【大賞は今秋出版デビュー】第34回小川未明文学賞大賞は『うどんの神さま』香川県在住の樹 あゆりさん
「日本児童文学の父」「日本のアンデルセン」と呼ばれた小川未明。その名を冠した「第34回 小川未明文学賞」の大賞・優秀賞が決定。贈呈式が2026年3月27日(金)東京都品川区の学研ビルで行われました。
取材・文/こそだてまっぷ編集部
第34回小川未明文学賞の概要
小川未明文学賞は、上越市出身の児童文学作家、小川未明の文学精神を継承し、新しい時代にふさわしい創作児童文学作品を創出する目的で、平成3年に創設された児童文学賞です。
- 主催:上越市 小川未明文学賞委員会
- 協賛:株式会社Gakken
- 後援:文化庁 新潟県 早稲田大学文化推進部 上越教育大学 日本児童文学者協会 日本児童文芸家協会
第34回を迎える今回は、総数800編を超える作品の中から、大賞と優秀賞各1編が選ばれました。
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大賞 樹 あゆりさん『うどんの神さま』
『うどんの神さま』あらすじ
小学四年生の河野陽翔(こうのはると)は剣道が大好きな少年である。彼の家は祖父の代から続くうどん屋の老舗である。母と兄の悠真(ゆうま)が店を切り盛りしており、小さな店だが、地元の人たちに愛される人気店である。
ある日、陽翔と悠真は、店先で生き倒れている男を助ける。男はじっと兄を見つめているが、兄は男の顔を見た途端家から出ていくように言い放つ。この男は十年前に家族を残して一人都会に出ていった父親であった。この一件から、陽翔の家族やお店の周囲に大きな出来事が次々と巻き起こる。
優秀賞 隅垣 健さん『おとぎ電車と宵待の橋』
『おとぎ電車と宵待の橋』あらすじ
神明ダムに社会科見学に訪れた小学五年生の賢一は、ダムの果たしている役割を担任のノリッペ先生から学んだ。ダム湖の底には、夕ヶ瀬集落が沈んでいて、そこはノリッペ先生がかつて子どもの頃に住んでいた故郷でもあった。そこにはおとぎ電車が走り、蛍の名所「宵待橋」まで、多くの人を運んで賑わっていたことを聞く。おとぎ電車に関心を持った賢一たちは、図書館やウェブサイトでおとぎ電車について調べ、ダムのそばにかつての乗り場跡があることを知る。
週末に、賢一は弟のマモルを連れ、友人と乗り場跡の探索に出かけるが、途中でマモルを見失ってしまう。マモルを探していた賢一はダムが完成する前の昭和の世界に迷い込んでしまう。宵待橋行のおとぎ電車に乗っていったマモルを探しに行くため電車に乗る賢一。そこで小学生の頃のノリッペ先生と出会う。
第34回小川未明文学賞贈呈式を開催

第34回小川未明文学賞贈呈式は、2026年3月27日(金)東京都品川区の学研ビルにて開催され、主催の上越市、小川未明文学賞委員会の方々をはじめ、最終選考委員の先生方など数多くの方が参列しました。
大賞を受賞された樹 あゆりさん、優秀賞を受賞された隅垣 健さんには、表彰状と目録などが贈呈され、お2人は壇上であらためて受賞のことばを述べました。
また、最終選考委員の小埜裕二さん、小川英晴さんのお2人より選考結果及び講評を、朗読者・唐 ひづるさん、語り手・大澤桃代さんによる小川未明作品の朗読・語りのアトラクションもあり、参加者は小川未明の児童文学の父たる由縁に思いを馳せました。

大賞『うどんの神さま』樹 あゆりさん 受賞のことば

このたびは、小川未明文学賞という素晴らしい賞をいただき、喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
私は、小さなころ体が弱く、熱を出しては寝込む子どもでした。そんな私を不憫に思ってか、父が枕元で絵本を読んでくれたものです。小川未明の童話に出会ったのも、たぶんその時が初めてではなかったかと思います。幼い私にわかるように語られたその物語が、小川未明のものと知ったのは、それからずっと後のことでした。
結婚し、子どもが生まれ、新しくできた町の図書館に足しげく通ううち、ある日児童書コーナーで「第2回小川未明文学賞作品募集」のポスターが貼ってあるのを見かけました。当時、NHKの文章教室に通っていた私は、いつかこの文学賞に応募できるような作品が書けるようになりたい、と思うようになりました。地元の児童文学同人誌「扉」に入会し、同じ物語作りの好きな仲間と切磋琢磨しながら創作していた年月は、楽しく、思い出深いものです。
拙作「うどんの神さま」は、主人公がまず最初に浮かび、物語はあとからついてきてくれました。途中何度か、やむを得ない事情で中断することがありましたが、諦めず最後まで書き続けて本当に良かったと思います。
先日、「小川未明童話全集」が四国の我が家に届きました。今回の受賞と小川未明童話との再会を心の糧に、スタートラインに立ち戻り、これからもずっと物語を紡いでいきたいと思います。
私の作品を選んでくださった皆様、先生方、そしていつもそばで温かく見守ってくれた家族、夫に感謝します。
優秀賞『おとぎ電車と宵待の橋』隅垣 健さん 受賞のことば

このたびは、憧れの小川未明先生の名前を冠した文学賞で優秀賞をいただくことができ、とても心が躍るような思いでいます。
多くの応募があった中で、樹さんの「うどんの神さま」とともに、私の作品も見つけ出していただき、とても感動しています。それから、私もこの歳になっても夢を追い続けることを後押ししてくれた家族に感謝の気持ちを伝えたいと思います。
私の「おとぎ電車と宵待の橋」は、京都の宇治に昔あった「おとぎ電車」というものを題材にしています。書こうと思ったきっかけは、「おとぎ電車」という言葉そのものにあります。この、なんとも創作意欲、創造力を搔き立てるような不思議な味わいの言葉に、私はどうしようもなく魅せられて書いてしまった、書かされてしまったというのが本当のところです。作品中でも子どもたちは「おとぎ電車」という言葉に引きつけられるように電車のことを調べ、その痕跡さがしをします。
京都の宇治という特定の土地に根差した物語にするという選択肢もありましたが、私は今回架空の街の物語にしました。ダムに沈んだ町、消えたものというのは、それこそ全国の各地にありますし、ダムだけじゃなく、開発やリニューアル、そういう名のもとに大切にされてきたものが消えていく。また、図らずも災害などによって失われてしまうというようなことが起きています。そういう意味では、私のこの作品のテーマは全国の人々にも届くのではないか、響くのではないか、そういう思いからあえてローカル色を消して、多くの人に受け入れてもらいやすい形を取ることにしました。
私は、子どものころから小川未明先生の作品を始め、多くの物語に触れて、自分の世界がグンと広がるような体験をさせていただきました。それは私の中に今も太い幹のようになって残っています。今の人たちにも、同じような体験をしてもらえるような、そんな作品を、今度は私も書いていきたい。その思いを胸に、これからも作品作りに努力していきたいと思っております。
まとめ
大賞作品『うどんの神さま』は、2026年11月ごろ株式会社Gakkenから書籍として刊行される予定です。小川未明文学賞の募集開始や過去の受賞作、最終選考委員に関する情報は、下記ホームページよりご覧ください。
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