戦争は終わらない?世代を超えて「戦争と平和」について考える【瀬谷ルミ子さん×大野りりあなさん対談】

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戦争は終わらない?世代を超えて「戦争と平和」について考える【瀬谷ルミ子さん×大野りりあなさん対談】

紛争予防・平和構築の第一線で活動される、瀬谷ルミ子さん(認定NPO法人リアルズ(Reach Alternatives)理事長)。
広く雑誌やテレビ番組のモデルやタレントを務め、劇場アニメ『窓ぎわのトットちゃん』では「トットちゃん」役も務めた、現役小学生の大野りりあなさん。

ノンフィクション『戦争は終わらない?武装解除・紛争予防の現場から』(Gakken)の刊行を記念して、世代の異なる二人が「戦争と平和」について考える特別対談を行いました。

本記事をとおして、「平和とは何か」「戦争はなくすことができるのか」を親子で考えるきっかけになればと思います。

文/矢部俊彦

目次

紛争地や危ない場所に行く原動力はどこから?

りりあな:瀬谷さんは、シリアをはじめたくさんの紛争地や危ない場所に行かれていますよね。危ないし不安だけど、でも行こうと思える原動力って何ですか?

瀬谷自分が行くことで解決できる争いがあり、救える命があることが大きいです。それが分かりながらあきらめたときに、「将来そんな自分を思い出してどう感じるのだろう、自分がどうなっていくんだろう」と想像すると、「とても後悔するだろうな」と思って。もちろん安全策をしっかり取ることも大事です。

本当はやりたかった、やるべきだったのにあきらめたことって、意外と大人になってもいつまでも覚えているんです。あのとき自分は逃げたな、あのときやっておけばよかったな、とか。

私はそれを「夏休みの宿題」と言っているんですけど(笑)。やるべきなのにやらないと、ずっと夏休みのあいだ覚えていて、最終日まで残してしまったら罪悪感が残る。それと似ています。夏休みの宿題はやらなきゃいけないもので、自分がやりたいことではないかもしれません。でも、心の中で自分が「本当はやりたい、やるべきだ」と思っていたことって、宿題よりもっと強烈に、心の片隅で、箱の中でコトコト音を立てて自分に存在を気づかせる。「いいの?これでいいの?」と語りかけ続けてくるんです。

司会:夏休みの宿題という名の心残り、りりあなさんはありますか?

りりあな:後悔というよりは、逆にやっておきたいことだと、自分の行きたい国とか興味あることは全部やりたいという思いがあって。一回やらなかったことの後悔って一生じゃないですか。でも、一瞬の勇気だけで、やりたかったことができたり、もしかしたら人生が変わるかもしれないので。

日常でも、たとえばタピオカ屋さんの前で、飲もうかな飲まないかな、というちっちゃい決断でも後悔って続くと思うんです。だから、たとえば「よし、ちょっと太っちゃうかもだけど、あとで運動すればいいからタピオカ飲もう!」と思うことにしています。

司会:ちゃんと運動でリカバリーしてるのがすてきですね(笑)。

本当の平和って、どういう状態?

りりあな:本を読んで、平和ってただ戦争が終わるだけで訪れるものじゃないんだなと感じたんですけど。瀬谷さんにとって、本当の平和ってどういう状態のことですか?

瀬谷:平和には二種類あると言われています。一つ目は「戦闘がない」という状態。でも、これは最低限の平和と言われています。真の平和は、戦闘がないうえに、そこに生きる人たちが、差別やヘイト、迫害を受けずに、自分の手で人生を選んでいける。平和を作るか作らないかも自分たちで選んで、それを実現できる。性別でも、民族でも人種でも、年齢でも差別されることなく、自分で人生を選んでいける。それが選択肢としてある状態が、本当の意味での平和になります。

りりあな:自分が何をしたいか、どういう人として生きていきたいかを選べる。その選択肢があるのが平和。

瀬谷:日本だと選択肢がありすぎて生き方が分からないと悩みもあると思うんですけど、紛争地だと、いつ死ぬか分からない、いつ爆撃されるか分からない。助けてと声を上げても、世界のほぼ誰にも届かない。生きるか死ぬかすら自分で選べないんです。そこから戦争が終わり、復興が進んで、子どもたちも学校に通えるようになり、徐々に生き方を選べて、自分で自由に人生をデザインして選び取っていけるようになっていく。そうやって生き方の選択肢が増えていく社会が、本当の意味での平和だなと思います

世界中の人が安心して健康に過ごすために一番大切なことって?

