毎日の食事は子どもの体の基礎を作るものだから、できるだけ栄養バランスが整ったものにしたい。
だけど…「うちのごはんってちゃんとバランスがとれてる?」と不安に思っているママパパも多いのではないでしょうか。
今回は管理栄養士の牧野先生に、子どもの食事に不足しがちな栄養素について解説していただきました。
お話・監修:牧野 直子(管理栄養士)
イラスト:ムーコ
栄養バランスを整えるには~主食・主菜・副菜を意識して!
子どもの成長に欠かせない五大栄養素「炭水化物(糖質・食物繊維)」「脂質」「タンパク質」「ビタミン」「ミネラル」…これらをバランスよくとることが「栄養バランスを整える」ことになります。
でも、それぞれの食材をそろえたり、栄養価の計算まで考えたりなんて、献立作りからげんなりしそう。
難しく考えすぎず、まずは「主食」「主菜」「副菜」の3品をそろえるところから始めてみましょう。
出典:『「食育」ってどんないいことがあるの?』(農林水産省)https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/evidence/togo/html/part4-3.html
特に不足しがちな栄養素TOP5
過不足なくとることが大切な栄養素ですが、どうしても偏りがちになるものです。
子どもに不足しがちな栄養素として次の5種類があげられます。
- ビタミンB群(特にビタミンB1とB2)
- ビタミンC
- カルシウム
- 鉄
- 食物繊維
不足する原因は、主に偏った食事の習慣にあります。
■こんな食べ方していませんか?
- ごはんばかり、麺ばかりという炭水化物中心の食生活だと… ⇒ ビタミンB群や鉄が不足しがちに
- おかずばかり食べ、主食・副菜をとらないと… ⇒ 食物繊維が不足しがちに
- 野菜や果物を食べる習慣がないと… ⇒ ビタミンCや鉄、食物繊維が不足しがちに
- 乳製品をとる習慣がないと…⇒カルシウムなどが不足しがちに
- 朝食を食べないと⇒エネルギー不足に
家庭や子どものタイプにもよりますが、なにかに偏った食生活が、栄養素のアンバランスを生み出します。
めんどうだからといって、甘いパンと牛乳だけ、またはごはんとおかず一品だけといった食事は避けたいものです。
不足しがちな栄養素にはこんな役割がある!
栄養をエネルギーに変えちゃう魔法使い! <ビタミンB群(特にB1とB2)>
ビタミンB群は三大栄養素(タンパク質・糖質・脂質)をエネルギーに変える働きを助ける栄養素。中でも不足しがちなのがB1とB2です。
ビタミンB1
【代表的な食材】豚肉(特に赤身)、うなぎ、たらこ、紅鮭、ハムなど
【働き】
ごはんやパンの糖質をエネルギーに変える働きがあるので、甘いお菓子や菓子パンが好きなお子さんの食生活には、特に取り入れたい栄養素。体を動かす元気パワーのもとになり、疲労回復を助け、脳や神経を正常に保つ働きもあります。
【おすすめの取り入れ方】
豚肉に片栗粉をまぶしてさっと茹でると口当たりよく、食べやすくなります。
【おすすめメニュー】
「豚肉のしょうが焼き」「豚汁」「ハムサンド」「カツサンド」「紅鮭やたらこのおにぎり」
■不足すると…
脳や神経のエネルギー源となるブドウ糖不足に。
- イライラしやすい
- 疲れやすい
- 食欲不振
- 集中力、記憶力低下 など
ビタミンB2
【代表的な食材】納豆、卵、うなぎ、青魚、キノコ類、ナッツ類など
【働き】
脂質をエネルギーに変えるときに不可欠。「成長ビタミン」と呼ばれ、子どもの発育に必須な栄養素。細胞を新しく作ったり再生するときに必要で、皮膚や髪、爪のほか、口やのどの粘膜を健康に保つ働きがあります。血液サラサラの効果も。
【おすすめの取り入れ方】
- サバ缶を取り入れるのが簡単でおすすめ!
- 卵を1個、納豆を1パック、献立に加えるだけでも必要量の半分はとることができます。
【おすすめメニュー】
「サバ缶カレー」「あじの竜田揚げ」「さんまの塩焼き」「オムレツ」「目玉焼き」「キノコのホイル焼き」
■不足すると…
新しい細胞を作る力が弱まり、成長に悪影響が。
- ニキビや肌荒れ
- 口内炎・口角炎
免疫力を高める元気なチアリーダー!<ビタミンC>
【代表的な食品】柑橘系の果物、キウイ、いちご、ピーマン、ブロッコリーなど
【働き】
免疫力を高める働きが強く、かぜなど、ウイルス性の病気から体を守ってくれます。血管や筋肉、骨、皮膚を丈夫に保つうえで必要な栄養素。活性酸素を抑える働きがあり、皮膚のトラブルを防ぎ、傷ややけどの治りも早くしてくれます。
【おすすめの取り入れ方】
- 生のまま食べられる果物(特に柑橘類など)は、効率よく摂取できるのでおすすめ!
