【睡眠時の室温は、何度が正解?】「脳」に最適な温度で、疲れやだるさを回復![疲労専門医/梶本修身]

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【睡眠時の室温は、何度が正解?】「脳」に最適な温度で、疲れやだるさを回復![疲労専門医/梶本修身]

「毎日、体が重くてしんどい」
「寝ているのに、疲れが取れた感じがしない」

人々はなぜ、こんなに疲れているのでしょうか。

すでに疲労対策に取り組んでいる方もいると思いますが、よかれと思って続けている習慣が、実は逆効果になっているケースも少なくありません。

疲労医学の視点から見た「正しい休み方と回復メソッド」を理解することが重要です。

「休養力=疲れを回復する力」を高めるカギは、「脳」と「自律神経」。

いま、あなたが日常生活でケアを必要としているのは、「体」ではなく「脳」。とりわけ、自律神経をいたわることです。

『疲労専門医が伝えたい お疲れ日本人の本当の休み方』(Gakken)では、疲労困憊な方でもすぐに取り組めるような、さまざまなメソッドを紹介しています。みなさんの疲れがとれる手助けができればうれしく思います。

<梶本修身>医学博士。東京疲労・睡眠クリニック院長。
2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者、大阪大学大学院医学研究科疲労医学教室特任教授などを歴任。ニンテンドーDS「アタマスキャン」をプログラムして「脳年齢」ブームを起こす。「あさイチ」(NHK)「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)などテレビ他メディアでも幅広く活躍。

目次

「疲労」とは人体の危険を知らせる 人間の3大アラームの一つ

「疲労」とは、医学的にいうと「痛み」や「発熱」と並び、人間の3大「生体アラーム」の一つであると考えられています。

これは、「仕事や運動などの活動をこれ以上続けると、生命に悪影響が及んでしまいますよ」という体からの警告。もし、これらの警告装置が備わっていなければ、極端にいうと、死ぬまで作業を続けてしまう恐れもある。それを避けるために痛みや発熱、そして疲労というサインを出し、活動をセーブさせようとしているのです。

疲労は生体アラームの中でもっとも気づきにくいため、深刻な状態になるまで放っておかれてしまうという側面があります。

また、熱や痛みがあれば、病院へ行ったり会社を休んだりするでしょうが、疲労でそこまでする人はあまりいません。わかりにくく軽視されやすい、だからこそ蓄積し危険、それが「疲労」なのです。

実は、疲れの原因は体ではなく「脳」と「自律神経」にある

結論からいうと疲れの原因は「脳の中にある自律神経の中枢」にあります。

「自律神経の中枢」とは、体中に張りめぐらせた神経を通じて、心臓や消化管などの内臓組織や筋肉、血管にさまざまな命令を出している、まさに司令塔。脳の「視床下部」や「前帯状回」が、それにあたります。

この司令塔が、脳に酸素と栄養を安定供給させ、脳の温度を保つため、体中の内臓や血管に指示を出し、機能的に働かせているというわけです。

たとえば運動などで活動量が多かった日に、だるさの原因は「体」にあると考える人が多いでしょう。しかし、これは脳が体に「疲れた」と誤解させているせい。実際に疲れているのは、脳にある自律神経の中枢です。

運動負荷が強くなるほど指令は複雑化し、自律神経はどんどん疲弊していく羽目に。そこで脳はこれ以上、自律神経が疲れてしまわないように、「体が疲れているよ」という誤情報を発し、脳全体でその情報を共有します。

この情報を受けて、「ああ、疲れた……」と感じているのが「疲れの正体」。自律神経の酷使を回避するために、「休みたい」という欲求を芽生えさせているのです。

自律神経の回復アプローチのカギは「睡眠」と「血流」

疲労から「回復」するためにベストな方法は、良質な睡眠をとることです。

日中に「疲れにくくする」工夫はいろいろとできるかもしれませんが、起こってしまった疲れを回復させるには、睡眠が唯一の方法といって差し支えないでしょう。

必要な睡眠時間には個人差がありますが、自律神経のバランスを整えて疲労を回復させるためには、少なくとも6時間は眠ることが不可欠です。

そしてもう一つ、疲労回復をサポートする要となるのが「血流」。とくに女性は、冷えなどで血流が悪いことを実感している人も多いのではないでしょうか。

血流も、自律神経がコントロールしています。脳への血流が滞ると、脳へきちんと酸素や栄養を運ぶことができません。それは死にかかわることであるため、自律神経がフル回転で複雑な指令を出さなければならなくなり、自律神経は疲弊してしまいます。

