【専門家が解説】低学年のうちに克服しておきたい「算数のつまずき」

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【専門家が解説】低学年のうちに克服しておきたい「算数のつまずき」

小学校入学後しばらくは「算数は簡単」と言っていたのに、学年末のテストでミスを連発。子ども自身も苦手意識をもちはじめ、心配になっている保護者のかたも少なくないでしょう。宿題のない春休みは、復習の大チャンス。小学校低学年のうちに家庭でできる「算数のつまずきを克服する方法」を、花まる学習会の松島伸浩先生にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

低学年での「算数のつまずき」3つのポイント

「算数は得意」のはずだった我が子。学校のテストでだんだんとミスが増え、見当違いの答えもちらほら。親が気づいたときには、「計算がイヤ」「文章題が苦手」と苦手意識さえもっている様子。

そうなる理由は、算数が「積み上げの教科」だから。どこかで解く手順を飛ばしていたり、理解できていないところがあったりすると、そこからだんだんわからなくなっていくのです。

では、小学校低学年でつまずきやすいのは、どんなところでしょうか。

1.計算の基礎が定着していない

まずは、基礎的な計算力が足りていないことが挙げられます。

1けたのたし算、ひき算は簡単にできても、くり上がりやくり下がりの計算のように数が大きくなるにつれて計算ミスが増えるというのは、低学年にありがちな問題です。

基礎的な計算力が足りない原因としては、「10になる数の理解が足りない」「九九の覚え間違いがある」などが考えられます。

「くり上がり、くり下がり」「九九」は、算数ではもちろん、理科など他の教科でも使われる基礎中の基礎なので、瞬時に100%正解できるようにしておかなくてはいけません。

3年生の算数で登場する「あまりのある割り算」は、2年生で習う九九が完ぺきに定着できていてこそ、すらすら解ける計算です。

例えば、「59÷6」という問題で、「6×9=54」が一瞬で思い浮かばないと時間がかかるため、計算が面倒だと感じてしまいます。そして、整数の計算が面倒になると、その先の小数の学習にも確実に響いてしまいます。

2.問題文の読みとばし

小学1年生の文章題でも、「問題に登場する条件を把握していない」「何を求めればいいかわかっていない」という子は結構います。ただし、そういう場合に「もう一度読んでみて」と声に出して読ませると、途中で「あ、わかった!」と自分で気づくことも少なくありません。

自分ではちゃんと読んでいるつもりなのですが、低年齢の子はすぐに答えを出そうという気持ちが先行するもの。さっさと終わらせてしまいたいので、文章の中に出てくる数字だけをなんとなく組み合わせて、答えを出してしまっています。

3.実体験が足りていない

2年生の算数の単元では「長さ」「かさ」などの単位を学びますが、これが苦手というお子さんも少なくないようです。
「えんぴつの長さが10m」と答えるなど、物のスケール感がつかめていない場合もあります。

また、「ピザを●人で分けると何切れずつになるか」「前から○番目、後ろから△番目」などといった問題で、日常生活で経験がないとイメージできないことも

さらに、図形が出てくると苦手意識をもってしまう、という子もいます。特定の単元での理解不足は、実体験の不足が関連しているとも考えられます。

つまずき発見! 春休み中に親子でできる取り組み

1年生の「くり上がり、くり下がりのある計算」、2年生の「九九」のように、その後の学習に影響する単元が完ぺきかどうかは、ぜひ確認したいところ。算数は積み重ねの教科なので、基礎の積み残しは大問題。できていないところまで戻って復習することが大事です。宿題がない春休みは、弱点の発見や計算力アップにぴったりの時期と言えます。ここでは、それぞれの単元の復習のポイントをご紹介します。

【1年生の学習内容】 

「くり上がり、くり下がりの計算ミスが多い」

さまざまな計算の基礎となる「くり上がり、くり下がり」の計算問題。ここがあやしいと算数の学習がどんどん大変になっていきます。まず大事なのは、「足して10になる2つの数」をすぐに思い浮かべられるようにしておくことです。

市販のドリルや問題集を使うなどして、まずは計算問題でミスがないか、スピーディーに正解できているかを親子でチェック。間違いやすい部分を見つけたら、1日3分、短い時間で集中してくり返し復習するとよいでしょう。

