![【遺伝だけでは決まらない!】子どもの身長は間違いなく栄養で伸ばせます[身長先生/医師・田邊 雄]](https://kosodatemap.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/2025/03/pixta_73435392_M_Rign.jpg)
身長は遺伝だけでは決まらない。
このことは、最新の研究でもわかってきています。
そして、身長は栄養で伸びる。
このことも数々の研究で判明しています。
日々の食事の選択に、正しい知識と成長食のルールをプラスするだけで子どもの身長は間違いなく伸びるのです。
身長治療のスペシャリストとして、YouTubeチャンネルやInstagramなどのSNSで積極的に情報発信している、身長先生こと東京神田整形外科クリニック院長の田邊雄医師。
豊富な臨床経験とエビデンスから導き出した、食事で体・心・脳が健やかに育つ【成長食】30のルールと、超簡単で毎日実践しやすいレシピを教える『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(Gakken)から、一部内容を抜粋してご紹介します。
ぜひ、子どもの人生に「身長を伸ばす」という選択肢を加えてあげてください。
子どもの成長のために知っておきたい「身長に関する真実」

「身長は遺伝で決まるから」と思ってあきらめていませんか?
それが本当なら、日本人の平均身長はいつの時代も大きくは変わらないはずです。しかし、時代をさかのぼってみると日本人の平均身長は大きく変化しています。
縄文時代の男性の平均身長は約160㎝、現代の男性は約170㎝。縄文時代と比べると、約10㎝も平均身長が高くなっています。
このような平均身長の変化の背景にあるのは、間違いなく栄養状態です。
縄文時代に比べてその後の古墳時代のほうが約4㎝も背が高くなったのは、稲作が普及して食糧の供給が安定したからだと考えられています。
その後、仏教の影響で肉食を避ける時代が続き、さらに江戸時代には急激な人口増加、たびかさなる飢饉の影響で栄養状況は悪化。古墳時代の平均身長を上回ることはありませんでした。
日本人の平均身長が再び高くなりはじめたのは明治時代に入ってから。文明開化によって肉食が広まり、栄養状態が改善され、次第に平均身長が高くなっていったのです。
身長は遺伝だけでは決まらない!

お伝えしておきたいことは、遺伝身長には大きな誤差があるということです。
遺伝身長とは親の身長から導き出す子どもの最終身長の予想値です。
男子の場合:遺伝身長=(父親の身長+母親の身長+ 13 )÷2 ±9㎝
女子の場合:遺伝身長=(父親の身長+母親の身長-13)÷2 ±8㎝
(現・浜松医科大学特命研究教授の緒方勤先生が2007年に発表した計算式)
たとえば、父親が170㎝、母親が155㎝なら、男子の場合は(170+155+13)÷2=169㎝ ±9㎝の幅があるので、子どもの遺伝身長は160〜178㎝となります。
男子の遺伝身長の振れ幅は18㎝で、高いほうに振れた場合、父親より8㎝高くなります。
もちろん、これはあくまで予想値ですから、このとおりになるとは限りません。栄養状態がよければさらに高いほうに振れ、遺伝身長より高くなる可能性もあるのです。
だから、断言します。「身長は遺伝だけでは決まらない」。栄養状態をよくすることで、身長を伸ばすことはできます。
近年耳にすることが増えた「新型栄養失調」

クリニックでたくさんの親御さんとお話をしてきたなかで感じているのは、みなさん子どもの身長を伸ばすことに対して熱心に取り組む気持ちがあるにもかかわらず、子どもの栄養状態を把握できている親は、ほとんどいないということです。
「お子さんは昨日、何キロカロリー摂取しましたか?」
「お子さんの体脂肪率は?」
「たんぱく質の摂取量は?」
という問いに答えられる親は、ほぼゼロです。
「それなりに食べているし、栄養は足りているはず」と思っていたとしても、実際は栄養が足りていないケースが珍しくありません。
それが、近年耳にすることが増えた「新型栄養失調」です。
新型栄養失調とは、栄養バランスの乱れが原因で起こる栄養失調で、さまざまなケースがあります。
摂取エネルギー(カロリー)は足りているのに、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどが不足しているケースもあれば、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素に加えてエネルギー自体が足りていないケースもあります。
エネルギー不足、栄養不足で身長が伸びにくくなることはわかっていますので、このような状況は避けなければいけません。
子どもの場合、特に学校給食がない日になると栄養バランスの乱れが起こりやすいことがわかっています。厳しい言い方になりますが「家庭での食事が、子どもの身長の伸びを妨げている可能性がある」ということです。
「子どもの成長期」という限られた期間にベストを尽くすためには、子どもの栄養状態を把握することが親の最重要課題です。まずはそのことを頭に入れておきましょう。
数年しかない思春期は身長を伸ばすラストチャンス

