【専門家監修】運動神経がよくなる? コーディネーショントレーニングって?

更新日: 公開日:

「コーディネーショントレーニング」ってご存知ですか?
子どもの運動神経が気になっていたり、運動神経を伸ばしたい! と考えたりしている保護者の皆さま必見のトレーニングです。最近では、スポーツクラブなどで取り入れているところが増えているよう。
そこで、コーディネーショントレーニングってなに? どんなことをするの? など、コーディネーショントレーニングの基本について、東京学芸大学の髙橋宏文先生にうかがいました。

監修/東京学芸大学 健康・スポーツ科学講座 教授 髙橋宏文

目次

1 コーディネーショントレーニングとは?

神経系に働きかけ、「コーディネーション(coordination)=調整する」力を伸ばす

コーディネーショントレーニングは、1970年代の旧東ドイツで生まれ、1990年代ごろから、日本でも普及し始めました。

もともとはアスリート育成を目的として開発されましたが、今では世界各国で、子どもの運動能力向上のために用いられています。

コーディネーショントレーニングは、神経系に働きかける運動です。

「神経系に働きかける」とは、つまり、身体を操作する力に働きかけ、これを伸ばすことになります。

コーディネーション能力が高いと、体を自由に操れる

体を動かすことは、

  • 脳が目や耳などから入ってくる情報を処理する
  • 「どう動くか」を決め、指令を出す
  • 指令を受けて筋肉が動く

というしくみから成り立っています。

情報や指令は電気信号のようなもので、神経回路(運動神経)を通ります。

この回路が発達していると、情報・指令がすばやく正確に通ることができ、結果、自分の体をうまく調整し、操ることができるのです。

一般的に運動神経や運動センスがよい人は、自分の体を思ったように動かすことができる人、といえるでしょう。

つまり、運動神経の土台ができる幼児期からコーディネーショントレーニングに取り組み、コーディネーション能力を高めることは、運動神経(運動センス)をよりよくすることにつながるのです。

コーディネーション能力は12歳までに伸ばす

神経系の発達は、ひとつの動きではなく、さまざまな動きを経験することで刺激を受けて成長するため、幼児期・児童期の運動が大切とされています。

5歳までに80%、12歳までにほぼ100%の神経系が出来上がり、とくに9~12歳は、動きをグングン吸収して成長する時期です。

  • 5~8歳ごろはプレゴールデンエイジ
  • 9~12歳はゴールデンエイジ
  • 13~15歳ごろポストゴールデンエイジ

といわれています。

プレゴールデンエイジでは遊びの中で、ゴールデンエイジでは多様な運動の中で、ポストゴールデンエイジではより専門的な運動や競技の中で、さまざまな刺激を受けて、運動する力が磨かれていきます。

ただ、12歳以降にまったく運動する力が向上しないわけではありません。程度にはよりますが、何歳からでも、能力を高めることはできます。

2 コーディネーションの7つの能力

コーディネーション能力は、以下の7つに分類できます。

定位能力

自分がどこにいて、どんな状態にあるのかをつかむと同時に、動いているボールや人(相手や味方)との距離や間合いをはかる力。

例…人とぶつからずに走れる、ボールの落下地点に正確に入れる

バランス能力

転びそうになったり、体勢が崩れたりしたときに、上手に体を保ち、立て直す力。不安定なものの上や空中で体勢を保ち、動作する力でもある。

例…体勢を変化させながらドリブルができる、スキーやスノーボードで滑る

識別(分化)能力

力を入れる、ちょっと抜く、じょじょに力を入れるなど、出力の程度と方向を調整する力。これにより、イメージどおりに用具を動かせる。

例…バットやラケットを狙いどおりの軌道と速度でふれる、ボールを速く投げたりゆるく投げたり、力の入れ具合を加減できる

リズム化能力

音や人の動きに対し、タイミングを合わせて動く力。目で見た動きを、自分の体で再現する力。この能力がないと、動きがぎこちなくなる。

例…ドリブルやパスがタイミングよくできる、ダンスのステップが軽快にふめる

反応能力

音や光、人の動きなど、情報をすばやく察知し、それに対して正しく、スピーディに動きだす力。情報には目や耳から入るものだけでなく、触覚などになるものも含まれる。

例…合図と同時にスタートがきれる、速いボールに対して体が動く

連結能力

いくつかの異なる動きをスムーズにつなげ、流れるような一連の動きにする力。体の部位をつなげ、スムーズにムダなく動かす力でもある。

例…助走・踏み切り・跳躍がスムーズにできる、ボールに合わせて移動・取る・投げるが流れるようにできる

変換能力

急な変化に対し、適切に動く力。状況判断や身体操作、定位能力や反応能力など、さまざまな能力が複合的にかかわっている。

例…並走している相手がダッシュしたら自分も速度を上げられる、バウンドが変わったボールを捕球できる



多様な動きをするほどに、さまざまな能力が複合的に関連するようになっていきます。

3 家庭でできる、コーディネーション能力を高める遊び

日常的に家庭でできる、コーディネーション能力を伸ばす運動遊びを紹介します。

ひとつひとつの動きを体得することで、次のステップに進めるので、いきなり難しい動きを取り入れたり、無理に続けたりせず、子どもが楽しいという思えることを何より大切にしましょう。

