短歌、エッセイ、小説、絵本など幅広く活躍し、昨年は『もうしばらくは早歩き』や『まきさんのソフトクリーム』などを発表の作家・くどうれいんさん。
「100%ORANGE」としても活動し、『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったはなし』で日本絵本賞大賞受賞などもされている絵本作家・及川賢治さん。
注目の2人が初めてタッグを組んだ絵本『ぜんぶやりたい まにちゃん』の発売を記念して、今回、初対談が実現しました。
【くどうれいんさん×及川賢治さん】初タッグの絵本が完成
今回、絵本『ぜんぶやりたい まにちゃん』で初タッグを組んだのは、数々の名作を手掛けてきたくどうれいんさんと及川賢治さん。
実は本インタビューが初顔合わせだったくどうさんと及川さん。初めての対談ながら、作品作りにかける思いには通ずるものがありました。
【対談】お二人の絵本制作のこだわりをインタビュー!

―まずは、『ぜんぶやりたい まにちゃん』が完成して、率直な感想を教えてください。
及川賢治さん(以下・及川):まずは、できたな……!と。最初は月刊誌として形になっていたのですが、ハードカバーの単行本になると、まにちゃんの表情や表紙から受けるイメージがまた少し違うように感じます。
くどうれいんさん(以下・くどう):月刊誌のときよりひと回り大きくなりましたね。まにちゃんの顔がバーン!と描かれていてうれしいです。
及川:堂々としていていい表紙ですね。
児童書を書くときのこだわりは「子ども向けだと思わないこと」
―児童書を執筆するときならではのこだわりについてお聞きします。くどうさんは、児童書を手掛ける際に大切にしていることはありますか?
くどう:子ども向けだと思わないようにしています。子どもの頃絵本を読んでいて「子ども向けだな」と思って読んでいなかった気がして……。できるだけ自分の中から「子ども向けっぽくしよう」という思いを取り除こうと頑張っています。
及川:すごくいいですね。
くどう:私は普段から難しい言葉を使って書くタイプではないので、言葉の難易度を落とすことも特にしていなくて。一般向けの文章を書くときとそこは変わりません。例えるなら、歩くという大人がやっても子どもがやっても同じ作業を、児童書を書くときはゆっくり進めるみたいな感じですね。
及川:いやあ、ぼくもおんなじ。子ども向けだと思ったことないなあ。
くどう:ほんとですか。うれしいです。
くどう:あとは、幼いころ自分が言ってほしかったことを絵本で言い続けています。
私自身、こうしましょうああしましょうと、言われたことをそのままやることが苦手で、少し反抗心がある子どもでした。だから、自分の一番根っこにある、小さなころから思っていることを書いています。
―くどうさんが初めて児童書を出版されてから5年ほど経ちますが、児童書を書くようになってから、物の見方が変わったと思われたことはありますか?
くどう:変わらないのが怖いですね。児童書を書き始めたからといって何も変わらないです。むしろ生き様や、人間性がまるっと出るので、一番嘘をつけない媒体だな……と。素敵な絵本を書く方は、及川さんを含め、人が絵本になっているような気がします。だから私も、書くときに何かを頑張るより、いい絵本を書けるような暮らしを頑張りたいなと思っています。
人生や毎日の生活が“絵本めいていたらいいな”という気持ちで日々暮らしたいなあと思います。
引きの構図とリアルな写真が絵本を引き立てる
―及川さんは絵本のイラストを作成する際、ご自身のイラストの作風と物語の内容をどのようにすり合わせていますか?
及川:自分の好きなように描くのではなく、物語の雰囲気に少し合わせます。得意な描き方でいいかというとちょっと違うなと。物語に合わせた構図や色使いにするとしっくりくることもあるし、モノクロで描いてみようかとか、本のサイズは縦長と横長どちらなのかとか。ちょっとしたことを変えることもありますし、場合によっては大きく変えないといけないこともあるので、色々ですね。
―どのページも構図がすごいですよね。
及川:この本を描くにあたってまずは構図から考えました。全体的にカラフルで人が小さくいるみたいな、引きの構図にしたいと最初に思い描きはじめました。

及川:あと今回は写真もちょっと入れたりして。時にはそういう、絵以外の手法も使ったりします。
くどう:これかっこいいですよね。
及川:この背景の木は、自分で撮った写真をコラージュのように混ぜて使っています。
最初はまにちゃんのドレスもすずめの写真を撮って羽毛をコラージュしようと思ったんだけど、すずめをうまく近くで撮影できなくて辞めました。
くどう:ふふふ。そんな苦労を。