思春期が始まるときの身長が最終身長に影響するため、それまでに身長を伸ばしておかなければいけません。
思春期は第二次性徴期と呼ばれ、人生の中で最も身長が伸びるタイミングのひとつ。たった数年しかないこの時期は、身長を伸ばすラストチャンスなのです。
もちろん、個人差もありますから、皆が同じタイミング、同じ期間に身長が伸びるわけではありません。とはいえ、「人生100年時代」といわれる長い人生のなかでも、身長が伸びるのは子どものうちだけです。
親が学校行事に参加した際に、自分の子どもが「同級生と比べて身長が低い」「思ったより身長が伸びていない」と気づき、そのとき初めて身長について悩みはじめるというケースが珍しくありません。
勉強もお金を稼ぐことも、大人になってからでも取り組むことができます。しかし、身長はそうはいきません。伸びる時期が過ぎた後では、もうがんばることすらできず、あのときこうしていれば……、と後悔することもあるのです。
だから、身長を伸ばすための食事に今すぐ取り組んでほしい! 心からそう思っています。
【身長先生の基礎講座①】身長が伸びる仕組み

子どもの身長を伸ばすためにはカルシウムが大事だと思う方が多いのではないでしょうか? しかし、身長を伸ばすのに必要なのはカルシウムだけではありません。
大事なのは成長ホルモンと十分な栄養
成長期には脳の脳下垂体という部分からたくさんの成長ホルモンが分泌されます。
これは「今、成長しなさい」という脳からの指令。成長ホルモンは、その指令に従い、食事で取り入れた栄養を使って骨を伸ばします。骨を伸ばすためには、カルシウムだけではなく、たんぱく質、ビタミンD、亜鉛、鉄といった多くの栄養素が必要となります。
つまり、身長を伸ばすためには、次の2つが重要です。
・脳から成長ホルモンが十分に分泌されること
・骨の成長に必要な栄養を十分に摂ること
睡眠をはじめとする生活のリズムが乱れて成長ホルモンが十分に分泌されなかったり、必要な栄養が不足したりするだけで、骨の成長は停滞し、身長が伸びにくくなる可能性があるのです。
成長ホルモンと栄養。この2つが連携して子どもの体は成長していくということを、まずは覚えておいてください。
【身長先生の基礎講座②】睡眠について

身長を伸ばすという点において重要なのは、睡眠中に分泌される成長ホルモンです。
睡眠中には、成長ホルモンがたくさん分泌されるタイミングがあります。それが「睡眠のゴールデンタイム」です。「睡眠のゴールデンタイム」とは、入眠後約90分間の、最も眠りが深まり、成長ホルモンの分泌量が急激に増える時間帯です。つまり、入眠後90分間は「身長を伸ばすゴールデンタイム」ともいえるのです。
子どもが眠りについたら、家族は眠りを妨げないようにしましょう。親の帰宅が遅くなっても、子どもが寝ている部屋の電気を突然つけたりして起こすことのないようにしてください。
アメリカの国立睡眠財団が公表している年齢別の推奨睡眠時間をもとに、学校区分ごとの推奨睡眠時間をまとめると左記のようになります。
・小学生:9〜11時間
・中学生:8〜11時間
・高校生:7〜10時間
よく「8時間睡眠がいい」といわれますが、小中学生は8時間では十分とはいえないことがわかります。8時間で足りるのは、おおむね高校生になってからです。
また、長すぎる睡眠時間は体内時計を乱すのでよくありません。学校が休みの日は、寝すぎてしまう傾向があるので、睡眠のリズムを乱さないよう注意してください。
【身長先生の基礎講座③】身長を伸ばす5つの重要栄養素

