【専門家に聞く】未就学児でも必ず伝えよう! インターネットの安全な使い方と危険性

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情報技術が発達し、0歳児からでもインターネットに触れられる時代。子どもたちにはどんな危険が待ち受けているのでしょうか。『一生つかえる!おまもりルールえほん ネットのぼうはん』(Gakken)の監修者・清永奈穂さんに、現在の子どもたちを取り巻くインターネット環境や、子どもたちをネットの危険から守るために必要な心構えを語っていただきました。

文/アイプランニング 野下奈生(のした・なお)

目次

乳児(0~2歳)でも子どもはこれだけネットに触れている!

東京都福祉保健財団の「2021年度子どものICT利用状況実態把握調査結果報告書」によると、0~12歳までの児童と同居する保護者877名のうち、どこの家庭も、子どもも使用できるインターネット接続の端末を1台以上所有しています。

0~2歳児でも42.4%が普段の生活の中で、ICT端末に触れています。今や、乳幼児でも簡単にICT端末を使用できる環境にあり、インターネットは日常で不可欠なものとなっているのです。

出典:東京都福祉保健財団 『2021年度助成事業 子どものICT利用状況実態把握調査結果報告書』

子どもたちは大人が思っているよりも学習スピードが速く、未就学児といえども、直感でICT端末をどう動かせばいいのかを学んでいける環境にあります。そんな環境で保護者がフィルタリング機能を端末にかけていなかった場合アダルトサイトやホラー作品、子どもたちの好きな作品を不気味にアレンジした動画などに出会ってしまうのです。

子どもたちは3歳ごろから自らの意思で積極的に端末を使えるようになります。主に写真撮影やゲームをするようになり、ゲームなどに過度の課金をしてしまう、アプリを使って自分のことを撮影し、それを第三者に送ってしまうという事例が起こっています。

13歳くらいまでは、インターネットでのやりとりだけで、良い人、悪い人の区別をすることが難しいと言われています。アプリなどで13歳未満の利用が禁止されているのは、そういった理由があるからです。

姿を見せずに忍び寄る犯罪者。狙うのは、子どもの「すき間」

ICT端末に触れる年齢が下がっていく一方、利用時間は決めていても、それ以外の細かいルールを設定している家庭は、実はさほど多くありません。細かいルールが決まっていないと、犯罪者は子どもに警戒心を持たれることなく、簡単に近づくことができてしまいます

例えば、子どもの好きなゲームのチャットなどで、大人が子どもになりすますことは簡単にできます。子どもにとっては、相手の姿が見えなくても同じゲームが好きな仲間ですし、共通の話題で盛り上がることができます。そのため、警戒心を抱かれにくいのです。夜中や昼間に長時間のやりとりができる子どもは、保護者の目が行き届いていないと容易に推測されます。

そんな子どもの“さびしい”という「心のすき間」や、大人の目が行き届いていないという「社会のすき間」を犯罪者は狙ってきます。犯罪者は親切に振る舞って少しずつ子どもに接近し、子ども自身の写真を送らせたり、直接会うことを求めたりするのです。

利用時間だけではダメ! トラブルを防ぐために「具体的なルール」を決める

そういったインターネットの危険を避けるにはどうすればよいのでしょうか。

先述したとおり、「具体的なルールを決めること」です。利用時間はもちろんですが、「写真を撮影するときは、場所がわからないようにする」「肌が出ている写真は自分のものも他人のものも撮らない、送らない」「お友だちの悪口や個人情報を、インターネットに書きこまない」……などです。

ルールを決めるときは、頭ごなしに「ダメ」と言うのではなく、きちんと理由を説明し、なぜダメなのかを親子で話しあうとよいでしょう。具体的なルールは、下の図の合言葉「おこのみやきそうす」「はちみつじまん」を参考にしてください。年齢が上がるとインターネットの世界も広がっていきますので、定期的にルールを見直すことも重要です。

 ご家庭でルールを決めていても、ルールを決めていないお友だちの家でフィルタリングされていない映像を見てしまうなど、自分の家ではダメなことに触れてしまう場合もあります。こういったときは、保護者同士で連絡を取り合い、共通の約束をつくっていきましょうさらに言うと、ご家庭で約束ごとを細かくしっかりと決めていたとしても、トラブルが起こる可能性はあります。そのときに相談できる環境を、普段からつくっておくことも大切です。お子さんに「あなたの味方であること」を日頃から伝えましょう。

出典:NPO法人体験型安全教育支援機構こんなときどうする?インターネットのあんぜんあいことば「おこのみやきそうす」指導用冊子』
出典:NPO法人体験型安全教育支援機構『あんぜん紙芝居 -インターネット編- 解説書

「加害者」にならないために! ネットは一生消えない可能性を伝える

子どもたちの中には、危険性を理解しないまま、インターネットを介して悪ふざけをする子がいます。少し極端な例ですが、クラスメイトの着替えを撮影した写真が第三者によってSNSに投稿されてしまうという事例がありました。児童間で画像データをグループ内のチャットで共有後、その画像がなんらかの形で漏えいして、第三者にわたってしまったのです。

