お子さんに「カブトムシを飼いたい」とせがまれたものの、「何を用意すればいいのかわからない」「ちゃんと世話できるか自信がない」と、飼い始める一歩を踏み出せずにいませんか。カブトムシの飼育はそれほど難しくなく、いくつかのポイントさえ押さえれば初心者でも育てられます。
この記事では、カブトムシの飼育に必要な物、長生きさせる環境作りのコツなど、飼い方の基礎知識を紹介します。カブトムシの一生がより深く理解できる繁殖方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
文/ハイドジア
飼育グッズをそろえてカブトムシの「おうち」を作ろう

カブトムシが快適に過ごせる「おうち」を作るには、飼育ケース・昆虫マット・霧吹き・足場・昆虫ゼリー・エサ台の6つが必要です。
昆虫といえど、好ましくない環境での生活はストレスがたまってしまいます。カブトムシがのびのびと暮らせるよう、理想のマイホームを作ってあげましょう。
初めてなら日本のヤマトカブトムシがおすすめ
カブトムシは世界中に1,000〜1,600種類、そのうち日本には大きく6〜7種類生息しているといわれています。初めてカブトムシを飼う、飼育にまだ慣れていないという場合は、日本の気候に適している「ヤマトカブトムシ」がおすすめです。
ヘラクレスオオカブトやアトラスオオカブトといった外国産のカブトムシは、見た目が良くても性格が荒々しい傾向にあります。
また、生息地の気候が日本と違うことから温度管理が難しく、短命になってしまうこともあるため、外国産カブトムシの飼育は日本のカブトムシに慣れてからにしましょう。
飼育ケースは通気性が良く大きめの物を選ぶ
カブトムシが元気に動き回るには、ゆとりのある空間が欠かせません。狭い容器では自慢の角をぶつけたり、転倒したときに起き上がれず体力を激しく消耗したりするため、オス1匹なら幅15cmから20cm、2〜3匹なら幅30cm以上を目安に飼育ケースを選びましょう。
心地よい環境作りのポイントは、空気の通り道と清潔さの両立にあります。
- 通気口が細かく設計された「コバエ防止機能付き」の製品を選ぶ
- フタと本体の間に不織布や専用シートを挟んで乾燥を防ぐ
- 2匹以上を入れるときは仕切り板を使い、ケンカを未然に防ぐ
コバエの侵入はカブトムシに良くないだけでなく、人にとっても不快です。最近はフィルターを使わなくても虫の出入りをシャットアウトできる、高機能なフタを備えたケースも増えています。仕切り板をうまく使えば、1つの容器で複数の個体を安全に飼育できますよ。
昆虫マット・霧吹き・足場で居住スペースを仕上げる
昆虫マットは木くずを粉状にした床材のことで、カブトムシだけでなくクワガタの飼育にも使われます。カブトムシにとって昆虫マットは心地よいベッドであり、湿度を保つためになくてはならない物です。
袋から出したばかりのマットは、発酵による熱やガスがこもっている場合があるため、新聞紙などの上に広げて半日ほど「ガス抜き」をしましょう。
準備ができたら、霧吹きで以下の目安を参考に水を加えましょう。
- 手でギュッと握ったときに、崩れず団子状の形が残る
- 握った指の間から、水が染み出さない程度のしっとり感がある
- 成虫が潜って休めるように5〜10cmの深さまで敷き詰める
マットの表面には、マットが見えなくなるくらい朽ち木や落ち葉を敷き詰めてあげましょう。カブトムシは自力で起き上がるのが上手ではないため、足を引っかける場所がないとひっくり返ったままもがき続けます。
個体によっては数十分で体力を使い果たし、そのまま死んでしまうこともあります。
栄養があって管理しやすい昆虫ゼリーとエサ台
カブトムシの食事には、栄養バランスに優れた昆虫ゼリーがおすすめです。中でも「高タンパク」と表記されたものは、産卵を控えたメスや、元気に動き回るオスの体力を支えてくれます。
カップを置くだけで交換できるため、毎日忙しい方でも無理なく管理できますよ。
エサ台は、エサを置く場所ではなく足場の役目も果たしてくれます。飼育スタイルに合わせて、次の2種類から選んでみましょう。
- 天然木タイプ:自然に近い環境を再現でき、カブトムシが下に潜り込んで隠れ場としても活用します
- 樹脂・プラスチックタイプ:汚れを水洗いで簡単に落とせるため、カビや臭いを抑えて清潔に保てます
カブトムシを長生きさせる飼育環境作りのコツ

