児童書に贈る文学賞「第73回産経児童出版文化賞」の受賞作品が決定。 昨年1年間に刊行された児童書のうち、対象作品4276点から9作品が選ばれました。本記事では、読書習慣を身につけたり、読書感想文のテーマにしたりするのにもおすすめな、受賞作品をご紹介します。
「産経児童出版文化賞」とは?
産経児童出版文化賞は、児童書の発展を支える児童文学賞のひとつです。
次世代を担う子どもたちに優れた児童書を届けることを目的とし、昨年1年間に刊行された児童書から選出されます。
始まりは1954年(昭和29年)、「次世代をになう子どもたちに良い本を」という主旨のもと産経児童出版文化賞が創立されました。そして、産経児童出版文化賞は今年で第73回を迎えます。これまでに約1200作品が受賞しており、『11ぴきのねこ』(こぐま社)や『スーホの白い馬』(福音館書店)、『あらしのよるに』(講談社)など、数々の作品が名を連ねています。
「第73回産経児童出版文化賞」では、大賞、JR賞、タイヘイ賞、美術賞、産経新聞社賞、フジテレビ賞、ニッポン放送賞、翻訳作品賞に、計9作品が選ばれました。
受賞作品の紹介
大賞『もしも君の町がガザだったら』

著者:高橋真樹(著)
出版社:ポプラ社
作品紹介
もしも君の住む町が壁で囲まれて、外に出られなくなったら? もしも学校から帰ると君の家が爆撃され、家族と連絡が取れなくなったら?
『もしも君の町がガザだったら』は、世界から「無関心」がなくなることを願って刊行されました。
人道的危機に苦しみ続けるパレスチナで一体何がおきているのか、そもそもなぜこんな事態になってしまったのか、そして私達に何ができるのでしょうか。パレスチナの過去・現在・未来を知ること、関心をもち、ともに考えることが今を変える一歩になります。
約30年にわたってパレスチナに関わってきた著者が、小学生にもわかるようにやさしく解説しています。親子で読みたい「パレスチナ問題」の入門書です。
高橋真樹さんの受賞コメント
受賞できたことを光栄に思います。
ただ、ガザでは今も子どもたちが爆撃におびえ、感染症に苦しみ、食べるものを探し回っています。ガザで暮らす子どもたちの願いは、普通の暮らしをすること。どうしてそれが実現できないのでしょうか。こうした状況を止められない私たちにも責任があると思っています。
日本ではパレスチナ問題はどこか遠い世界の出来事と捉えられがちですが、決してそんなことはありません。私たち自身の問題でもあると伝えるためにこの本を書きました。
つい先日、私が以前出した本をきっかけに、ガザで支援活動に取り組む方と出会いました。誰かの心にしっかり届いていると感じたとき、これが「本が持つ力」だと改めて実感しました。関心を持って行動する人が増えれば、この問題はかならず変えることができると思っています。そのとき、この賞をガザの友人とともに心からお祝いしたいです。ぜひ、皆さんも関心を持ち続けてください。
JR賞『どきどきしてる』

著者:たけがみたえ(作)
出版社:偕成社
作品紹介
『どきどきしてる』は、生きものたちや自然の「どきどきしてる」瞬間を、力強い版画と素朴な言葉でつむいだ絵本です。
〈にわとりはどきどきしてる あさいちばんおおきなこえをだして どきどきしてる〉
〈さなぎはどきどきしてる もうすぐちょうになりそう〉
いろいろな生きものたちが、この世界のいたるところで「どきどき」しています。
うれしいときも、かなしいときも、どきどきしてる、生きている。
そんな素朴でやさしい言葉と、見開きいっぱいに広がる美しい色彩の木版画が、読者を物語の世界に引き込みます。
タイヘイ賞『わたし、わかんない』

著者:岩瀬成子(著)、酒井駒子(イラスト・絵)
出版社:講談社
作品紹介
小学4年生の少女・中(なか)は、いつも「わかんない」と答えるため、学校で「わかんないちゃん」とからかわれています。ある日、犯罪研究に興味があるという仲良しの幼馴染・センくんから、近所であやしい動きをしている人を見つけ、中も一緒に見張り調査をすることに……。
学校で「わかんないちゃん」と呼ばれる中と、「まじめでなくなることが夢」というセンくん、別居して新しい生活をはじめた中の両親……。『わたし、わかんない』では、大人も子どもも「わかんない」を抱えながら、それぞれのいるべき場所と答えを探していきます。
美術賞『ある星の汽車』

