
学校は『学校生活管理指導表』に基づいて、校長や教頭・副校長、学年主任、学級担任、栄養教諭、養護教諭、学校栄養職員などが取組プランを作成します。そして、おうちの方と話し合いを重ねながら、給食での対応やアレルギー症状が出たときにどうするかなどを細かく決め、最終的なプランを完成させる学校が多いようです。
児童生徒それぞれに作成された最終的なプランは、おうちの方の確認を得て、その内容が全教職員に周知されます」
医師・学校・家庭で正しい情報を共有
「『学校生活管理指導表』(※2)は学校とかかりつけ医と家庭をつなぐ大切なものであり、また、アレルギーへの治療を見直すきっかけにもなります。
アレルギー疾患は成長とともに症状が変わります。食物アレルギーは、乳幼児期に食べられなかったものが、成長するにつれて食べられるようになる「耐性獲得(アウトグロー)」しやすい特徴があります。
食物経口負荷試験を受けることで、食べられるものが増えていることがわかる場合もあります。
『学校生活管理指導表』は毎年、提出します。最新の専門知識をもつアレルギーの専門医を受診して、1年に1度『学校生活管理指導表』に記入してもらうことで、その時々のお子さんに最適な治療を受けることができ、学校へも正しい情報を伝えることができます。
食べられるものが増えれば、お子さんもうれしいですよね」
お子さんが自分で対応するサポートを
「小学校では、給食以外にも食物アレルゲンに触れる機会があります。
図工の授業で小麦粘土や牛乳パックを使うこともありますし、宿泊をともなう校外学習でそば打ち体験や味噌作り体験などを行うこともあります。
食物アレルギーがあるお子さんは、どんな食べ物にアレルギーがあるか、どんな症状が出るのか、自分の状況を把握し、対応できるようになることが大切です。
万が一、アレルギーの原因となる食べ物を口にしたり、触れたりしたときの対処をシミュレーションし、具合が悪くなったら先生や周りの人に伝えられるよう、一緒に言い方を考えて練習しておくと役立ちます。
食物アレルギーについて話をする時間を設けている学校もあります。お子さんたちへわかりやすく説明するために参考になるDVDや本もあります。クラスメイトに、好き嫌いと食物アレルギーの違いを分かってもらえば、食べることができないことに理解が得られ、応援してもらえるようにもなるでしょう。
また、小学校での給食は、アレルギーの原因となる食べ物の『完全除去』が推奨されています。保育所の給食では、きめ細かな個別の対応を受けていたのに…と感じるおうちの方もいらっしゃるでしょうが、小学校の給食は大量調理であり、ひとクラスの対応人数が多いことなどによるものです。
お子さんの安全を第一に考えて、少しずつ食べることを練習している食品は、家庭の食事で取り入れましょう」
※1『学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン』
学校給食における食物アレルギーについては、「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に基づく対応がとられています。
学校給食での食物アレルギー対応の基本的な考え方は『すべての児童生徒等が給食時間を安全に、かつ、楽しんで過ごせるようにすること』で、安全性を最優先しています。
病型・治療、学校生活上の留意点、緊急連絡先などの欄があります。かかりつけ医に記入してもらいます。診断書の代わりとなるもので、医師の正しい判断、客観的な評価が根拠となって、学校での対応が必要であることを、学校に伝えることができます。
この記事の監修・執筆者
2人の子に食物アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎があった。その寛解をきっかけに2002年に「アラジーポット」を設立。教育機関でのアレルギーの正しい理解によって、子どもたちが安全に過ごせるよう社会基盤の整備を目指す。
園・学校でのアレルギー理解に役立つマニュアル『プリンくんと学ぼう語ろう アレルギー 入園・入学マニュアル』の発行責任者を務める。(NPO法人ピアサポートF.A.cafe 発行)
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