カブトムシに少しでも長く生きてもらうには、野山の涼しさを再現した温度・湿度・遮光の管理が欠かせません。理想の環境は室温20〜28℃、直射日光が当たらない暗い場所です。ここからは、カブトムシが快適に暮らせる環境作りのコツを紹介します。
直射日光が当たらないエアコンの効いた部屋で飼育する
カブトムシは暑さに強いイメージがあるかもしれませんが、実は熱がこもる環境が苦手です。近年の日本の夏は、30℃を超えない日がないほど気温が高くなるため、室内でも対策をしないとすぐに弱ってしまいます。
元気な状態を保つために、エアコンを使って室温が20〜28℃になるよう調整し、飼育ケースを以下のような場所に置きましょう。
- 直射日光の当たらない場所や日陰
- エアコンの冷風が直接当たらない場所
- 安定した棚の上など振動が少ない場所
窓際は太陽の光でケース内の温度が急上昇し、蒸し風呂のような状態になるため避けましょう。また、エアコンの風が直撃すると昆虫マットが乾燥し、カブトムシの体に負担がかかります。
カブトムシは夜行性のため、夜間に「キュウキュウ」と鳴くような音を立てたり、活発に動き回ったりします。寝室に飼育ケースを置くと物音で眠れなくなる可能性があるため、リビングや玄関など就寝スペースから離れた場所に置くのがおすすめです。
昆虫マットの湿度を保ち乾燥を防ぐ
カブトムシが快適に過ごすには、森の土のような「しっとり感」が欠かせません。ケースを開けたときに、マットの表面が白っぽくパサついていたら乾燥のサインです。朝と晩の2回、土の状態をチェックする習慣をつけましょう。乾いていると感じたら、霧吹きを使って表面全体を湿らせます。
湿らせるときの目安は、握ると団子状になり、すぐに崩れない硬さです。水が滴るほど濡らすと昆虫マットが腐敗し、酸っぱい臭いを放つようになります。また、湿気が多いとダニやコバエが繁殖し、不衛生な環境になってしまいます。
オスの複数飼育は避ける
カブトムシのオスを同じケースで複数飼うことは避けましょう。オス同士をいっしょに入れると、エサ場やなわばりをめぐって激しいケンカを始めてしまいます。自慢の角は自分を守る武器ですが、相手を傷つける凶器にもなります。体に穴が開いたり足が取れたりすれば、寿命を大きく縮める原因となります。
カブトムシにストレスを与えず、長生きさせるための具体的なルールです。
- 基本は「1つのケースに1匹」で飼育する
- 繁殖させたいときだけ、オス1匹とメス1匹のペアを同居させる
- 複数を管理する場合は、仕切り板のある飼育容器を使用する
狭いケース内では負けたオスが逃げ出す場所がなく、常に緊張状態で過ごすことになります。元気のないカブトムシを見ると、お子さんだけでなくママパパさんも悲しい気持ちになってしまいますよね。
ゆったりとした環境で過ごす姿を観察するほうが、生き物への愛着もより深まるのではないでしょうか。
卵から幼虫、そして成虫へ|命のサイクルを見守ろう

カブトムシを卵から育てる醍醐味は、成虫の姿からは想像もできない劇的な変化を間近で見られる点にあります。
命がめぐるサイクルを体験することは、お子さんにとって一生ものの学びになるはずです。夏休みの自由研究のテーマとしてもぴったりなので、ここから詳しい育て方を紹介します。
カブトムシの卵はおよそ10日でふ化します。幼虫の期間は7〜10か月、サナギの期間は3週間〜1か月です。成虫の寿命は2〜3か月ほどといわれています。
産卵に適した環境を整える
カブトムシの繁殖期は7月〜8月です。深めの飼育ケースに腐葉土をたっぷり敷き詰め、霧吹きで湿り気を与えましょう。
飼育ケースにオスとメスを1匹ずつ入れ、エサ台や足場を用意してペアリングを促します。産卵後はマットを掘り返さず、乾燥しないよう静かに見守ってくださいね。
夏の終わりにペアを入れた飼育ケースを確認してみましょう。メスがマットに産み付けた小さな白い卵が見つかれば、新しい命の誕生です。
卵は衝撃に弱いため、むやみに触らず、適度な湿気を保ちそっとしてあげましょう。
幼虫のおうちを作り、エサを用意する
卵がふ化したのを確認したら、幼虫のおうちを作ります。飼育ケースの底に、昆虫マットや腐葉土を10cm以上の深さまでたっぷり敷き詰めましょう。
昆虫マットには種類があるため、必ず「幼虫用」または「成虫・幼虫兼用」と書かれた物を選んでください。成虫専用マットでは栄養が足りず、幼虫が大きく育ちません。
ふ化した幼虫は、土の栄養を吸収して驚くほどの速さで大きくなります。カブトムシの幼虫は、1匹ずつ別の容器で育てる「単頭飼育」が基本です。
飼育ケースをたくさん用意するのが難しいときは、飲み終えた2リットルのペットボトルを再利用してみましょう。
- ペットボトルの上部を切り、中にマットと幼虫を1匹入れる
- 切り口にはコバエの侵入を防ぐ不織布をかぶせ、輪ゴムで固定する
- 直射日光が当たらず、温度変化が少ない玄関などに置く
どうしても複数匹育てたい場合は、20cmほどのケースなら3匹、衣装ケースのような大型の容器であれば20匹を目安に同居させましょう。ケンカやエサの奪い合いを避けるためにも、できるだけ単頭で飼育してくださいね。
幼虫の飼育も室内が基本です。室温は20〜25℃、湿度は60〜70%を保つようにしましょう。暖房が効きすぎる部屋に飼育ケースを置くと、冬の間に羽化してしまう場合があるため、温度管理には注意してください。
サナギの時期は振動や刺激を与えない
5月〜7月にかけて、カブトムシは幼虫からサナギへと姿を変えます。この時期は一年で最もデリケートなときです。飼育ケースには極力触れず、そっとしておくことを徹底しましょう。幼虫は土の中に「蛹室(ようしつ)」という自分専用の個室を作って過ごします。
振動でこの個室が崩れると、サナギが死んだり羽化に失敗したりする可能性があるため、無事に羽化できるよう以下のポイントを押さえておきましょう。
- ケースを移動させず、直射日光の当たらない静かな場所に置く
- 土が乾きすぎないように、霧吹きで軽く水分を補う
- 底から蛹室が見えても掘り出さない
カブトムシは、成虫になってから2週間ほど体が固まるまで蛹室の中でじっとしており、エサを食べない「後食(あとぐい)」の状態が続きます。
土から出てこないからと心配して掘り出してしまうと、かえって弱らせる原因になるため、土から顔を出すまでじっと待っていてあげましょう。
カブトムシを快適に飼育する3つのポイント