著者:森洋子(作)
出版社:福音館書店
作品紹介
広い大地を走る汽車には、ドードーの紳士、オオウミガラスの夫婦、リョコウバトの団体客など、たくさんの乗客が乗っています。
お父さんと旅をする男の子も、その乗客のひとり。男の子は車内をまわり、動物たちと会話をしたり、つぶやきを聞いたりします。しばらくすると、汽車が駅に止まり、ドードーの紳士が降りていきます。その後も駅に止まるたびに乗客が降りていき、車内は寂しくなっていきます。
『ある星の汽車』は、絶滅してしまった動物たちを描いた絵本で、地球の過去から未来の時空を走る汽車と、そこに乗り合わせた乗客たちが織りなす物語が、繊細な鉛筆画で描かれています。
産経新聞社賞『ずかん 石積み』

著者:真田純子(監修)、ニシ工芸石積み研究会(著)
出版社:技術評論社
作品紹介
『ずかん 石積み』は、石積みの技術や歴史が楽しく学べる一冊です。
石積みは、棚田や城壁、石橋、石塀などで古くから使われている技法です。そんな石積みの技術のひとつである「空石積み」は、コンクリートやモルタルを使用しないことから、限りある資源を大切にした環境にやさしい技術として見直されています。こうした日本の匠の技術は、海外でも注目を集めています。
これまで培われてきた日本の伝統技術を学びながら、現代での石積みの活用方法や環境問題についても考えることができます。
フジテレビ賞『ちょっとだけ ともだち』

著者:なかがわちひろ(作)
出版社:のら書店
作品紹介
「ともだちをつくるのってむずかしい」
ともだちづくりに励む一平くんは、ある日、カメの展覧会でヒロくんと出会い、意気投合します。ふたりはカメのことでは話が合いますが、そのほかはずいぶんとちがって、いろいろ合わないところがあるようです。でも……!
『ちょっとだけ ともだち』は、「ちょっとだけ」の関係、でも、大切なともだちを描いた、心温まる物語です。
ニッポン放送賞『白い虹を投げる』

著者:吉野万理子(作)、黒須高嶺(絵)
出版社:Gakken
作品紹介
同じ野球チームでがんばっていた、ヤヤと葉央。
ヤヤは転校してから新しいチームになじめずにいました。また、自分自身が日本人とアメリカ人の間に生まれたことや、女子が甲子園大会に出られないことなどに思い悩みます。一方、残された葉央は、メンバー不足で試合ができずにいました。さらに、脚の手術をしたばかりで激しい運動ができない弟とどう接すればいいか悩むようになります。
そんなふたりは「キャッチボールクラシック」という大会を知り、そこで再会することを誓いますが――。
『白い虹を投げる』は、人と人の心をつなぐ、キャッチボールの物語です。
吉野万理子さんの受賞コメント
このたび産経児童出版文化賞ニッポン放送賞をいただきました。贈賞式では佳子内親王殿下にあたたかいお言葉を賜り、心よりありがたく存じます。
『白い虹を投げる』は、日本プロ野球選手会が主催する“キャッチボールクラシック”という大会を目指す物語です。プロ野球の中継番組「ショウアップナイター」を放送するニッポン放送の賞をいただき、ご縁を感じて嬉しく思います。
受賞を機に、作品を知ってくれるお子さんが増えますように!
翻訳作品賞『サメのイェニー』

著者:リーサ・ルンドマルク(作)、シャルロッテ・ラメル(絵)、よこのなな(訳)
出版社:岩波書店
作品紹介
小2のイェニーは、読書が大好きで大声を出すのがきらいな女の子。群れを作らず泳ぐサメのように、教室でひとり静かに読書したいのに、先生もみんなもわかってくれません。ある日、水族館〈海の世界〉に迷い込んだイェニーは本物のサメと出会い、悩みを相談しますが……。
『サメのイェニー』は、スウェーデンの児童書で、あなたの「ありのまま」を後押ししてくれる一冊です。
翻訳作品賞『レーナとヒキガエルの紳士』

著者:ミリアム・ダーマン(文)、ニコラ・ディガール(文)ジュリア・サルダ、(絵)、河野万里子(訳)
出版社:徳間書店
作品紹介
はるかかなた、西のはてに奇妙な森がありました。
町の人たちは、「あの森にはなにかいる。森には目がある。耳もある」とうわさしていました。なかには、森から二度ともどらない人もいました。
森と町のあいだには、川が流れており、物静かな少女レーナが渡し守をしていました。
ある日、レーナがひそかに思いを寄せる青年オーレンが、森からもどらなくなってしまいます。数日後、嵐のなか、「森の主(あるじ)」と名乗るヒキガエルが現れ、レーナは森の奥の家へ招待されます。ヒキガエルが「見てはならない」という部屋で、レーナが見たものとは……?
『レーナとヒキガエルの紳士』は、ちょっぴりこわい昔話風の物語を、世界的に人気のイラストレーター ジュリア・サルダの絵が彩る絵本で、子どもから大人まで幅広い世代を魅了する一冊です。
まとめ
「第73回産経児童出版文化賞」に選ばれた9作品は、どれも個性豊かで、すてきな作品ばかり。ぜひ手に取ってみてくださいね。
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