お子さんを連れて遊びに行きたい夏休み。「おもしろい」「楽しい」だけではなく、学びにつながるプラスアルファがある場所でお子さんの好奇心や探究心も育みたいものですね。今回、オススメしたいのはプラネタリウムです。プラネタリウムは、今や星や星座を見るだけでなく、最新の宇宙や科学に関する知識に触れられる場所として人気です。世界最大級のプラネタリウムドームを持つ「名古屋市科学館」の学芸員・毛利勝廣さんにプラネタリウムの楽しみ方をうかがいました。
お話/名古屋市科学館 天文主幹 毛利勝廣 文/こそだてまっぷ編集部 写真提供/名古屋市科学館
1.プラネタリウムに行くなら晴れた日に!
プラネタリウムは、ご存じの通り、できるだけ本物に近い空や星空を再現する施設です。プラネタリウムで星や星座を探す感覚を身につけておくと、実際の星空を見たときに星や星座が見つけやすくなります。本物の空と私たちをつなげるのがプラネタリウムの役目といっていいでしょう。
プラネタリウムを見て「あー、きれいだったね!」と終わってしまうのではなく、家に帰ってから本物の夜空を見上げてみてください。プラネタリウムは“ゴール”ではなく“通過点”のようなものです。プラネタリウムでの体験をもとにリアルな星空を楽しみましょう。
そのためにも、プラネタリウムに行くなら「晴れた日」がオススメです。「今日、プラネタリウムで見たことを忘れないうちに、家へ帰って本物の空を見上げてみようね」とお子さんに声をかけるためにも晴れた日に行ってください。市街地でも明るく目立つ星や星座はちゃんと見えています。
2.最新のプラネタリウムは、壮大な宇宙体験ができる
現在日本には、300以上のプラネタリウム施設があります。
「プラネタリウムには、子どものときに校外学習で行った」「結婚前にデートで行ったことがある」というように、もう何年もプラネタリウムに行っていない保護者の方もいるかもしれません。最新のプラネタリウムはデジタル映像やシミュレーション技術によって壮大な宇宙体験もできる施設へと進化しています。プログラムによっては、ロケットに乗って月や火星への宇宙旅行を疑似体験することができます。
さらに日進月歩している世界中の宇宙科学技術に関する話題に触れられる貴重な場でもあります。たとえば、2019年に人類史上初めて「ブラックホール」の撮影に成功したニュースはご存じでしょうか。プラネタリウムに行って「ここにブラックホールがあります」とポインターで具体的に位置を指示されると、宇宙での出来事が「自分の頭のずっと上のほうで実際に起きている」ということに気づけます。空や宇宙と自分がつながっていることにお子さんが気づけるのがプラネタリウムです。ぜひ、お子さんといっしょに体験してみてください。
3.ドームが大きいほど本物の空に近い星空を再現できる
プラネタリウムは、なぜ半球型(お椀を伏せたような丸い天井)の施設なのかご存じですか?
実際の夜空に輝く星を見る際、私たちの目はそれぞれの星が同じ距離にあると認識してしまうため、星空が半球状になっているように感じます。本物の空に比べてずっと小さいプラネタリウムでも、本物の空を見るときと同じような見え方を再現するためにプラネタリウムは半球型になっています。ドームが大きければ大きいほど星が遠くに見えるように映し出せ、より本物に近い星空を再現することができます。
4.行く前に投影テーマを確認しよう
プラネタリウムは、施設によっていろいろな違いがありますので、行く前に開館日や開館時間、投影スケジュール、とくに投影テーマ(プログラム)を確認しましょう。たとえば、「学習投影」などの名称で、学校の授業や団体専用の時間帯もあります。個人が見られるプログラムは「一般投影」などとされています。夏休み中は、ファミリー向けや子どもが楽しめるプログラムが用意されている場合が多いのでチェックしてみてください。
5.「生解説」と「オート番組」がある
プラネタリウムのプログラムには主に「生解説」と「オート番組」の2つがあります。
●生解説
学芸員(または解説者)がポインターなどで星の位置などを指し示しながら肉声で解説します。一定期間でテーマを変えて、季節に合わせた星や天文学の解説があったり、最新のデジタル映像による宇宙体験などが楽しめたりします。ライブなので、その日のタイムリーな話題を楽しめるのも魅力のひとつです。
●オート番組
あらかじめ製作されたプログラムを自動で投影します。星や天文を要素にしたドラマ仕立てになっていたり、著名なアーティストがプロデュースやナレーションを手がけていたりするなどで娯楽性が高いプログラムが多めです。
※生解説とオート番組を組み合わせているプラネタリウムもあります。
生解説は天文や宇宙、科学への理解を深めることを主軸に構成されていることが多いので、お子さんの学びにつなげるなら生解説のほうが適しているといえます。また科学館や博物館に併設されているプラネタリウムは、そこでの展示が見られるのも学習につながるポイントです。プラネタリウムのテーマと連動している展示が行われていることもあります。投影と併せて展示を見ると、より理解が深まります。
日常でも星を楽しめる! 夏の夜空で大三角を見つけよう
夏休みの時期には、東の空に「夏の大三角」が見えます。夏の大三角とは、3つの1等星、こと座のベガ(織姫星)、わし座のアルタイル(彦星)、はくちょう座のデネブを結んでできる大きな三角形で、夏の星空の目印になります。
また、2022年は8月12日に満月になります。8月に入ると月の形が満月に近づいていくのを観察できます。
普段の生活でも夜空を見上げて、お子さんといっしょに楽しんではいかがでしょう。
11月8日には日本全国で皆既月食が見られます。月が地球の影に完全に隠されて、暗い赤い色に変わった満月が見られるでしょう。プラネタリウムによっては10月ごろから皆既月食をテーマに投影している施設もありますので、プラネタリウムで“予習”をしてから皆既月食を観察すると、もっと楽しくなるかもしれませんね。
毛利勝廣(名古屋市科学館 天文主幹)
名古屋大学理学研究科地球科学専攻修了。(株)NTTデータ通信を経て現職。名古屋市科学館・プラネタリウムの解説者として30年、ほかにもプラネタリウムや天文事業の企画運営、映像制作などを行う。専門分野は天文教育および情報技術の天文教育への応用。毛利氏が天文主幹を務める名古屋市科学館のプラネタリウムは内径35mもあり、ドームの大きさは世界最大。
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