【昔とは全然違う! 令和の学校給食事情】食を学びにつなげる指導って? [専門家監修]

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【昔とは全然違う! 令和の学校給食事情】食を学びにつなげる指導って? [専門家監修]

学校の給食に対する取り組みは、保護者のみなさんが子どもだったころとは大きく変わってきているそうです。学校における食育に詳しい藤本勇二先生に最新の給食事情をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

令和の学校給食は30年前とこんなに違う

食育という言葉があるように、食べることにもさまざまな学びがあるという考え方が浸透し、学校の給食への取り組みも30年前とは大きく変わってきています。給食は“家庭と学校が連携して取り組むもの”という考えが主流になってきているのです。

ご自身が小学生のころ「好き嫌いが多かったので食べるのが大変だった」「給食が時間内に食べ終わらなくてつらかった」、あるいは「クラスにそういう友だちがいてかわいそうに感じた」など給食に対するネガティブな記憶がある方もいるかもしれません。「うちの子も、そんな思いをしていないかな」と心配する方もいるでしょう。しかし、今の公立小学校では、人権的な配慮やアレルギーの問題、また、食は多様であることを踏まえ「時間内に食べなさい」「残さず食べなさい」「3点食べをしなさい」などの指導を強くはしていないので、安心してよいでしょう。

文部科学省が推進する幼保小接続(※)の取り組みもあり、子どものアレルギーや偏食、小食などの情報は幼稚園や保育所から小学校へ引き継がれるようになってきています。それでも心配な方は、子どもの事情を学校に積極的に伝えておくとよいでしょう。

※幼保小接続とは、幼児期の教育(幼稚園、保育所、認定こども園における教育)と児童期の教育(小学校における教育)が円滑に接続し、体系的な教育が組織的に行われること。

“配膳”は生活自立を促す学びのひとつ

以前は、1年生の給食の配膳を6年生が行っていた学校もありましたが、それは減少傾向にあります。なぜなら、6年生が配膳を行ってしまうと、1年生が何も学べないからです。自分たちで配膳をすれば、食器によそう量をどう調節するか、適切にみんなに分けていくにはどうするかなどを学ぶことができます。配膳にも学びがあるという考え方から、1年生から配膳に取り組む学校が増えてきています。とはいっても、1年生がすべてを行うわけではなく、副菜だけを配膳するなど先生や大人がサポートしながら、少しずつ取り組んでいます。

給食は、単に栄養を補給してお腹を満たすだけの時間ではなく「特別活動」という教育の時間なのです。

給食に活用されるICT

近年、給食の時間にICT教育(情報端末機器やインターネットなどの情報通信技術を活用する教育のこと)を導入する小学校が増えています。給食の時間におけるICT教育とは、たとえば、生産地と教室をオンラインでつないで生産者の様子を動画で紹介するといった活動などです。保護者のみなさんが子どものころも、給食の時間に校内放送などがあったかもしれませんが、ICTを活用すると動画や写真を使って視覚に訴えることができるため、食にかかわるさまざまな“物語”が子どもに届きやすくなります。ピーマンが嫌いな子でも、ピーマンを作っている様子や生産者からのメッセージを動画で見ると、残さなくなるという傾向が見られることもあります。それ以上に給食へのICTの導入は、子どもの食への関心を育みやすくなるという教育的な意義が期待されています。

嫌いな食べものもがまんして食べなきゃいけないの?

「うちの子はピーマンが嫌いです。給食に出たら残してもいいよ、と教えてもいいの?」というように、子どもの偏食を心配している保護者も多いでしょう。

子どもは大人より味覚が敏感なので、ある程度好き嫌いがあるのは仕方がありません。ですから“嫌いなものがあるのはよくない”という考え方はしないようにしましょう。しかし、嫌いだからといって食べものの選択肢を減らしてしまうのはもったいないことです。また、大人の社会では「食はコミュニケーション」という考え方があるように、嫌いな食べものが多いと、人と食事を通して交流できる機会が減ってしまう可能性もあります。そうならないように、保護者が今のうちからうまく支えてあげたいですね。

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偏食を克服するには食べものとの関係性を伝える

嫌いな食べものがある子どもには、それを食べたくなるような状況をつくってあげましょう。たとえば、「このピーマンは、あなたのおじいちゃんが住んでいる○○県でとれたピーマンだよ」など、その食べものにまつわる“物語”を子どもにいろいろと提供するのはオススメです。そうすることによって、子どもの中にその食べものとの“関係性”が生まれ、食べてみたくなるきっかけとなるでしょう。

学校では、事前に保護者から「嫌いなものでも食べさせてほしい」という要望があれば、先生が「一口でも食べてみようか」などと指導したり、友だちが食べている様子を見て「いっしょに食べてみては?」と促したりすることはあります。多くの学校で、結果的に嫌いなものは残してもよいけれど、「残してもいいよ」とは言わない指導を目指しています。

※アレルギーがある児童への対応は異なります。

時間内に食べきれない子どものための取り組み「もぐもぐタイム」

公立小学校では、4時間目の授業のあと、給食の時間として45分間確保されています。しかし、その時間には、手洗いをして給食の準備・配膳、さらに食後の片づけの時間も含まれています。ですから、実際に給食を食べている時間は15分程度しかありません。この時間内に食べ終わらない子どもも出てくるでしょう。

そこで、学校ではさまざまな取り組みが行われています。たとえば、1年生は4時間目の授業を少し早めに終えて給食の準備を始め、食べる時間を長めに確保している学校もあります。また、低学年の場合、おしゃべりに夢中になって給食を食べることがおろそかになってしまう子どももいるので、教員が「今から○分間はおしゃべりをやめて食べることに集中しようね」などと声をかける取り組み(「もぐもぐタイム」など)を実施している小学校も多いです。この取り組みは、時間内に食べきるという狙いだけでなく、食べることに集中することで諸感覚を働かせることができるため、食べものの香りや触感など幅広い気づきにつながるという効果もあります。

家庭でも子どもに食にかかわる体験を

以上のように、学校では、給食を学びにつなげるさまざまな取り組みが進んでいます。ぜひご家庭でも、子どもが体験的に食にかかわる機会をつくっていきましょう。たとえば、ベランダで野菜を育てたり、子どもといっしょにスーパーなどへ買い物に行って、食材についていろいろな話をしたり、料理や配膳の手伝いをお願いするだけでも、いろいろな気づきがあるはずです。

また、学校の給食について、日ごろから子どもの話を聞くことも大切です。たとえば、学校から配付された献立表を見ながら「明日の給食は何かなぁ」といった会話をしたり、「私が小学生だったときの給食はね……」などと自分の体験談を話したりするのもオススメです。

学校給食は、食べるときに気づいたり考えたりしたことを学びにつなげる教育の一環として位置づけられています。給食に関してお子さんが何かを気にしていたり、不安に感じていたりするようなことがあったら、学級担任に相談するとよいでしょう。ご家庭も学校といっしょになって、給食の時間を実のあるものにしていきましょう。

この記事の監修・執筆者

武庫川女子大学教育学部教育学科 准教授 藤本勇二

徳島県内公立小学校勤務を経て2010年から現職。専門は児童中心主義の教育方法。日本食育学会会員。文部科学省「今後の学校における食育の在り方」に関する有識者会議委員。文部科学省小学生用食育教材「たのしい食事つながる食育」作成委員など。

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