食べられるのに食べ物を捨ててしまうこと、または捨てられてしまう食べ物のことを食品ロスといいます。
今、日本でも世界でも食品ロスが問題になっています。食品ロスを減らすために、家庭でもできることはたくさんあります。お子さんといっしょに取り組んでみませんか。
食品ロスの現状
日本の食品ロスは、約522万トン
家庭をはじめ、レストランなどの飲食店、スーパーやコンビニなど、さまざまなところから食品ロスが出ています。日本全国で1年間に出る食品ロスの量は、なんと約522万トンにも達します(2020年度)。大型ジェット旅客機(B777)の重量がだいたい350トンなので、約1万5000機分に相当します。想像を絶する量ですね。
これを国民1人当たりに換算すると、1年間で約41kg、1日当たりでは約113gになります。茶碗1杯のごはんが約150gなので、日本人全員が、毎日茶碗に軽く1杯盛ったごはんくらいの重さの食べ物を捨てていることになるのです。
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家庭からも店からも
日本の食品ロス約522万トンのうち、家庭から出る分が約247万トン、レストランやスーパー、コンビニ、食品加工工場などから出る事業系の分が約275万トンで、ほぼ半々といえます。事業系の食品ロスのうち、外食産業や食品小売業は、捨てられる食品の半分以上がまだ食べられるのに捨てられています。
たくさんの人が手間をかけて生産した食品が、まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまうのは、とても残念なことですね。
食品ロスがいけないのはなぜ?
では、食品ロスはなぜいけないのでしょうか。お子さんが疑問に持つかもしれませんね。そもそも食べ物は、動物や植物の命をいただいています。そして、私たちの食べ物になるまでには、多くの人が育てたり、加工したり、運んだりしています。食べられるものを捨てることは、たくさんの命や多くの人の努力を無駄にすることです。
また、家庭にとって食品ロスは、家計に余計な負担をかけることになります。さらに、食品ロスが増えればその分ごみが増えるため、その処理にかかる費用やエネルギーが増え、地球環境にもよくありません。
世界には栄養を十分にとれない人が約8億人もいます。毎日の食べ物に困らない私たちには想像しにくいかもしれませんが、世界の人口のおよそ9人に1人は食料不足に苦しんでいます。それなのに、私たちが食べ物を無駄にするのは問題ではないでしょうか。
食品ロスの原因は?
家庭での食品ロスの原因
家庭で食品ロスが出る原因のひとつに、消費期限や賞味期限までに食べられなかったというものがあります。消費期限は「その日付・時刻までは食べられる」ことの表示で、サンドイッチやおにぎり、生魚など、傷みやすい食品に表示されています。一方の賞味期限は「その日付まではおいしく食べられる」もので、スナック菓子、缶詰などの食品に表示されています。
買い過ぎや使い忘れなどで、消費期限や賞味期限が過ぎてしまって捨ててしまうことがあります。食事のときに、たくさん作りすぎて食べきれずに捨ててしまうこともあります。お客様をおもてなしするときなど、つい多く作りすぎることもあるのではないでしょうか。
また、調理するときに必要以上に多く捨ててしまうことも食品ロスの原因です。キャベツの外側の葉を多く捨てたり、ブロッコリーのくきを全部捨てたりすることもあるかもしれませんが、捨てている部分にも食べられる部分がふくまれているのです。
事業系の食品ロスの原因
スーパーやコンビニなどで売られているお菓子などは、食品メーカーで製造され、運ばれ、店頭に並べられているものです。食品メーカーと小売店との間には、「3分の1ルール」といわれている慣習があります。それは、「賞味期限が残り3分の1になる前に店から撤去する」というものです。
たとえば、賞味期限が6か月の食品は、残り2か月になる前に店から撤去され、そのほとんどは廃棄されます。店頭に賞味期限が近い商品を置きたくない(消費者が新しいものを選ぶので)ためにこのようなルールがあるのですが、これが事業系の食品ロスの原因のひとつになっています。
また、飲食店などでは、品切れを防ぐために、食材を多めに用意しています。でも、思ったほど利用者がいなければ余った食材を捨てなければならなくなります。
そして、お客さんの食べ残しも捨てることになります。これらも事業系の食品ロスの原因です。
食品ロスを減らすには?
家庭での食品ロスを減らす
家庭での食品ロスを減らすには、その原因をふまえるとよいでしょう。消費期限や賞味期限を意識して、計画的に食べること、むやみに食品を買いすぎないこと、食品を適切に保存することなどは、すぐにでもできますね。また、食事のときには適切な量を作り、食べられる部分をできるだけ多く、工夫して使うことです。先ほどのブロッコリーのくきなどは、調理のし方しだいでおいしく食べられるので、試してみましょう。
家族で外食する際は、多く注文しすぎないこと。どうしても食べられない場合は、店の人に持ち帰ることができるかを確かめ、自己責任で持ち帰りましょう。
事業系の食品ロスを減らす
事業系の食品ロスを減らすために、私たちにもできることがあります。すぐに使うものであれば、消費期限が近くても問題ないはずなので、そういうものを選びましょう。最近はスーパーなどでは、「てまえどり」(消費期限・賞味期限の近い手前の商品から取ること)をすすめる表示を見かけますね。
小売店などでも、「3分の1ルール」をあらためる動きもあります。また、賞味期限の表示を「年月日」から「年月」にして、店頭に長い間置けるようにする取り組みもあります。
フードバンクの活動も
安全に食べられるのに、包装の破損や印字ミスなどで店頭に置けない食品を、食べ物を必要としている施設などに提供するフードバンクの活動が各地で行われています。これも食品ロスを減らすことを目的のひとつにしており、家庭からも食品を受け入れている場合があるので、ホームページなどで調べてみるとよいでしょう。
「食品ロス」をわかりやすく紹介している本
食品ロスを減らすことは、SDGs(持続可能な開発目標)を達成することにもつながります。食品ロスについて、または食品ロスとSDGsについてなどをわかりやすく紹介している本を、お子さんといっしょに読んでみましょう。
『地球ときみをつなぐ SDGsのお話』
食品ロスや地球温暖化、ジェンダー平等、平和など、SDGsのテーマがつまったお話短編集です。未来を担う子どもたちにぜひ伝えたいSDGs。難しく思いがちですが、この本は絵本形式の物語なのでやさしく触れられます。4歳〜小学校低学年向け。
『捨てられる食べものたち』
「食品ロスとはなに?」「世界には食べ物が余っているの?」など、食品ロス問題の第一人者が、食品ロスの現状や世界と日本の食料事情などを、イラストつきでわかりやすく解説します。
食料が今ほど豊かでなかったころは、食べ物を捨てると「もったいない」とたしなめられたものですが、昨今は食べ物を捨てることへの抵抗が薄れているようです。食べられることへの感謝の気持ちを持てば、自然と食品ロスを減らせるのではないでしょうか。お子さんといっしょに、食べ物がどうやって食卓に届くのか考えてみるといいですね。
この記事の監修・執筆者
未就学から中学生までの子を持つママ編集者を中心に、子どもの学びや育ちに関する様々な情報を日々発信しています!
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