好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

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好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

「好き!」「楽しい!」「もっとやってみたい!」という気持ちは、子どもの脳の成長にとても深く関わっています。遊びや夢中になれる体験こそが「考える力」の土台を育てる大切な時間なのです。

ここでは、Gakken「ドラゴンゲームブック 超脳王」監修の脳科学者・篠原菊紀先生に、小学校低学年の時期だからこそ大切にしたい脳の育て方と、そのときの保護者の関わり方について話を伺いました。

取材・文/細川 麻衣子

目次

低学年は「考える力」がぐんぐん育つ時期!

小学校低学年の頃は「考える力」の土台が大きく育つ、とても大切な時期です。

脳にはさまざまな役割を担う部位がありますが、実は「好き」「嫌い」といった感情に関わる脳の仕組みは、おおよそ5歳頃までに土台ができあがるといわれています。

一方で6歳~12歳頃にかけては、前頭前野(前頭葉のなかの一部位)と呼ばれる部分が大きく発達していきます。前頭前野は、「考える」「判断する」「計画を立てる」「相手の気持ちを想像する」「問題を解決する」などといった、子どもがこれから人生を生きていく中で欠かせない認知機能を担っている部位です。

好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

そして前頭前野の代表的な働きのひとつが、ワーキングメモリ(作業記憶)です。

ワーキングメモリは❝脳のメモ帳❞とも呼ばれ、必要な情報を一時的に頭の中に置きながら、考えたり判断したりするときに使われます。例えば、文章を読みながら内容を理解する、暗算をする、友だちとの会話を続ける、しりとりで次の言葉を考えるなど、日常生活や学習のあらゆる場面で活躍する力です。この力が育つことで、学習面でいうと応用問題や複雑な課題にも取り組めるようになります。

つまり小学校低学年からは、「頭の中で情報を整理しながら考える力」が急速に育っていく時期なのです。

「好き!」「楽しい!」が学びを後押しする

ではワーキングメモリは、どうしたら伸ばすことができるのでしょうか。

子ども自身が「好き!」「やってみたい!」「楽しい!」と感じているとき、脳内ではドーパミンが多く分泌されます。これによって記憶をつかさどる海馬の活動も高まり、「覚えやすくなる」「新しいことを身につけやすくなる」といった効果が期待できます。

つまり、❝好きだから夢中になる➡夢中になるから覚えられる❞という流れが、脳の中では自然に起こっているのです

これは学習だけではなく、スポーツ全般、ピアノなどの習い事、工作や虫とりなどにもあてはまります。好きなことに夢中になっているあいだは脳にとって、とても効率の良い学習時間になっています。ですから、「(楽しいから)続けたい!」「(考えることって)おもしろい!」という気持ちを育てることこそが、小学校低学年では何よりも大切なのです。

これを繰り返すことで、❝あたまを使うこと❞そのものが好きになります。そうなると、この先みずから何事にもすすんで学んでいけるようになるのです。

ドーパミン:好きなことや楽しいことをしているときに働きやすい脳内物質。記憶をつかさどる海馬の働きを助け、学習効率を高めることが知られている

脳を使った楽しい遊び ―迷路・パズル・謎解き・RPG ―

では、子どもが楽しみながら学習の土台をあたためられて、さまざまな❝力❞を育んでくれる「遊び」をいくつか紹介します。

【おすすめの「遊び」と育ちやすい❝力❞】

●迷路
・空間認知力
・先を見通す力
・頭の中でルートを組み立てる力

●パズル
・論理的に考える力
・図形や立体をイメージする力

●謎解き・推理ゲーム
・情報を整理する力
・仮説を立てる力
・ひらめきや発想力

●物語(RPG・ストーリー性のあるゲームブックなど)
・次の展開を予測する力
・(登場人物などの)気持ちを想像する力
・判断力・問題解決力
・ストーリーを組み立てる力

●言葉遊び(しりとり・なぞなぞなど)
・語彙力
・言語理解力
・記憶しながら考える力
・発想力

『ドラゴンゲームブック 超脳王 ~炎帝竜からの挑戦状~』より

このように、「遊び」の種類によって養われる脳の働きは少しずつ違います。

ただ、どの「遊び」にも共通していることは、ワーキングメモリを鍛えられることと、「(考えることが)楽しい!」という経験を積み重ねられることです。

好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

例えば、迷路では「この先はどうなっているだろう?」「どちらへ進めばよいだろう?」と空間をイメージしながら考えます。このような遊びでは特に空間認知力などが育ちます

謎解きや推理ゲームでは、今ある情報を整理し、答えを想像する力が求められます。ここではワーキングメモリが活発に働くほか、脳の頭頂・側頭接合部も活性化し、新しい発想やひらめきを生み出しやすくなります。

RPGや言葉遊びでは、言葉の意味や音を頭の中で整理しながら考えるので、言葉を理解したり組み立てたりする❝言語野❞が活発に働くほか、ワーキングメモリを使いながら情報を整理し、新しい答えを導き出す力も養われます

考えて迷って試して「なるほど!」という瞬間を何度も経験し、これを積み重ねることで「考えることそのものが好き!」となっていくのです。

≪関連記事≫【脳科学者・篠原菊紀先生に聞いてみた!】「音読」が脳に効くヒミツ ~脳が活性化するってほんと? 頭がよくなる音読のススメ~

子どもを伸ばす保護者の関わり方

例えば、しりとりをしていて子どもがしばらく考え込んでいるとします。このとき、子どもの脳ではワーキングメモリが一生懸命働いています。言葉を思い浮かべたり、条件に合うものを探したり、いくつもの候補を比べたりと、頭の中ではこうして「考える力」が育っていくのです。

