近い将来に小学校入学を控えたお子さんがいらっしゃるご家庭では、「うちの子どもはどこの学区(がっく)に通うことになるのかな」と気になっているのではないでしょうか。
「幼稚園のお友だちのほとんどが違う学区に通うことになりそう」「隣の学区のほうが家から近い」など、指定の「学区」ではない小学校への入学(越境入学)を考えている保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。
今回は、そんな「越境入学」とは具体的にどういうものなのか、「越境入学」について取り上げます。
「学区」とは
“小学校入学”と一口に言っても、小学校には“公立”“国立”“私立”の3種類があり、それぞれ運営母体が異なります。いわゆる「学区」とは、公立小学校の通学で規定されているものです。
まず、はじめに“公立”“国立”“私立”小学校とはなんなのか、簡単に説明しましょう。
小学校には公立、国立、私立がある
公立小学校の運営を担うのは都道府県や市区町村で、「自宅近くの小学校に入学する」といった場合は、この公立小学校のことです。
公立小学校で使用する教科書を採択するのは、その学校がある市町村や都道府県の教育委員会であるため、学校ごとの教育内容にそれほど違いはありません。公立小学校の入学試験は不要で、学費は無料です。
国立小学校は国が運営しており、その多くは「国立大学附属」の小中一貫校。公立と同じく学費は無料ですが、入学検定や入学者選抜の抽選がある学校もあります。授業内容は大学の研究結果を反映したものなど、質の高い教育を実施している学校も多いようです。
私立小学校は、公益法人の一つで「学校を設立したい」という学校法人が運営しています。独自の工夫や教育内容が実践されている学校も多い一方、授業料などの学費は、公立や国立と比べると高い傾向があります。
国立、私立小学校ともに、教科書の採択の権限は校長にあるため、公立と比較すると教育内容に独自性があるのが特徴です。
そもそも「学区」とは何?
いわゆる「学区」とは、通学する児童が居住する住所によって決められる、通学できる範囲を分けた区域のことです。正式名称は「通学区域」ですが、一般的には「学区」と呼ばれることが多く、「校区」や「校下<か>」と呼ぶ地域もあります。
多くの場合「学区」は、“人数が偏らない”“徒歩圏内で、なるべく交通量の多い道を横断させない”“危険な道を通らせない”といったことなどに配慮して設定されています。
公立小学校へ入学するとき、各学校の「学区」を決めているのは各地方自治体の教育委員会です。どこの小学校に通うことになるかを知りたいかたは、現在居住している場所の住所から、各自治体のWebサイトや資料などで事前に確認することができるでしょう。
「越境入学」の基礎知識
自治体が指定する「学区」ではなく、他の「学区」の公立小学校に入学することを「越境入学」、通学することを「越境通学」といいます。基本的には自治体指定の「学区」に通学することになるため、「越境入学」や「越境通学」は稀なケースと言えそうです。
子どもが小学校へ入学する際、住んでいる地域により通学する学校が指定される「学区制」に対し、一部の自治体では、居住地に関わらず市区町村内の公立小学校を自由に選べる「学校選択制」を導入していることもあります。
「学校選択制」にはいくつか種類があります。「学校選択制」を取り入れている自治体では、人気のある学校は一部抽選になることもあるようです。
自由選択制
市町村内の全ての小学校から、希望する学校を選んで就学できます。
ブロック選択制
市町村内をいくつかのブロックに分け、そのブロック内の希望する学校を選んで就学できます。
隣接区域選択制
隣接する「学区」であれば、希望する学校に就学できます。
特認校制
特定の小学校について、「通学区域」に関係なく、市町村内のどこからでも就学できます。
もちろん、国立や私立の小学校に入学する場合は、自治体が定める「学区」の規定外となります。各学校の規定に従ってください。
「越境入学・通学」が許可されるのはどんなケース?