身長を伸ばすために意識して摂りたい栄養素があります。それが、たんぱく質を含む次の5つの栄養素です。
①たんぱく質
「身長が伸びる」とは「骨が伸びる」ということです。「骨の成長と骨代謝の仕組み」に関わるたんぱく質と、切り離すことができないカルシウムについて解説しましょう。
骨の構造を見てみると、鉄骨の建造物のようなつくりになっています。まず、基礎となる鉄骨(骨質)が網目のように張り巡らされており、その素材として使われているのがたんぱく質。その基礎に付着して密度を高めて丈夫にするコンクリートのような役割を果たしているのがカルシウムです。
成長期は骨の材料となるたんぱく質、カルシウムがたくさん必要になるのです。
②鉄
体内の鉄は約70%が筋肉や血液中に存在しています。血液中には鉄とたんぱく質が結びついたヘモグロビンがあり、体中の細胞に酸素を運搬しています。
鉄が不足すると、血液中のヘモグロビン濃度が低下し、貧血、疲労が起こりやすくなり、さらに成長にも支障があると考えられています。
特に成長期は、体が急激に大きくなるだけでなく、部活動などで汗をたくさんかいたり、筋肉の合成が活発になったりすることで、鉄が欠乏しやすくなります。また、女子は生理が始まることで鉄の必要量が増えるということも大事なポイントです。
③亜鉛
亜鉛は骨、歯、筋肉、肝臓、脳、髪などさまざまな組織に存在する微量ミネラルです。
たんぱく質の合成や細胞の新陳代謝にかかわる酵素反応の活性化や成長ホルモンの分泌などに関与しているため、特に成長期にはたくさんの亜鉛が必要になります。
不足した状態が続くと、体中のあらゆる代謝が低下し、抜け毛や肌荒れ、口内炎、さらに味覚障害、食欲不振、成長障害などが起こります。
④ビタミンD
ビタミンDは腸内でカルシウムの吸収を促し、骨へのカルシウムの沈着を促進させて骨を成長させたり、骨を丈夫にするのに欠かせません。不足すると、骨の発達不良、低身長、O脚や背中が曲がる「くる病(骨軟化症)」の原因にもなります。
⑤カルシウム
たんぱく質とともに骨の材料になるほか、ホルモンの分泌や神経伝達にも不可欠。体内では99%が骨、歯に、それ以外の1%は血液、筋肉、神経内に存在し、出血時の血液凝固、筋肉運動、神経の興奮抑制、ホルモンの分泌調整などを担っています。
これら5つの栄養素が、身長を伸ばすためにはもちろん、子どもの健やかな成長に欠かせないということがおわかりいただけたでしょうか。
本書で紹介している成長食のルールでは、これらの栄養素を上手に摂るためのコツも紹介していますので、ぜひ実践してみてください。
レンチン中心で超簡単!毎日実践できる「身長先生式レシピ」

本書では、子どもの成長に必要な栄養素を十分摂り、肥満ややせを防ぎながら健康的に身長を伸ばし、体・心・脳を育てることをめざす「成長食」について30のルールを紹介しています。
また、そのルールを取り入れた、超簡単で毎日実践しやすい「身長先生式レシピ」も27品紹介しています。
今回は、その中から2つのレシピを厳選してご紹介します。どちらも、レンチン中心で超簡単に作れるので、ぜひ一度お試しくださいね!
卵とチーズでたんぱく質をしっかり補給「レンチン! スパニッシュオムレツ」

●材料(1人分)
卵… 2 個
ほうれん草… 1 株(約40g)
ピザ用チーズ…30g
牛乳…大さじ2
塩…少々
ケチャップ(好みで)…適量
●作り方
1 卵を溶きほぐし、長さ2 ㎝に切ったほうれん草、チーズ、牛乳、塩を加えてよく混ぜる。
2 耐熱ボウルにラップを敷き、1 を流し入れ、ふんわりとラップをかける。
3 電子レンジ(600w)で3 分加熱する。
4 器に取り出し、好みでケチャップをかける。
※ 具に汁気をきったノンオイルのツナ缶やしらすを加えるのもおすすめ。野菜は好みのものでOK。火がとおりやすいように刻んで加えてください。
POINT
[体脂肪が多い子どもには]➡ チーズをカッテージチーズにして脂質を減らす
[やせている子どもには]➡ 塩の代わりにマヨネーズを使ってカロリーアップ
たんぱく質が不足しがちな麵類に合う万能サイドメニュー「チキンボール」

