「きょうも子どもに怒ってばかり…」
「なかなか子どもに伝わらなくて、思わず声を荒げてしまった…」
子育ての中で、日々の声かけに悩み、こんな思いをされているママパパは多いのではないでしょうか。
話題の「声かけ変換表」を作った“楽々かあさん”こと大場美鈴さんに、子どもによく伝わる声かけ変換について、全3回の連載で紹介していきます。
今回はその2回目、「子どもにブレーキをかけたいときの声かけ編」です。
お話/大場美鈴(楽々かあさん)
ブレーキをかける声かけ変換で大切なこと
———子どもの行動にブレーキをかけたいときは怒りが先に出てしまい、強い言い方になりがちです。なかなか言うことを聞いてくれないこともあったり…。
親子の愛着と信頼関係があって、子どもが十分に「できた!」という経験を積んである程度自信がついてこそ、 子どもの心に親の本気がまっすぐ届きます。
———なるほど。そのステップに行くまでに、日ごろからどんなことを心がけたらいいでしょうか?
楽々かあさん:そのためには、日ごろの関わりを大事にすることが“基本”。
1回目の記事でお伝えしたように、子どもとの自然な会話を楽しみながら、いい情報に目を向けて言葉で伝えておくことをしてみましょう。
そうしていると、子どもが「やったらダメ」なことをしてしまったときも、親の本気の「ビシッとモード」のブレーキが効きやすくなりますし、そのあとの親子の気持ちの切り替えも早くなるでしょう。
その基本を踏まえた上で、次のような声かけ変換をしてみると、「話せば分かってくれる」ことだって、次第に増えてきますよ。もし、「うまくいかないな」「受け入れてくれないな」と思ったら、ためらうことなく、この“基本”に戻ってみてくださいね。
子どもにブレーキをかけたいときの声かけ変換 8選
No.1
Before…「○○しちゃダメ!」
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After…「○○しよう」
「やってはいけないこと」よりも、「やっていいこと」を伝えたほうが、子どもは行動しやすいんです。
楽々かあさん:人生経験の少ない子どもは、「〇〇しちゃダメ!」と言われても、「じゃあ、いったいどうしたらいいの?」と、そのほかの選択肢がわからないことがあります。
こんなときは、「やっていけないこと」よりも、「やっていいこと」を具体的に伝えるほうが、子どもも言葉がすんなり入りやすく、ずーっと行動しやすくなります。
たとえば、
●「歩道で走っちゃダメ!」⇒「端っこをゆっくり歩こう」
●「お友だちの物を取っちゃダメ!」⇒「使わせてほしいときは『ボール貸してくれる?』って聞いてごらん」
●「散らかさないで」⇒「使ったモノはこの箱に入れてね」
といった具合です。
No.2
Before…「ちょっと待って」
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After…「あと〇分待ってね」
あいまいな言葉を“超”具体的に伝えてみて! 子どもの行動も変わってくるはず。
楽々かあさん:「ちょっと」「もうすぐ」「ちゃんと」などのあいまいな言葉は、はっきりと目に見えず、イメージがしにくいもの。小さな子や合理的なタイプの子にとっては、イマイチ想像しにくくわかりづらいようです。
行動が習慣として定着するまでは、“超”具体的に、その都度「ちょっと」「ちゃんと」の中身を翻訳して伝えてあげると、だんだんわかってくれますよ。
たとえば、
●「ちょっと待って」⇒「あと〇分待って」(タイマーや砂時計を併用するとGood!)
●「もうすぐだから」⇒「ママがこのお皿を洗い終わったら、お出かけできるよ」
●「ちゃんと並んで」⇒「この線の内側に立とう」「この足のマークの上に立とう」
とかね。数字や実例、動き方、目印などを入れて伝えるのがコツ。
No.3
Before…「迷惑だよ!」
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After…「こういう理由でこうなってしまうから、こうしよう」
No.2の発展形! 迷惑とは、「だれにとってどんな不便や負担をかけることなのか」を具体的に伝えてみましょう。
楽々かあさん:大人は今までの経験から判断して「あ、これって迷惑かな?」と気づけますが、人生経験が少ない子どもは、「迷惑だよ!」のひと言ではピンとこないことも。
こんなときは、「迷惑」とはだれがどんな思いをして、どんな不便や負担をかけることなのか、具体的に納得できる理由を伝えましょう。同時に「やっていいこと」もセットにして、周りへ配慮する経験を重ねていくといいでしょう。
たとえば、病院の待合い室で子どもの携帯ゲーム機の音が出てしまう場合、
「病院では大きな音で頭が痛くなる人もいるから、音はオフにね」
などと、そのルールが必要な理由を説明するとGood!