反復練習には、正解するとレベルアップし、特典がもらえるようなゲーム性のある計算アプリを使用してもよいでしょう。

その他、日常生活でできることとしては、「10個のお菓子を分ける」「コインの数を数える」「スーパーで野菜の値段の比較をする」「家族でトランプの『七ならべ』をする」など、数字にふれる機会を増やしたりすることも、理解の助けになります。

「『何番目』の理解ができていない」

「何番目」の考え方は、中学受験でもカレンダーを使った「何日目」の問題などでよく登場します。低学年のうちは抽象的な思考が苦手なので、「視覚化する」「実体験で理解できるようにする」ことがおすすめです。

保護者のかたが紙に○をかいて「何番目」を説明したり、ラーメン店の行列に並んで「今、何番目かな?」と確認させたり、「遊園地に行くのは春休みの何日目かな?」と聞いてみたり。日常の生活や会話を通して理解を深めていくとよいでしょう。

「文章題を飛ばし読みしてしまう」

1年生だけでなく、高学年になってもずっと「飛ばし読み」のせいで文章題が苦手な子は多いです。できるだけ小さいうちから、問題をていねいに読む習慣を身につけるとよいでしょう。大事な数を○で囲んだり、「のこりはいくつ」「だれがおおい」など、聞かれている部分に下線を引いたりすることも教えましょう。

保護者のかたが、お子さんが問題を読む傍らで聞いてあげて、「しっかり読めていたね」とほめたり、「条件は何だったかわかる?」などと理解度を確認したりしてもよいですね。

人が聞いていると、子どもも細部まで意識して読もうとするもの。くり返し読んでいるうちに、「やってきた」「いなくなった」などの条件の見落としが自然と減っていきます。

まずは、問題文の精読を確実に行う習慣を身につけていきましょう。

【2年生の学習内容】

「九九のミスが多い」

九九でミスが多い原因の一つに、「覚え間違い」ということがあります。九九で特にミスが多いのは「7の段」「9の段」です。これらは「声に出して言いにくい」ため、「7×4=28」などと覚える際に「言い間違える→間違えたまま覚えてしまう」ということが起こりやすいのです。

苦手な段は何度も声に出して練習することが大事。ミスなく、引っかからずにすべての段が言えているか確認するとよいでしょう。また、「9×9=81、9×8=72……」と、大きい数から順に言っていくのも定着には効果的です。

「長さの単位」「かさ」「分数」が理解できていない

長さや量感の理解度は、経験値に比例することが多いです。日常生活で買い物に行ったり、料理をしたりといった経験も、算数の学習に結びつきます。「長さ22cmのきゅうり」「1.5Lの水」「6分の1のピザ」がどの程度の量感(ボリューム)になるか、など日常生活から学べることは少なくありません。

また、家庭にもメジャーはあると思いますが、「菓子箱についていたリボンを切ってシールを貼る」などして、子どもの好きな長さでオリジナルのメジャーを作ってみるのもいいでしょう。それをいろいろなところに当ててみて、長さを比較してみましょう。

自分で作ったメジャーなら愛着がわいて大切にしたくなりますし、実際に測ってみた経験も記憶に残りやすいと思います。

【3年生の学習内容】 

「あまりのある割り算」が苦手

「あまりのある割り算」は、「割る数>あまり」の確認と、検算を確実に行うことで、ほとんどのミスを減らすことができます。

「割る数>あまり」でミスが多い子の場合、「あまりがある」ということがどういう状態か、理解していないケースも見られます。「10個あるお菓子を3人で分けたらどうなるか」など、実際にお菓子を並べたり、紙に○をかいたりして説明するとわかりやすいでしょう。

「10個のお菓子を3人に2個ずつ分けたら、あまりが4個になっちゃうね。あまりが4個なら、3人にもう1個ずつ多く分けられることになるよ」などと、「あまりの数が割る数より大きいと正解にならない」理由もしっかり理解させましょう。

位の数が違う筆算、小数計算が苦手

3年生で登場する、3桁+2桁のたし算など位の数が違う筆算や、小数の計算で、計算に苦手意識をもつお子さんが一気に増えます。

筆算を間違える子は、「手順のミス」「途中計算のミス」「確認のミス」のどれかをしています。

手順をしっかり覚えること、くり返し計算練習すること、確認を習慣にすることで、筆算の苦手を解消することができます。くり上がり、くり下がりなど基礎的な計算さえしっかりできていれば、あとは確実に点検作業を行えばいいだけのこと。それは、4年生で登場する小数のかけ算・わり算でも同様です。

