生理について、お子さんと話をしていますか?
もしかしたら、「何も話していない」「いつから話せばよいの?」「どんなことを伝えるの?」など、悩んでいるおうちの方も多いかもしれません。
今回は、思春期外来を担当し、小中高生の性教育にも力を入れている産婦人科医の川村真奈美先生に、お子さんへの生理についての伝え方について伺いました。
文/こそだてまっぷ編集部
生理のことは事実をしっかり伝えましょう
生理の話はいつから?
生理は医学的には「月経」といい、生理と月経は同じものです。初めての生理を「初経」や「初潮」と呼び、中には小学校中学年で初経をむかえるお子さんもいます。
一方で、小学校の体育の授業で思春期の心と体の変化について学ぶのは4年生です。
初経をむかえる時期には個人差があるので、お子さんが戸惑うことのないように、小学校入学後、生活が落ち着いたころから、少しずつ生理について話しておけると良いですね。
初経をむかえる前に伝えたいこと
「生理のことは話しにくい」と感じているおうちの方も多いかもしれません。生理は体の成長の過程で起こる自然なことなので、お子さんが心配にならないように、おうちの方が正しい知識をお子さんに伝えましょう。
生理や体の変化についての絵本や書籍もいろいろあるので、おうちの方が参考にしたり、お子さんといっしょに読んだりするのもよい方法です。
下にお子さんの成長の過程で、伝えたいことのポイントをまとめました。
お母さんが生理の時や、生理用品を購入した時などに、自然に話題にして、お子さんが興味をもつタイミングに話してみてください。
〈低学年のうちに伝えたいこと〉
・子どもと大人の体には違いがあり、女性は大人になると赤ちゃんが産めるようになる。
・赤ちゃんが産める体に成長する過程で、生理がくるようになる。
・生理になると、女性器から出血がある。
・下着にナプキンをつけたり、痛みがあれば薬を飲んだりと、生理に対処する方法はいろいろあるので、心配はいらない。
〈中学年になったら伝えたいこと〉
・子宮の両側にある小さな臓器「卵巣」には赤ちゃんのもとになる「卵子」があり、約1か月に1回、卵巣から卵子が出てくる。これを「排卵」という。
・大人の体に成長する準備が整うと、赤ちゃんが育つ臓器「子宮」の中で、受精卵のベッドの役割をする「子宮内膜」が厚くなる。受精卵とは、女性の卵子と男性の精子が結びついたもの。
・排卵しても、卵子と精子が結びつかなければ、受精卵はできないため、子宮内膜のベッドは不要となり、子宮からはがれて血液とともに外に出る。
・外に出る子宮内膜や血液が混ざったものを「経血」という。
・経血は、子宮の出口から体の外へつながる「膣(ちつ)」を通って外に出る。
・初経をむかえる時期、経血の量、痛みの有無などは個人差がある。
難しい言葉もあるかもしれませんが、お子さんが理解しているか確認しながら、1つずつ説明しましょう。話している途中で、お子さんからの質問に答えられないこともあるかもしれません。その場合はあいまいにせず、「大切なことだから、きちんと調べてから答えるね」と言い、調べてから伝えればよいと思います。
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初経をむかえたら伝えたいこと
初経をむかえる前には、身長がぐっと伸びたり、胸がふくらむなど体つきが丸みを帯びてきたり、また、わき毛や陰毛が生えたりと、体の変化が見られるようになります。また、初経をむかえる少し前から、おりものが出るようになります。
体の変化に合わせて、おりものが出るようならおりものシートの使い方を教え、ナプキンやサニタリーショーツなど生理用品の使い方を伝えて備えるようにしましょう。使い方が詳しく紹介されている生理用品メーカーのホームページも役立ちます。
初経をむかえたら、次のようなことを伝えるとよいでしょう。
・生理は個人差が大きいので、生理の周期や痛みの度合いなど、心配なことがあれば1人で悩まず、親や学校の養護教諭、産婦人科医に相談する。
・生理の痛みは我慢するものではない。
・生理の痛みは早めに薬で対処すればひどくなりにくい。
・生理があるということは、性交をすれば妊娠する可能性がある。
「妊娠のことも?」と驚かれるかもしれませんが、生理と妊娠はセットで話しておいたほうがよいと思います。産婦人科には、望まない妊娠に悩む10代前半の女の子が受診に訪れることもあります。自分の体のことを知ることは、自分の体を守ること、さらには性犯罪の予防にもつながります。家庭環境はさまざまなので、本来ならば、学校で成長段階に応じた性教育が一律に行われることが望ましいと考えますが、現状では一部の学校で行われているに過ぎません。お子さんのためにも、家庭での性教育は必要です。
おすすめの方法としては、小学生向けの性教育の本を渡したり、いっしょに読んだりすることです。親子で正しい情報を共有できるのもよい点です。
気軽に婦人科に相談を
生理についての認識をアップデートしましょう
生理は個人差が大きいことを意識しましょう。お母さんは生理痛がまったくなくても、お子さんは生理痛が重い場合もあります。生理に限らず、心身のことに「お母さんは◯◯◯だから、大丈夫」という言い方をすると、お子さんを傷つけることもあります。生理についての認識も変化しているので、おうちの方も次のような知識を知っておくと役立ちます。
・生理の痛みは我慢せずに、市販薬や処方薬の痛み止めを服用する。
・小学生も、低用量ピルで生理の時期をコントロールできる。
・初経後2〜3年間は生理があっても無排卵のことが多いので、生理痛は軽いことが多いが、排卵するようになると生理痛がひどくなる場合がある。排卵があれば、小学生にもPMS(月経前症候群。生理開始3〜10日前に現れる精神的・身体的症状。イライラ感や不安、食欲の変化、体の不調など)が出ることがある。
婦人科を受診する目安は?
婦人科を受診するのは、大人の女性でもハードルが高いと感じる人が多いもの。まして、小学生ならなおさらです。でも、受診の目安は「心配なことがあったら」として、気軽に婦人科に受診してほしいです。お子さんの成長過程で、さまざまな悩みを相談できる思春期外来があるかどうかも、病院を選ぶ目安になります。医師が女性のほうが少しでも気持ちが楽というお子さんも多いでしょう。内診が心配なおうちの方も多いかもしれません。一般的には、内診は婦人科を受診するすべての方に行う検査ではなく、必要な場合に行うものです。症状から考えて、どうしても内診が必要な場合は、よく説明し、相談してから行いますので、心配し過ぎないでほしいです。
初経をむかえる時期、経血の量、生理前後の体の不調など、お子さんが1人で悩むことのないよう、おうちの方も相談できる人を増やすような感覚で、婦人科に足を運んでくださいね。
今回は、お子さんに生理について話す時期や内容についてご紹介しました。
ぜひ、お子さんの心身の成長に寄りそうために参考にしてください。
この記事の監修・執筆者
三重北医療センターいなべ総合病院産婦人科部長を経て、現在は同病院の嘱託医。1987年名古屋市立大学医学部卒業。産婦人科医になってから、女性の体の健康教育と学校においての正しい性教育の必要性を痛感。教育委員会に働きかけ、小学校から高校までの性教育の講義を開始。延べ3万人に性の講演を行ってきた。女性自らが実行できる避妊法であるピルの普及にも力を入れている。著書に『初めて「性」のことを子どもに伝えるパパとママのための教科書』(Gakken)。
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