(院内で掲示物などがあれば「ほら、見て」と、根拠を見せながら伝えると効果UPです)
No.4
Before…「うるさい!」
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After…「声を“これくらい”にしてくれる?」
子どもにしてほしいことは、まずは親が目の前でお手本を見せてあげるといいでしょう。
楽々かあさん:たとえば、子どもが騒がしいときに「うるさい!」ってだけ言っても、小さな子や相手の意図を察することが苦手な子は、それが「声を小さくしてほしい」という要望だと気づけないことも。
こんなときは、
●「“これくらい”の声で話せばいいんだよ」と、親が実際にちょうどいい声のボリュームの手本を見せる
●「アリさんくらいの声で」「うちのテレビのボリューム“10”くらい」など、その子がイメージしやすい例をあげる
●人さし指を「シーッ!」と口に当てる、“口にチャック”のポーズをする、などのボディランゲージを併用する
といった方法を使うと効果的ですよ。
No.5
Before…「ダメ‼」
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After…「ここまではいいけど、ここからはダメ」
許容範囲を具体的に示して伝えてみましょう!
楽々かあさん:子どもが「やったらアカン」ことをしたら、親がキッチリ「ダメ!」と伝えることだって、ときには大切。
ですが、とくに少々エネルギッシュなお子さんなどは、家でも、園・学校でも「あれはダメ」「これもダメ」と言われ続けて、どうしていいかわからなくなることも。
こんな場合は、「ここまではいいけど、ここからはダメ」と、目安になる許容範囲を引いて示すと、子どもも自分でブレーキをかけるタイミングがわかってきます。
たとえば、きょうだいが家の中でボール遊びを始めた場合、
「公園・お庭ではいいけど、家の中ではダメ」とか
「リビングではダメだけど、廊下で静かにやるならいいよ」とか、
その場の状況や住宅事情に合わせて、「わが家の許容範囲」を言葉で伝えてください。
No.6
Before…「ワガママ言うんじゃないの‼」
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After…「どうしてそう思うの?」
大人には見えないその子なりの理由があるのかも。 一度、その子の世界に寄り添ってみると、解決策が見えてくることも!
楽々かあさん:日ごろから「子どもは感受性が豊かな生き物」だと心得ておくと、大人は「ワガママ」「わからず屋」などと思える行動にも、その子なりの理由があることに気がつくでしょう。
「こうじゃないとイヤだ」「絶対にやらない!」などと、突然子どもに座り込まれて、困り果ててしまうこともあると思いますが、それは子どもの五感が敏感で、大人よりも鮮明に色や形、味や匂い、音などをキャッチし、強く興味を惹かれたり、不安を感じたりしているから、ということも多いのです。
こんなときは「どうしてそう思うの?」「なにが気になるの?」と、その子の世界にていねいに耳を傾けると、解決策や妥協案が、見つけやすくなると思いますよ。
No.7
Before…「静かにしないと、バスに乗れないよ」
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After…「静かにバスに乗れたから、今度は○○まで行けるよ」
社会的なルールは、身につくまで根気よく周りの大人が教えていく必要があります。まずは、ルールを守ることで得られる「いいこと」を示してみて。
楽々かあさん:子どもに根気よく社会的なルールを教えていくには、「ルールを守ればいいことがある」というイメージを繰り返し伝え続けるのがポイント。
「××しないと、××できない」というペナルティよりも、「○○すれば、○○できる」と、ごほうびを与える形のほうが受け入れやすいと思います。
ここでのごほうびとは、モノやお小遣いをあげることだけに限りません。
たとえば、その子の「行動範囲が広がる」「選択肢が増える」「自主性に任せる」など自由度が上がることや、周りからの「感謝」や「称賛」の言葉をかけてもらうこと、といったものもごほうびになります。
No.8
Before…「だから言ったでしょ!?」
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After…「こういうとき、どうすればよかった?」
乱雑に詰め込んだタンスの引き出しのように、頭の中から必要な記憶をスムーズに取り出せないのかも。いっしょに経験をリマインドしてみて。
楽々かあさん:何度も同じことで繰り返し注意されがちな子は、「過去の経験を適切なタイミングで思い出すこと」が苦手なのかもしれません(そんな子は、失敗を恐れずにチャレンジできるという長所もあります)。
このような場合は、過去の経験を思い出すためのきっかけを与えるといいでしょう。
たとえば、大事な物が見当たらないとき(その日だけで3回目)、
「こういうとき、どこを探せばよかったっけ?」
「前はどこにあった?」
「きょう通った場所を思い出してごらん」
などと声をかけ、記憶の引き出しを探す手がかりを。
今回は、「子どもにブレーキをかけたいときの声かけ」をご紹介しました。ぜひ、活用してみてくださいね。
次回は、「ママパパ自身への声かけ変換」を紹介します。お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
おおば みすず/楽々かあさん。子育てのかたわら、著述活動と子育てや日常生活のアイデアの情報発信を続ける。「声かけ変換表」がネット上で14万シェアを獲得して拡散し、話題に。著書に『楽々かあさんの伝わる!声かけ変換』(あさ出版)、『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』(汐見稔幸 監修/ポプラ社)他がある。
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