【『考える人』が見下ろしているのは〇〇⁉】彫刻って、意味がわかるとおもしろい!

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【『考える人』が見下ろしているのは〇〇⁉】彫刻って、意味がわかるとおもしろい!

「彫刻」と聞いて、みなさんはどんな作品を思い浮かべますか?

有名な絵画などと比べると、彫刻は少しイメージしにくく、やや親しみづらい印象があるかもしれません。
しかし、誰が何のために、どうやってつくったのか、ひとつひとつの作品にはどのような思いが込められているのか、その意味を知れば作品がぐっと身近になり、きっと興味がわいてくることでしょう。

「『考える人』が見下ろしているものは?」
「『自由の女神』は外国からの贈り物?」
「渋谷駅前の『忠犬ハチ公像』は、実は二代目?」

有名な作品からあまり知られていない作品まで、約70点のスゴイ彫刻を大きなビジュアルで楽しく解説している『意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ彫刻』(Gakken)から、一部内容を抜粋・再編集してご紹介します。

お気に入りの作品が見つかったら、いつか実物を見に行ってみてくださいね!

目次

地獄を見下ろし物思いにふける『考える人』

高さ186㎝ ブロンズ 国立西洋美術館 東京(画像提供:PIXTA)

裸の男性が頰杖をついた姿勢で台に腰かけています。その顔つきは険しく、何かに悩んでいるようです。

いったいこの男性は、何を考えているのでしょうか。

このブロンズ像は、『考える人』と呼ばれる、世界でもっとも有名な彫刻作品のひとつです。19世紀のフランスで活躍した彫刻家、オーギュスト・ロダンによってつくられました。

元々この彫刻は、《地獄の門》という大きな作品の一部でした。門の上から地獄の悲劇を見つめる人物としてつくられましたが、ロダンが男性像を作品から独立させて発表すると、たいへんな評判を呼び、『考える人』という名で広まりました。

つまり、頰杖をついて悩んでいるように見えるポーズは、地獄を見下ろして物思いにふけるポーズだったのです。

今では、悲劇的な運命について考え続ける普遍的な人間像として、世界中で知られています。

建造の目的はいまだ不明『ギザの大スフィンクス』

高さ約20m 石灰岩 ギザ エジプト (画像提供:PIXTA)

古代エジプトの遺跡、ギザの三大ピラミッドは、約4500年前に、古王国第4王朝のクフ王、カフラー王、メンカウラー王の親子三代のお墓として建てられたといわれています。

その手前に建造されたのが、ライオンの体に人の頭部を持つスフィンクスです。カフラー王のピラミッドへ続く参道の入り口に置かれ、その顔はカフラー王に似せてつくられたといわれています。

いったい何のためにつくられたの?

古代エジプトでは、ライオンは太陽や王の象徴とされていました。また、ネメスと呼ばれるずきんをかぶった王の頭部は、その知性で、秩序や権力を支配していることのあらわれだといわれています。

この二つが結びついたスフィンクスは、ピラミッドの守り神としてつくられたという説のほか、古代エジプト人の太陽信仰と深くかかわっているなどの説があり、議論を呼び続けてきましたが、建造の目的はいまだ不明のままです。

途中で建造が中断され、長いあいだ砂に埋もれていたという過去もあるスフィンクス。
今もなお明らかになっていないことがたくさんあるのです。

フランスからのお祝いとして贈られた『自由の女神像』

高さ約46m 鋼鉄 銅 コンクリート ニューヨーク州リバティ島 アメリカ (画像提供:PIXTA)

アメリカ・ニューヨークのリバティ島に建つ、有名な『自由の女神像』です。表面を銅板で覆ったコンクリート造りの像で、高さはおよそ46m。台座を入れると、93mもあります。

今では、ニューヨークといえば『自由の女神像』が思い浮かぶほど、代表的な観光名所として知られていますが、実はこの像をアメリカに贈ったのはフランスでした。

アメリカがイギリスから独立して100年たったとき、独立運動を助けたフランスが、お祝いとして女神像を贈ったのです。

その提案をしたのは、フランスの歴史家のラブレーで、設計は同じくフランスの彫刻家のバルトルディが担当しました。
制作に必要なお金は、フランス国民とアメリカ国民の寄付でまかなわれたといいます。『自由の女神像』は、みんなの力でつくりあげた、自由のシンボルだったのですね。