りりあな:テレビをつけてニュースを見ていると、たくさんの悲しいできごとを見ることが多くて。でも瀬谷さんだからこそ、悲しいことがたくさん起きている紛争地でも、希望を感じられた瞬間があるんじゃないかなと思って。特に印象的だった瞬間を教えてもらいたいです。

瀬谷:育成した若者のひとりが、活動がない日にギャングに襲われ亡くなってしまったことがありました。残された若者たちに活動を一旦やめようか相談したら、「犠牲になった彼女の遺志を継いで、こんなことが起きないように平和のために頑張る。活動を続けていくことが、彼女の生きた意味を作ることにつながるから」と言って立ち上がったんです。そのことが、今でも強く心に残っています。

日本と比べてはるかに生き方を選べない紛争地にいながらも、だからこそ自分たちが平和を作るんだという強さを感じます。私が紛争地の人たちに教えているというより、教えられていることがすごく多い。日本にいる人たちにも、もっと知ってもらいたいと思います。私たちにも何かできると、勇気づけられる人もいるんじゃないかなと。

りりあな:私たちみんな同じ地球に住んでいるのに、生まれた場所が違うだけで、こんなに違う生活を歩んでいかないといけないのがすごく不思議で。世界中のみんなが安心して健康に過ごしていけるために、一番大切なことって何だと思いますか?

瀬谷:すごく大切な、深い問いをありがとうございます。自分と違う環境にいる人たちも自分と同じひとりの人間であって、その人たちが今直面していることに、どれだけ思いを馳せられるか。その「想像力」がすごく大事だなと思います。同時に、現地にいる人たちだけでは変えられないことも、外にいる人たちの力があれば変えられる可能性が高まる。その「可能性」を「想像力」とセットで意識して、実行できることは何かを考えて実行し続けることが大事だと思います。

瀬谷:たとえばガザの人たちと話していると、「忘れ去られることが何よりもつらい」と言うんですね。がれきの中で自分たちも過酷な状況で、家族を失いながら活動している現地の人たちにとって、日本という国で自分たちのことをまだ忘れずに何かしたいと思い、行動してくれる人たちがいることが、大きな励みになるんです。それだけで、また一歩進める、もう一日を生きる力になる。日本にいる私たちが、自分にそういう力があると知ることも大事だなと思います。

りりあな:確かに、今は辛い思いをしていても、どこかで助けたいとかサポートしたいと思ってくれている人がいたら、それが少しの救いになって、自分も頑張ろうと思う力になりますもんね。

司会:想像した先の中身がどうかじゃなくて、想像しているという時点ですでにひとつ、力や支えになるというのは、希望ですね。それって誰にでも、今からでもできることなんだなと思います。

瀬谷何かしたいなと思ったときの選択肢が、日本にも必要だなと思います。「戦争のニュースを見るたびに、何かしたいと思っていた。選択肢を与えてくれてありがとう」と言ってくださる方が多いんです。

りりあな:したいけど、でも何を、ということですね。

瀬谷:そうなんです。小学生の皆さんもそうですよね。たとえばりりあなさんのように、日本の子が、ガザやシリア、イランのことを学んだり、何かをしたいと思ったりしている。現地の子たちにとってはその事実だけで何週間も話ができるくらい、大きな意味を持つんです。だから、そこをつなげられるような取り組みを、私たちも増やしていきたいなと思っています。りりあなさんがおっしゃっていたような、子ども主体の取り組みも、今こそ必要ですよね。

司会:他の子どもたちもまたそれを見て、こういうことができるんだ、自分たちでも、って。その「点」からまた広がっていくかもしれないですね。

平和のために子どもが今日から踏み出せる一歩とは?

りりあな:最後に、私たち子どもが、自分の手で戦争を止めることはできなくても、未来でもいいから平和に近づいていくために、今日から誰でも一歩踏み出せるような行動を教えてもらいたいです。

瀬谷:まず、「自分はこうなってほしいと思うけど、どうしたらいいんだろう?」という問いを持って、それを大人にぶつけてみる。親でも、学校の先生でも、友達でもいい。洗練された質問でなくてよくて、本当に素朴な疑問——この本のタイトルのように「なんで戦争は終わらないの?」とか。それを誰かにぶつけると、その人の中に問いが生まれる。問いって、とっても大事なんです。

答えはひとつじゃないし、答えがまだないものもある。平和の作り方も関わり方もいろいろある。その中で、自分はこれができるかもしれない、やってみようにつながっていきます。この世界の戦争や平和に絶望したり、見て見ぬふりをしたりするだけじゃなくて、「何かをできている自分なんだ」と思えるような小さな行動の積み重ねが、本当にできるようになることにつながると思うんです。

りりあな:ぶつけられた人も、一緒に考えられますもんね。

瀬谷:完璧な答えを持っている大人は、おそらくいない。それでも、子どもから与えられたものだからこそ、「その問いに答えられるような大人でなければいけない」と感じる。「じゃあ子どもの代でなんとかしなさいね」ではなく、大人が一緒に作るんだ、と考えたりしますよね。それは大人にとっても、パワフルな影響力を生む力になります。それが、全ての始まりになるような、ドミノの最初の一つになる力があるということを、子どもたちにも知ってもらいたいなと思います。

