【これって教育虐待?】子どもを勉強で追い詰めないために保護者が気をつけることとは?

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教育熱心なのはよいことですが、保護者があまりにも成績にこだわり過ぎて、子どもの心身を追い詰めてしまう「教育虐待」が問題になっています。

この記事では、教育虐待とはどのようなものなのか、なぜ教育虐待に陥ってしまうのか、そして、教育虐待を防ぐにはどうしたらよいのかについて解説します。

文/マムズラボ

目次

成績にこだわり過ぎ? 教育虐待とは

「虐待」と聞くと、身体的な暴力や暴言などを思い浮かべる方もいるかもしれません。では、「教育虐待」とはどのような言動をさすのでしょうか?

子どもに過度なプレッシャーをかけること

教育虐待とは、子どもの教育において過度な期待やプレッシャーをかけて、子どもの心身に悪影響を及ぼすことです。

保護者が、「子どもの可能性を伸ばしたい」という気持ちになるのは当然です。勉強をがんばることも、成績がアップすることも、子どものためになります。しかし、実現不可能なほど大きな目標を掲げて、達成できなかった子どもを責める、暴力を振るうなど、虐待にまでエスカレートしてしまう保護者がいるのも事実です。

2018年には、母の強い希望で医学部を受験し続け、9浪した娘が母親を刺殺するという事件が起きました。この母親が長年教育虐待をしていた、ということでも話題になった事件です。娘は、「モンスターを倒した」とX(旧Twitter)に書いていたそうです。

子どもを責めたり、保護者が主導権を握ったりするような発言を繰り返しすること

1日12時間勉強というスケジュール、睡眠を削って勉強させる、成績への過度なこだわり、100点でなければごはん抜き……など、典型的な教育虐待に走ってしまう保護者は全体から見れば、ほんの一部だといえるでしょう。

しかし、教育虐待に近い言動をとってしまうことは、だれにでもありえます。
たとえば、このようなことばを言ってしまったことはありませんか?

「この間のテスト、満点じゃなかったね。どうして間違えたの?」
「ほかの子はみんなできているのに。もっとがんばらないとダメだよ」
「習い事は絶対サボっちゃダメ。全部、あなたの将来のためなのよ」
「あなたは医者になってね。ほかの夢は認めないから」
「勉強しないとお母さんは怒るよ。今すぐ勉強しなさい!」
「勉強のことはお母さんが決めるの。つべこべ言わずにやりなさい」

上記はすべて筆者の創作ですが、もしかしたら、これに近い発言をしたことがあるという方もいるかもしれません。

一度や二度これに近い発言をしても、すぐに教育虐待とはいえません。ほとんどの保護者は、教育虐待に陥る前に気づいて冷静な状態に戻れるはずです。

ところが、何度もくりかえし発言することで、子どもの心身にダメージを与える教育虐待となります。

関連記事:【叱られるからつまらない】「勉強嫌い」の原因は大人にある

教育虐待が子どもに及ぼす影響

では、教育虐待は子どもの心身にどのようなダメージを与えるのでしょうか。
教育虐待が及ぼす影響にはさまざまなものがあります。

勉強への意欲や興味を失う

子どもは、強制されればされるほど勉強が嫌いになります。勉強や新しく何かを学ぶことに対して否定的な感情を持つようになり、勉強への興味やモチベーション、好奇心を失うことにつながるのです。

さらに、成績への過度の期待や圧力により、集中力の低下や記憶力の問題を引き起こす可能性もあります。

自己肯定感の低下

常に厳しい基準にさらされることで、無力感にさいなまれ、自己肯定感が低下します。

自己肯定感が低下すると、子どもは自分の考えに自信がなくなり、自分以外の人の評価に過度に依存しやすくなるのです。将来的に自分の決断を下す能力や、自分の夢を追い求める勇気を奪う可能性があります。

対人関係の問題

厳しい批判や比較にさらされ続けていると、人との信頼関係を築くことが難しくなることがあります。

友だちとのコミュニケーションが苦手になることや、人との関わりを避けることにつながります。将来の人間関係の構築に大きな障害となってしまうかもしれません。

逃避行動

常によい成績を求められるなどの高いハードルを設けられた子は、学校を休みがちになる、自室に引きこもる、反抗的な行動をとるなど、プレッシャーから逃れようとする行動をとることがあります。

