小学校の入学式も目前! 子どもの成長がうれしい反面、「通学は大丈夫?」「友だちができるかな?」「給食、残さず食べられるかしら?」などなど、心配事もいろいろ。
そこで、今回は、公立小学校で23年間教鞭をとった教育評論家の親野智可等先生に、新入学・新生活を迎えるママパパの不安な思いに答えていただきました。
お話/親野智可等(教育評論家)
【登下校や通学路の不安…】その時間帯に一緒に歩き、事前の確認を
入学後の生活で、特に多くの保護者が不安に思うのが、通学面についてです。
「集団登校だけど、ついて行けるかしら?」「1人での登下校が心配」という保護者が多いですね。
集団登校でみんなについて行けるか心配な場合は、事前にリーダー役の上級生(6年生)や世話係の保護者に相談しておきましょう。
「うちの子は歩くのが遅くて…。ついて行けるかどうか心配なんです」などと話し、気をつけて見てもらうように頼んでおくと安心です。
1人での登下校が心配な場合は、入学前に通学路を一緒に歩いてみるのがいいと思います。
できたら、登下校の時間帯に合わせて歩いてみてください。同じ時間帯という点が大事です。時間帯によって自動車の通行量も違い、自転車が多いかどうかもわかってくるからです。
横断歩道や見通しの悪い道など、保護者から見て「ここは危ないな」と感じたら、その場所で「こういう所で、道路に飛び出したら、どうなる?」などと子どもに尋ね、考えさせてください。その場所で、という点もポイントです。そうすることで、記憶に残り、より意識できるようになるでしょう。
また、通学に関する不安の要因に、「不審者」がありますね。特に、1年生は最初のうち、早めに下校することも多いため、心配です。
これも、下校時間帯に一緒に通学路を歩いて、危険と思う場所をチェックしておきます。
また、何かあったときに助けを求められる場所を子どもに伝えておきます。コンビニやガソリンスタンド、子ども110番の家などについてです。
できたら、子どもと一緒に「子ども110番の家」を訪ねてみましょう。「もし、子どもに何かあったらお願いします」とあいさつをしておくと、いざというとき、「お母さんと一緒に行った家だから」と、子どもも入りやすくなります。
「こども110番の家」とは…
PTAや自治会などが活動主体となって、子どもが危険を感じたときや助けを求めたときに、子どもを保護して学校や警察などに通報することに協力してくれる家、施設のこと。地域や協力団体によって名称やステッカーなどのデザインは異なりますが、子どもにもわかりやすい目印としてステッカーやポスターなどを貼っています。コンビニやガソリンスタンド、バスの営業所、タクシーなど、さまざまな企業や公共施設でも協力が増えています。
【友だち、自分のことができるか心配…】引っ込み思案やマイペースは、心配しすぎがNG!
「引っ込み思案だから、友だちができるか心配」「片付けも着替えも、とにかくゆっくりでマイペース。ちゃんとついていけるかしら?」「保育園と違って、先生の目が行き届かないんじゃないかしら?」など、生活面でのさまざまな不安・心配を感じる方もたくさんいます。
でも、実は心配しすぎということも。
多くの子どもたちは、不安や心配よりも、希望にあふれ、小学校での生活を楽しみにしています。子どもは、卒園式をして、入学式を控えて、すでに気持ちが切り替わっているのです。
逆に、保護者の方が、卒園できていないのかもしれません。先生方との結びつきが強かった分、まだ切り替えができず、慣れ親しんだ場所から離れることに不安を感じている、とも考えらえます。
親が心配しすぎて、「それじゃあ、小学校行けないよ」とか、「ちゃんと○○できないと友だちに笑われるよ」などと言ってしまうこともありがちです。すると子どもは、入学や小学校での生活に対して恐怖感を感じたり、「行きたくない」という感情が生まれてしまったりすることも。
親の思いは子どもに伝染しやすいので、心配だからと、あれこれ言いすぎるのはNGです。
「友だちができるかな?」「自分の身の回りのことを自分でできるかな?」など、小学校での生活について、どうしても心配なことがあるのなら、「同じ幼稚園からの友だちがいないくて…」とか、「ちょっと引っ込み思案なんですが…」などと、担任の先生にひと言伝えておくとよいでしょう。
片づけや身の回りのことについても、「家で練習させているんですが、まだできなくて…。すみません。困っているようなら…」などと、努力していることにも触れながら、お願いをしておきましょう。
ただ、何事にもゆっくりでマイペースというお子さんの場合、このマイペースは生まれつきというケースが多いのです。お母さんが見ているところでは急ぐ振りをするかもしれません。しかし、「急いで」「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」と言い続けても、あまり変わることはありません。
でも、マイペースでゆっくりなお子さんは、おっとりしていて癒し系という場合も多く、周りの友だちに好かれて、自然と友だちが助けてくれるようになります。
そう言うと、「それではいつまでたっても、自分一人でできないのでは!?」と思う保護もいますが、「なんでも自分でやらなきゃ」とか、「人に頼ってはダメ」「人に迷惑をかけてはいけない」と言い続けられると、「助けて!」と言えない大人になってしまいます。
それが、大人の社会では今、問題になっていますね。人に甘えることができず、一人で抱え込んでしまうのです。
私は、人は友だちや周りの人に、「助けて!」「手伝って!」と言えること、人に甘えられることが、とても大事で、そこを無理に押さえ込まなくてもよいと思っています。
【量や好き嫌いなど、給食が不安…】「食」は個人差が大きい。楽しく食べることを大切に
「たくさん食べられない」「好き嫌いがある(苦手な食べ物がある)」の2つが、給食に関して親が抱える大きな問題。
食べる量については個人差が大きく、「1年生だからこれくらい」と決められた量が、全員に当てはまるわけではありません。
基礎代謝量は、遺伝子レベルで決まっているといわれ、急に増えることはないし、活動代謝量も、活発な子と、静かに本を読んでいることが多い子とでは違います。
それを一概に、同じ量を完食させようとするのは無理なこと。
とはいえ、「全員完食」を目指している小学校や先生が、いまだにいることも事実です。
子どもの苦手な食材や食べられる量など、事前に担任に話ができるといいですね。
無理やり苦手な物を食べさせようとする方法は、トラウマとして残ってしまう恐れもあります。子どもによる個人差に配慮し、食事や食べることを楽しむことを大切にしてほしいと願っています。
【授業についていけるか、勉強の不安…】焦って“お勉強を強要”はNG。学びの基本は遊びから!
