「早生まれ」は受験で不利って本当?~思春期に大逆転する 子育てのヒント【脳医学者監修】

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「早生まれ」は受験で不利って本当?~思春期に大逆転する 子育てのヒント【脳医学者監修】

「早生まれの子は体力、学力などで不利だ」と思われている保護者の方は少なくないと思います。いずれ成長すれば差は埋められると知りつつ、約1年の差がどう影響するのか不安なこともあるでしょう。でも、早生まれの子ならではのメリットや適切な声かけを知っていれば、早生まれの子の学力や可能性を伸ばすことができるのです。ご自身のお子さんも早生まれという脳医学者の瀧靖之先生にお話を伺いました。

取材・文/FUTAKO企画

目次

「早生まれは不利」は本当?

早生まれの子に影響する2つのこと

皆さんご承知のように、日本では1月1日から4月1日までに生まれると「早生まれ」、4月2日から12月31日までに生まれると「遅生まれ」とされています。海外では、学年の境目付近に生まれた子が「入学年を選べる」国や地域もありますが、日本で入学年度を選ぶことはできません。 そんな日本においては、特に幼少期、早生まれが遅生まれより不利なことが「ある程度多い」のは事実です。もちろん個人差はありますが、保育園・幼稚園のような集団の中では低年齢であるほど、体格差や発達の差がマイナスに働くことが多くなってしまうのです。
また、そうした遅生まれとの差に関連して、早生まれの子の「非認知能力が低くなりやすい」ことがもう一つのポイントです。
「非認知能力」とは、IQや学力テストのように数値で測定できる「認知能力」とは異なり、数値化しにくい「自制心」「意欲」「協調性」など生きていくうえで重要な力のこと。近年の教育現場では、将来の社会的・経済的な成功のためには、学力だけでなく非認知能力を高めることが大事だとされています。

早生まれの子は、体格差や運動面、活動面、コミュニケーションにおいて、他の子に比べて引け目を感じる場面が多くなることから、「非認知能力」が低くなりやすいと考えられます。
ただし、保護者の方による適切な声かけやサポートをすることで、早生まれの子の非認知能力を高めることは十分可能です。今、この文章を読んでいる保護者の方は、ぜひこの後に紹介するサポートや声かけを実践してみてください。

早生まれのメリットは「脳の可塑性」と「受援力」

早生まれにはよい面もあります。その一つに、保育園や幼稚園などの集団の中に一足早く加わることで、「脳が若いうちに刺激を受けることができる」というものです。早い時期から集団生活をしてさまざまな刺激を受けることは、脳の活動を高めるという点で非常に素晴らしいことです。

脳には、粘土のように形を変えられる「可塑性」という性質があり、「若い脳ほど可塑性が高い」ということがわかっています。可塑性という性質のすごいところは、何歳になってもその性質が残るということ。早い段階から思考・判断・記憶など「脳への負荷」がかけられることは、脳の成長において大きなプラスとなるのです。

また、早生まれのメリットとしてもう一つ大きいのが「受援力」です。
受援力とは他人に甘えたり、助けを求めたりする力のこと。困ったときに「助けて」と言えることは、どんな場面でも大事なことだと思います。早生まれの子は、大人や同学年の子など、周囲に助けられたりかわいがられたりして育つことが多いため、「できないことは助けてもらう」という意識を自然と身につけやすいと考えられます。早生まれのデメリットを逆手に取ると、逆にメリットになるんですね。

他者の助けを受け入れるマインドというのは、人生においてプラスに働くもの。一人でできることには限界がありますから、自分でできることはしっかりやりつつ、「他者に助けを求めて目的を達成する力」はとても大事なものです。

近年、「人からサポートを受けるのが苦手」で、自分だけ頑張りすぎて体調を崩したり、うまく物事を進められなかったりするケースが増えている中で、現代社会を生き抜くうえで非常に大切な力だと言えるでしょう。

早生まれの子に親がするべき3つのこと                     

1「ステレオタイプ」を捨てる

「早生まれだからできないことが多い」「早生まれだから足が遅い」 ……こんな言葉を、お子さんの前で言ってしまってはいないでしょうか。親からの何気ない一言が「自分はだめなんだ」と、お子さんに思わせる呪いの言葉になりかねません。子どもの自己肯定感が下がるような物言いは避けましょう。
「女子は地図を見るのが苦手」「男子は理数系が得意」などのようなステレオタイプの見方は誰にでも当てはまるものではありません。まずは親が「早生まれは不利」といったステレオタイプから脱却することが大切です。

2 人と比べない

「人と比べない」ことも大事です。早生まれの場合、そもそも体格差や発達の差はどうしても生じてしまうことが多いので、人と比べてほめられる機会が少なくなりがちです。わざわざ人と比較して劣等感を持たせてしまうのは、子育てにおいて意味のないことです。
また、早生まれかどうかに限らず、何事にも上には上がいるもの。他の子との比較ではなく、お子さんをしっかり観察して、本人のよさを見つけることに時間を割いたほうがいいと思います。