いじめ・自傷行為

勉強を強要されたストレスが外側に向かえばいじめの加害者に、内側に向かえば自傷行為につながることがあります。

これらの行動は、子どもが感じている深い苦痛やフラストレーションのサインです。将来的には社会的な問題や精神的な障害を引き起こす可能性があります。

体への影響

心理的なストレスは、睡眠障害や食欲不振、脱毛症、消化器系の問題など、身体症状として現れることがあります。子どもの日常生活や健康によくない影響を及ぼし、長期的な健康や生活の質を損なってしまうかもしれません。

なぜ教育虐待に陥ってしまうのか

子どもに悪影響を及ぼす教育虐待ですが、なぜ起こってしまうのでしょうか? 起こってしまう要因をいくつかご紹介します。 

過度な期待

保護者に子どもに期待する気持ちがある以上、だれでも教育虐待に陥る危険があるといってもよいかもしれません。

とくに、保護者自身が高い教育水準や成功体験を持つ場合、「自分と同じくらいはできるはずだ」と子どもにも当てはめて、期待のハードルを上げてしまうことがあります。

情報や知識の不足

大人と比べて子どもはできないことが多くあります。大人はかんたんにできるからといって、子どもも同じようにできるわけではありません。

たとえば、1年生の子どもに3年生の問題を解かせて「こんな問題もわからないの!」と叱ってしまうなど、子どもの発達段階や教育についての知識がないと、このような教育虐待をしてしまう可能性もあります。

保護者のコンプレックス

保護者が子どもを通じて、自分の学力コンプレックスや叶わなかった夢を叶えようとするケースもあります。

たとえば、自分自身は思うように進学できなかったが、子どもには一流の大学に行ってほしいという思いから教育に熱心になりすぎるケースなどです。

社会的なプレッシャー

周囲のママ友やパパ友の影響や社会全体からの期待が高まり、子どもが高い成績を取らなければならないと追い詰められ、教育虐待につながることもあります。

最近は中学受験をする子どもも多くなり、それも影響しているのではないかという意見もあります。

教育虐待を防ぐためにできることは?

教育虐待を避けるにはどうしたらよいのでしょうか。子どものために健全な学習環境を整える方法を考えてみましょう。

期待はほどほどに抑える

「できるはず」という期待と、現実の子どもとの落差が激しいことから保護者が動揺し、教育虐待に走ってしまうという面があります。そのため、子どもの成績に期待し過ぎないことも大切です。

子どもに期待するのは保護者として当然かもしれませんが、子どもは保護者の期待を叶えるために存在しているのではないことを、保護者はときどき確認したほうがよいかもしれません。

子どものことばに耳を傾ける

子どもはどう感じているのか、子どものことばに耳を傾けることも大切です。多くの保護者は子どもと話し合いをしているつもりでも、実は一方的に話しているだけのことが少なくありません。

子どもがどう感じているかを知ろうとすることが、教育虐待の予防には大切です。

子どもの発達を学ぶ

子どもに過度なプレッシャーをかけないよう、保護者自身が子どもの発達に関して学ぶことも大切です。年齢別の発達段階や、遊びや休憩の大切さを知ることで、子どもに過剰に勉強を押しつけることが少なくなります。

遊びも大切にする

子どもの成長には無駄と思える時間も重要です。とくに遊びは、テストなどで数値化できない非認知能力を伸ばすことが知られています。勉強漬けにせず、たっぷり遊ぶことが子どもの成長を促します。

保護者自身をケアする

保護者が周囲と比べて子どもの学力が気になってしまったり、子どもの学力が保護者のストレスになったりすることで教育虐待に陥ってしまうこともあります。保護者自身が周囲と比べたりせず、ストレスケアに努めることも大切です。

子どもの成績にこだわり過ぎず、学びを楽しもう

新しいことを学ぶ勉強は、本来は子どもにとって楽しいもののはずです。子どもの成績が保護者の期待どおりでなくても、現時点の成績が一生を決めるわけではありません。できるだけプレッシャーをかけず、少なくとも勉強が嫌いにならないためにはどうしたらよいのか、という視点で考えてみることも必要なのではないでしょうか。

【参考】 『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』

この記事の監修・執筆者

曽田照子

作家/子どもへの言葉かけ、「子育てNGワード」の専門家。「言葉」を扱うコピーライター経験から、子育て中の子どもへの言葉かけに関心を持つ。
三人の娘の子育ての実感(成功も失敗も)を活かした書籍を執筆している。
『お母さん、ガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気をなくす言葉66』
『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』

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