外遊びには、子どもの育ちにたくさんの効果があることをご存じですか?
子どもの外遊びに関して研究されている、京都ノートルダム女子大学の石井浩子先生に、お話をうかがいました。
気候のよいこの時期、お子さんといっしょに外遊びすることが、さらに楽しくなるかもしれませんよ。
お話/石井浩子(京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 こども教育学科 教授)
外遊びの子どもの育ちへの効果
◆ 健康の促進
言わずもがな、まずは体にいいことがたっぷりです。
- 身体の発育
- 運動機能の発達
- 体力づくり
- 健康的な生活習慣づくり
⇒外に出てよく動くことで、適度な心地よい疲れからの早寝や、空腹感と食欲増進の効果
などが挙げられます。
◆ 情緒の解放
気持ちが外に向くので、思いを表現したり、ストレスを発散したりする効果があります。
◆ 知的な発達
一歩外に出ると、自然の光や音、生き物、植物、車や電車、人や建物など、家の中にはない刺激がたくさんあり、子どもにとってはどれもが新鮮で目新しい情報でいっぱいです。
五感から受けた刺激に親子のやりとりが加わると、知的発達の促進にさらに効果があります。
◆ 自律神経の機能がアップ
太陽の光を浴びると、交感神経の働きが活発になります。
また、四季の気温が変化する中で遊ぶことで、自律神経の機能が高まります。
◆ コミュニケーション能力の発達
近所の人との会話や友だちと遊ぶことは、コミュニケーション能力や社会性づくりに寄与します。
◆ 親子のスキンシップの機会に
体を使った遊びが多いので、自然に親子の触れ合う機会が増えます。
◆ 安全能力の向上
危険な場所やもの、交通ルール、発達の未熟な子どもにとって難しい行動など、何に気をつけて行動するか一つひとつ経験することによって、徐々に回避したり注意を向けたりする力がアップします。
親子でできる簡単外遊び
実際に、親子でできる外遊びを紹介します。
年齢はめやすですので、お子さんの発達や興味に応じて遊んでください。
0~1歳ごろから ◆ きょうは何があるかな? 観察散歩
歩く前の子はだっこやベビーカーで外に出ることから始めましょう。
まずは近所をひと周り。身近な動植物、電車、救急車・消防車を見に行くお散歩がオススメです。
歩けるようになったら、だんだんと自分で歩くことに慣れるため、少し距離を伸ばしたり、電車など子どもの好きなものを見に行ったりしてもよいでしょう。
このときに保護者が心がけたいのは、子どもに話しかけること。
「車が見えたね」「赤い電車、来たね」「チュンチュンって、鳥さんの声が聞こえるね」など、子どもが指さしたものや、保護者が見えたもの、聞こえた音をそのまま言葉にすればOKです。
1歳ごろから ◆ 1本の線から見立てて遊ぼう
公園や土がある所に行ったら、地面に1、2本の線を引きます。
線を、綱渡りの綱や橋、道路や線路に見立てて、車や電車ごっこをしましょう。
子どもの後ろから両肩に両手を置いて連結し、子どもが行こうとする所についていきます。
普段の生活ではどうしても保護者が子どもに教えたり手伝ったりする場面が多いころですが、この遊びでは、子どもの思いが赴くままに先導してもらいましょう。
2~3歳ごろから ◆ 線と丸をジャンプ!
地面に線や丸をいくつかかいたら、両足跳びやケンケンで渡っていきます。
スタートとゴールを決めてもよいです。
子どもは両足跳び、保護者はケンケンパーで競争をしても盛り上がりそうですね。
2~3歳ごろから ◆ 簡単なルールのある遊び
だるまさんがころんだ、鬼ごっこ、しっぽとりなど、ルールがかんたんな遊びにチャレンジ!
鬼ごっこは「待て待て」の遊びから発展させやすく、ルールも理解しやすいでしょう。
しっぽとりのしっぽは、家庭にあるハンカチやタオルなど、太めで絡まりづらく、カラフルなものが視認性がよいですよ。
子どものしっぽは長すぎないように、長さを調節してください。
4~5歳ごろから ◆ 足踏み競争
親子で向かい合って両手をつないだら、相手の足を踏もうとしたり、踏まれないように逃げたりして遊びます。
初めは子どもが逃げるだけにして、保護者が力加減を調節すると遊びやすいですよ。
必ず保護者も子どももスニーカーを履いてください。
4~5歳ごろから ◆ お尻たたき
向かい合って、左手で手をつなぎ、相手のお尻を右手でたたく遊びです。
- 子どもから、保護者のお尻をたたく
- 交代して、親が子どものお尻をたたく
- チャンスを見つけたら、どちらがたたいてもよい
という動きに発展させるのが◎。
知りたい! 外遊びに関するQ&A
外遊びについて、気になる疑問を、石井先生にご回答いただきました。
Q1 安全面で、子どもとの約束や気をつけたいことはあるでしょうか。
保護者が見えなくなるような場所に行って遊ばないよう、約束を。
出かけるときの格好は、子どもが着慣れた動きやすい服装、頭を守る帽子、サイズの合った靴を着用することを心がけましょう。ケガの防止につながります。
水分補給は、夏はもちろんですが、冬もこまめに気にかけることが大切です。
暑い日に公園で遊ぶ際には、鉄製やプラスチック製の遊具で火傷しないように気をつけましょう。
また、感染症が流行している時期は、できるだけ混雑するような場所を避けましょう。
体調を崩しているときは無理して出かけず、帰ったら手洗いとうがいを忘れずに。
Q2 ゲームや動画が好きで、外でもスマホを触りたがります。対策はありますか?