3 外遊びや運動をさせる

早生まれの子がスポーツや習い事に興味が持ったときに、体が小さいから、発達が未熟だからと尻込みをしてしまうことがあると思います。 外遊びやスポーツ系の習い事をさせて運動能力を高めることは、自己肯定感を高め、非認知能力を伸ばすために大事なポイントです。先に述べたように、脳が若いうちにさまざまな挑戦をさせることは、脳の成長にとって非常によい刺激になります。無理やりやらせるのでなければ、「まだ早い」と思い込まずに積極的に挑戦させるとよいでしょう。

運動はまた、脳を成長させ、記憶力と呼ばれる機能も高めることが、脳の研究でわかっています。記憶力というのは、私たちが考えたり、判断したり、コミュニケーションしたりすることの土台になるものなので、記憶力が高いことは学業成績やさまざまな脳の発達全般に重要です。
スポーツ系の習い事で言うと、スイミングや体操といった体全体を使う個人競技がおすすめですが、他にはピアノや絵画などの習い事も非認知能力を高められます。

早生まれの子の「自己肯定感を上げる声かけ」は?

結果ではなく努力をほめる

遅生まれの子よりもほめられる機会が少なく、「自己肯定感が下がりがち」な早生まれの子に対して、保護者の方はどんな声かけをしたらよいでしょうか。

まず大事なのは、うまくできたこと、よい成績を残せたことだけでなく、子どもをよく観察して「努力した過程」をほめることです。
「一生懸命勉強していたね」
「最後までがんばったね」
など、たとえ望んだ結果ではなかったとしても、努力した過程を認めてほめてください。結果だけを賞賛してしまうと、人はほめられること、簡単にできることしかしなくなってしまいます。
一方で、努力をほめられると、意欲が高まり、努力を継続することができるのです。 私が参加した研究でも、親が子どもをほめる頻度が高いほど、子どもの脳の一部の体積が増えることは科学的に明らかになっています。ほめ言葉は、実際に「脳の栄養」にできるのです。

ほめるだけでなく、きちんと叱る

ただし、ほめ続けるだけではなく、よくない行動に対してはきちんと叱ることも大切です。 自己肯定感に関する研究では、「子どもの頃、ほめられたり、叱られたりした経験が多い人」のほうが、「ほめられてばかりで、あまり叱られなかった人」よりも自己肯定感の高い大人に育ったという報告があります。(2018年「子どもの頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究」国立青少年教育振興機構)

つまり、「ほめるべきときはほめる、叱るべきときには叱る」といったメリハリが大事だということです。「自分に都合のよい嘘をついた」「時間を守らなかった」などと社会のルールから外れるようなことをした場合、親がきちんと叱ることも必要です。

「子どもの得意」を伝え続ける

「非認知能力が低くなりがち」な早生まれの子への声かけで、保護者の方にぜひおすすめしたいのは、「お子さんなりの得意」を伝えて自信を持たせることです。
勉強、スポーツ、音楽や絵画など、どんな分野でも一番になるのは難しいもの。何かの一番になろうとすると、上には上があることに気づいて逆に自信を失いかねません。ではどうするかというと、「まあまあ得意」をいくつでも見つけることです。
例えば「算数の勉強は一番ではないけれど得意なほう」「足の速さもクラスで一番ではないけれど、上位に入る程度には速い」「友だちの数もまあまあ多い」などと、さまざまな観点で子どものよいところを挙げてみます。
そうした「得意の合わせ技」で、「算数ができる×足が速い×友だちも多い」というオンリーワンの強みにするのです。「〇〇と△△と◇◇ができるのはあなたしかいない」と、呪文のように言い続けましょう。そばにいる親が継続的に伝えることで説得力が増し、子どもの自信や意欲につながります。本人が気づきにくい個性と強みを見つけて、そばで伝え続けられるのも親だからこそできることなのです。

「早生まれの子」の受験戦略について

「中学受験は早熟な子が有利」は本当?

「中学受験では早熟な方が有利」という説をご存知の方も少なくないと思います。
東京都の有名中高一貫校の合格者に限定した調査になってしまうのですが、生年月日で見ると、「4月から6月に生まれた子」を1とすると、「1月から3月までに生まれた子」の合格者の割合はわずか0.1だったという結果が得られています。つまり、早生まれの割合が極端に少ないということです。それが高校受験になると早生まれと遅生まれの差は詰まり、大学受験の結果ではほとんど差が見られなくなります。

私自身も早生まれの息子の中学受験を経験して、大人っぽい同級生たちの様子を間近で見ることで「早熟な方が有利」という説は確かに一理あると感じています。
ただし、早生まれの子だから一律に「中学受験は無理」「挑戦する意味がない」とも言い切れません。超有名校に進学しなくても、早生まれの子が中学受験を経て能力がぐんと伸びるケースもたくさんあります。
息子の場合は、中学進学後にエンジンがかかって成績が伸びたのですが、中学受験で得た地理や歴史の知識、数学や理科でのアドバンテージ、新聞やニュースを見たときに別の情報との関連に気づけるなど、いろいろな面で役立っているように思います。
若い脳のうちにさまざまな刺激を受けることで脳の可塑性が高められ、高校・大学と「思春期以降の受験」での成功につながるケースは少なくありません。 早生まれの中学受験は「脳を育てるための受験」と考えましょう。
では、早生まれの子が中学受験をするならば、どんなことに気をつけるべきでしょうか?

