【小説家の先生に聞いた】親が子どもの作文を見るときに大切なこと

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子どもに「作文の書き方を教えて!」と言われても、算数の公式のように答えがひとつではないのが作文。どんなふうに教えたらいいのかわからない…というママパパは多いのではないでしょうか。特に、文章の書き方を習ったばかりの小学1年生にとっては、どのように書き進めたらよいのか悩んでしまうことが多いはず。
そこで今回は、『わが子に教える作文教室』の著者であり、数多くの小説を手がけ、小学生の作文教室も開かれていた清水義範先生に、子どもの作文を見るときに大切なことを詳しくお聞きしました。

お話/小説家 清水義範

目次

自分の素直な気持ちを自由に書けているのが“いい作文”

「イイ子作文」の枠を取り払って

実は、子どもって、大人が気に入るような作文、つまり「イイ子作文」を書かなきゃいけないと思ってしまっているもの。

だから、作文に書こうとしている出来事が、たとえ本当はつまらなかったとしても、「楽しかったです」「よかったです」と、ついつい当たり障りのない表現を選んでしまう子が多いのです。でも、それはいい作文とは言えません。

作文には、どんなことを書いてもいいのですから、「自分のそのときの本当の気持ちを、ありのまま書けているか」ということが何よりもいちばん大切。

ですから、作文のテクニックを使うことよりもずっと、注意を向けるべきは、“お子さんは、思うとおりに自由に書くことができているか?”ということ。

「つまらなかったら、つまらなかったって書いていいんだよ」というように、まずは「イイ子作文」の枠を取り払って、使っていいことばの範囲をもっともっと広げてあげる関わりがしたいですね。

子どもの作文を見るときに、大切にしたい3つのこと

《その1》たっぷりほめて

まずは、しっかりと子どもの作文を読んで、たくさんほめてあげましょう。
ポイントは、いろいろな言い方で、よかったところを伝えること。
たとえば、

「こんな難しい言い方をよく知っていたね」
「題名がおもしろいね!」
「こんなに長く書けたんだね」
「テンやマルの使い方が、ちゃんとできているね」
「最後のまとめ方がうまいね」

のように、同じ言い方はできるだけ避けてたくさん伝えてください。

作文はたくさん書いてこそ、作文力やボキャブラリーが増えていきます。しかし、作文をたくさん書くためには、書くのが「おもしろいから」「楽しいから」と思えなければいけません。

大人がたくさんほめてあげれば、書くのが楽しくなってきて、いろいろなことばを使ってみよう、この間覚えた新しいことばを使って驚かせてやろう、と思うようになってくるはずです。

《その2》内容で評価はしないで

子どもの作文を読むときに、内容で作文の良し悪しを決めてはいけません。
たとえば、

―きょうだいで仲良く遊んだ。

という作文は、仲良くできたからいい作文だ。

―きょうだいとけんかをして腹が立った。

という作文は、けんかはよくないことだからダメな作文だ。

このように評価をしてしまうと、大人に気に入られるために取り繕った作文しか書けなくなってしまいます。子どもは、案外大人の顔色を気にしていますから、大人が認めてくれるとホッとするもの。

ですから、「けんかをして腹が立った」という作文にも、「その気持ち、わかるよ」と言ってあげられる関わり方をしたいですね。

《その3》ほめたあとに、少しだけ「深める質問」を

7割ほめたら、残りの3割は「作文を深める質問」をして、より相手に伝わりやすくしていきましょう。
たとえば、

「ここのところを詳しく教えて」
「ここは意味が通じてないかも」
「ここはどうしてそう思ったのかわかりにくいな」
「ここにもう少し説明を加えてみたらどうかな」

という具合です。ただし気をつけたいのが、マイナスなことを指摘してしまうこと。

「我が家の恥が書いてあるからやめなさい」
「恥ずかしいからそんなことを書くのはダメ!」

と言って、書いてはいけないことを作ってしまうと、子どもは萎縮してしまうものです。適切なところで、「ここは非常にいいところをついているね」「これは的が外れているね」としっかりと評価してあげましょう。

作文力アップのためにこんな方法もオススメ!

作文が苦手、文を書くのが嫌い…。
そんな子には、友だちの作文に触れる機会を

ほかの子が書いた文を読ませることは、ひとつの手です。

うまく書ける子の作文を読むと、あんな技があるのか、こんな表現の仕方もしていいんだ、というように、子どもは子どもからいい影響を受けます。大人が書いた名文ではなく、同年代の子が書いた作文がより効果的です。

すると、「下手だなあ」と思うかもしれませんし、「自分よりも上手だなあ」「こんなふうに書いてみたいな」と思うかもしれません。そのときが、上達につながっていくチャンスです。

ですから、人が書いたものをよく読むということも、作文を書くことにとって、とても重要なことであると言えますよ。きょうだいがいれば、読み合いっこをしてもよいですし、書店で売っている作品集を読んでみる方法もあるかもしれませんね。

「しりとり」はボキャブラリーアップに効果的!

日ごろから、遊び感覚でいろいろなことばに触れさせてあげることが、作文力を高めることにつながっていきます。それには、「しりとり」がオススメです。

ただ、子どもに遠慮して、子どもがわかる範囲で、“子ども用のことば”でしりとりをしてしまうと、子どもの語い力は伸びていきません。ですから、子どもがそのときに初めて聞くようなことばでもかまわずに、大人でも使うようなことばを平気で使うのがポイント。

―たとえば、親子でしりとりをしていて、お父さんが「じ」のときにいつも「ジブラルタル海峡」と言うとします。

子どもはそれを聞くたびに「それは何ものなんだろう」と繰り返し疑問に思います。

そして、いつかまたそのことばに出会って意味を知ったとき、お父さんがいつも「じ」のときに言う「ジブラルタル海峡」は、ここにあって、こういうものだったのか! と、ついにことばは子どものなかに吸収されていくのです。

だから、あえて難しいことばも使って、遊び感覚でいろいろなことばに触れることは、日ごろからとても大切であるといえるでしょう。

清水先生からのメッセージ

余計なテクニックを使わずに、ストレートに思いを書けるのが子どもの作文のよさだと思っています。

まずは、遊び感覚で、楽しみながら取り組むことがいちばん大切。

そのために、たくさんほめ、自分の気持ちをのびのびと表現できるように声かけをしていきたいですね。ぜひ、子どもといっしょに楽しんで取り組んでみてください。

この記事の監修・執筆者

小説家 清水義範

愛知教育大学国語科卒業。1981年に『昭和御前試合』で文壇デビュー。1986年に発表した『蕎麦ときしめん』で独自のパスティーシュ文学を確立する。1988年、『国語入試問題必勝法』で吉川英治文学新人賞を受賞。2009年には、中日文化賞を受賞。そのほか、『世界文学必勝法』『迷宮』『夫婦で行くイスラムの国々』『心を操る文章術』『老老戦記』『日本の異界 名古屋』などの著書が多数ある。

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