【性教育は幼児期から教えるべき!?】性に関する子どもへの伝え方とオススメ絵本3冊

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自分や大切な人を慈しみ、いのちをつなぐ源となる「性教育」。けれどママパパにとって、子どもに「性」を教えることや、話題にすることは悩ましいものです。子どもをとりまく環境に「性」を感じさせる情報が紛れることもあるので、子どもに知識がない状態を不安に思う方もいるのではないでしょうか。

今回は、自宅でできる性教育の方法についてご紹介します。日本の性教育の実情や、性教育を学べるオススメ絵本もご紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

文/マムズラボ

目次

子どもに対する、世界と日本の性教育事情の違い

私たち親世代は、子どもとのコミュニケーションで性に関する話題は避ける傾向にあり、子どもから性や人権に関する質問をされても答えられないケースがあるようです。

また家庭によって性教育を教えられる環境に差があったり、子どもがインターネットと接することで性に関する偏った情報を目にしたりする可能性もあります。自分たちを守り、命をつなぐ目的があるはずの「性教育」が正しく行われないことから、望まない妊娠など性の社会問題にいたる事例も存在します。子ども自身が正しい性の知識を身につけ、自分や大切な人を守る意識をはぐくむ必要があることから、まずは家庭から性教育を始めようという動きが高まっています

海外では「包括的性教育(包括的セクシュアリティ教育)」を行っている

「包括的性教育」は5~18歳以上の子どもと若者に対し、幸福、健康だけではなく、肉体的にも精神的にも社会的にもすべてが満たされた状態であるウェルビーイングの実現をねらい、国連教育科学文化機関(UNESCO)が国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連人口基金(UNFPA)、国連児童基金・ユニセフ(UNICEF)、国連女性機関(UN Women)、世界保健機関(WHO)と協力して作成した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で定義しているものです(※1)(※2)(※3)。

ユネスコのエビデンスレビューでは、「包括的性教育」の適切なカリキュラムに基づくプログラムを学ぶことが子どもや若者によい影響を与えると科学的に評価されており、多くの国で「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に沿った性教育が行われています(※4)。

性の社会問題に対して有効な解決策 としても示されており(※5)、ジェンダー平等や個人のライフプラン、健康や幸福のあり方、生殖の仕組みなどさまざまな視点から人権と性教育を学ぶことができるそうです。

日本は保健体育で学ぶ「生命(いのち)の安全教育」が一般的

日本の「性教育」では、妊娠・避妊・性感染症など、性に関する一部を保健体育などで学ぶ「生命(いのち)の安全教育」が一般的です。2021年現在の学習指導要領では、小学校5年生の理科では「受精に至る過程は取り扱わない」、中学校 1年生の保健体育では「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠までを取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わない」と記されています(※4)。これを「はどめ規定」と呼ぶそうです(※5)(※6)。

つまり現在の日本では教師が児童・生徒に性行為について教えることができず(※6)、子どもたちは学校で、妊娠の経過や性交について教えられる機会がありません。高校生になると避妊方法や人工妊娠中絶などについて学びますが、性交については学ぶことができません(※7)。
そのため、小中学校の学習では、妊娠を防ぐための自分の身の守り方や、妊娠・中絶を含む性と生殖に関する権利を十分に知ることができないのが現状だといえます。

一方、「包括的性教育」では人間の尊厳や他者への尊重などまで含む「性交を含む性」や「人権」までをトータルで学ぶとしており、その観点からも日本の現在の性教育は不十分と考えられています(※8)。

【関連記事】子どもといっしょに考えたい! おうち性教育の大切な5つの視点はこちらから

子どもへの性教育(セクシュアリティ教育)の伝え方例3つ

文部科学省の学習指導要領で定める範囲では性教育が始まるのは小学校4~5年生ごろからで、妊娠の経過や性行為、避妊については学ぶことができません。しかし最近では、学校で学べないぶんを家庭でおぎない、早期から人権と性について学ぶことを推奨する動きが見られます。「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」でも、セクシュアリティ教育は5歳から始まるとしています(※3)。

  ここでは、子どもが小さいころから家庭で取り組める性教育の方法を紹介します。子どもの発達段階に応じて会話する内容などを考慮する必要があるので、参考にしてみてくださいね。

1.性差を教える

子どもは3歳くらいから「男の子」「女の子」という性差を理解するようになります(※10)。保育園でもトイレが別々になり、男女で違う遊びをする傾向も見られます。

家庭では、生活の中に組み込むかたちで性器の呼び方や洗い方などを伝えることで、子どもが性の知識を身につける土台をつくることができます。

家庭でできる性差の教え方の例
・ママパパとの体のつくりの違いを説明しながら、「おちんちん」「おっぱい」などの単語を教える
・お風呂タイムで、性器の洗い方を教える
・トイレタイムで、性器が違うと汚れの拭き取り方も異なることを教える

2.性について話す

子どもに「性の話題=恥ずかしい」という気持ちが定着すると、子どもが抱える悩みや気になることなどを隠してしまうことがあります。また、性にまつわる知識を持っていても、話題にすることを恥ずかしく感じる子どももいます。

性について考えることや、体の発育に伴い発生する性の出来事は生きるうえで当然のことであり、体や健康のほか心のあり方にも直結します。子どもが自分の素直な関心にもとづきながら性の話題を気兼ねなく話せるようにすることで、子どものさまざまな状況や思いに早くから気づくことができます。

