みなさんのお子さんは、もう「音読」デビューしましたか?
小学校の国語の宿題でおなじみの「音読」ですが、
いまや、幼児期から音読にチャレンジするご家庭も増えているのだとか。
「絵本の読み聞かせのとき、短いセリフ部分は子どもに読んでもらう」
「4歳の娘が、弟に読み聞かせをしている。
文字は完全には読めないけど、大人が読んでいるのを覚えたみたい」
など、多くは「絵本の読み聞かせ」の延長で音読をスタートするそうですが…
「幼稚園で論語を音読している」
など、ハイレベルな音読にチャレンジしているお子さんも…!!
みなさん、どんな効果を期待して、音読に取り組んでいるのでしょう。
監修:篠原 菊紀(公立諏訪東京理科大学 教授)
音読に期待する効果ナンバーワンは「脳の活性化」!
3~5歳のお子さんを持つかた303人に
「幼児期の音読に期待する効果」を聞いてみたところ、
67%のかたが「脳を活性化させたい!」と回答しました。
脳のことなら、脳科学者の先生に聞くのがいちばん!! ということで、
多くの幼児教材の監修をされ、テレビでも大活躍中の篠原菊紀先生に、
脳の活動にフォーカスした「音読の効果」について聞いてきました♪
音読すると、脳のどの部分が活性化するの? どんな力が伸びる?
編集部
こんにちは、篠原先生!
単刀直入に聞きます。
音読で「脳が活性化する」って本当ですか?
篠原先生
もちろん、音読で脳の活動は高まるよ。
ただ、ひとえに「音読」といっても、
その段階ごとに、脳のどの部分が活性化するかは変わるんだ。
順を追って、見ていこう。
1.前頭前野に効く!~初めて読む文章を音読しているとき~
初めて読む文章や、難しい文章など、慣れない音読をしているとき、
脳の「前頭前野」の活動が高まります。
篠原先生の脳マメ知識
前頭前野とは
ここは、知的活動の中枢!
記憶を一時的に保持する力にも関係しているよ。
前頭前野と頭頂連合野が関わり合いながら実現する機能に
「ワーキングメモリ」というものがあります。
ワーキングメモリとは、
記憶や情報を組み合わせ、答えを導き出す機能のこと。
この力が、「学力」や「頭の良さ」に結びつくとも考えられています。
2.大脳辺縁系に効く!~読み慣れた文章を音読しているとき~
何度も読んだ文章を心地よく音読しているとき、
すなわち手慣れた音読をしているときは、
残念ながら、前頭前野の活動は、ほぼ消失してしまいます。
そのかわりに、「大脳辺縁系」の活動が高まってきます。
篠原先生の脳マメ知識
大脳辺縁系とは
気持ちや感情、快感に関わる部分だよ。
大脳辺縁系の活性は、
心を養ったり、感情表出のメカニズムを鍛えたりするのに効果的。
表現力や感情の理解力などを高めるといえるでしょう。
3.側頭頭頂接合部(角回)に効く!~内容に想いをはせて音読しているとき~
さらに段階を進み、相手の気持ちを想像したり、
文章の裏側にある世界を頭に思い浮かべながら音読しているとき、
「側頭頭頂接合部(角回)」の活動が高まります。
篠原先生の脳マメ知識
側頭頭頂接合部(角回)とは
想像力に関わる部分だよ。
この部分を損傷すると、
比喩を理解できなくなってしまうんだ。
文に書かれていることの向こう側にある、見えないものを見ようとすることは、
側頭頭頂接合部(角回)を刺激し、
想像力を鍛えるための根本活動となるでしょう。
★ここまでのまとめ
1.初めて読む文章を音読しているとき
前頭前野に効く ⇒ 頭がよくなる!
2.読み慣れた文章を音読しているとき
大脳辺縁系に効く ⇒ 表現力が育つ!
3.内容に想いをはせて音読しているとき
側頭頭頂接合部(角回)に効く ⇒ 想像力が育つ!
編集部
段階ごとに、
脳の活性化する部分や、伸びる力は変わるんですね!
でも「頭がよくなる」のは、
初めての文章を音読するときだけなのかぁ。
篠原先生
いやいや、読み慣れた文章でも、
頭のよさにつながる音読をすることは、もちろん可能だよ。
編集部
!!!!!
その方法、教えてください!!