では、「越境入学」「越境通学」が認可されるのは、主にどのようなケースなのでしょうか。
1.児童の心身への配慮のため
子どもの病気やケガなどで通学への配慮が求められる「心身の障害又は疾病によるため」といった事由の場合、事由が解消するまでの期間、越境通学が認められることがあります。
また、「友人関係等の理由によるため」という事由で認められる場合もあります。ただし、この場合は「極端な人見知りで特定の友人がいないと通学できない」「いじめなどのトラブルで他の学校に通いたい」といった“特別な事情”がある場合に限り、「保育園で仲の良かったお友だちが通学するから」といった理由では受理されないことが多いようです。
このように、通学する児童の心身に配慮して、「越境入学」や「越境通学」が許可されることもあります。
2.引っ越しや転居、自治体の「学区」変更のため
「転居等に伴い、従前の通学校を希望するため」「住居の新築・増改築により一時的に学区外に転居するため、又は新築により事前に転入学を希望するため」といったように、入学・通学前に転居することがわかっている場合、「越境入学・通学」が認められることがあります。
「今は学区外に住んでいるけれど近い将来、学区内へ転入する予定がある」「卒業前に転校することが決まった」など、「学区外」の学校への入学や、転居前の学校に引き続き通学する、といったようなケースです。ただし、通学可能距離に制限を設けている自治体もあります。
また、学校の統廃合により「学区」が変更される場合や、学校が災害等で別の小学校を借りて授業をするときなどにも、「越境通学」が認められます。
3.家庭の都合のため
「兄弟姉妹一緒の学校に就学させたいため」「在学校の学校行事等に参加したいため」「就労のため、共働き等で学童保育のある学校に通学させたいため」といった場合にも、「越境通学」が許可されることがあります。
兄弟姉妹が「学区外」の学校に通学している場合、その兄弟姉妹と同じ学校に通学することが許可されるようです。保護者としては、子どもがバラバラの学校に通うよりも、同じ学校に通えるほうが安心ですし、学校行事の把握などもしやすいので負担を減らすことにつながるでしょう。
また、学校行事は思い出作りの場でもあります。在学校での最後のよい思い出を作ってもらいたいという親心もあるのではないでしょうか。
働く保護者にとっては、放課後の預かり先を確保することも重要な課題です。始業前や放課後に、実家や親族などに子どもを預かってもらう場合や、学童保育がある学校に通学させたい場合などが該当します。
4.通学距離や通学路の関係
「希望する学校が指定された学校より近いため」「事故の発生の恐れなど、通学経路に問題が生じるため」といった事由で、「越境通学」が認められることがあります。ただし、「通学路の問題」と一口にいっても、「交通量が多く危険だから」「道が暗いから」といった理由だけでなく、個別の事案ごとに検討をするようです。
「越境入学」「越境通学」の許可判断は、自治体によっても異なります。また、基準に適合した場合でも、学校等の受け入れが伴わない場合、指定校変更が認められないこともあります。「越境入学」「越境通学」を希望する場合は、事前に各自治体にしっかり問い合わせをしておき、懸念点をなくしておきましょう。
「越境入学・通学」する際の注意点
「越境入学・通学」を検討するかたは、まず申請書などの必要書類を揃えます。学校長の承諾書など、事由を証明する書類が必要になることもあります。
転校を伴う「越境通学」の場合は、通っている小学校、通学予定になっている学校に、「越境通学」を希望する旨を連絡し、転校の手続きをすることも必要です。
必要書類は、「越境入学」を希望する理由や自治体によっても変わってくるため、まずは自治体に問い合わせをしてみてください。
最後に、「越境入学・通学」を検討しているかたには、あらかじめ確認しておいていただきたい事項がいくつかあります。
1つめは「子どもの交友関係」。未就学児時代に入園していた保育園や幼稚園のお友だちとは違う小学校に通うことになることも多々あるでしょう。「うちの子は越境入学を検討したほうがいいのかな」と不安に思うかたもいるかもしれませんね。
ですが、小学校に入ると関わる児童の数はグッと増えるはず。これまでの交友関係に縛られず、多様な人間関係構築する機会と前向きにとらえて、子どもの成長を見守ってみてはどうでしょうか。
それでも、諸事情を考慮して「越境通学」を検討しているかたもいらっしゃるでしょう。「越境通学」で「学区外」の学校に通学するとなると、自宅の近所に同い年の友だちを作りにくいかもしれません。不安に思っているのはお子さんも同じ。保護者のかたは、近所の行事に参加したり、児童館に連れていったりするなど、積極的にお子さんが交友関係を広げる手伝いをしてあげてください。
2つめは「『越境入学』先の学校の様子を把握しておくこと」。校則や校風、年間行事など、学校によっても異なるもの。お子さんが楽しく通学できそうな学校か、保護者のかたはどのように学校に関わることになるのか、あらかじめ確かめておくとよいでしょう。
3つめは「通学路の確認」。先に述べたとおり、「学区」は「徒歩で安全に通学できる」ことを旨として決められているため、「学区外」への通学には、安全面での配慮が一層必要になります。
実際にランドセルを背負って通学することを想定しながら、「通学距離はどれくらいか、子どもの足で歩いて何分くらいかかるのか」「道路の危ない場所はないか」といった点を事前にチェックしておきましょう。
公共交通機関を利用する場合にも、どの駅を利用するのか、乗り方の手順など、実際に練習しておくことが必要です。事前に散歩がてら、何度かお子さんと一緒に“実体験”してみるのもよさそうですね。
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