女神像は、1984年には世界遺産にも登録され、今も人々を見守るように、ニューヨークの港の入り口にそびえ立っています。

今の銅像は、二代目『忠犬ハチ公像』

銅 JR渋谷駅前ハチ公前広場 東京 (画像提供:PIXTA)

「忠犬ハチ公」ことハチは、亡くなった飼い主の帰りを渋谷駅前で待ち続けたことから有名になり、銅像になった犬です。「ハチ公前」といえば、日本でいちばん有名な待ち合わせ場所かもしれませんね。

そのハチ公像が完成したのは、1934年のこと。式典にはハチも出席したそうですが、実は今の銅像はそのときのものではなく、二代目だということを知っていましたか。

初代ハチ公像は、金属が不足していた戦時中に工場で溶かされ、機関車などの部品になったといわれています。また、像の作者である彫刻家の安藤照も、東京大空襲で命を落としました。

二代目ハチ公像をつくろうという話が持ち上がったのは、戦争が終わってしばらくたったころのことです。

初代ハチ公像をつくった安藤照の息子で、彫刻家の安藤士が、二代目となるハチ公像を生み出しました。

今もみんなに愛される「渋谷のハチ公」は、彫刻家の親子がバトンをつないだからこそ残った、戦後復興のシンボルだったのです。

『意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ彫刻』

■えっ、これも彫刻!? 彫刻ってこんなにおもしろいんだ!
彫刻は石や木を彫り刻んだり、粘土をこねて肉づけしたり、金属を型に流したりしてつくるものです。絵画に比べると親しみづらい印象がありますが、スフィンクスもハチ公像も、土偶も埴輪も仏像も、実はすべて彫刻。彫刻には、みなさんが見たことのある作品がたくさんあるのです。本書では、そんな有名な作品からあまり知られていない作品まで、約70点のスゴイ彫刻を大きなビジュアルで楽しく解説しています。彫刻がぐっと身近になる1冊です。

■本書の特色
・特大サイズの高画質な図版を掲載!
さまざまなお寺や美術館などの協力を得て、特大サイズの高画質な図版を掲載。印刷の質にもこだわっています。実物さながらの迫力を味わうことや、作品の細部まで観察することができます。

・楽しい文とイラストで作品の見方を解説!
わかりやすい文章で、制作背景や制作意図、技法などを解説。彫刻作品の楽しみ方がわかります。また、作者やモデルのイラストを、セリフとともに掲載。作品がより身近に感じられます。

・コラムや資料も充実!
西洋・日本の彫刻の歴史がわかる年表、本書に登場する作品を見られるお寺や美術館ガイド、日本全国の駅前の像の特集、交わるはずのなかった彫刻家どうしの対談を妄想でつづったコラムなどものせています。

【もくじ】
・第1章 謎がいっぱいの彫刻
考える人/兵馬俑/遮光器土偶/興福寺阿修羅像/モアイ ほか
妄想対談 ロダン×ミケランジェロ
・第2章 人の想いがつまった彫刻
奈良の大仏/ダヴィデ像/老猿/東寺講堂立体曼荼羅/ミス・ブラック・パワー ほか
妄想対談 定朝×運慶
・第3章 激動の歴史を歩んだ彫刻
王妃ネフェルティティ胸像/サモトラケのニケ/太陽の塔/自由の女神像/忠犬ハチ公像 ほか
妄想対談 高村光雲×ポンポン
・巻末特集
彫って刻むだけじゃない! 彫刻のつくりかた
10cmから100mまで 彫刻の高さ比べ
彫刻にも流行がある! この彫刻はいつつくられたの? 西洋編・日本編
本書に登場する作品を見られるお寺・美術館

この記事の監修・執筆者

美術ライター 佐藤 晃子(さとう あきこ)

愛知県出身。日本、西洋の美術をやさしく紹介する書籍を多数執筆する。明治学院大学文学部芸術学科卒業。学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程修了(美術史専攻)。『意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ絵画』(Gakken)、『源氏物語解剖図鑑』『国宝の解剖図鑑』(エクスナレッジ)ほか。

意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ彫刻」(Gakken)が発売中。

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