【脳科学から見る!】子どもの脳を育てる「正しい睡眠」とは!?

更新日: 公開日:

【脳科学から見る!】子どもの脳を育てる「正しい睡眠」とは!?

「うちの子、毎朝ぐずってたいへんなの」「便秘がちで…」。

それはもしかしたら、「睡眠」が原因かもしれません。ちゃんと寝かせていると思っていても、じつは正しく眠れていないことも。

正しく眠れないと、「脳がうまく育たない」のだそうです。

ぜひ、お子さんの「睡眠」を見直してみてはいかがでしょうか。

子どもの睡眠の役割と睡眠の整え方について、『こどもが幸せになる「正しい睡眠」』の著者である成田奈緒子先生にお話を伺いました。

お話/成田奈緒子(小児科医・医学博士)

目次

こんな子どもの「困った」は、じつは「睡眠」が原因!?

  • 毎朝ぐずって…
  • 毎晩、寝つきが悪くて…
  • 食欲がなくて…
  • 朝のうんちがでなくて…
  • 学習の定着がよくなくて…

これらの「困った」は、睡眠によって育つべき“3つの脳”がしっかりと育っていないから、と考えられます。

「睡眠」は子どもの“3つの脳”を順番に育てている!

①「からだの脳」(0~5歳に育つ)

  • 朝に目覚めて日中活動し、夜に眠るという「体内時計」ができる。

⇒赤ちゃんはこの体内時計が完成していないので、夜間の睡眠だけでなく、昼間の睡眠も十分にとることで「からだの脳」の形成を行っています。

  • 「食欲」がわいてくる。

⇒「からだの脳」が育つと、胃の中が空っぽであることを察知し「食べろ!」という指令を出せるようになります。つまり、しっかりと食べることができる子を育てることにつながります。

  • 体を動かすことができるようになる。

⇒「からだの脳」の働きにより、赤ちゃんは首がすわるようになり、寝返り、おすわり、はいはい、つかまり立ちを経て、歩き、走り回れるようになります。

②「おりこうさん脳」(1~18歳に育つ)

  • 言葉を獲得する。

⇒1歳くらいには「マンマ」などの言葉らしきものを話し始め、2歳くらいには「ママ、だっこ」などの二語文、3歳くらいには助詞を使った簡単な会話をするようになります。

  • 手指の微細運動を発達させる。

⇒楽器を弾いたり、物を作ったり、狙ったところにボールを投げたり、蹴ったりするときに必要となる体の細かい動きを担います。

  • 知識をため込む。

⇒学んだ知識や情報をため込んで、必要なときに引き出して使います。

③「こころの脳」(10歳以降に育つ)

  • 感情を安定させる。

⇒0~5歳の頃は、「嫌と感じたら嫌がる」「食べたいと感じたら食べる」のように、感情に正直に生きていますが、「こころの脳」が育ってくると、その感情がコントロールできるようになります。

  • 論理的に考える。

⇒習得した知識と知識をつなげることができるようになり、「○○だから△△で、だから□□になるわけだ」のように考えられるようになります。

脳が育つ睡眠時間の目安

小さいころは、大人と違って睡眠の質が安定していないため、多めの睡眠時間が必要になります。

【2歳】
夜間睡眠⇒11時間30分くらい
お昼寝⇒1時間30分くらい

【3歳】
夜間睡眠⇒10時間45分くらい
お昼寝⇒1時間15分くらい

【4歳】
夜間睡眠⇒11時間30分くらい

【5歳】
夜間睡眠⇒11時間くらい

【6歳】
夜間睡眠⇒10時間45分くらい

4、5歳くらいには、お昼寝で睡眠時間を補わなくても、夜間睡眠でしっかりと眠れる子が増えてきます。

ケース別・「正しい睡眠」への整え方

ケース①「寝つきが悪い」

  • 0~5歳の間は、「からだの脳」が育っていく年齢なので、睡眠が不安定でもおかしくはありません。でも、5歳近くになっても、夜の寝つきが悪いのは、「からだの脳」にある「体内時計」が十分に育っていないのが原因と考えられます。
  • 「体内時計」は、寝ている間に低下した体温を、起きる時間に上昇させ、目覚めやすくしてくれます。
  • 「朝の目覚め」「昼寝」の習慣を身につけ、「体内時計」をしっかりと整えていきましょう。5歳くらいまでの子どもは、1週間程度で寝つきがよくなっていくはずです。

