絵や文章などの著作物には著作権があります。著作物を無断で使用したりコピーしたりした場合には、罰則が設けられていて、子どもでも著作権を侵害してしまうと罪に問われることもあります。
現代の高度な情報化社会では、子どものうちから著作権に触れておくことが必要です。この記事では、保護者向けの解説をメインに、冒頭と末尾には小学生にも理解いただけるような、ポイントや例を挿入した構成にしています。ぜひお子さんと話す際にご活用ください。
文/マムズラボ
著作権について小学生が知っておくポイント
著作権の詳細をご紹介する前に、小学生が知っておきたい著作権のポイントをご紹介します。
①自分やほかの人の作品には著作権がある
自分がかいた絵や作文には著作権があります。自分の作品を守るためには、他人の作品を勝手に使わないことが大切です。他人の作品を使うときは、必ず作成者の許可を得るか、引用のルールを守りましょう。
②著作権を侵害すると大変なことになる
著作者の許可なく、著作物を複製したり、公開したり、改変したりすることは著作権法違反です。著作権法違反をすると、著作者からお金を請求されたり、警察に捕まったりする可能性があります。
③著作権者(作者)の了承がなくても利用できる場合もある
著作権者(作者)の許可を得なくても、著作物を利用できる場合があります。たとえば、自分の勉強や楽しみのために図書館で借りた本をコピーしたり、インターネットで見つけた記事を引用したりするなどです。
それでは、著作権について詳しく見ていきましょう。
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そもそも「著作権」とは?
著作権とはどのような権利なのでしょうか?ここでは、著作権についてくわしく解説します。
自分の作品を守る法律
著作権とは、思想や感情を創作的に表現したもの(著作物)に対して、著作者に与えられる権利のことです。著作権は誰もが持っている権利で、自分がかいた絵や作文にも著作権があります。
自分が書いた作文を勝手に変えられて、別の人の名前で発表されたらイヤな気持ちになりますよね。そのため、他人の作品を利用するときは、必ず著作者の許可を得るか、引用のルールを守る必要があります。そうすれば、著作者の権利を尊重し、自分の作品も守ることができます。引用とは、教育や研究などの目的により、一定の範囲内で著作物を利用できることを指します。
なお、著作権は、著作物が作られた時点で自動的に発生し、登録や手続きは必要ありません。
「著作者人格権」と「財産権」がある
著作権には、著作物を自由に利用できる著作権(財産権)と、著作者の名誉や作品の完全性を守る著作者人格権があります。
著作者人格権
著作者人格権には、以下のような権利が含まれています。
・公表権:著作物を公表するかどうかを決められる
・氏名表示権:著作者の氏名をどのように表示するか決められる
・同一性保持権:著作物の題名や内容を勝手に変えられない権利
つまり、たとえば絵本を作成した作者の許可なく内容を変えたり、作者の名前を絵本から勝手に削除したりすることはできません。
財産権
財産権には、以下の権利が含まれています。
・複製権:著作者が知らないうちに複製されることがない
・譲渡権:土地の所有権のように譲ったり相続したりできる
・上演・演奏権、上映権:著作物を舞台化したり映像化したりできる
・二次的著作物の利用権:著作物から制作された二次的著作物を利用できる
たとえば、絵本の著作者は、その絵本をコピーしたり、他の人に売ったり、遺言で残したりできます。また、その絵本をもとにアニメやミュージカルを作ったり、パロディや翻訳をしたりすることも可能です。これらの権利は、著作者の財産権となります。
著作権を侵害するとどうなるの?
著作者の許可なく、著作物を複製したり、公開したり、改変したりすることは著作権法違反になります。著作権法違反をすると、著作者から損害賠償を請求されたり、刑事罰を受けたりする可能性があります。法的な責任には「民事上の責任」「刑事上の責任」があります。
民事上の責任とは、不法行為や契約違反などによって発生した被害者の損害を賠償することです。著作権者からの「侵害行為の差し止め」や「損害賠償請求」「不当利益返還請求」「名誉回復等措置請求」などの請求を受ける可能性があります。
刑事上の責任とは、罪を犯した者に対して国が懲役や罰金などを科すことです。著作権侵害の場合、個人では10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます。法人の場合は、3億円以下の罰金です。
著作権者の了承なしに利用できるケースもある
著作権法違反を防ぐためには、著作物を利用する際、著作者の許可を得なければいけませんが、以下のような場合は著作権者の了承なしに利用することができます。
・私的利用
・図書館でのコピー
・引用
・教育機関でのコピー
・非営利や無料で上演・演奏する場合など
たとえば、学校の図書館で借りた絵本を個人的に楽しみたいという理由でコピーする場合には、著作権者の許可は不要です。
ただし、私的利用などの自由に使える場合であっても、「著作者人格権」は制限されていません。そのため、勝手に著作物の内容を変えてしまったり、作者の名前を削除したりすることはできません。
他人の著作物を利用する場合にはどうすればいいの?
