子どもの左利き、どうする?【教育評論家・親野智可等先生に聞く】個性として尊重し、伸ばしていくのが、これからの子育て

更新日: 公開日:

お子さんが左利きと気づいた時、あなたならどうしますか?

一昔前なら、「早いうちに右利きに直した方が」と矯正することが多かったようですが、今では「左利きのままでいい」というのが一般的な風潮です。

今回は、公立小学校で長年教鞭をとってきた、教育評論家の親野智可等先生に、子どもの左利きについてお話をうかがいました。

お話:親野 智可等

目次

もともと生活や社会全般が、右利き仕様になっていた

世界的に見ても、人間の約9割が右利きで、左利きは1割といわれています。そのため生活や社会のさまざまなものが、右利き仕様になっていることが多いのです。

例えば、一般的なはさみ、スープをよそうレードル(注ぎ口のついたお玉)、電車の自動改札、自動販売機のコイン投入口も、右利き用に作られているものがたくさん。食事をする際にも、右手で箸が持ちやすいように、箸先が左になるよう置かれていることが多いですね。

わが子が左利きだったら、あなたはどうする?

長年小学校の教師をしている中で、さまざまなケースを見てきましたが、わが子が左利きだった場合に、親がどうするかは、大きく3つに分けられます。

【1】右利きに直す

小さいうちなら右利きに直せるはず。子どものためにも直してあげよう。

【2】両利きをめざす

右利きに直さないまでも、できたら右手でもできるようにしてあげよう。両利きは何かと便利だろう。

【3】左利きでいい

生まれつき左利きなら、それをいかしてあげた方がこの子らしく生きられるだろう。

【1】右利きに直す
~無理な矯正は、子どものストレス&自己否定感を生む

【1】を選んだ場合、親は子どものために、その方が後々楽だろうと思ってのことでしょう。

しかし、子どもにとって、左利きを直すことは、そう簡単なことではありません。つい左手を使ったときに、親から「左手じゃなくて、右手でしょう!」「何度言ったらわかるの!」と叱られてしまうことも…。

そういうことが続くと、「自分はダメな子だ」「努力不足だ」などと思い、自分を否定し、自信をなくしてしまう可能性があるのです。

無理な矯正は、子どもに精神的なストレスを過度に与えてしまう恐れがありそうです。

【2】両利きをめざす
~子どもはメリットを実感できず、否定感情を与える結果にも

では、【2】を選んだ場合はどうでしょう。

一見、両利きは大人になってから便利そうに思いますが、なぜ左利きの子だけが両利きにならなければいけないのでしょう?

子どもが「両利きになりたい!」と望む可能性や、その必要性を実感することはあまり考えられません。

親が両利きにさせたいと思うと、子どもが何かするたびに親は、「次は右手でもやってみよう」とか、「右手も使ってね」と声をかけ続けるでしょう。それもまた、子どもにとってはストレスです。

「このままの自分ではいけないんだ」「右手が使えないとだめなんだ」という否定的な価値観を子どもに植え付けてしまうかもしれません。

【3】左利きでいい
~個性として尊重。左利き用グッズも多彩に

最近では、左利きでも、矯正などはせず、そのままでいい【3】を選ぶ方が多いですね。

矯正に伴う子どもの精神的なストレスについてもわかってきました。また、社会が多様化して、左利きもその子の個性として尊重し、ありのままでいい、という考え方が浸透してきています。

また、最近では、文房具やキッチン用品などでも、左利き用がたくさん登場しています。不便なく、生活できるよう考えられています。

さまざまな左利き専用のアイテムがそろう「専門店」

左利きには、天才や偉人、有名スポーツ選手も!

成長するにつれ、周りの友だちとの違いに気づき、「なんでわたしだけ左利きなの?」と聞いてくることがあるかもしれません。

そんな時は、「生まれつき、右利きの人もいれば、左利きの人もいるの」と伝え、もし子どもがそれをコンプレックスに感じているようなら、

「左利きの人の方が少ないけれど、気にする必要はないよ。できることを伸ばしていけばいいの。」

などと話して、個性を伸ばしていくことの方が大切だと伝えてあげましょう。

実際に、左利きの偉人や有名人について教えてあげてもいいですね。

例えば、レオナルド・ダ・ビンチやピカソ、ミケランジェロ、ベートーベン、エジソン、ニュートン、アインシュタインなどの偉人が、左利きだったといわれています。

また、スポーツの世界では、野球は、一塁に近い左打席の方が有利といわれているため、もともと右利きなのに打つときだけ左で打つ、イチロー選手のような右投げ左打ちの選手もいます。また、ピッチャーも左投手は有利という説があります。

サッカーでも、メッシ選手や本田圭佑選手など、利き足が左の選手は、「レフティー」という名称で呼ばれ、有名な選手が多いといわれています。

ぜひ、左利きにも素晴らしい点、いいことがたくさんあることを伝えてあげてください。

以前と比べ、左利きに理解のある世の中になってきています。でも、まだ不便を感じる場面もありますね。無理に右利き仕様に合わせるのではなく、左利きの子どもたちが不自由なく生活できる社会になっていくよう、考えていきたいですね。

この記事の監修・執筆者

教育評論家 親野 智可等

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。

Twitter

https://twitter.com/oyanochikara

Instagram

https://www.instagram.com/oyanochikara/

講演のお問い合わせ

https://www.oyaryoku.jp/lecture.html

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

あわせて読みたい

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事

この記事の監修・執筆者の記事