7つの能力のうち、おもに使う能力を記載していますが、それぞれが複合的に合わさっているため、そのほかの能力以外にも効果的です。

定位能力を伸ばす~へびをよけろ~

■3~8歳ごろ

  1. なわとびの片側を木などに結び、もう片方を親が持ちます。なわとびを左右に揺らして、子どもはなわに触れないようにしながら跳び越えます。なわの動きを少しずつ大きくします。
  2. なわとびを波のように縦に揺らして、子どもが跳び越えます。
  3. 揺らすリズムや大きさを変えましょう。

バランス能力を伸ばす~落とさず立とう~

■3歳ごろ~

  1. 正座して上を向き、おでこにハンカチを乗せます。
  2. 正座した状態からハンカチを落とさないようにそっと立ち上がります。
  3. 2.ができたら、長座の体勢や、あおむけに寝転んだ状態からチャレンジしましょう。

識別(分化)能力を伸ばす~トンネルボール~

■3~5歳くらい

  1. 親子で少し離れて、向かい合います。親は両足を開いて立ち、子どもが親の足の間を通すように、ボールを転がします。うまくできるかどうかという距離を探して始めましょう。
  2. 慣れてきたら距離を変えたり、足の開き具合を変えたりして、難度アップ!

リズム化能力を伸ばす~ペンギン親子~

■2~3歳くらい

  1. 親子で同じ方向を向いて縦に並んで立ちます。親の両足の上に、子どもの両足を乗せます。
  2. 親は子どもの手を持って、体を左右に揺らしながらタイミングよく歩きます。
  3. 慣れてきたら、後ろ向きにも進みます。

反応能力を伸ばす~タオル取りっこ~

■3~5歳くらい

  1. 親子で足を開いて向かい合って立ち、間に伸ばしたタオルを置きます。
  2. 親が「せーの、タオル!」と合図をしたら、タオルを取ります。「タオル」以外の「たぬき」「タンス」と言った場合は取りません。
  3. 慣れたら、背中合わせで同様に遊びます。

連結能力を伸ばす~大きくケンケンパ~

■3歳ごろ~

ケンケンパを、できるだけ遠くまで跳んで遊びます。パのたびに、ケンケンする足を入れ替えましょう。

変換能力を伸ばす~足おに~

■3歳ごろ~

  1. 親子で向かい合って立ち、両手をつないで輪になります。
  2. 手をつないだまま、親がおにになって子どもの足を踏もうとし、子どもは踏まれないようによけます。
  3. 慣れてきたら、おにを交代して、子どもが親の足を踏むように動きます。

遊ぶ際に気をつけること

・もしうまくできなくても、できるまで行うというような考え方は必要ありません。あくまでも様々な調整を必要とする運動を体験していくことが重要です。
・形にこだわらずに見守りましょう。
・難しい場合は、具体的なヒントを伝えます(狙う位置にテープを貼るなど)。
・課題を与えましょう(「○○に当ててみよう」など)。
・親も楽しみながら、親子でいっしょに遊んでください。
・正しくよりも楽しく行います。
・安全が第一です。

とくに幼児期は、さまざまな動きを経験することで、児童期以降の運動発達にプラスの影響を与えます。

“運動させなくては”と考えずに、“いっしょに楽しく”遊びに取り組む中で、いろいろな体の動きを積み重ねていきましょう。

この記事の監修・執筆者

東京学芸大学 健康・スポーツ科学講座 教授 髙橋宏文

同大学男子バレーボール部の監督。順天堂大学大学院修士課程コーチ学専攻。大学院時代は同大学女子バレーボール部コーチを務め、コーチとしての基礎を学ぶ。現在はバレーボールの指導のみに留まらず、運動指導全般に目を向けて「運動する力」を伸ばす研究や学習を行う。著書に『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』『幼児の運動あそび 親子で楽しむ魔法のレッスン帖』(メディアパル)など。

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

あわせて読みたい

おすすめ情報

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事