小数の計算ミスは、「小数点をそろえていない」「小数点以下にかくれている0の扱いがわかっていない」ことが原因です。

どこで間違えているか、時間を取って見直すことが解決の第一歩。小数のたし算・ひき算の筆算では「小数点を一直線にそろえる」ことをしっかり確認させます。

必要以上に苦手意識をもたないように、ミスをした問題を反復練習させましょう。

立体図形に苦手意識がある 

低学年で登場する図形問題は、実はそれほど難しいものではありません。

それでも、円や球の問題など「なんとなく図形が苦手」と捉えがちな理由としては、日常的に図形を使って遊ぶ経験が少ないことが考えられます。

図形の感覚をつかむには、パズルやブロックなどで試行錯誤しながら遊ぶことが有効です。家にある空き箱を使って工作をしてみてもいいのです。勉強と思わずに、楽しみながらできることを親子で見つけてみましょう。

時計と時刻計算が苦手

時計の読み方は2年生の単元で登場しますが、時間・時刻の求め方は3年生で学びます。

日常生活の中で必ず必要なものなので、ふだんから「8時の出発の時間まであと何分?」「ゲームを始めたのは4時半から。今日は40分だけする約束だから、何時何分までかな?」などと時間を意識した声かけをすることです。日常のことと結びつけて、くり返し確認することがとても重要。時間の計算の定着に有効な方法です。

「算数好き」になるために家庭でできること

低学年の算数で大切なことは3つあります。

  • 1 ゲーム感覚で取り組むこと
  • 2 物を使って理解につなげること
  • 3 日常生活でさまざまな経験をすること

計算力のアップは、ゲーム感覚で取り組むことをおすすめします。勉強を勉強っぽく見せないことが大事なのです。

1、2年生のうちにいかに基礎的な計算の力を磨いて、学年が上がったときの複雑な計算に備えるかがポイント。計算力は、図形問題やデータを使った問題など、すべての単元の学習につながります。

ただし、反復練習が大事とはいえ、計算問題だけを毎日必要以上に解かせていると、子どもが苦痛に感じたり、算数はイヤなものだと思ってしまったりします。計算練習は1日3分程度で十分。短く集中して行うようにしましょう。

「算数はイヤなもの」という感情を植え付けないように、そして親自身も継続できるように、家族でトランプをしたり、反復練習用に計算アプリをうまく使ったりするのもいいと思います。ゲーム感覚で楽しく取り組むことが鉄則です。

物を使って理解につなげることも大切です。
低学年では脳の機能が未発達で、抽象的な思考がまだうまくできません。
物を使い、視覚化してわかりやすく説明してあげることが大事です。大勢の子どもに対応する必要がある学校や塾とは違って、お子さんの一番理解しやすい表現や状況設定で説明できるのは保護者のかたです。

さらに、机上の学習以外でも、日常生活の中に算数の力を伸ばす方法はたくさんあります。外遊び、お手伝い、キャンプや旅行など、経験値を増やすことも大切です。そこで得た経験が、さまざまな状況をイメージして考える力を養うことになります。

小学校のうちから「算数嫌い」になる子は決して少なくありません。大人にしてみれば「なんでこんな簡単な問題ができないんだろう」と思うことでも、くり返しやらないと定着できない子もいます。ですが、保護者のかたがあきらめさえしなければ、いつか子どもはきちんと計算力を身につけることができるのです。

お子さんのミスを厳しく責め立てるのは逆効果。保護者のかたは「できて当たりまえ」という思い込みを捨てて、お子さんの学びの定着に伴走し、見守りましょう。

たくさんの子どもたちが「算数は楽しいもの」という感覚をもって学びを深めていくために、保護者のかたも少しだけ時間の余裕をもっていただけたらと思います。

この記事の監修・執筆者

花まるグループ・スクールFC代表 松島伸浩

群馬県出身。大手進学塾で経営幹部として活躍後、36歳で自塾を立ち上げ、その後、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績があり、子育て講演会、教育講演会などを行う。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中。
『中学受験 親のかかわり方大全』『中学受験 物語ですらすら頭に入る よく出る漢字720』(実務教育出版)『算数嫌いな子が好きになる本 小学校6年分のつまずきと教え方がわかる』(カンゼン)など著書多数。
「幸せな受験ラジオ」VOICY OF THE YEAR 2024 受賞! 私学の先生や在校生による学校紹介や受験の専門家からのアドバイスなど、受験に関わる情報発信をしています。

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