カブトムシを飼育する上で発生する不快な臭いやコバエは、マットの汚れと過剰な水分が主な原因です。飼育ケースの衛生状態を良好に保つことは、カブトムシの健康を守り、長生きさせるために欠かせません。
リビングでも心地よく観察を続けられるよう、飼育のポイントを押さえておきましょう。
マットの交換や天日干しでダニ・カビの発生を抑える
カブトムシの体に白い粉のようなダニが付いたり、マットにふわふわしたカビが生えたりすると、どうすればよいか焦ってしまいますよね。これらはケース内の高い湿度や、エサの食べ残しが原因で発生します。食べ終えたゼリーを放置せず、毎日取り除く習慣をつけましょう。
昆虫マットをすべて一度に入れ替えると、カブトムシが環境の変化に驚いてしまいます。汚れた場所だけを新しいマットに入れ替えるのが、元気に過ごしてもらうためのコツです。人間がシーツを洗って気持ちよく眠るように、カブトムシの寝床もこまめにお手入れしてあげましょう。
毎日の観察でエサ切れや転倒に気づいてあげる
「今日は元気かな」とケースをのぞき込むのは、生き物への愛情を育む大切な時間です。毎日決まった時間に観察することで、カブトムシの小さなサインに気づけるようになります。まずは、昆虫ゼリーの減り具合に注目しましょう。
一晩で空っぽになっていれば健康な証拠ですが、何日も残っているときは暑さでバテているサインかもしれません。
特に注意したいのが、カブトムシがひっくり返って起き上がれなくなる「転倒」です。平らな場所で裏返ると、もがくだけで体力を激しく消耗し、そのまま死んでしまうこともあります。定期的にカブトムシをチェックして転倒していないかを確認しましょう。
スイカを与えすぎないようにする
カブトムシと聞いて、スイカを思い浮かべるママパパさんは多いのではないでしょうか。スイカは水分の塊のような食材のため、食べすぎると消化器系に負担がかかり、排泄物が増えてしまいます。
排泄物の量が増えると飼育ケース内のマットがべたつき、カブトムシが呼吸しにくくなることもあるのです。スイカを与えること自体は問題ありませんが、与えすぎには注意しましょう。
加えて注意したいのが、夏の暑さによる腐敗です。スイカはいたみが早く、ケースの中に入れておくとすぐに酸っぱい臭いが漂います。不衛生な状態は、次のようなトラブルを引き起こすきっかけにもなりかねません。
- コバエやダニが大量に発生する
- カビが繁殖してカブトムシが弱る
- マットの交換頻度が増える
こうした事態を防ぐために、スイカを与えるときは「翌朝には必ず片付ける」ことを徹底しましょう。カブトムシが乗れる大きさのスイカを入れるのではなく、ティースプーン1杯分ほどを小さなお皿にのせてあげるのがおすすめです。
カブトムシを正しく飼育して自由研究にまとめよう

カブトムシの飼育は初心者でも挑戦しやすく、毎日の変化を記録できるため夏の自由研究にぴったりのテーマです。
ただ育てるだけでなく「長く元気に過ごしてもらうための工夫」を観察記録とセットでまとめてみましょう。
成虫を飼う場合は、通気性の良いケース選びや足場作り、昆虫マットや室温の管理、そして「オス同士を同居させないこと」などの基本ルールを写真やイラストを交えてまとめるといいですよ。
もし繁殖にも挑戦するなら、夏のペアリングからふ化後の単頭飼育までの流れをまとめると、より読み応えのある研究になります。
また、こまめなマット交換やダニ・カビ対策といったトラブルを防ぐ工夫も立派な研究成果です。
毎日の観察を通して短い一生を懸命に生きるカブトムシの姿を記録することは、お子さんにとって「命の奇跡」を肌で感じるかけがえのない体験になるはずです。ぜひ親子で楽しみながらチャレンジしてみてください。
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