- ヨーグルトに和えると、カルシウムも同時に摂取できます。
【おすすめメニュー】
「キウイのスムージー」「いちごヨーグルト」「チンジャオロースー」「ブロッコリーのおひたし」
■不足すると…
- かぜの治りが遅くなる
- 毛細血管がもろくなり、歯茎から血が出たり、青あざができやすくなったりすることも
- ストレスと戦う力が低下
- 疲れやすくなり、忍耐力も低くなる
丈夫な骨や歯を作る、裁縫屋さん!<カルシウム>
【代表的な食品】乳製品、大豆製品、青菜類、小魚、干しエビ、煮干しなど
【働き】
丈夫な骨や歯を作るために、成長期には欠かせません。心臓や筋肉を正常に収縮させたり、血管の壁を強くしたりなど体のいろいろな場所で役に立ちます。神経を安定させる働きや、興奮や緊張をやわらげる作用もあります。
【おすすめの取り入れ方】
シチューやグラタン、パンケーキやお好み焼きなどにスキムミルクを足すと効率よく摂取することができます。
【おすすめメニュー】
「冷ややっこ」「小松菜と豆腐のみそ汁」「鮭のクリーム煮」「がんもどきと小松菜の煮物」
■不足すると…
- 骨が弱くなる
- 虫歯になりやすくなる
- 精神が不安定になりイライラしやすくなる
- 神経過敏になることも
- 長期的に不足した状態が続き、ビタミンD不足と重なると「くる病」の危険も
全身に酸素を運ぶ、運び屋さん! <鉄>
【代表的な食品】レバー、牛肉(赤身)、ラム肉、まぐろやかつおなどの赤身の魚、貝類、青菜類など
【働き】
赤血球の主成分の材料となり、全身に酸素を運ぶ役割がある。肝臓の解毒作用のサポートもし、ホルモン生成やエネルギー代謝にも関わっている。
【おすすめの取り入れ方】
- 焼き鳥のレバーを使うと、料理の幅が広がります。
- 離乳後は特に鉄が不足しやすい時期なので、意識して取り入れましょう。
【おすすめメニュー】
「レバー入りハンバーグ」「レバニラ炒め」「鉄火丼」「青菜の白和え」
■不足すると…
- 食欲がわかず、元気が出ない状態に
- 貧血
- めまい
- 集中力低下
- 体温調節機能の障害
- 免疫力の低下
- 筋力低下
- 長期的に不足すると脳の機能が低下することも
腸内環境を整えるお掃除屋さん!<食物繊維>
【代表的な食品】穀類、キノコ類、海藻類、根菜類、アボカドなど
【働き】
腸内環境を整える働きがあります。排便をスムーズにしたり、血糖値の上昇を緩やかにする作用、コレステロールの吸収を抑制する働きも。
【おすすめの取り入れ方】
- 毎食の主食を抜かないようにしましょう。
- 加熱調理に強いので、茹でるなどしてかさを減らすと、たくさんの量を食べることができます。
【おすすめメニュー】
「ひじきの五目煮」「根菜のきんぴら」「さつまいもの甘煮」「きのこのソテー」
■不足すると…
- 便秘
- 生活習慣病を引き起こす原因にも
- 食物繊維が足りていないと満腹感を得られにくく、肥満の要因にも
おわりに~無理せずに、できる範囲でやってみて!
不足しがちな栄養素をとる早道は、主食・主菜・副菜の3品をそろえること。
でも毎食必ず3品を手作りするのは大変ですよね。
そんなときは、具沢山のピザトーストやうどんなど、一皿で主食と主菜、副菜を兼ねた料理を作ってもよいのです。
ビビンバであればごはんにお肉とナムルがのっていて、一皿でも主食・主菜・副菜がそろっいます。冷やし中華もいいですね。
少量しか食べられないお子さんの場合は、一品で栄養バランスがとれる料理はおすすめです。
作るのが大変ならお惣菜を買ってきてもいい。便利な冷凍食品を使ってもOK。
主食・主菜・副菜の要素が、なるべくそろうように整えればいいんです。
がんばりすぎず、できるところからトライしてみてください!
この記事の監修・執筆者
まきの なおこ/管理栄養士。料理研究家。ダイエットコーディネーター。女子栄養大学在学中より、栄養指導や教育活動に携わり、保健センターや小児科での栄養相談、食生活についてのアドバイスにも定評がある。作りやすく、おいしくて元気になる料理が好評。雑誌、新聞、テレビ、料理教室や健康セミナーなどで幅広く活躍中。「スタジオ食(くう)」主宰。
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