くどう:この、大人の間からまにちゃんを見る見開きも好きなんです。かっこよくて。この白いのが大人の足で、足と足の間からまにちゃんが覗いているんだとわかったときに、このカットが映画っぽく感じて。
及川:子どものとき「ガンバの冒険」というアニメで、ねずみ視点で世界を見ると人間が白く映っているのを覚えていて。それをイメージして仕上げました。
くどう:大人の大きさが立ちはだかる感じが、グッときました。
「ぜんぶやりたい まにちゃん」の2人の作家が“やりたいこと”
―やりたいことがたくさんある「まにちゃん」にちなみ、お二人がまにちゃんくらいの年齢だったころ、やりたかったことを教えてください。
くどう:私はあらゆる飲食店にあこがれがありました。田舎の田んぼしかないおばあちゃんちに住んでいて、草花しか遊ぶおもちゃがなかったので、色水を作ってジュース屋さんとかやって。
及川:ヨウシュヤマゴボウとか?
くどう:そうです!あれすごい色が着いちゃうので怒られるんですよね。くわ、ヤマゴボウ、タンポポとかをつぶしてミックスジュースを作って、おばあちゃんにゴクゴクって飲むマネをさせてました。だから、お花屋さんとかではなく、ジュース屋さんゼリー屋さん、ハンバーガー屋さんとか食べ物屋さんになりたかったですね。
及川:僕は青いサワガニを捕まえたかったな。珍しい青いサワガニがときどきいて、そればかり探していました。あとは、こたつの中におもちゃを持ち込んで、火山の中で戦いごっこみたいなのもやったり。
くどう:あはは、すごい。頭突っ込んで、足出してたんですね。
―では、まにちゃんのように、やりたいこと全部やったなというよくばりエピソードはありますか?
及川:テレビ見ながらYouTube見て、ギター弾いて……と、3つのことを同時にやりました。テレビの音は消して、YouTubeの音聞きながらギターを弾くことが、癒しみたいな休息の時間になってます。確かにこれはよくばったことかもな~。
くどう:私は、原稿の締め切りがそれどころではないのにパンナコッタを作りました。原稿書きながらパンナコッタ煮て、ラジオ聞いて……と。
及川:パンナコッタできました?
くどう:できました!レストランのランチセットについてくるようなサイズではなく、大きいのを作りました。
―最後に、お二人がこれからやりたいことを教えてください。
くどう:何だろう……。今はこれがやりたいというより、月曜から日曜まで必死にやっていて、改めてやりたいことあるかといわれると……。
あ!でも、華道を習いたいなと思ったり、バク転教室に通ってバク転を習得したいなと思ったりしています。バク転は手折れたら大変だからやめなさい、と止められました。
―お二人とも、やりたいなと思ったらすぐやるタイプですか?
くどう・及川:そうですね。
くどう:やってからやりたかったことに気付くかもしれないです。流れのままにやったら、そんなにやる気じゃなかったけど意外とハマったりとか。
及川:やりたいことかぁ……。ぼくは……休みたいかもしれない。
くどう:ふふふ、わたしも~。
まとめ
くどうれいんさんと及川賢治さんに、作品作りのこだわりや「やりたいこと」についてお話ししていただきました。お二人のこだわりが詰まった絵本『ぜんぶやりたい まにちゃん』を、ぜひ手に取ってみてください。
【くどうれいん】
岩手県出身在住。短歌、エッセイ、小説、絵本など幅広く活躍中。小説『氷柱の声』『スノードームの捨てかた』(講談社)、エッセイ『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『うたうおばけ』(講談社文庫)、『湯気を食べる』(オレンジページ)、絵本『まきさんのソフトクリーム』(絵・柴田ケイコ 岩崎書店)、『あんまりすてきだったから』(絵・みやざきひろかず ほるぷ出版)、歌集『水中で口笛』(左右社)など著書多数。
https://rainkudo.com/
【及川賢治】
千葉県生まれ東京都在住。竹内繭子と共に100%ORANGEとしてもイラストレーション、絵本、漫画、アニメーションなどを制作している。絵本に『ぶぅさんのブー』(福音館書店)、『まるさんかくぞう』『いっこ さんこ』『ねこのセーター』(文溪堂)、『エルメスのおさんぽステッチ』『おはよう』(講談社)、漫画に『SUNAO SUNAO』(平凡社)などがある。
『よしおくんが ぎゅうにゅうを こぼしてしまった おはなし』(岩崎書店)で第13回日本絵本賞大賞を受賞。
https://www.100orange.net/profile.html
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