【STEAM教育】最近よく聞く、「STEAM教育」ってなに?

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「STEAM教育」という言葉を耳にしたことがありますか。 「STEAM教育」とは、教科の枠にとらわれず、総合的に学習することです。
IT化やグローバル化、AI(人工知能)やロボットの普及など、社会が急激に変化しています。それにともない世の中で求められる人材も変化し、教育の現場にも影響が及んでいます。
そこで、「STEAM教育」とはどんなものなのか、これからの時代を生きる子どもたちはどのような能力が必要で、「STEAM教育」によってどのような力が身につくのかについてお話しします。

文/マムズラボ

目次

「STEAM教育」とは?

「STEAM」。それはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語で、「スティーム」と読みます。「自分で考えて学ぶ力」を養成することが目的で、自分の力で創造する力を育むことをいいます。

「STEAM教育」は、教師が黒板の前に立って一方通行型で話し、児童・生徒は与えられた問題を解いて、答えて、暗記するといったこれまでの受け身の学習スタイルではありません。自発的に問題を見つけ、学習する主体性と対話性が重要視されたアクティブラーニング(能動的学習)です。

技術革新により、人間が行ってきた作業を機械やコンピューターで行うようになりました。しかし「考える」という行為は人間にしかできません。自分で問題を提起し、検証、挑戦と失敗と成功を繰り返して、1つの課題に対して解決していくことこそ、人間独自の能力です。「STEAM教育」は、このような論理的思考力、問題解決能力を養うことを目的としています。

「STEAM教育」のメリット

「STEAM教育」には、どのような効果があるのでしょうか?

「STEAM教育」を行うことで、理数系に苦手意識をもつことなく、子どもの興味や関心を高めることができると考えられています。これからの世の中でIT化がますます進むことは明らかです。数学や工学といった理系分野の需要がますます高まるでしょう。「理数系は難しそう」と苦手意識をもつ子も多いですが、本質的に必要なのは、機械的に公式へ数字を当てはめて計算したり図形を覚えたりする学習ではなく、観察眼です。単に答えを導き出すのではなく、仲間と一緒に考え、自発的に調べて問題を解決することが求められているのです。

もともと「STEAM教育」は、「A」がない「STEM(ステム)教育」でしたが、あとから「Art(s)(芸術・リベラルアーツ)が加わりました。研究開発には理数系の強さで十分と考えられていましたが、実は発想力や想像力、そしてその考えを表現して形にして伝える力がなければ、せっかくの知識や技術も活かされないと考えられるようになったためです。自由な発想力や想像力を養う「Art」が揃うことで、AIには不可能な「人間にしかできない」力が発揮されるのです。

またこれまでの教育は、模範解答があり、答えは1つでした。しかし社会に出ると答えは必ずしも1つではないことが多いものです。「STEAM教育」では、自らが疑問や問題を見つけて解消する解決能力だけでなく、相手の意見も認め受け止める協調性も学びます。こうしたバランスの取れた能力育成こそが次世代で活躍できる人材を生むことにつながると考えられています。

日本の「STEAM教育」の現状

海外に比べたら遅れをとっている日本の「STEAM教育」ですが、少しずつ計画や取り組みが始まっています。

〇SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の設立
2002年度より、文部科学省の制度で、先進的な理数教育を積極的に行う高校や中高一貫校を「スーパーサイエンススクール」に指定しています。SSHの学校は、大学や研究機関、民間企業と共同研究をするなどの連携を行うことで、主体的な学びを体験し、創造性豊かな人材育成が行われています。

〇プログラミング教育の必修化
2020年度、小学校から順次プログラミング授業が必修となりました。「自分が意図する動きを実現するためには、どのような動きの組み合わせが必要か」「どのような課題を解決したらよいか」などについて論理的に考える思考能力を育むことを教育のねらいとしています。

〇GIGAスクール構想
2019年、文部科学省は、1人1台にパソコンかタブレット端末を用意し、1人1人確実に資質や能力を育成していくGIGAスクール構想を新しい教育施策として発表しました。プログラミング学習にも必要とされ、最初は整備に時間がかかっていましたが、新型コロナウィルスの感染拡大による休校などを経て、一気に整備がスピードアップ。現在では小中学生は1人1台のタブレットを持ち、授業内で使用するだけでなく、子どもたちが自宅でオンライン授業を受けることができるほどに進んでいます。

家庭でできる「STEAM教育」

では家庭内で「STEAM教育」を実践する方法はないのでしょうか? 具体例をご紹介します。

〇砂場遊び
砂場などで五感を使って遊んでいると、自然と「川を作りたい」「穴をあけたい」などいろいろな遊びが浮かんできます。また、土のこと、水のことなども五感を通じて体験的に理解するようになります。砂場は大きなSTEAMの遊び場の1つなのです。

〇ブロックや積み木遊び
ブロックや積み木などは指先を使いながら遊ぶので、幼児期から脳を活性化させやすい人気のアイテム。数や形の不思議に自然と出会うことができます。また、砂場同様作りたいものが自然に思い浮かびやすいのも素敵な特徴。「STEAM教育」の要素がつまった遊びができ、記憶力や思考力、空間認知能力などさまざまな力を育むことができます。また思い通りに作れなかった場合、それはどうしてできなかったのか、原因を追求し、作り直すという課題解決能力も身につきます。ブロックは大人でもハマる人も多く、小さいものから大きいものまでさまざまな種類があるため、親子で楽しむことができます。

〇料理
料理は、あらかじめ食材や調味料をそろえて、手順やバランスを考えながら行います。これは、構成力と論理的思考が重要になり、まさに「STEAM教育」で求められる要素がそろっています。
熱する、冷ます、沸騰、乳化など、まるで実験のような作業は科学も化学も関わってきます。また料理が完成するまでに、食材を切る、混ぜる、焼く、こねる、器に盛りつけるなどいくつもの工程があり、創造力がかきたてられます。粘り気を出したり、香りを良くしたり、測ったり手順を効率化したり・・・五感と脳と身体を使った「STEAM教育」です。

他にも折り紙やあやとり、花びらを潰して色を出す、秘密基地を作る、なども素敵な「STEAM教育」ですね。そもそも「STEAM教育」の基本は、興味をもったことはどんなことでも探究する好奇心です。子どもが自分で発見したり発明したりしたことを自由にトコトン取り組む「自発性」が大事です。

「STEAM教育」の5つのカテゴリーを聞くと難しく感じるかもしれませんが、実は日常の生活で生まれる疑問や興味を大切にして、探求していくことがまさに「STEAM教育」なのです。ぜひ普段の遊びの中に取り入れ、親子のコミュニケーションに取り入れてみてください。

この記事の監修・執筆者

音楽家・数学研究者・STEAM 教育者 中島 さち子

(株)steAm 代表取締役、(一社)steAmBAND代表理事、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー、内閣府STEM Girls Ambassador、東京大学大学院数理科学研究科特任研究員。国際数学オリンピック金メダリスト。音楽数学教育と共にアート&テクノロジーの研究も進める。

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