特に親子の間でありがちなのが、次のような例です。
子 「あ~あ、…」
親 「どうしたの? ため息なんかついて」
子 「あのね、今日学校で、隣のゆう君が私にボケって言ってきたの」
親 「え、そうなの? それはイヤだね」
子 「そうだよ。帰りにもブスって言ってきたんだよ」
親 「それも頭にくるね。でもね、そういう子ってどこにもいるよね。ママが子どもの頃もいたよ。まさ君ていうんだけどね。いつも、ママに『バーカ、バーカ』って言ってきたんだよ。自分の方がバカのくせにさ」
子 「そうなの? ママもイヤな思いしたんだね」
親 「そう、そう。思い出した。聞いてよ。給食のとき牛乳を飲もうとするとそのまさ君がいつも変な顔してきて、とてもじゃないけど飲めないの。無理に飲もうとして吹き出しちゃったこともあったなあ。それで先生に言いに行ったら、また『つげ口するなバーカ』って言ってきて、『こんなやつ大嫌い』って思ったけど、その後も4年間ずっと同じクラスでさあ、本当にイヤだったわ」
子 「ママも大変だったね」
親 「しかも、隣の席になることがよくあって、本当にこういうのを腐れ縁っていうのかな。中学になったら何と同じ部活になっちゃって、『え~、こいつ同じクラブ? やめようかな』って思ったよ」
子 「部活も同じじゃイヤだよね」
親 「ところがね。部活で一緒に練習してたら、いろいろ親切にしてくれることもあって、重い物を持ってくれたりとか…。もともと面白いやつだったし、そんなにイヤじゃなくなってきたの。あれって、不思議だなあ」
子 「ふ~ん、そうなの…」
親 「あいつ、今どうしてるかな?懐かしいなあ」
子 「…」
親 「さあ、元気出して。夕ご飯食べよう!」
子 「…」
親の方はたっぷりしゃべって気持ちがすっきりしたかも知れません。
でも、子どもの方はどうでしょう?
親に聞いて欲しかったことがたくさんあったはずですが、ほとんど何も言えませんでした。
これでは、子どもはストレスを溜め込んでしまいます。
このように、親がたくさんしゃべって子どもが聞き役になっているというケースはけっこうあります。
このようなケースの場合、親は子どもとコミュニケーションが取れていると考えている可能性が高いです。
なぜなら、自分はたっぷりしゃべって、子どもがよく聞いてくれているからです。
みなさんの家庭はどうですか?
ぜひ、一度振り返ってみてください。
ちなみに、これは親子関係だけでなく、夫婦、友人、職場の同僚、上司と部下など、人間関係のあるところではどこにおいてもこういうことが起こり得ます。
特定の人だけがたくさん話して、何も話せずにいる人はいませんか?
話せている人は「コミュニケーションが取れている」と思い込んでいます。
でも、他の人はそう思っていないかも知れません。
もっと自分の話も聞いて欲しいと思っている人がいるかも知れません。
そういう人がいたら、上手に水を向けてあげて、話を引き出してあげてください。