【小児科医監修】子どもは膀胱炎にかかりやすい? 悪化すると怖い? 気になる症状を聞きました

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【小児科医監修】子どもは膀胱炎にかかりやすい? 悪化すると怖い? 気になる症状を聞きました

お子さんが、いつもより頻繁に「トイレ」と言う場合、もしかして膀胱炎かも…。
膀胱炎は子どもや女性がかかりやすい傾向にあるため、原因や対処を知っておきましょう。
小児科医の服部益治先生に、膀胱炎についてうかがいました。

お話/服部益治(医療福祉センターさくら 院長、兵庫医科大学小児科学特別招聘教授)

目次

膀胱炎は子どもがかかりやすい感染症

おむつをはいてつかまり立ちをしている子

膀胱炎は、尿路感染症という感染症のひとつです。

●症状

  • おしっこが頻回(頻尿)
  • 排尿痛がある(下腹部痛の表現が困難なため、「ポンポン痛い」と訴えることがあります)
  • おしっこが出しにくい(下腹部に、よく手を持っていく)

膀胱炎では熱が出ないため、子どもの訴えによって症状が判明しますが、おむつをはいている子の場合、気がつかずにかかり、治っていることもあります。

おおよそ1週間~10日間程度で治ります。

●原因

膀胱に菌が入ることによって発症します。

膀胱の壁を菌が刺激するため、頻繁に尿意を感じたり、排尿時に痛みが出たりするのです。

菌は、大腸菌であることが多く、尿道から侵入します。

膀胱炎になりやすいのは

  • 女児・女性
  • おむつの時期~小学校低学年くらいの子

です。

女性は尿道が男性(陰茎)よりも短いため、菌が侵入しやすく、またおむつをはいている場合などは、どうしても清潔を保ちづらいためです。

尿道口から腎臓までは、尿路でつながっており、その間で起こる感染症を総じて「尿路感染症」と呼びます。

尿路の図
※画像の黄色い管が尿路です

菌が膀胱にいる状態を「膀胱炎」と言い、菌が移動した場合にはほかの尿路感染症になります(腎臓まで到達すれば「上部尿路感染症」(腎盂腎炎)で高熱で入院の必要性も)。

子どもが膀胱炎かも? と思ったら小児科を受診

小児科を受診する親子

お子さんが、いつもよりも頻繁にトイレに行きたいと訴えるとき(頻尿)や、おしっこするときに痛みや違和感を訴えるとき(排尿痛)がある場合は、小児科を受診しましょう。

おむつを着用している子や、まだうまく自分の症状を言葉にできない子の場合、見た目の症状ではわからず、機嫌の悪さが続くこともあります。

症状と尿検査で診断

膀胱炎では、菌が膀胱にとどまっている状態で、発熱はしません。

子どもの症状の所見と、尿検査を用いて診断します。

病院に行く前に、ご家庭でよかれと思っておしっこを済ませてから受診する人が多いのですが、「尿検査をするからおしっこをとってね」と言われる場合があるため、もしも膀胱炎らしい症状が出ていると感じるときは、それを踏まえて受診するとよいでしょう。

尿検査は、自力で排尿できる場合には、中間尿(出始めの尿を捨てて途中を採尿します)をとりますが、おむつの場合は、おむつにつけられるビニールタイプの「採尿バッグ」というものがあります。

ドラッグストアでも購入できます(一度、膀胱炎にかかったことがある子は、次回の尿検査用に、採尿バッグを渡されることもあるようです)。

〈参考:6歳までに、女児の3~4% 男児の1~2%に尿路感染症がみられます〉

抗生物質で治療する

膀胱炎と診断されたら、一般的*に抗生物質が処方されます。

おおよそ1週間~10日間程度で治ります。

何度も繰り返す場合には、排尿・排便習慣の見直しも必要になってきます。

*参考:80~90%は大腸菌によるもののためです。正式には、尿培養で大腸菌か他の細菌か、ウイルスかを確認してから、細菌なら投与する抗生物質を決めますが、実際は、ほとんどである大腸菌に有効な抗生物質を投与します。

悪化すると怖い尿路感染症

膀胱炎のみの感染では発熱しませんが、菌が腎臓まで達して腎盂腎炎になると、高熱が出ます。

菌は尿道口から侵入して腎臓へと上がっていくため、腎盂腎炎は、膀胱炎と併発したり、膀胱炎悪化して腎盂腎炎になったりする場合もあります。

高熱のほか、腹痛、悪心・嘔吐、倦怠感などが見られ、新生児や乳児では、黄疸、哺乳不良、体重減少なども診断のきっかけになります。

腎臓自体に細菌感染が生じると、腎瘢痕と呼ばれる腎障害を生じることもあるため、早期診断と治療が大切です。

診断には、血液検査も用います。

腎盂腎炎は、入院して治療を行うことが多いです。

抗生物質を点滴などで投与し、解熱したら飲み薬に切り替えていき、おおよそ2週間程度で治ります。

膀胱炎から悪化することもあるため、膀胱炎の症状が見られた場合には、家庭だけで対処せずに、小児科を受診するのがベストです。

~コラム~

小児科では、発熱して受診すると、
(1)風邪(呼吸器感染症)
(2)中耳炎
(3)尿路感染症(腎盂腎炎)
の3つを疑い、症状の所見や検査を行うくらい、ポピュラーな病気です。

膀胱炎にかかった際の家庭での過ごし方と、気になる頻尿症

おなか辺りを押さえる幼児

膀胱炎の場合、病院で抗生物質が出されたのちは、基本的には家庭では普段どおりの過ごし方でかまいません。

風邪と同じように、水分をよく摂り、ゆっくりと休みましょう。

また、子どもが「トイレ行きたい」と頻繁に言っても「また?」などと言わずに、気にせず何度でも行けるようにゆったりと過ごしましょう。

清潔を保つ

とくにおむつをはいている子の場合など、どうしても蒸れなどで菌が増殖しがちです。

トイレでも前から後ろに拭くことをあらためて確認する、汚れたらシャワーで洗うなど、できる範囲で清潔を意識しましょう。

我慢させない

頻尿の症状が出ているとき、膀胱炎以外に「心因性頻尿症」という、精神的な要因やストレス・プレッシャーが原因になっている場合があります。

子どもにとって何か負担が大きいことや、がんばりすぎていることがあると考えられます。

心因性頻尿症が考えられるときは、とくに子どもにプレッシャーをかけるような言葉がけは避けて、よくがんばっていることや、つらいこと(膀胱炎で排尿痛があることなども)に寄り添い、共感することがとても大切です。

~コラム~

大人でも、尿道の短い女性のほうが膀胱炎にはかかりやすいです。
また、排尿を我慢しすぎることでも膀胱炎になることがあります。
なかなかお手洗いに立ちづらい仕事や、子育てでトイレに行けないようなことも多いでしょう。
ですが、我慢しすぎる「我慢尿」から膀胱炎になったり、悪化して腎盂腎炎を発症することもあるため、状況はさまざまかと思いますが、できるだけ我慢せず、行きたいときにトイレに立つよう心がけて過ごせるとよいですね。

この記事の監修・執筆者

兵庫医科大学小児科学特別招聘教授 服部 益治

「おねしょ卒業!プロジェクト委員会」委員長。日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医、日本夜尿症学会評議員、医療福祉センターさくら院長ほか。専門は、小児科全般、腎臓病、夜尿症、予防接種、傷害予防など。次世代を託す子どもたちに心豊かに育ってもらうために講演や執筆などで活躍。

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