また、老廃物の排出にも血流がかかわるため、疲労回復において重要な役割を担っているといえるでしょう。疲れている人ほど、気をつけたいポイントです。

寝室でとにかく大事なのが温度。これも「脳ファースト」で設定を

脳と自律神経にとって、「安心・安全・快適」な睡眠環境を整えることは必須です。

まず意識したいのが寝室の空調。脳にとってもっとも快適な環境は、22~24℃の室温、50%前後の湿度といわれ、この状態をキープすることが睡眠の質を高めるためには不可欠なのです。

たとえば夏は、高温多湿で脳の温度が上がりやすいため、自律神経が睡眠中に働き、発汗させて体温を下げる指令を出すことになります。これは、いびきをかいているときと同様、自律神経にとってはまるで運動中と同じ。フル稼働させられている状態のため、いっこうに休むことができません。

エアコンは夏場であれば24~25℃に設定し、一晩中つけっぱなしにしておくべき。ここでは「電気代がもったいない」という意識は捨てましょう。

しかし、24~25℃に設定していると多くの女性は冷えを感じてつらいのが本音でしょう。平均的に、女性は筋肉量が少ないことが多く、冬以外でも手足に冷えを感じている人がかなりいます。筋肉量が少ないということは、熱の産生量が少なく、さらに基礎代謝が低いということ。寒さを感じながら眠ると、それはそれで体を震えさせて温めなければならず、自律神経は疲弊してしまいます。

その場合は、夏でもパジャマを長袖にする、薄い布団をプラスするなどして、各自、調整しましょう。重要なのは「頭寒足熱」。室温は涼しく、体は温かく保つ工夫が必要です。

疲労を溜めないために日常生活の中で「脳ファースト」の習慣を

医学の発展によって、「体のケア」は飛躍的に向上し、日本人の平均寿命は84歳を超えました。しかし一方で、認知症が大きな社会問題となっているように、「脳のケア」については、いまだ疎かにされているといわざるをえません。

今、健康医学に求められるのは、まさに「脳ファースト」の徹底です。

欧米人に比して筋肉量の少ない日本人女性では、「体にとって快適温度」と「脳にとっての快適温度」に大きな乖離が起こります。一般に、「脳にとっての快適温度」は人種・性別を問わず22℃~24℃なのに対し、平均的な日本人女性における「体にとっての快適温度」は25℃~27℃と、脳と体の快適温度に3℃程度の乖離が生じます。

しかし、ほとんどの方は、脳にとっての快適温度を無視して、体にとっての快適温度を優先しているのではないでしょうか?

体にとっての快適温度25℃~27℃は、脳にとってダメージを与えることが示されています。25℃より1℃温度が上がるたびに、脳のパフォーマンスが2%低下し、睡眠においては中途覚醒が増え、睡眠の質が低下することが研究で示されています。

梶本修身(著)
定価 1,650円 (税込)

『疲労専門医が伝えたい お疲れ日本人の本当の休み方』(Gakken)は、日頃から疲労に悩まされながらも、これまでの体のケアだけでは解決できなかった方に向けて書きました。疲労を溜めないために「脳ファースト」の習慣をいかに日常生活の中で実現させるかを詳しく記しています。

ご紹介したメソッドを生活に取り入れて、体の調子を整え、健康で生き生きとした毎日を送るための糸口になれば幸いです。

【主な内容】

■Prologue 私たちの疲れは加速している
<警告1>日本人特有の「所属重視文化」と「もったいない精神」が疲労の原因に
<警告2>日本は30年間で生産効率がほとんど上がっていない
<警告3>世界一眠らない日本人女性。30代・40代がとくにお疲れ?
<提案>科学的、医学的に正しい休み方で、生活にポジティブ循環を
・あなたの「疲れやすさ危険度」をチェック! …ほか

■第1章 「疲労」の正体がわかれば、休み方が変わる
■第2章 脳の疲労を回復させる「正しい休み方」
■第3章 疲労が回復する食事術
■第4章 自律神経を疲れさせない働き方・生活
■第5章  「疲労」と「休養」についての素朴な疑問を一刀両断!

この記事の監修・執筆者

医学博士。東京疲労・睡眠クリニック院長。 梶本修身

2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者、大阪大学大学院医学研究科疲労医学教室特任教授などを歴任。ニンテンドーDS「アタマスキャン」をプログラムして「脳年齢」ブームを起こす。「あさイチ」(NHK)「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)などテレビ他メディアでも幅広く活躍。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)『図解眠れなくなるほど面白い疲労回復の話』(日本文芸社)などがある。『疲労専門医が伝えたい お疲れ日本人の本当の休み方』(Gakken)が発売中。

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