視界にスマホやタブレットが入ると、ゲームや動画を見たいと欲するので、外遊びの際には、子どもの目の前でスマホを使用することはできるだけ控えましょう。
しかたなく使用するときには、幼い子どもであっても、「電話がかかってきたから出るね」「パパに何時に帰るって連絡するね」などと電話や連絡をするために使うことを伝えましょう。
スマホを使う時間や場所、または外遊びから帰ったら○分ゲームしてもよいなど、あらかじめ親子で約束したりルールをつくったりするのがよいでしょう。
また、外遊びよりもゲームやスマホを触りたがるのは、そちらのほうが子どもにとって魅力的ということです。
子どもが夢中になれる遊びや興味をもっていること、長く見ているものなどを見つけてみてください。
Q3 暑い日、寒い日に外遊びは必要ですか?
子どもの成長にとって、暑い日、寒い日も、年齢や体調に合わせて、外遊びをすることは必要です。
脳(視床下部)の働きには、自律神経をコントロールし、体温調節をする機能があります。乳児のころから適度な暑さ、寒さを体験しておくことで、体温調節の機能が獲得できるのです。
1日のうちでもっとも体温の高い15~17時にしっかり体を動かすのがベストですが、暑い日はできるだけ早い朝の時間帯に、寒い日は気温が高くなるころに、外遊びに行くとよいでしょう。
暑い日は紫外線対策や熱中症予防、虫よけ対策、寒い日には防寒対策を心がけましょう。
室内との気温差が大きくなると、体温調節が未熟な乳幼児の体に負担がかかるため、汗をかいたら着替えたり、脱ぎ着しやすい服装を用意したりするとよいです。
Q4 外遊びが大好きで、公園から帰りたがりません。声のかけ方は?
公園から帰りたがらないくらい外遊びが好きなことはうれしいこと。ただ、生活リズムも幼い子ほど大事です。
まずは「お外で遊んで楽しかったね」「そうか~、まだ遊んでいたいんだね」と子どもの思いを受けとめつつ、「~したら、また来るよ」と、次に来ることを約束しましょう。
ほかに、「おうちで、ままごとしよう」と、自宅に帰ってからの遊びを提案したり、「わんわんが○○ちゃんを待っているよ」「電車が来るかな」と、帰り道に興味が湧くような言葉をかけたりしましょう。
大人にとっては繰り返される1日の流れであっても、子どもは次に公園にいつ来られるのか、また遊びに来られるのかがまだわかりませんし、自分の意志だけで来ることができません。また来ることがわかれば納得する場合もあるでしょう。
石井先生から保護者へのメッセージ
普段の生活で外遊びをしているご家庭もあると思いますが、外にいる間は家のことが進まないな…と感じるかたもいらっしゃるでしょうか。
いきなり、「毎日、お子さんと公園に行って、30分遊びましょう」と言われると、これまでの生活を変え、継続することをおっくうに思うかもしれませんね。
そんなときには、まずは今の生活の中で、お子さんと外に出る機会を考えてみてください。実は、公園に行って遊ぶ以外にも、お散歩や買い物で外に出て自転車に乗ることなども「外遊び」なのです。
その時間や距離を無理なく、少し長くなるようにすることから試してみてもよいと思います。
外遊びの時間は、確実に子どもによい影響を与えています。
また、自分は動かなくても、まずはお子さんが遊べる場所に連れていって見守る、家の周りをお子さんのペースでいっしょに歩いてみることから始めるなどして、子どもも保護者も、健康的な生活をめざしましょう!
この記事の監修・執筆者
専門は保育学、幼児教育学。子どもたちが心身ともに健やかに成長・発達していくために外あそびは必要不可欠と考え、発起した「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会」の発起人メンバー。保育園に10年間勤務。2007年より京都ノートルダム女子大学で教鞭をとる。インターナショナルすこやかキッズ支援ネットワーク コーディネーター/日本幼児体育学会 副会長・事務局長/日本食育学術会議 理事/日本レジャー・レクリエーション学会 理事/京都府幼児教育アドバイザー(2022・2023年度)。著書に『手あそび・ゲーム・体操 ふれあいあそび大集合』(ひかりのくに)など。
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