寝つきをよくするためには、

(1)太陽が昇る時刻に起こす(目安は5~7時ころ)

好きな音楽をかけたり、好きな食べ物を与えたりなど、楽しいことと連動させて起こすとよいでしょう。

(2)昼寝は15時台までに起こす

16時以降はできるだけ寝かせないようにしましょう。夜にぐっすり眠れるようにするためです。

ケース②「便秘になりやすい」

  • 睡眠の間、体の中にある食べ物がどんどん消化されていき、最後に便になります。したがって、十分に睡眠をとることができていると、朝起きたときには、「胃の中が空っぽになっている状態」「便を出す準備ができている状態」となるのです。
  • 睡眠が十分にとれていないと、消化・吸収が滞り、便を出す準備も終わりません。これが便秘の原因につながってしまいます。

便秘解消のためには、

(1)年齢に合った睡眠時間をしっかりとる

十分な睡眠時間をとって「出るのを待つだけうんち」を作る習慣を作ります。

(2)朝食をとる

朝食をしっかりとることで、胃腸が刺激され動き出します。

(3)朝うんちの時間をとる

時間がなくてトイレに行かないまま出かけてしまうと、腸に置き去りにされた便は水分を抜かれ、どんどん硬くなって出にくくなってしまいます。

ケース③「食が細い」

  • 「からだの脳」は、「朝、空腹で目覚める」ことができるようにしてくれます。この部分が未熟なことが考えられます。
  • ぐっすり眠った翌朝は、食べ物の消化が進み、胃の中は空っぽになります。そこで子どもが「おなかがすいた!」ということをしっかりと感じることができるよう、十分な深さと長さの睡眠をとることが大切なのです。

食を整えるには、

(1)太陽がのぼる時刻に起きる&十分な睡眠時間の確保

朝、自分で目覚めた子どもをよく観察し、空腹のサインを見逃さないようにしましょう。

(2)夜のごはんは軽めに、早めに

夜ご飯の目安は、18時ころまでですとよいでしょう。
また、夜授乳は食欲のリズムを乱してしまうので、1歳を過ぎたらなるべく卒乳を目指しましょう。

成田先生からのメッセージ

  • 乳幼児期に一番大切なことは、「寝かせて」「起こして」「食べさせて」「体をたくさん動かすこと」まず、ここからだと思っています。最初は、「睡眠」を整えていくために根気よく取り組むことが必要です。今、睡眠が乱れていても、“たった1週間”で5歳までの子どもは生活リズムを整えることができます。
  • 乳幼児期の今は、脳の一番大事な土台を育てている最中です。「睡眠」が整っていくと、これまでに感じていた「困った」が減って、必ず親子の間に笑顔の時間が増えていくはずです。ぜひ、試してみてくださいね。

この記事の監修・執筆者

小児科医・発達脳科学者 成田 奈緒子

文教大学教育学部特別支援教育専修教授。文部科学省「リズム遊びで早起き元気脳」実行委員長。子育てを応援する専門家による「子育て科学アクシス」を主宰。
神戸大学医学部卒業。米国セントルイス大学医学部留学を経て、獨協医科大学越谷病院小児科助手、筑波大学基礎医学系講師を経て、現在に至る。小児科医として豊富な臨床経験を持つ。一児の母。

こそだてまっぷ

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

あわせて読みたい

こそだてまっぷ

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事

この記事の監修・執筆者の記事