時計が読めるようになる、時間感覚を学べる 今日からできる「時計のおけいこ」は、この3つ!

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小学校入学を前に、子どもの「時計の読み方」が気になっているおうちの方も少なくないようです。小学校に上がるまでに、時計がきちんと読めないといけないの? 小学校に入ってから少しずつ学べばいいのでは? 時計は読めるけど、時間を考えて行動できないから親のほうがいつもイライラ……。

そんなおうちの方の疑問と不安について、教育評論家・親野智可等先生にお話をうかがい、家庭ですぐに実践できる「時計のおけいこ」についてアドバイスをいただきました。

文/遊文社(小林洋子)

目次

小学校に上がると、学校でも家庭でも時間に追われる生活に

まず大前提として、小学校入学までに「時計が読める」ようにしなければいけないのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生は、正確に時計が読めることよりも、入学前から子どもの興味に合わせて、生活の中で時計や時間にどんどん親しんでほしい、と話します。

「小学校では授業をはじめ、生活がすべて時間割で決まっています。登校時間から、授業の準備や片付け、着替えなど、時間を意識して行動しなければならないことがたくさんあります。さらに、家に帰ってからも宿題があったり翌日の準備が必要だったり、幼稚園・保育園時代とは比べものにならないくらい“時間に追われる生活”になります。時計が読めるようになって時間を意識できるようになれば、子どもが自分で考えて動くことができます。

また時計の読み方は1年生、2年生の授業で習いますが、学校の限られた授業時間で学んだだけで、時間の扱い方や時間感覚がすぐに身につくわけではありません。就学前の今の時期から、生活の中で少しずつ親子一緒に学んでいくことが大切です」。

就学前の子どもに「時計の読み方」を教えるときの心得は?

家庭で子どもに「時計の読み方」や時間について教えるときに、気をつけるべきことは何でしょうか。親野先生によると、注意したいポイントは次の2つです。

①生活の中で楽しく学ぶこと

②子どもの個性や発達に応じ、少しずつステップアップさせること

実は、時計や時間に対する興味・関心は、子どもによってさまざまです。入学前から時計が読めて計画的に行動できる子もいれば、マイペースで、時間を忘れてやりたいことをしているような子もいて、同じ年長児であっても全く異なります。時間に対する興味や感覚にも、持って生まれた個性があります。

また入学前の保護者は、どうしても焦る気持ちがあるもの。早く時計が読めるようになってほしい、時間に沿ってテキパキ行動できるようになってほしいという気持ちから、ついつい「これができないと、先生に叱られるよ」「お友だちに置いていかれるよ」といった言葉を口にしがちです。

親野先生は「ダメ出しばかりされたり、脅すような口調で叱られたりすると、子どもは『学校に行くのが怖い』と思ったり、『こういうのは苦手』と学ぶ意欲を失ってしまう」と話します。「せっかく学ぶのであれば叱る材料にするのではなく、生活の中で、遊びで楽しんでいるうちに、いつの間にか身についているような“ラク勉”を心がけてほしいと思います」。

時計のおけいこ①各部屋にアナログ時計を1つずつ!

生活の中で楽しく時計や時間に親しむために、親野先生が最初にすすめるのが、各部屋にアナログ時計を1つずつ置くことです。

「最近は、スマホを時計代わりにしていたり、時計があってもデジタル時計だったりと、アナログ時計のない家庭も増えています。しかし、学校では今もアナログ時計が中心です。また『あと5分』というのはこれくらいだと、長針・短針の角度から目に見えない時間を『量』として見せてくれるのが、アナログ時計の良さでもあります。時計を学ぶのであれば、ぜひアナログ時計を用意してください」。

部屋に置く時計は、数字が子どもにも見やすく、針の長短が見分けやすいシンプルなタイプがいいと親野先生。「かわいいキャラクターがついているものは楽しくていいですが、それによって肝心な数字や針が見えにくくなっているものは避けましょう。1~12までの数字と、1~60までの『分』を表す目盛りの入った知育時計(学習時計)がおすすめです。そのようなアナログ時計を見ながら、生活に合わせて『3時になったらおやつを食べよう』『長い針がこの目盛りで5つ動いたら、片付けよう』などと声かけをしていくと、自然に時計や時間を学べます」。

時計のおけいこ②時計の絵本や教材を活用する!

時計の読み方を覚えるのに、絵本やワークなどの教材を活用するのもいい、と親野先生は続けます。「絵本であれば、時計や時間をテーマにした優れた絵本がたくさんあります。絵本を読むだけで時計の読み方がわかるものもありますし、『時間』というものの不思議さ、おもしろさを感じられる作品もあります。子どもの発達や興味に合わせて、親子で読んでみてください」。

《時計・時間についてのおすすめの絵本》

・『とけいのほん1』『とけいのほん2』(作・絵/まついのりこ、福音館書店)

・『プータンいまなんじ?』(絵/ならさかともこ 文/わだよしおみ、JULA出版局)

・『チックタックじかんってなあに?』(絵/ハーべイ・ワイス 作/べス・ユーマン・グレイク 訳/もりひさし、偕成社)

時計の読み方についてのワークブックも、いろいろと販売されています。「〇時」という時間の単位を覚えるところからスタートし、「〇時半(〇時30分)」「〇時○○分」と、ステップを踏んで時計の読み方を学べます。さらに午前と午後、「〇分たったら」「あと〇分」といった時間の計算、時間を用いた計画の立て方まで、幅広く時計と時間について学べるタイプもあります。

ワークブックは、子どもの興味や実力に合わせて進めましょう。入学前であれば、1冊最後まで全部できないとダメというのではなく、楽しんでできるところを取り組む、という姿勢でかまいません」。

《時計・時間についてのおすすめのワークブック》


・『とけいとじかんのれんしゅうちょう』(学研の頭脳開発 著者・編集/親野智可等・入澤宣幸、学研プラス)

時計のおけいこ③ツールを与え、時間感覚を身につける!

時計や時間については、時計の読み方は知っているけれど、子どもが時間に沿って行動できない、いつも気づけば「早く、早く」と言い続けている……。そんなおうちの方の悩みも少なくありません。

それについて親野先生はこう話します。「そもそも大人と子どもでは、時間感覚が異なっていることも知っておきましょう。『出かけるまで、あと10分しかないよ』と言ったとき、大人は10分でどんなことができるかという経験値がたくさんあるため、頭の中で行動を整理して考えられます。しかし、子どもはその経験が少ないので、本気で『まだ時間がある』と思っていたりします」。

子どもに時間の感覚を身につけさせるには、タイマーやストップウォッチ、砂時計などを使い、“時間を見える化”するのがポイント。「子どもはゲーム感覚の遊びが大好きです。タイマーやストップウォッチをセットして『何分で片付けができるかな、よーいスタート!』と声をかければ、喜んで行動します。最近は、子ども向けの扱いやすいタイマーやデザイン性に優れた砂時計もあるので、お気に入りのものを探して活用してください」。

そして入学後は、家庭でもホワイトボードなどに「時間割」を作り、宿題や遊び、習い事などの時間をどのように管理すればいいか、親子で考えてみるといいと親野先生は語ります。

「大人だって、日々の時間管理をするのに時計や手帳、カレンダーアプリなどのツールを何かしら使っています。子どもにはツールを何も与えずに『時間を意識しなさい』と言っても、それは無理な話です。子どもにもアナログ時計やタイマー、時間割ボードなどの時間管理のツールを与えて、楽しく、少しずつ自分で時間を管理できるように導いていけるといいですね」。

この記事の監修・執筆者

教育評論家 親野 智可等

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。

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