家庭でできる、性について話すきっかけ例
・体にこれまでとは違う変化があったとき
・初潮や精通などがおきたとき
・学校の授業で、性について教わったとき(どんなことを教わったかを聞く)
・テレビなどで性に関する情報を発信しているとき
・子どもから、男女の性差や性にまつわる物事の質問が寄せられたとき(赤ちゃんはどこから来るの? など)

3.性の知識を身につけさせる

性教育を受けていない子どもは、性犯罪に巻き込まれるリスクが高いといわれています(※7)。プライベートゾーンをはじめとした性の知識を身につけることで、子ども自身が「されてはいけないこと」を理解できるようになります。また、正しい性の知識を身につけることで、「大切な人と心身を触れ合わせ、命をつなぐ」ことの大切さが理解しやすくなるはずです。

性の知識を子どもが身につけるには、子どもの発達段階に応じてママパパが性の知識を段階的に伝えることももちろんですが、性教育をテーマにした絵本を用いることもオススメです。絵本があると、子どもの意思で性を知る環境をつくることができます。また、家庭で性について会話することが当たり前である空気もつくりやすくなります。

家庭でできる、性の知識を伝えられる話題例
・プライベートゾーン(自分の体のうち、他人に見せても触らせてもいけない、性に関係のある場所)を教える
・マスターベーションについてやマナーについて教える
・性交についての仕組みを教える
・自分の体は自分だけのものであり、大切にすることを教える
・自分の体に触る人は、自分で決めることを教える
・自分が望まない行為や行動は、拒絶することを教える
・インターネット上で見かける性の情報は、フィクションも多いことを教える
・相手が誰であっても、下着や裸の写真などを送らないことを教える

子ども向け性教育がテーマの絵本3選

性について伝える絵本を選ぶときには「子どもが抱く性の疑問に対し解決できるか」「ママパパが内容に賛同できるか」を重視するとよいです。また、読み聞かせをするときには、「性の話題=恥ずかしい」認識とならないよう、読み手が恥ずかしがったりふざけたりしないことが大切です。

なお、絵本により性器の呼称も異なりますので、あらかじめ確認しておくとよいかもしれません。

【3〜4歳】だいじだいじどーこだ?

2021年7月に発売された、性について学べる絵本です。自分の体のだいじな部分であるプライベートゾーンやそれぞれのパーツに関するルールやマナーを知ることができます。自分も他人も大切な存在だということを認識するためにも役立つ一冊です。

販売価格1,320円(2022年9月末時点)
著者遠見才希子
出版社大泉書店
公式サイト版元ドットコム

【3〜6歳】性の絵本 みんながもっているたからものってなーんだ?

プライベートゾーンやパーツのほか、赤ちゃんができる仕組み、性犯罪から自分を守る方法までを学ぶことができる絵本です。心と体を守ること、男女の体の違い、好きな子ともっと仲良くなる方法などについても紹介しています。

販売価格1,650円(2022年9月末時点)
著者たきれい
監修高橋 幸子
出版社株式会社KADOKAWA
公式サイト株式会社KADOKAWA

【4〜6歳】いいタッチわるいタッチ<だいじょうぶの絵本>

人を愛したり守ったりする「いいタッチ」と、人に暴力をふるい権利を奪う「わるいタッチ」について紹介する絵本です。よいことと悪いことの区別の仕方と、無自覚に性加害者にならないような区別の仕方について、わかりやすく記されています。子ども自身が、自分を守るために大切なことを学べる一冊です。

販売価格2,200円(2022年9月末時点)
著者安藤由紀
出版社復刊ドットコム
公式サイト復刊ドットコム

絵本を通して幼少期から子どもに性教育を教えよう

子どもが小さなころから性に関する話をしておくことで、子どもの心と体について、もっと寄り添うことができます。ママパパの目が届かないところで何かがあったとしても、「小さいころママやパパから聞いたことと違う」「これは絵本にダメと書いてあった」と立ち止まり、子どもなりに考える力が身につくはずです。また、自分や大切な人を守りながら命をつないでいく意識もはぐくまれていくでしょう。

子どもの健やかな未来のために保護者ができることのひとつとして、家庭での性教育をぜひスタートしてみてくださいね。

【引用】
(※1)光文書院「『包括的性教育」とは何か」
https://www.kobun.co.jp/Portals/0/resource/dataroom/magazine/dl/tnaviEdu12_02.pdf
(※2)国連教育科学文化機関(UNESCO)「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000374167/
(※3)SEXOLOGY製作委員会「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」
https://sexology.life/world/itgse/
(※4)文部科学省「学習指導要領「生きる力」/第2章 各教科 第4節 理科」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/ri.htm
(※5)公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン「ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書 -包括的性教育を目指して-」
https://www.plan-international.jp/youth/pdf/0630_Youth_Report_01.pdf
(※6)「学校の性教育で“性交”を教えられない 「はどめ規定」ってなに?」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210826a.html
(※7)日本財団「【10代の性と妊娠】予期せぬ妊娠や性被害から守るために。家庭でできる性教育のすすめ」
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2021/65437
(※8)さいたま市「包括的性教育について」
https://www.city.saitama.jp/006/010/002/011/p087573.html
(※9)文部科学省「学校における性に関する指導について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000838180.pdf
(※10)日本子ども社会学会 作野友美「2歳児はジェンダーをどのように学ぶのか」
https://www.js-cs.jp/wp-content/uploads/pdf/journal/14/cs2008_03.pdf

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