小学校入学というお子さんの新しい門出に、期待で胸を膨らませているご家庭もあるでしょう。一方、1つの節目を迎えるにあたり、今後のお金のことで不安半分……というかたもいるかもしれません。小学校入学で必要となるお金は実際どれくらいなのか、小学生になるとどんなお金がどれくらいかかるのかなどについて、ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)で、「家計の見直し相談センター」の藤川太先生にお話をうかがいました。
お話/藤川太先生(家計の見直し相談センター代表)
【1】子どもの学習費は、公立・私立、居住地域で差がある
文部科学省では、「子供の学習費調査」という統計を公開しています。この調査は、全国の公立・私立の幼稚園、小学校、中学校および高等学校(全日制)に通う幼児・児童・生徒の保護者を対象に、平成6年(1994年)から2年ごとに調査が実施されているものです。
※調査対象の詳細(本記事に関係がある対象に限る)
公立並びに私立の小学校
公立小学校5,400人(母集団約633万3千人)、私立小学校6,300人(母集団約7万7千人)
この統計では、小学校でかかる学習費についてもまとめられており、学校教育費、学校給食費、学校外活動費などの金額についても公開しています。平成30年度の調査によると、公立の小学校の場合、1年生の年間学習費総額35万860円、全学年の平均だと32万1281円となっています。また、私立の小学校の場合、1年生の年間学習費総額は189万2002円、全学年平均159万8691円となっています。
公立と私立でも違いがありますが、この統計はあくまで全国平均なので、居住している地域の自治体の規模などでも変動します。子どもの進路について、あらかじめご家庭でよく話し合ったり、自治体に問い合わせてみたりすると安心かもしれませんね。
1年生のときにかかるお金には、公立の小学校の場合、ランドセルなど(通学用品費:公立で約5万3000円)、文房具、上履き、体操服、道具箱など(学用品・実験実習材料費:公立で約2万8601円)、制服(公立で制服費4664円)といった学校でかかるお金のほか、各家庭内で生じる費用として、学習机など(公立で「物品費」2万8574円)の購入費などが挙げられます。
私立の場合は、学校指定の学用品であることも多いため、さらに費用が高くなる傾向があるようです。やはり、通学に必要なもの一式を初めにそろえなくてはならない1年生時に、お金がかかりがちです。
【2】共働き家庭が知りたい学童のお金
共働き世帯の場合、小学校の授業が終わった後、子どもの預け先として学童(放課後児童クラブ)を考えているかたも少なくないでしょう。
学童の正式名称は「放課後児童健全育成事業」といい、児童福祉法や社会福祉法などによって規定され、主に厚生労働省が管轄をしています。
学童の運営形態は、公立と民間に分かれており、公立学童施設は各地方自治体が運営をしていますが、民間学童施設はNPOや塾、教育事業関連の企業などが運営をしています。
公立学童の場合は、利用料がだいたい月額4~5000円+おやつ代2000円、トータルで1万円以下のことが多いようです。
預かりを主な目的とする認可民間学童施設の場合は月額4~5万円程度、塾などが運営する民間学童施設の場合は、月額10万円程度かかることもあります。民間施設の場合、預かりだけが目的ではなく、英語やそろばん、体操など、施設内で習い事や課外授業を実施しているところ、子どもの送迎を行ってくれるところもあり、どのようなオプションを利用するかによって、かかる利用料は異なります。
また、公立学童利用の注意点としては、「保護者が働いている」「家族に要介護者がいる」といった条件のほか、「小学3年生までの利用に限る」など、利用条件を課している施設もあります。自治体によっても状況が異なるため、各自治体のホームページなどで事前に確認をしておきましょう。
【3】お金のことが不安……国や自治体から受けられる支援はある?