親は塾に一任するか、最後まで伴走するかの二択

私自身、息子の受験にずっと伴走し、一緒に競争しながら問題を解いてきた立場からすると、本当に中学受験の問題というのは独特だなと感じました。高校受験の問題が比較的オーソドックスというか素直な問題が多いのに比べると、中学受験の問題は奇をてらったものが多いですよね。ある意味、大学受験よりも難しいかもしれません。
独特の解法が必要な問題に対して、経験のない親が中途半端に手を出してしまうのは、かなりのリスクを伴います。 そのため、「勉強は塾に一任して親は食事・メンタルケアなどサポートに回る」または「親が覚悟を決めて最後まで子どもに伴走する」、この2つのどちらかを選ぶことが大事だと考えています。
実際に自分で問題を解いてみるとその難しさがわかりますし、幼いながらそれに取り組んでいる我が子に対して尊敬の気持ちすら沸いてくるものです。親自身が本気で取り組むほど、子どもの成績について文句を言ったり叱ったりする気持ちにならなくなるのです。
「徹底して生活面のサポートに回る」「最後まで伴走する」どちらかに振り切ることで、中途半端に関わって親子関係を悪くするリスクを避けられるのではないかと思います。

第一志望「群」を設定する

中学受験では「全落ち」の場合でも公立の中学に進学できるため、自分の偏差値以上の学校に挑戦するなど「強気の受験」が一般的で、より高い偏差値の学校を「第一志望校」に設定することが多いです。第一志望校に入れる確率は受験者全体の約3割とされています。
そんな中、第一志望校に合格できずに、がっかりした気持ちで進学するお子さんも多いものです。そんなリスクを避ける対策としては、「どこに入ってもあなたに合っていて素晴らしい」という学校を複数校設定することをおすすめします。
いくつかの学校を第一志望「群」として設定することで合格の確率を上げ、「第一志望に合格できた」と堂々と言えることで子どものメンタルヘルスを守ることができます。その結果、本人が進学先で明るく前向きな気持ちでスタートすることにつながるでしょう。

子どもを勉強ぎらいにさせない

中学受験に乗り気でない子どもに対して、親があれこれメリットを説いて受験に仕向けるというのはありがちなケースですが、やはり脳にいいことではありません。
脳はストレスによって萎縮してしまいますし、「ポジティブなコミュニケーションをしてこそ脳の発達が促進される」ということが研究によってわかっています。感情と脳の発達というのは緊密に結びついてるということです。
ですから、「勉強が嫌にならないようにする」というのは、とても大事なことだと思いますし、子ども自身が主体的に勉強に取り組めるように、周囲がサポートをする必要があります。 そのために有効なのは「得意を伸ばす」こと。
脳には、あることをがんばると、脳全体のパフォーマンスが上がるという性質があります。算数が得意なら、算数に力を入れてさらに伸ばすことで自信がつきます。自信がつくと、他の教科にも取り組む意欲がわいてきて、少しずつよい影響が出てくるようになります。不得意にはとりあえず目をつぶって得意を伸ばすのも、重要な受験の戦略です。

最後に

早生まれの子は、遅生まれに対する発達の差が出てしまうことで「非認知能力や自己肯定感が低くなりがち」という点が問題ですが、それさえ解決すれば、さまざまなメリットもあります。
保護者の方が適切なサポートや声かけを行うことによって、早生まれの子の能力を高めることができるのです。
それは特に難しいことではありません。
「早生まれだからできない」といったステレオタイプの考え方をやめて、お子さんのふだんの様子をよく観察することがその第一歩となるのです。

この記事の監修・執筆者

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター センター長 瀧 靖之

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター センター長
東北大学加齢医学研究所教授
東北大学発スタートアップ 株式会社CogSmart代表取締役
医師 医学博士

東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIは、これまでにのべ約16万人に上る。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表している。

著書は、『生涯健康脳』(ソレイユ出版)『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)『回想脳(青春出版社)』『脳医学の先生、頭の良くなる科学的な方法を教えてください』(日経BP)「本当はすごい早生まれ」(飛鳥新社)を始め多数、特に『生涯健康脳』『賢い子に育てる究極のコツ』は共に10万部を突破するベストセラーとなり、海外でも複数カ国語で翻訳本が出版されている。テレビ東京「主治医が見つかる診療所」、NHK「NHKスペシャル」、NHK「クローズアップ現代」、NHK「あさイチ」、「チコちゃんに叱られる!」、Eテレ「バリューの真実」、TBS「駆け込みドクター!」、日本テレビ「DayDay」、「カズレーザーと学ぶ。」など、メディア出演も多数。

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