「きょうも子どもに怒ってばかり…」
「なかなか子どもに伝わらなくて、思わず声を荒げてしまった…」
子育ての中で、日々の声かけに悩み、こんな思いをされているママパパは多いのではないでしょうか。
そこで今回は、話題の「声かけ変換表」を作った“楽々かあさん”こと、大場美鈴さんに、子どもによく伝わる声かけ変換について、3回の連載で紹介していきます。
今回は、「子どものやる気を引き出す声かけ変換」です。
お話/大場美鈴(楽々かあさん)
声かけ変換で大切な3つのこと
《その1》こどもとの自然な会話を楽しむ
楽々かあさん
すべての言葉を変換しようとしなくていいんです。 まずは、“子どもとの自然な会話を楽しむ”ことを大切にしてください。 「うまく伝わらないな」と思ったときだけ、ちょっと立ち止まって“別の言い方”に変換してみましょう!
―――子どもとの“自然な会話”って意識すると難しいですよね。
楽々かあさん:親子の自然な会話や日々のなにげない雑談が、親子の信頼関係と、子どものコミュニケーション力を育てる基本になっていると、子どもたちが大きくなった今も実感しています。
でも、仕事や子育てで時間や気持ちの余裕がなかったりすると、親子で気持ちがうまく伝わらなくて、お互いに消耗してしまったり、ただ”フツーの会話”をするだけでも、ハードルが上がってしまいますよね。
そんなときに、「声かけ変換」を心がけて、発想の転換術を身につけておくと、きっと役立つはずです。
「声かけ」は、親子の会話のきっかけですから。
―――つまり、子どもの自然な会話をスムーズに積み上げていくきっかけとなるものが、「声かけ変換」ということなのですね。
《その2》声かけ変換ができていても、できていなくても「親ががんばっていることは同じ」
声かけ変換がうまくいかなくても、「わたしはダメな親だ」なんて、自分を責めないでください。
楽々かあさん:これから、Before⇒Afterのように、声かけ変換術を紹介していきます。
ただ、Beforeの声かけは、決してダメな親の例ではないし、Afterの声かけがいい親の例でもありません。
子育ては、キレイゴトだけではできませんからね。
「声かけ変換」は、日々の子育てをちょっとだけラクにして、親子の気持ちのすれ違いを減らす、 効率のいい省エネ術だと思っていただければうれしいです。
―――大場さんの言葉で気持ちが楽になったママパパも多いと思います。ただ、声かけ変換がうまくいかず、声を荒げてしまったときは、子どもにはなんて声をかけたらいいんでしょうか。
子どもには「ごめんね。ちょっと言いすぎちゃったね」と謝ればOK。 親が目の前で“謝るお手本”を見せるのも、大切な教育の一環です。 こうした親の姿を見るうちに、子どももお友だちとケンカしたときに、素直に謝れることが増えると思いますよ。
楽々かあさん:もし、「つい言葉がいきすぎてしまった…」「今の言い方はちょっとキツかったかな」と思うことがあっても、親だって人間です。
子どもにごめんねの気持ちを伝えたら、いつまでも引きずらず、「しゃあない、しゃあない、あるある~」と流してしまうことも大切。
冷たい麦茶などで一息入れるのもオススメです。
《その3》“うちの子用”の声かけ変換にアップデートしていく!
―――「うちの子用」の声かけ変換を見つけていくうえで気をつけることはありますか?
すべてのお母さん・お父さんが「うちの子専門家」。目の前のお子さんをよく観察し、言葉に耳を傾け、その子の個性に合わせてあげれば、お子さんにピッタリの声かけがひらめきます。
楽々かあさん:子育ての正解はひとつではありません。だから、その子にとって最適な声かけは、最終的には親が自分自身で見つけていく必要があります。
でも、難しく考えなくても大丈夫です。わたしはすべてのお母さん・お父さんが「うちの子専門家」だと思っています。
なぜなら、お子さんのことを誰よりも分かっているのは、お母さん・お父さんです。そして、お子さんが待っているのは、ほかでもないお母さん・お父さんの言葉なのですからね。
今は、子育て中の親に対して厳しい視線が向けられがちで、自分の子育てに不安を抱くかもしれません。でも、まずは「”その子の親であること”に、自信を持って!」と言いたいですね。
「子どものやる気を引き出す声かけ変換」5選
No.1
Before…「これくらい、できて当たり前」
▼変換▼
After…「よくがんばったね‼」
毎日の小さながんばりに気づき、言葉で伝えてもらえるだけで、報われた気持ちになるのは、親も子も同じ。
楽々かあさん:身支度、登園登校、宿題や習いごと…。子どもは、毎日小さながんばりを積み重ねていますが、いつの間にかそれを「できて当たり前」とは感じていませんか?