こういった子どもの写真を投稿するという行為は言語道断ですが、中には「学校の掲示板のようなクローズドな場であれば、ちょっとした写真や日常会話であれば大丈夫だろう」と考える親御さんや先生もいらっしゃいます。しかし、よく考えてみてください。いくらクローズドであってもインターネットに接続している以上、漏えいする可能性はありますし、となりからICT端末を盗み見られる可能性もあります。家族だけのグループでも、インターネットにつながっている時点で100%安全ということはありません

一度インターネットに出した情報は、①世界中の誰でも見られる ②消えずに一生残る ③拡散・加工される(+売買されることも)といった可能性があることを、保護者の方ご自身が肝に銘じてください。

2023年7月には、日本国内で「性的姿態等撮影罪(撮影罪)」(体の性的な部位や下着などを相手の同意なく撮影したり、盗撮したりする罪)が施行され、盗撮をはじめ性的姿態等の撮影行為が厳罰化されました。13歳未満の人の性的姿態等を撮影した場合、年齢差にかかわらず盗撮罪が成立するようになったのです。さらに、撮影罪を犯して撮影された画像を提供する行為や、提供のために保管する行為も処罰の対象となりました。

こうした法律の存在を子どもたちにも伝えて、決してやってはいけないことだと子どもが認識できるように、サポートしましょう。また、情報機器やSNSを相手の尊厳を傷つけることに用いてはいけないという基本的なルールを小さいころから体得させることが必要です。

泣き寝入りしない! あきらめない! 信頼できる相談場所を複数おさえておく

実際にインターネットでトラブルに遭ったとき、警察やこども家庭庁など、相談先はいくつも存在します。いざというときにあわてずに済むよう、お子さんが被害に遭われる前に相談窓口を調べておくとよいでしょう

盗撮の被害に遭った場合は「110番」のほか、「警察相談ダイヤル」「24時間子供SOSダイヤル」など、誹謗中傷された場合は「違法・有害情報センター」「こどもの人権110番」などがあります。

ここで大事なのは、あきらめないことです。仮にひとつの相談先に電話したときに「手遅れです」と言われてしまっても絶対にあきらめてはいけません。大切なお子さんの生涯に関わる大事なことですから、「まだ間に合う!」という一縷の望みを信じて、いろんな相談先に電話をかけ続けてみましょう!

そして、これも大変なことではありますが、子どもの尊厳を守るために声を上げ続けてほしいです。そういったひとつひとつの行動が、誹謗中傷をなくす手段でもあるので、泣き寝入りは絶対にしないでください。

ネットの被害から身を守るために、親子で考え、学びましょう

春休み・夏休み・年末年始などの長期休みになると、子どもを狙った犯罪が増える傾向にあり、ネット犯罪も増加傾向にあります。また、子どもたちがインターネットに触れられる時間も増えます。時間があるからこそ、「直接会おう」と声をかけられたときに動けてしまい、被害に遭う可能性が高くなるのです。また、年齢が上がって初めてICT端末を持ち、まだ慣れていないところを狙った犯罪者も出てきます。

年齢が上がれば、交友関係が広がります。だからこそ、保護者の方は、お子さんとインターネットの使い方について話しあい、具体的なルールを決める必要があるのです。

また、保護者の方もお手本として、安全なインターネットの使い方について考え、学び、守っていく必要があります。「お母さん、お父さんも守るから、あなたも守ってね」と言えば、子どもたちは聞いてくれます。そして、読書やボードゲーム、運動など、インターネットから離れられる趣味を親子で持てると、よりよい生活が送れるでしょう。

ICT端末やインターネット接続機器はとても便利で、もはや人々にとって手放せないものです。危険性などを学んだうえで適切に使用すれば、言葉の壁や障害を越えて人とつながれるツールにもなりえます。子どもたちが世の中をよくする方向でインターネットに接することができるよう、ぜひ、保護者の方も一緒に学んでいただけたらと思います。

今回は触れられませんでしたが、AI(人工知能)と子どもたちとの付きあい方も今後、議論の余地があります。AIは医療や災害救助などに使われたり、子どもでもアプリが作れたりと便利な一方で、悪用する人がいるのはインターネットと同じです。インターネットやAIの有用性や安全性を確かなものにするのが、今、社会に求められているのだと思います。

この記事の監修・執筆者

NPO体験型安全教育支援機構代表理事。博士(教育学) 清永奈穂(きよなが・なほ)

非行やいじめ、犯罪、災害などについて研究。自分自身で命を守る力を養うために「自分で考え、自分で判断し、動いてみる」という体験型の学び・教育を推進。全国の自治体や保育・教育施設などで安全教育を行っている。『一生つかえる!おまもりルールえほん ネットのぼうはん』(Gakken)が発売中。

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