小学校入学を楽しみにしている年長児さんも、いよいよ入学目前となったときに、これからの新しい生活に不安を感じることがあるかもしれません。
入学後も、初めての授業や友だちに慣れるのに精一杯で、新しい環境の中で、ときには心が疲れてしまうこともあるでしょう。
お子さんの様子がいつもと違うけれど、理由を聞いても「なんでもない」と言われて、困ってしまうこともありますね。お子さん自身も、不調を自覚したり、言語化したりするのが難しい場合があるかもしれません。
お子さんになんらかのストレスや不安があるのではないかと感じられたとき、お子さんの心に寄りそう方法としておすすめなのが読み聞かせです。
幼稚園、小学校での教諭経験もある千葉経済大学短期大学部こども学科教授の横山洋子先生が、お子さんと一緒に読みたい絵本を紹介してくださいました。
お話/横山洋子(千葉経済大学短期大学部こども学科 教授)
文/大悠社
絵本の世界を親子で旅しよう
「疲れたときに、よい本や音楽、映像などに触れると、いつの間にか心がリフレッシュされることがありますよね。
気軽に手にとって、親子で一緒に楽しめる絵本は、違う世界にスッと連れていってくれる優れものです。
失敗と思ったことがよいほうへ向かったり、愛される喜びを知ったり、たくさんの人とのつながりを感じたり……。絵本の主人公が経験していることを、お子さんと疑似体験するような気持ちで読み聞かせをしましょう。
一緒にいろいろな体験をすれば、自然とお子さんの心に寄りそうことができます。
そんな時間を通じて、お子さんは気持ちを新たにしたり、モヤモヤした感情を解消したりできると思います。」と横山先生。
不安やストレスを和らげる、おすすめの絵本
『そらをとびたかったペンギン』
(学苑社 申ももこ/作 shizu/協力 はやしみこ/絵 佐藤恵子/解説)
「『だれもが安心して存在できる社会へ』という副題がついています。『みんなと同じようにしなければならない』と思うと、苦しさを感じるお子さんもいます。あるがままの自分を受け入れてくれる人がいたら、自分のよさにも気づけるでしょう。多様性を認め合う大切さを、心新たに実感できる絵本です。」
『やもじろうとはりきち』
(佼成出版社 降矢なな/作)
「『友だちと仲よく』と大人は言いますが、そんなに簡単なものではありません。相手のイヤなところが目についたり、イジワルしたくなったり。でも、いろいろなことを乗り越えて、助け合いながら共に生きていくよさを感じさせてくれます。身近な友だちを、優しい目で見つめ直せる一冊です。」
『せかいのこどもたちのはなし はがぬけたらどうするの?』
(フレーベル館 セルビー・ビーラー/文 ブライアン・カラス/絵 こだまともこ/訳)
「小学校入学前後は、お子さんの歯が抜け変わる時期です。抜けた歯をどうするか、世界中の子どもたちにたずねたところ、国によってさまざまな風習があることがわかりました。『歯の妖精』を信じている人々も。世界にはいろいろな国と風習があることを知り、今日もどこかでだれかの歯が抜けていると思うと、どこかでつながっているような気がするものです。」
『おこだでませんように』
(小学館 くすのきしげのり/作 石井聖岳/絵)
「家でも学校でもいつも怒られている主人公。読み進めていくと、主人公の気持ちが痛いほどわかり、かわいそうに思えてきます。でも、七夕の願いごとがきっかけとなり、先生やお母さんが主人公の思いに気づき、まわりの人たちが変わってくれたのです。愛されていることのよさが伝わり、読んだ子どもも勇気づけられるでしょう。」
『よみとく10分 10分で読める物語 1年生』
(Gakken 青木伸生/選 スタジオポノックほか/絵)
「国語の先生が、小学校1年生のために選んだ14作品が入っています。日本と世界の物語や科学のお話、詩や俳句などを紹介します。10分ほどでバラエティに富んだ名作に触れることができます。まずはママパパが読み聞かせて。読みたいお子さんは自分で読んでみましょう。読むことが楽しく感じるきっかけになる一冊です。」
文字が読めるようになっても読み聞かせは大切
文字を覚えて、一人で本を読めるようになったお子さんにも、読み聞かせは効果的です。
「文字をただ追うのと、内容に入り込んで心が動かされる体験とでは、ずいぶん違います。ママパパが心を込めて読んでくれることで、お子さんは心から本を楽しむことができます。
絵本の世界を入り口に“読むこと”が楽しくなると、お子さんは成長に従って、自分からたくさんの本に触れ、世界を広げることができるようになります。
ですから、『小学生になったんだから自分で読みなさい』というのではなく、寝る前や、お子さんに『読んで』と言われたときは、積極的に読んであげましょう。
読み聞かせができる期間って、実はそんなに長くないのです。
個人差はありますが、中学年になれば、多くのお子さんが自分で読むようになるでしょう。
年長児さん、1年生へのおうちのかたの読み聞かせは、一人読書への橋渡しの役割を担います。親子で読み聞かせを楽しんでくださいね。」
この記事の監修・執筆者
富山大学教育学部附属幼稚園・教諭、富山市立古里小学校、富山市立鵜坂小学校・教諭を経て、現在は千葉経済大学短期大学部こども学科の教授を務める。著書には、『保育者のためのお仕事マナーBOOK』、『保育に生かせる!年中行事・園行事ことばかけの本』、『毎日のちょこっとあそび』(学研)などがある。
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