他人の著作物を利用する場合には、著作者の許可を得る必要があります。ここからは、他人の著作物を利用する際の一般的な流れをご紹介します。
まずは著作権があるか調べる
他人の著作物を利用する前に、利用したい著作物に著作権があるかを調べましょう。
著作物にあたるか
著作権が生じるのは著作物だけなので、「単なる事実やデータ」「他人の模倣をしたもの」などは著作物ではありません。
しかし、著作者の個性が発揮されて表現されていると著作物にあたるので注意が必要です。たとえば、スポーツのルールは著作物にあたりませんが、スポーツのルールをわかりやすくするために工夫をこらして説明した解説書は著作物となります。
保護対象であるか、保護期間はいつまでか
日本の法律で保護される著作物は、「日本国民の著作物」「日本で最初に発行された著作物」だけではなく、「条約によって保護の義務を負う海外の著作物」も保護の対象になります。
著作物には保護期間が決められているので、満了している場合には著作者の許可を得る必要はありません。その保護期間は、著作権(財産権)の場合、創作したときから原則として、著作者が生きている期間+死後70年間です。
ただし、著作者人格権の保護期間は、「著作者が亡くなった後でも原則として著作者人格権を侵害しない」ように決められています。
「権利制限規定」にあたるか
他人の著作物を利用する場合には、「権利制限規定」にあたるかどうかも確認する必要があります。権利制限規定とは、著作権法で定められた、著作者の許可や報酬の支払いなしに著作物を利用できる特別な場合のことです。たとえば、引用、教育目的の利用、私的使用などが該当します。
しかし、権利制限規定にあたるとしても、著作権法で定められた条件を満たす必要があります。たとえば、引用する場合には、引用の目的や範囲が正当であること、引用元の出典を明示すること、引用された著作物が合法的に公開されていることなどが必要です。
権利者は誰か
映画のように複数の権利が関係する場合には、映画全体の権利だけではなく、原作小説や脚本の原著作者の権利や、音楽や美術などの著作者の権利など、多様な権利が関係します。そのため、誰が権利を持っているのかの確認が必要です。
権利者が判明している場合には許可を得る
権利者が判明し、著作権の保護期間内で権利制限規定にあたらない場合には権利者の許可を得ましょう。
たとえば、気に入った本があって、それを音読した動画を作って公開したい場合には、著作者に許可を取る必要があります。
利用の許可を得る
権利者に許可を得る場合、口頭でも契約は成立します。しかし、必ず許可を得られるわけではなく、利用目的や利用方法によっては断られてしまうことがあるので注意が必要です。
トラブルを防ぐために契約書を交わす
利用の許可を得たら、利用する著作物を特定し、目的や用途、使用期間や報酬などを決めておきます。さらに、トラブルを避けるために契約書を作成しておきましょう。
小学生のうちから著作権について正しい知識をつけよう!
著作権は誰もが持っている権利です。著作物には著作権があり、侵害してしまうと罰則があります。本記事でご紹介した例をまとめると以下となります。
・著作権:著作権は誰もが持っている権利で、自分がかいた絵や作文にも著作権があります。
・著作者人格権:絵本を作成した作者の許可なく内容を変えたり、作者の名前を絵本から勝手に削除したりすることはできません。
・財産権:絵本の作成者は、その絵本をコピーしたり、他の人に売ったり、遺言で残したりできます。また、その絵本をもとにアニメやミュージカルを作ったり、パロディや翻訳をしたりすることも可能です。
・著作権の例外:学校の図書館で借りた絵本を個人的に楽しみたいという理由でコピーする場合には、著作権者の許可は不要です。
著作権の詳細自体は大人でも、100%把握するのが難しい内容ですが、我々が育ってきた情報化社会よりも、さらに高度な情報化社会においては、とても大切な事柄ですので、上記の例を用いて、ぜひ、お子さまと話し合ってみてください。
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