このように子どもが「考えている」瞬間は、見守ることが大切です。

保護者が意識したい2つのポイント/①「考えている時間」を大切に見守る

●すぐに答えを教えない
●考え込んでいる時間をせかさない
●夢中になっているときは集中を尊重する

このときに注目しておきたいのは、子どもが❝反射的に答えている❞状態になっていないかどうかです。(反応速度を鍛える遊びであれば❝反射的に答えている❞様子でOK)
❝ワーキングメモリ=考える力❞を育てたいのであれば、試行錯誤し、考えを巡らせている様子を確認し、注意深く見守ることが重要です。

保護者が意識したい2つのポイント/②「考え方」をほめる声かけ

●「どうやって思いついたの?」
●「それ、どうやってクリアしたの?」
●「その考え方おもしろいね。」
●「最後まであきらめなかったね。」

特に質問するかたちでほめることは、子ども自身の考え方を振り返ることができますし、自信にもつながります。また、子どもが❝教える側❞になれることで、大人よりも優位に立てて「自分の考えを聞いてもらえた!」という喜びにもつながります。「すごいね」だけでももちろん十分ですが、「どうやって思いついたの?」などという一言を添えるだけで、「考えることって楽しいな」という気持ちは、さらに育っていきます

好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

また、近年の脳科学の研究ではオフライン学習といって、学習していない間も脳の中で学びが整理されていることが明らかになっています。

オフライン学習:休息しているときや睡眠をとっているときも、起こった出来事を脳が整理し定着させるなどし、脳内で学習がされていること。

好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

ピアノの練習でたとえると、弾いている時間だけでなく、休憩している間や寝ている間にも、脳の中では練習した動きが繰り返し再生され、学習が進んでいるといわれています。

これは学習でも同じことが起こります。20分ほど集中したら少し休む、算数のあとに国語へ切り替える、など、脳に休息や変化を与えることは、オフライン学習を促すことにつながります。ですので、子どもが「休憩したい」「眠たい」と言ったら、無理に学習を続けさせるよりも、休ませてあげることで、実は脳には良い現象が起きているのです。

もちろん、「もっとやりたい!」と子ども自身が学習や遊びに夢中になっているときは、その気持ちを尊重してあげてください。

❝頭を使うこと❞を嫌いにならないことがカギ

脳は、「嫌だ」「怖い」と感じた体験をよく覚えています。だからこそ、考えることに苦手意識やトラウマをつくらないことが重要です。

「何でできないの?」「まだわからないの?」という声かけは、保護者にとっては冗談や期待のつもりでも、子どもには❝考えることは苦しい❞、❝間違えると責められる❞という印象として残ってしまうことがあります。

例えば、迷路やパズルなどで遊んでいるときや学習をしているとき、子どもが行き詰まっても、すぐに答えを教える必要はありません。答えを誘導するよりも、「いっしょに考えよう」と状況を共有することが、安心感や楽しさにつながり、トラウマを回避できるでしょう。

反復と復習で、効率よく脳を育てる

ただし、考えても難しすぎて答えが出ない場合もあります。そのときは切り上げて、先に解答を伝えたうえで「なぜこの答えになるのか?」というポイントを、反復・復習する方法をオススメします。

答えが出せないのに考えすぎることは、脳への学習効果は低いからです。

脳は、ワーキングメモリ=❝脳のメモ帳❞を使って情報を整理しながら考えています。しかしこのメモ帳には限りがあります。学んだことを長く記憶に残すには、繰り返し使うことが大切です。そうして記憶をつかさどる海馬や大脳新皮質へ、少しずつ定着させていけます。

小学校中学年から高学年にかけては、海馬の働きが前頭前野と共により活発になり、学んだことを蓄えやすくなっていくので、反復・復習は、脳を効率よく育てるために必要な学習方法なのです。

脳を育てること=子どもの未来を豊かにする

ここまでお伝えしてきたように、脳を育てることは、子どもの人生を豊かにすることに直結しています。特にワーキングメモリは、自分の気持ちや行動をコントロールする❝自己制御の力❞とも深く関係しています

例えば、計算問題は得意でも、文章問題や応用問題になると難しく感じますよね。これに対し「ちょっと難しそうだけど、やってみよう」と前向きに取り組める子は、ワーキングメモリを使いながら考える経験をたくさん積んできた可能性があります。こうした経験が、ゆくゆくは将来の生きる力へとつながっていきます。

数値としてワーキングメモリが高い人ほど、いわゆる❝地頭❞がいいと感じられる場面が多く、IQテストなどでも高い得点を取りやすい傾向がわかってきました。

生涯でみたとき、研究結果で明らかになっているものの例としては―
●社会的・経済的水準が高い
●依存症になりにくい
●肥満になりにくい  

などです。
(一般的に快感を優先した結果にあるのが依存症や肥満と言われているので、それをコントロールできる❝自己制御力❞がきちんと備わるということ)

このように、ワーキングメモリを鍛え育てることは、いま目の前にある学校生活だけでなく、大人になってからも人生を支える大切な力になります


子どもの脳を育てるうえで、一番大切なことは「好き!」という気持ちを大切にすることです。「好きだからもっとやってみたい」と思える遊びとの出会いが、子どもの「あたまを使うこと・考えることって楽しい!」を育み、その先にある学びへと、つながっていくのではないでしょうか。

この記事の監修・執筆者

公立諏訪東京理科大学 特任教授 篠原 菊紀

脳科学、健康科学が専門で、学習しているとき、ゲームをしているとき、運動しているときなど、日常における脳の活動を研究している。『子どもが勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)や、「あたまがよくなる! なぞなぞ1ねんせい」シリーズ(Gakken)など、著書、監修書多数。「NHKこども科学電話相談」や、「チコちゃんに叱られる!」への出演など、TV、ラジオ、雑誌などのメディアでも活躍している。

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