寝苦しい夏の到来です! みなさん、ぐっすり眠れていますか? 日本は諸外国と比べると睡眠時間の少ない国です。そんな睡眠時間の質を上げるためにも、特に寝苦しい夏に快眠できる環境の整え方を、睡眠改善インストラクター 橋爪あきさんにうかがいました。
イラスト/わたなべふみ
① 日中、建物を温めすぎない
寝る前に寝室を冷やせばよいと思っている人が多いと思いますが、実は日中から室内の温度が上がり過ぎないようにすることが大事です。 木造住宅は通気性がいいので、日が沈めば建物の温度は下がってきます。
一方、鉄筋のアパートやマンションは、気温が上がると建物自体がどんどん熱を吸収し、部屋の温度も上げてしまい、日が沈んでもなかなか下がりません。
室内温度を抑えるためのポイント
室内の温度をなるべく抑えるために、できる範囲でいいので次のことをやってみましょう。
〇最高レベルの断熱・遮光のカーテンを使用する。
〇ベランダにグリーンカーテンをつくり、日よけをする。
〇夕方ベランダに打ち水をし、窓と玄関の扉を開けて室内の空気をリセットする。
② 寝室にひと工夫
〇北側の部屋で寝てもOK。北側の部屋はほかの方角の部屋より室温が上がりにくいので夏の寝室には向いています。北側の部屋で寝ることは縁起が悪いと気にする人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
〇壁は外気で温まっています。ベッド周りの空気を対流させるために、ベッドは壁から5~10cm程度離して配置しましょう。
〇寝る1時間くらい前に、誰もいない状態でエアコンを24~25℃に設定して部屋を冷やします。そして、寝るときは26~27℃に設定し、サーキュレーターや扇風機をエアコンと対角線に置き、冷気を対流させます。エアコンの冷気が直接体に当たらないように寝具を動かすなどします。
〇川の字で寝ることにこだわらず、互いに少し離れて寝ましょう。
〇できるだけ真っ暗な状態にして寝ましょう。トイレに起きることがある人は、センサー付きのフットライトで解決。どうしても真っ暗が苦手な人は、小さい灯りをつけるのはかまいませんが、顔に光が当たらないように置き場所を工夫しましょう。
〇枕元にペットボトルに入れた水を用意。夜中にのどが渇いて目が覚めたら、少量を一口ずつゆっくり飲みます。
③ 食事は寝る3時間前、入浴は寝る2時間前までに
胃、肝臓、腎臓など、内臓が夜中にフル回転しなくてすむように、飲食の時間に気をつけます。とくに、アルコールは夕食のときで打ち止めにしましょう。
また、寝る前の入浴は体温が上がり寝苦しくなるので、寝る1~2時間前に入浴をすませます。浴槽につかる場合は、38~40℃の湯に肩までつかる―半身だけつかる、を交互に行いながら15~20分くらいを目安にすませます。(心臓の弱い方は半身浴にして負担のないようにしてください)
子どもは体温が高いので、就寝の2時間くらい前にはすませたいもの。ならば、親もいっしょに入ってしまいましょう。
入浴のポイント
シャワーの場合は、風呂イスに座り、足湯をしながら肩と手首、ひじ、膝などの関節部によくお湯をかけて温めます。また、おなかや胃、肝臓、腎臓などの裏側(背中部分)にあたるところも温めましょう。ただ湯を浴びるのではなく、要所要所を温めることが大事です。
④ 寝るときの服装や寝具は綿素材のものを
パジャマは、吸湿性が高く、また放湿性・放熱性も高いものを選びます。綿素材で、特にガーゼが心地よいです。
敷きパッドや肌掛けも綿素材のものをオススメします。枕は、カバーも含めて清潔に保つことのできるタオル枕にするといいでしょう。大判のタオルを蛇腹に折りたたんだ即席枕なら、毎日洗えます。
「快眠」するにはなるべくストレスのない状態で寝ることです。下着をつけずに、直接パジャマを着て寝ると気持ちよく寝られます。パジャマとタオルケットは毎日洗濯しましょう。
子どもが掛け布団を蹴飛ばして寝ていたら、布団を逐一かけてあげる人がよくいますが、子どもは体温がこもらないように寝返りを多くうつので、案外寒くありません。もし気になるなら、子どもの体を触ってみましょう。汗をかいていたらふき取ってあげます。温かかったら気にすることはありません。冷えていたら、肌掛けをかけてあげましょう。
胃腸の弱い子どもにはよい素材の腹巻をさせてもいいでしょう。
熱を下げてくれるジェル状のシートの利用は、昼寝なら気持ちいいですが、何時間も寝ている間にぬるくなり、むしろ快眠の妨げになる場合があるので、オススメしません。