小学校入学以降は、習い事や塾、部活動など、子どもにかかるお金もぐっと増えます。ご家庭によっては、子どもを学校に通わせる上で、経済面で不安を感じているかたもいるかもしれません。
日本では、学校教育法第19条で「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は必要な援助を与えなければならない」と定められており、生活保護法の対象者など支援が必要なかたに向け、「就学援助制度」という国の支援策が制定されています。
「学用品費」「新入学児童生徒学用品費」「通学用品費」「学校給食費」「クラブ活動費」などといった幅広い項目に対して補助をしてもらえます。ただし、すべての自治体が実施しているわけではないので、居住地域でこのような制度が利用できるかどうか、事前に確認してみてください。
また所得の制限はありますが、生活保護制度以外にも社会福祉協議会の「生活福祉資金(貸付)」という制度を利用することもできます。「総合支援資金(生活支援費・住宅入居費・一時生活再建費)」のほか、「福祉資金(福祉費・緊急小口資金)」といった資金を貸与してもらえます。
昨今のコロナ禍を受けて、一時的に家計の状況が厳しくなっているご家庭は「緊急小口資金」の申請を受けることも可能です。悩まれているかたは、社会福祉協議会に1度相談に行ってみるのも1つの方法です。
■就学援助制度
就学援助制度について(就学援助ポータルサイト):文部科学省(mext.go.jp)
■社会福祉協議会の生活福祉資金
各支援金の種類と貸し付け条件
子どもを多方面から支援する社会的な動きも!
昨今は低学年から塾に通う子どもも多く、保護者の経済力が子どもの学力格差に繋がっているのではないかと危惧されています。
公立の小学校であれば、学校そのものにかかるお金はある一定の額となりますが、平成30年度「子供の学習費調査」によると、公立で全学年平均年間5万3313円の学習塾費がかかっており、学習塾に通うとなると、やはりそれなりにお金がかかってきてしまいます。
今、特に若い世代の人たちの間に、子どもの学習環境を支援する動きが出てきています。家庭の事情で塾に通えない小・中学生を対象とした無料の塾が立ち上げられたり、個人でオンラインの学習動画を無料配信したりといった取り組みが行われており、支援の輪が広がっています。
お金をかけずとも、子どもが学びを深める機会が提供されるようになってきたことは、子どもの学力格差解消へ向けた、1つのよい流れではないでしょうか。
また、学びの環境とは異なりますが、子どもたちに食事を提供する場として、自治体や地域住民が運営している「子ども食堂」もあります。成長期の子どもたちが栄養を摂取できる機会が得られるだけでなく、子ども同士、保護者同士の交流の場にもなっています。関心があるかたは、居住地域周辺でこのような取り組みがあるか調べてみるのもよいでしょう。
【4】藤川先生からのワンポイント家計アドバイス【子どもに読書習慣をつけさせよう】
教育費の中でも、特に塾代は大きな負担となります。つい子どもの学習を“塾頼み”にしてしまっているというご家庭もあるかもしれません。子どもの学習を上手に進められているご家庭は、“子どもが自分のペースで学習を進めている”ことが特徴です。つまり、「子どもが自分で目標を立てて、勉強をすることができている」のです。
そういったご家庭にお話を聞いてみると、共通して「子どもに本を読ませることが重要」だとおっしゃいます。子どもが自ら興味がある本を手に取り、読んで調べ、理解をし、興味を広げていく。わからないことが出てきたら、学校や塾の先生に聞いてみる。こうした体験を通じて、自分のペースで学習ができるようになります。
これから小学校に入学するお子さんがいるご家庭では、「本をたくさん読ませる」「図書館で興味のある本を借りて読む」などの習慣をつけるとよいのではないでしょうか。
子どもが自分で学習する習慣があるかないかで、塾の活用の仕方も大きく変わります。ぜひ保護者のかたにも、“塾を上手に利用する”というスタンスに立ってほしいと願っています。また、塾に行かなくても、ご家庭で市販の問題集や通信教育教材などを活用して、子どもの学習を進めるのも1つの方法かと思います。
これから教育費にどんどんお金がかかってくる時期になりますので、保険や通信費などの固定費を減らすことを意識して家計の見直しに取り組みましょう。つい食費を削ろうという考え方になりがちですが、成長期を迎える子どもたちの食費を削ることは、子どもの発育上望ましくありません。小学校入学という節目にあたり、1度専門家に家計の見直しの相談に行ってみるのもよいと思います。
この記事の監修・執筆者
家計の見直し相談センター代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。宅地建物取引主任者。生活デザイン株式会社代表取締役。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事。現在、「家計の見直し相談センター」で個人向けの家計相談サービスを展開している。
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