でも、たとえば、家族が「夕飯はできてるのが当たり前」なんて態度でいたら、不満がたまるでしょ?
ですから、子どもがただ園や学校に行って帰ってきただけでも、「きょうは暑かったのに、よくがんばったね!」と声をかけてあげたいですよね。
一見、「やって当然。できて当たり前」に思える、毎日の小さながんばりに気づいて、言葉で伝えてもらえるだけで、少し報われた気持ちになるのは親も子も同じではないでしょうか。
No.2
Before…「ここができてないよ!」
▼変換▼
After…「ここまでできてるね‼」
実は、意識して「できているほう」を見るクセをつけないと、親のダメ出しが多くなってしまいます…。
楽々かあさん:子どもが得意気にテストや宿題を見せてきても、まずペケやミスのところに目が行きませんか? 人というのは、間違いや欠点のほうが、よく気がつきやすいのだそう。
だから、意識して「できているほう」を見るクセをつけないと、親のダメ出しは多くなりがちなんです。テストではペケよりもマルのほうを、漢字の宿題では間違っている部分よりも、少しでもできたところを見て、
「ここまでできてるね」「この字がキレイだね」
などと、プラスの情報にフォーカスするようにしましょう。
No.3
Before…「すごいね!」「エライね!」
▼変換▼
After…「○○できたね!」「○○しているね!」
子どものいいところに気づいて、見たままを言葉にして伝えるだけでOK!
楽々かあさん:子どもをたくさんほめてあげたくても、「すごいね」「エライね」だけだと、すぐにネタ切れになっちゃいませんか?(笑)
こんなときは、子どものいいところに気づいて、見たままを言葉にして伝えてみましょう。
たとえば、お絵描きを「ママ、見て、見て~」ってうれしそうに見せてきたら、
「大きく描けたね」「色をいっぱい使ってるね」とか、「おお!ついに完成したね」など。
これなら、言葉に困ることもありませんし、親が上から目線の評価だと「うざい」なんて言われてしまう思春期以降も、末永く使えるんですよ。
No.4
Before…「ワガママだなあ…」
▼変換▼
After…「意志が強いともいえるよね」
子どもの短所や欠点が気になったら、口にする前に、長所に変換してみて。
楽々かあさん:なにができても、できなくても、最終的にはその子のすべてを親が肯定し受け入れられるのが理想だとわたしは思っているのですが、その手前のステップとして、「短所と長所をセットで見る」練習することをオススメしたいです。
子どもの短所や欠点が気になったら、心の中でもいいので、「それって、こうだとも言えるよね」と、長所やいいところに変換してみるんです。
たとえば、「ワガママ→意思が強い」「集中力がない→好奇心旺盛」「優柔不断→周りを気遣える」 とか。
このように「親の目」をあたたかく育てていくと、不思議と子どもも明るい方向に伸びていきます。
No.5
Before…「〇歳なら、みんなできてるよ」
▼変換▼
After…「昨年よりだいぶできるようになったね」
その子なりの小さな進歩を言葉にして伝えてみましょう!
楽々かあさん:子どもの育ち方(発達)には個人差がありますし、その子の中でも、グングン育つ部分もあれば、ゆっくり育つ部分もあり、ものごとが身につくタイミングも違います。
ですから、周りの同い年のお子さんや、平均的・標準的な成長を基準に比較しても、あまり「その子」の成長の足しにはなりません。
こんなときは、「その子自身」と比較してみましょう。
たとえば、自転車に乗れたのが何歳だったとしても「去年より、上手に乗れるようになったね」とか…。
1年前のその子を思い出し、少しでもできることが増えていたら、その子なりの小さな進歩を言葉にして伝えるといいでしょう。
今回は「子どものやる気を引き出す声かけ変換」をピックアップしました。
できそうなものから、ぜひ日常生活に取り入れてみてくださいね。
次回は、「子どもに注意したい、教えたい、ブレーキをかけたい」ときの声かけ変換を紹介します。
お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
おおば みすず/楽々かあさん。子育てのかたわら、著述活動と子育てや日常生活のアイデアの情報発信を続ける。「声かけ変換表」がネット上で14万シェアを獲得して拡散し、話題に。著書に『楽々かあさんの伝わる!声かけ変換』(あさ出版)、『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』(汐見稔幸 監修/ポプラ社)他がある。
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