⑤「就眠儀式」で入眠をスムーズに
寝る前は、テレビを見たり、YouTubeの動画再生などスマートフォンの操作をしたりするのはNG。内容の堅い本やミステリーなどを読むのも控えます。脳を興奮させないことが大事です。
夏休みは、なかなか寝つけない子どももいると思います。「就眠儀式」は寝る前のルーティーンみたいなものです。“夜はちがう世界に行くんだよ”と子どもに刷り込みましょう。
子どもがスムーズに入眠するための「就眠儀式」をいくつかお教えします。どれか1つでかまいませんので、実践してみてください。
〇子守歌やクラシック音楽などを聴く
〇夜専用のぬいぐるみを用意し、子どもといっしょに寝かせる(目をつむっているぬいぐるみが望ましい)
〇月や星など夜をテーマにした絵本を読み聞かせる(寝るための絵本を用意する。絵や写真を眺めるなら図鑑でもOK。冒険ものなど、子どもが興奮するような内容の本は避けて)
⑥ 日中の過ごし方も大事
夏休みだからといつまでも子どもを寝かせておいてはいけません。通常の時間には起きられるようにしてください。長すぎる寝坊は生体時計を狂わせてしまうからです。お寝坊が許されるのは通常の1.5時間~2時間くらいまでです。
「快眠」のための理想の1日
〇朝7時ごろには起きて、朝日を浴びて体内時計をリセット
〇朝ごはんはしっかりととる
〇適度な運動をする
不眠の人に多いのは運動不足。子どもはよく動くので心配ありませんが、お仕事をされている人なら、通勤路を軽いジョギングをはさみながら歩く、駅は階段を利用するなどして適度に体を動かしましょう。
〇いつもと違う刺激を受ける
脳や精神の適度な疲労も大事。会社で受けるストレスからくる疲労でなく、よい疲労のこと。家事や仕事の疲れが出たらその場で軽く体操したり、こまめにブレイクをとったりしてリフレッシュし、疲れをため込まないことが重要です。家では子どもといっしょにアイドルやアニメなどの話で盛り上がったり、地域のイベントに参加したりするなど、日常と違ったことをすると、いい意味で脳が刺激を受け、適度に疲れてくれます。
夏以外の季節に「快眠」するポイント
春・秋
寝心地のよい季節ですが、寒暖差があるので注意。気温の高いときには、掛け布団に「あいがけ布団」を使いましょう。「あいがけ布団」とは、厚みが肌掛けと冬用掛け布団の中間のものです。綿毛布でもOK。パジャマは自分が快適に寝られるものを選びましょう。
冬
寒い日は、掛け布団より敷き布団を温かくしましょう。掛け布団は足元にぴったり包むのではなく、空気が入るようにふくらみを持たせると足が温まります。靴下を履いて寝るのはNG。いらない熱気は逃がさないと、寝つきを妨害します。どうしても履きたい場合は、せめて靴下の先は切り取ってください。パジャマは首を冷やさないように襟つきのものを着ましょう。
また、暖房による部屋の乾燥を防ぐために加湿器を。枕元には人肌くらいの温度のぬるま湯を入れたペットボトルを置いて、夜中にのどの渇きを感じたときに飲めるようにします。
いかがでしたか? 橋爪さんがおっしゃる「快眠」とは、「快適(不快なもの・ストレスがない)な状態で寝ること」。今回は季節に沿ったポイントを紹介しましたが、「いびき」「睡眠時無呼吸症候群」なども要注意だそう。なお、下着はつけずに直にパジャマを着るのは一年を通してオススメだそうです。
この記事の監修・執筆者
一般社団法人日本眠育普及協会 代表理事、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定)、日本睡眠教育機構上級指導士、日本睡眠学会会員、睡眠健康推進機構(公益法人精神・神経科学振興財団内)登録講師、NPO法人SASネットワーク理事
慶應義塾大学卒業後、同病院家族計画相談所勤務を経て結婚。子育てと仕事に奮闘するうち、睡眠障害が悪化。独学で睡眠学を学んで、インストラクターの資格を取得し、睡眠障害を克服。その経験から、睡眠知識の広報活動を始め、一般社団法人日本眠育普及協会代表として現在に至る。
講演や出版・メディア広報、企業の睡眠企画への協力等の事業を行う。また「睡眠文化」という観点から、感性面でも睡眠に関心を持つ人づくりを進めている。
著書『安眠したいあなたのためのやさしい睡眠講座』(セルバ出版)など
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