入学直前に、字や数を覚えさせなくてはと、急に焦りだす保護者がときどきいます。でも、嫌がる子どもを椅子に座らせて、ひたすら字の練習や計算ドリルばかりさせようとするのは、一番やってはいけないことです。
ひらがなやカタカナ、算数などは、遊びから始めて、覚えたりできたりして「楽しい!」と感じられることが大切です。
幼少期の学びは全て遊びから! と言われるように、子どもが「楽しい!」「おもしろい!」と興味・関心をもって取り組むことから始めてみましょう。
例えば、算数なら、お風呂での指遊びがおすすめです。
お風呂に入って、子どもと親とで両手を出して数を数えてみる。親子で両手を出せば、20まで数えることができ、足の指も足したら40まで数えられます。
一緒に数えることに慣れてきたら、次は、片手を出して、3本タオルで隠し、「(見えているのは)何本?」と聞きます。
子どもが「2本」と答えたら、「隠れているのは?」と聞きます。「3本!」と言ったら、タオルをとって見せます。
隠す指の数を変えながら、繰り返しやってみてください。慣れてきたら、両手でやってみます。
そして、さらに慣れてくれば、指を使わなくてもできるようになります。
親が「7」と言ったら子どもが「3」、親が「6」と言ったら子どもが「4」と言うようにして、ゲーム化していくとよいでしょう。
つまり、10になるための相棒の数を見つけるゲームです。
これは、小学1年生で習う「数の分解」「数の合成」という概念をゲーム化したもので、これをやっておくと、算数の足し算・引き算がスムーズにできるようになります。
【困ったときに先生に言えるか不安…】実際に、声に出して言う練習を!
小学校では、困ったときに自分から先生に伝えらえることも大切です。
授業中に「トイレに行きたい」とか、「おなかが痛い」などが言えないと、大変つらい状況になってしまいます。
そのためには、「困ったら、先生に言うのよ」と教えるだけでは不十分です。
どう言えばいいのか、実際に子どもに声に出して言わせてみることが大事。
お母さんが先生役になり、ロールプレイングをして、言う練習をしておきましょう。
今は、子どもに自信をつけさせること! がんばった&成長がわかる「ほめ写」がおススメ
この時期、ぜひ家庭でやってほしいのが、子どもに自信をもたせること。
幼稚園や保育園などで、がんばったこと、できるようになったこと、成長したことについて、話したり、目に見えるように掲示したりしましょう。
例えば、鼓笛隊で○○をがんばった! 折り紙で○○が折れるようになった! 身長が○cm伸びた! 体重が○㎏増えた! などなんでもOK。
目で見たり、数字で確認できたりすることが、自信につながり、自分自身を誇らしく思えるきっかけになるのです。子どもの自己肯定感も高まります。
写真を使う「ほめ写」という方法がおすすめです。
運動会や発表会などでがんばったときの写真や、友だちと遊んでいるときのいきいきとした写真、入園式や遠足の写真など、子どもの写真を大きめにプリントアウトし、それをリビングや玄関、トイレなど、日常的に何度も見る場所に貼ります。
写真を見ながら「運動会のダンス、がんばって練習したものね」などと話したりしましょう。子ども自身も何度も見ながら「遠足、楽しかったな」と、プラスの感情で振り返ることができ、自信がついてきます。
「ほめ写プロジェクト」
子どもの自己肯定感向上に、写真の力を役立てようと、「ほめ写真」の発信・啓発に取り組んでいるプロジェクト。親野智可等先生をはじめ、脳科学者の篠原菊紀先生、発達心理学の岩立京子先生などが参画。
また、子どもが赤ちゃんだった頃からの写真を飾って、親自身の育児を振り返る「ほめ写」もおすすめです。
繰り返し見て、「この頃は、夜泣きで大変だったな」とか、「入園式、うれしかったな」などと振り返ってみましょう。
すると、「子育て、がんばったな」と実感することができ、親の自己肯定感もアップします。
親の自己肯定感が向上すると、それにともなって、子どもの自己肯定感も伸びるともいわれています。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
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