篠原菊紀先生 直伝! 頭がよくなる音読のススメ
その1 音読の難易度をあげていく
初めて挑戦するときには脳活動が高まり、慣れるにつれて弱まっていく。
それは、どんな活動にもいえることです。
大切なのは、慣れてきたら少しずつ難しくしていくような
ステップアップモデルを、おうちのかたが用意してあげること。
ピアノも、1曲弾けるようになったら、次のより難しい曲に挑戦するし、
国語の教科書だって、どんどん文が長く、難しくなっていきますよね。
音読も、それと同じです。
たとえば…
・ひとつの文章に慣れてきたら、
「次は、もう少し速く読んでみよう」
「今度は、気持ちを込めて読んでみよう」と声かけ
・文を見ながら読む ⇒ (文を見ずに)暗唱する
・カルタなどを使って音読に取り組む場合は、
いろはカルタ ⇒ ことわざカルタ ⇒ 百人一首
など、徐々に難易度の高いアイテムにする
その2 双方向性の音読をする
アメリカのデータベース『ライジングインテリジェンス(※)』をまとめた論文は、
双方向の読み聞かせは、IQを向上させると結論づけています。
音読にも同じことが言えるでしょう。
たとえば…
・ひとつの文章の中で、
親が読む ⇒ 子どもが読む ⇒ ……
と、交互読みをくり返す。
・おはなしを音読したら、続きのストーリーを
親がつくる ⇒ 子どもがつくる ⇒ ……
と、おはなしのつくり合いっこをくり返す。
おはなしのつくり合いっこは、手元に本がなくてもできるので、
寝る前のコミュニケーションにもおすすめ!
お母さんの脳トレにもなりますよ♪
相互関係があればOKなので、
お子さんが音読したら、「わ~、すごい!」と反応してあげるだけでもかまいません。
これなら忙しいときにもできそうですね。
(※『ライジングインテリジェンス』…IQを上げるためには、幼児期にどんなことをする必要があるかを調べたデータベースのこと。)
その3 聴衆や、主人公の気持ちを想像する
親子で音読するなら、相手の気持ちを想像して、
ひとりなら、聴衆を思い浮かべたり、主人公の気持ちを想像したりしながら、
音読をしてみましょう。
そうすることで、側頭頭頂接合部(角回)の活動が高まり、
想像力を育てることは、前の章でもお話ししました。
それに加え、「相手の気持ち」を想像することは、
ワーキングメモリを鍛えることにもつながります。
単に拾い読みしているだけなのか、
それとも音読を通して、頭の中で主人公が踊っているのか、
お子さんの音読の様子を、よく見てあげましょう。
篠原菊紀先生 推薦! 脳に効く音読アイテム
基本的には、楽しく取り組めるものであれば、なんでもOK!
脳へのアプローチという観点では、こちらがおすすめです。
『3~4歳/5~6歳 楽しみながら脳を活性化させる おんどくれんしゅうちょう』(Gakken刊)
推薦ポイント
- 読んだ文章が、次のページで穴埋め問題や2択問題といった応用問題になっていたりと、自然にステップアップしていく構成。
消えた文を呼び起こす、というのも、ワーキングメモリを鍛えるのにうってつけ! - 物語を思い浮かべながら、ぬりえやめいろに取り組むことで、
側頭頭頂接合部(角回)の活動が高まり、想像力UP!
『3~4歳 楽しみながら脳を活性化させるおんどくれんしゅうちょう』(Gakken刊)
『5~6歳 楽しみながら脳を活性化させるおんどくれんしゅうちょう』(Gakken刊)
さいごに
いちばんは、好きになること。最初の3回は必ずほめて!
幼児期はとくに、無理にやらせるのではなく、
音読を好きになることが、なにより大切。
「読んだら、ほめる」をくり返すことで、行動と快感が結びつき、
「本を見たら、読みたくなる!」というやる気のスイッチが生まれます。
もちろんこれも、脳科学で証明されていることです。
お子さんが音読をしたら、最初の3回は必ずほめてあげましょう。
そのあとは、「ほめ慣れ」が起きるので、適当に(笑)
(厳密には、50~70%の確率でほめてあげるのが理想ですが)
気付いたときにほめてあげれば、だいたいちょうどよくなるものです(^^)
音読に限らず、何事も
おうちのかたが横にいて、こまめにほめてあげること。
それがなにより大切です。
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