●材料(つくりやすい分量)
鶏ひき肉…400g
卵… 1 個
エノキダケ( 粗みじん切り)…30g
レンコン( 粗みじん切り)…30g
塩…ふたつまみ
●作り方
1 すべての材料をよく混ぜる。
2 耐熱皿に1 をスプーンですくい、ピンポン玉サイズに丸めて並べる。
3 ラップをかけ、電子レンジ(600w)で8 分加熱し、そのまま5 分置いて余熱で火をとおす。
POINT
●粗熱がとれたら清潔な保存容器に入れて冷蔵で2~3日保存可。ジッパー付きの保存袋に入れて冷凍保存するのもおすすめ。電子レンジで解凍するほか、凍ったまま麺と一緒に加熱してもOK
●肉は豚ひき肉、合いびき肉でもOK
●エノキダケを使えば片栗粉を使わなくてもまとまりやすく、栄養もプラスできる
●レンコンで違う食感をプラスし、早食いを予防できる
「身長を伸ばす」ことは、子どもの未来を応援するポジティブな目標

「子どもの身長を伸ばす」という目標は、実はとてもシンプルです。
「やせたい」「体脂肪を減らしたい」という目標に向かって脂質や糖質の摂取量を減らしたり、脂肪の燃焼を高めようと運動をしたりするのと同じように、身長を伸ばすという目標に向かって具体的に取り組むことができます。これは、大人が健康のために食事に気を遣うのと同じことです。
それなのに、身長となると途端に「どうすればいいかわからない」「無理でしょ」とあきらめてしまいがちです。
その理由として私が感じているのは、「身長は遺伝で決まる」という固定概念にとらわれている人がとても多いということ。そして、身長が伸びる仕組みがわからず、食事によって身長が伸びるというイメージを持てない人が多いことです。
私がクリニックで行っている身長治療のひとつである「栄養指導」は、この本でお伝えしている内容そのものです。
もっと解釈を広げれば、この本で解説している、成長ホルモンをしっかり分泌させるための食事や生活習慣も、肥満を予防することで早熟を避ける食事も、クリニックでの治療と方向性は同じです。
子どもの身長を伸ばすためには、ご家庭での食事、生活習慣が大切だということがおわかりいただけるでしょう。
手の込んだ献立を考える必要はありません。この本では必要なことを実践しやすい形で提案していますので、今すぐできることからスタートしましょう。
大事なのは1食1食の積み重ねです。短期間だけ完璧にがんばるのではなく、少しずつでもいいので継続してください。この本で紹介した身長先生式レシピやおすすめの食材を参考に、継続しやすいオリジナルの成長食を考案し、家庭の味にしていただければ何よりです。
「身長を伸ばす」ということは、子どもの未来を応援するポジティブな目標です。
身長だけではなく、子どもの可能性に目を向けながら、家族みんなでポジティブに取り組むことで、よりよい結果に近づけるでしょう。
目標に向かってがんばるご家族、そして子どもたちを、心より応援しています!
身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30 体・心・脳が育つ!「成長食」
【おもな内容】
●Part1 子どもの成長のために知っておきたい7つの真実
1.身長は遺伝だけでは決まらない!
2.子どもの栄養状態を把握できている親は、ほぼ0%
3.子どもは8歳の時点で大人の女性と同程度のエネルギーが必要
4.肥満は身長の伸びを妨げるおそれあり!
5.身長は子どものうちにしか手に入らない
6.小中高で食べる約13000食すべてが身長を伸ばすチャンス!
7.身長が伸びる食事は体・心・脳にもいい食事
●Part2 体・心・脳が育つ「成長食」30のルール
★レンチン中心で超簡単!毎日実践できる身長先生式レシピ27品つき★
牛乳を1日3杯飲む/卵を1日2個食べる/肉と魚介のバランスは1:1/週1回以上、サバ缶を食べる/やせている子どもには唐揚げを/ごはんのおともは「ごまふりかけ」/じゃこ&青菜を組み合わせて食べる/部活や塾の前に「パワーおにぎり」/サプリメントにはできるだけ頼らない ほか
●コラム【身長先生の基礎講座】
身長が伸びる仕組み/カルシウムより重要? 身長を伸ばす5つの重要栄養素/睡眠について ほか
この記事の監修・執筆者

身長を伸ばす専門医。愛称は「身長先生」。金沢医科大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科へ入局。西新宿整形外科院長職を経て、2020年に東京神田整形外科クリニックを開業。活動が高く評価され、2023年にアメリカの経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の「Next Era Leaders(次世代のリーダー)」に医師として最年少で選出された。身長アップの方法を伝授するYouTubeチャンネル「身長先生田邊雄」は、登録者数3万4千人を超える(2025年2月現在)。著書に『1万5000人のデータに基づいたすごい身長の伸ばし方』(KADOKAWA)、『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30 体・心・脳が育つ!「成長食」』(Gakken)などがある。
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