「子どもとどうコミュニケーションをとればよいの?」
「子どもの言葉を育てたいけど、どうすればよい?」
そんな悩みをもつママ・パパへ。
0歳からの接し方で、子どものコミュニケーション力がぐんと伸びるメソッドがイギリスで推奨されています。
それが、「語りかけ」育児。
『コミック版 0~4歳 わが子の発達に合わせた「語りかけ」育児』を監修した言語聴覚士・中川信子先生にお話を伺いました。
お話:中川 信子(言語聴覚士)
「語りかけ」育児って?
「語る」には「親しく交わる」「いっしょに」という意味合いがある
- イギリスのスピーチセラピスト(言語聴覚士)のサリー・ウォードさんが提唱した育児法、ベビートーク・プログラムのことです。
- 「言葉を聞かせ、教えて伸ばす」という考え方ではなく、子どもの「聞く力」と「注意を向ける力」が育つように意識して関わることが特徴です。
- なお、「話しかけ育児」ではなく「語りかけ育児」なのは、「語る」には「親しく交わる」「いっしょに」という意味合いがあるからです。
「語りかけ」育児で、「コミュニケーション力が発達」「集中力アップ」!
- 「語りかけ」育児を実行した多くの子どもたちは、「コミュニケーション力の発達」が促され、すぐれた知的能力が育ち、「集中力」や「語彙力」、「IQ」が身につくなどの結果が証明されました。
- さらに、「心の安定」や「大人への信頼感」、「自分の気持ちをはっきり言える」など、将来、社会で生きていく時に必要となる力の基礎が固まります。
「語りかけ」育児の5原則!
「語りかけ」育児はとても簡単!特別な場所も道具も必要ありません。
次の5原則に気をつけて、子どもとの時間を楽しみましょう。
① 1日30分、子どもと一対一でお話しする時間を
- 続けて30分が無理なら、こま切れに5分ずつなど、合計30分でもOKです。
- 開始のタイミングは、「お母さんの手が空いたとき」「子どもから手伝ってよ、遊んでよ、こんなのができたよ、などのアピールがあったとき」。
- いきなり、「さあ、遊ぼう!」「これをするのはどう?」と強引に誘うのはNGです。
- しばらく横で子どもがやっていることを見ていると、「あ、お母さん、今は余裕があるんだな」とわかって、やってほしいことをアピールしてくるようになりますよ。
② 静かな場所で
- 気が散らず、大人の声だけが聞こえる環境を作ります。
- 「聞く力」と「注意を向ける力」を育てるには、ひとりの大人の話しかけに耳を澄まし、言葉をはっきりと聞く機会がたくさん必要です。
- テレビやタブレットをオフに、他の人が出入りするのもできるだけ避けましょう。
③ なるべく短い文で、はっきり、ゆっくり話す
- 擬態語や擬音語、表情や身ぶりも使って、小さい子にも分かるようにしましょう。
- 声は、大きく、高めに、はっきりと。
- 子どもの言いたいことを代わりに言ってあげたり、話を膨らませたりしてください。
④ 子どもが主役!
- 「自分の言うことを大人がちゃんと受け止めてくれている!」と思えるよう、子どもの興味に大人が合わせましょう。
- 大人の都合で、物や動きに子どもの注意を無理に集中させようとしたり、言葉を繰り返させたり、教え込もうとしたりするのはNG。
- 子どもの視線の動きによく注目して、合わせましょう。ここで気をつけたいのは、「子どもが興味をなくしたらやめる」ということです。
⑤ 否定の言葉は使わない
- 「ダメ」「いけません」などの否定の言葉は極力使わないようにしましょう。
- 子どもの発音や、言葉の間違いを無理に直そうとせず「○○だよね」と、さりげなく訂正するようにしましょう。
- あらかじめ触られたくない物は片づけて、好きなように動けるようにしておくことがポイントです!
「語りかけ」育児の実践例を紹介!
<3~4か月の例>
ベビーベッドに寝ている赤ちゃんの横を通って、ベランダに洗濯物を干しに行きます。
赤ちゃんがお母さんの動きを見ているので、
「あら、目が覚めてたの? 今、洗濯物を干しに行くところ」
「○○ちゃんのガーゼもあるよ、ほら、ガーゼ」(と目の前に近づけて見せる)
ポイント解説!
- やっていることや、できごとについて実況中継をしてみましょう!
- 「ガーゼもあるよ、ほら、ガーゼ」のように繰り返しを多くすると、赤ちゃんに届きますよ。
<1歳3か月の例>
声と指さしで伝えようとすることが多くなり、少しずつ“言葉”らしきものが出始めている頃ですね。
日中だけれど、室内が暗いので何の気なしに明かりをつけたら、
子ども:「あえ?」
(と明かりを見て「あ、あ」と指をさす。)
親 :「明かり、つけたのよ。暗かったから」
子ども:「あー、あー」
(もう一度、明かりを指さして、少し低い声で)
親 :「なあに。もういっぺん消すの?」
子ども:(だまって天井の明かりとお母さんの顔を見くらべる)
親 :「はいはい、ご要望に応えまして。ほら」
(と消す)
子ども:(にっこりして親の顔を見る)
親 :「明かり、消えたね。ちょっと暗いかな?」
ポイント解説!
- 原則④の「子どもが主役」がポイント。子どもが興味をもつものやできごとを取り上げてあげましょう。
<3歳の例>
おもちゃの電車をレールの上で走らせて遊んでいます。レールのつなぎ目がずれていて、電車が通るときにガタン!と揺れました。
子ども:「お母さん、ここ、なんか変」(と電車を指さす)
親 :「え? なんか変なんだ。うまく走らないの?」
子ども:「うん。ガタン!ってなる」
親 :「ガタン!ってなるんだ。なぜだろう? ちょっと走らせてみるね」
子ども:「うん」
親 :「あ、わかった。ここのレールの継ぎ目のところがずれてるんだよ。もう1つ小さいレールを足してみよう。そこのをとって」
子ども:小さいレールの部品をとってくれる
親 :(はめてから)「もう一度走らせてみて」
子ども:(走らせてみて)「なおった!」
親 :「よかったね」
ポイント解説!
- 子どもが話したことを膨らませて返してあげましょう。
- 「なんか変」→「うまく走らないの?」「ここのレールの継ぎ目のところがずれてるんだよ。」
言語聴覚士・中川信子先生からのメッセージ
「言葉を育てるには、たくさん言葉をかけてあげてください」と言われてきましたが、これは半分は本当で、半分は間違いです。
「たくさん」ではなく、「適切な」が大事なのです。
最近の赤ちゃん研究で明らかになってきたのは「自分が出した声に大人が応じてくれた」「自分が興味をもっている同じものに、大人も興味を向けてくれた」という経験が、言葉やコミュニケーション力を育てるということです。
適切な言葉のかけ方とは、子どもの行動をよく見て、「子どもの興味が向いた時に、子どもの興味が向いているものについて話す」ことです。
なにをしたらよいかを赤ちゃん、子どもの方が教えてくれるのですから、コツさえつかめれば簡単です。
ぜひ、練習してみてくださいね。
この記事の監修・執筆者
「子どもの発達支援を考えるSTの会」代表。旭出学園教育研究所、神奈川県総合リハビリテーションセンター、調布市あゆみ学園などを経て、言葉が遅い・発音がはっきりしないなどの子どもの相談・指導などにあたる。『コミック版 0~4歳 わが子の発達に合わせた「語りかけ」育児』(小学館)を監修。著書に『1・2・3歳 ことばの遅い子』(ぶどう社)などがある。
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