司会:逆に、大人が子どもに「戦争って終わらないの?」などと聞かれたときに、どう答え、行動すればいいでしょうか。

瀬谷答えを一緒に見つけるため、一緒にどんなことがあるか調べてみるのがいいですね。子どもから問われて「それはね」とすぐに語れる大人ばかりでは、もちろんないですから。この本でもいくつか紹介していますが、それ以外には一緒に世界地図を見て国を知るとか、毎年発表されている世界で平和な国のランキングである世界平和度指数(※)の順位をみてみるとかでもいいと思います。

大人の場合は、寄付だったり、実際にボランティアで参加してみたり、いろんなやり方がありますよね。私たちの活動でも、中学生でボランティアに参加したり、おこづかいで寄付したりしてくれる小学生もいたりします。文化祭や学園祭で、平和をつくる方法として活動を紹介してくれることもあります。子どもだけでもできることと、大人が一緒にほうができることを、それぞれ考えてみてもいいと思います。

世界平和度指数(Global Peace Index):オーストラリアのシドニーに本部を置く経済平和研究所(IEP)が発表している、その年の世界の国や地域の平和の度合いを示す指標

答えよりも、問いを

司会:最後に、『戦争は終わらない?武装解除・紛争予防の現場から』に込めたメッセージをお願いします。

瀬谷:まず自分の中の「問い」を見つけることを大事にしてもらいたいなと思います。今は、すぐに答えを求められる社会にもなっているし、AIですぐに答えが探せるよね、となりがちなんですけど。

なんで戦争は終わらないんだろう、なんで苦しむ人たちがいるんだろう、なんで世界にこれだけいろんな組織があるのに何も解決できていないんだろう。そういう問いから、私も始まったんです。

それを自分の仕事として捉えなくてもいい。自分の生き方の中で、その問いへの答えを少しでも見つけて、その解決に自分のできる範囲で貢献できるようになっていってもらいたいなと思います。

司会:改めて、タイトルが言い切りではなく問いであることにも、大きな意味がある気がしますね。

瀬谷大人は答えを与える権力者ではない。それを大人が何よりも大事にして、対等な立場で子どもと接することが大事だと思います。

りりあな:問いを、与えるのではなく、一緒に考えようということですね。

司会:おふたりとも、本日はどうもありがとうございました。

出演者プロフィール

瀬谷 ルミ子(せや るみこ)

1977年群馬県生まれ。中央大学総合政策学部卒。ブラッドフォード大学紛争解決学修士号取得。2026年、平和への貢献により同大学から名誉博士号を授与される。認定NPO法人リアルズ(Reach Alternatives)理事長。紛争解決と平和構築の第一人者として世界で高く評価される。Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人25人」(2011年)、The New York Times 「世界に足跡を残す10人の女性」(2022年)、第32回読売国際協力賞(2025年)に選出。その活動は教材として、高校の国語や英語の教科書にも取り上げられている。著書に『職業は武装解除』(朝日新聞出版)。

選出・メディア(抜粋)

国内外300超のメディアで紹介され、10を超える賞を受賞。

  • NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2009年)
  • Newsweek日本版世界が尊敬する日本人25人 (2011年)
  • 日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー(2012年)
  • イギリス政府International Leaders Programme(2015年)
  • The New York Times世界に足跡を残す女性10人(2022年)
  • 第32回読売国際協力賞(2025年)

書籍

  • 単著:『職業は武装解除』(朝日新聞出版)』—ベストセラー、文庫化
  • 高校英語教科書「CROWN English Communication Ⅲ」(三省堂)、高校国語教科書「現代の国語」(数研出版)、大学入試問題などでその活動や書籍が題材とされている。

大野 りりあな(おおの りりあな)

神奈川県出身。日本とイランのミックス。
俳優・声優・モデル・タレントとして、雑誌やテレビ番組のレギュラーモデル/タレントを務めるなど、さまざまな分野で幅広く活動中。
特技:手話、ダンス、歌を歌うこと、英語、水泳、ギター、ウクレレ、ピアノ

おもな出演歴(抜粋)

  • 映画
    • 劇場アニメ「窓ぎわのトットちゃん」トットちゃん役
    • 映画「ミッシング」
    • 映画「マッチング」 
    • 映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」
    • 映画「おとななじみ」
  • ドラマ
    • NTV「若草物語」第2話 クラスメイト役 
    • CX「ビリオンxスクール」第9話 女子役
    • TBS「笑うマトリョーシカ」第9話 子供時代の浩子(高岡早紀さん幼少期)役
    • 読売テレビ・日本テレビ系「降り積もれ孤独な死よ」雨宮栞役
  • テレビ
    • NHK Eテレ「スゴEフェス2024」MCでの出演
    • NHK「チルシルジャーナル」キャスターでの出演
    • NHKEテレ「あおきいろ」ミドリーズ二期生
    • CX「ほんとにあった怖い話 25周年スペシャル」ほん怖クラブメンバー
  • 雑誌
    • VOGUE JAPAN
    • 小学館「ぷっちぐみ」専属モデル2023〜

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