「もう宿題はやったの!?」「早く宿題をやりなさい!」毎日、お子さんとこんなやりとりを繰り返していませんか? 前回に引き続き、小学校での教員経験もある帝京平成大学人文社会学部 児童学科の鈴木邦明先生に「子どもが自分から進んで宿題をやるには、どうしたらいいの?」という悩みに対してアドバイスをしていただきました。
文/こそだてまっぷ編集部
宿題の目的のひとつは学習習慣を身につけること
小学校で出される宿題には、家庭での学習習慣を身につけるというねらいもあります。その日に習ったことなどを忘れないうちに復習して定着させるという側面もありますが、家庭で机に向かう習慣をつけるためにも宿題は有効と考えられています。
また、学校の45分間の授業でやりきれなかったことを宿題にしてフォローする場合もあります。
最近では、GIGAスクール構想(※)のもと、子ども一人1台端末という学習環境が整ってきた自治体もあり、児童が端末を持ち帰って宿題に取り組む学校もあります。
たとえば、算数の九九や漢字の書き取りなどの基礎的な学習は、デジタル端末のアプリを活用したAI学習のほうが効率的です。学習履歴をデータ化して保存し、苦手な部分を見つけてそこだけを集中的に繰り返しトライするなど各児童の習熟度に合わせた個別最適化学習に対応しているので、自治体にもよりますが、今、宿題にデジタル端末を利用する教員は増える傾向にあります。
※GIGAスクール構想……全国の児童・生徒一人に1台のコンピュータと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。
「なぜ、宿題をやらなくてはいけないのか?」を問いかけてみよう
「子どもが自分から宿題をしないので困る」という保護者の方には、「宿題をやりなさい!」と叱る前に、まず、お子さんに「どうして宿題をしなくちゃいけないんだと思う?」という問いかけをしてみることをお勧めします。
ちょっとハードルが高いように感じるかもしれません。ですが、「宿題をしなさい!」と叱りつけて、お子さんがイヤイヤ宿題をこなしても学力には結びつかないのです。
「なぜ、宿題をやらなくてはいけないのか?」とたずねると、最初は、お子さんも「だって宿題をやらないと、先生に怒られるから……」といった目先の答えが返ってくるでしょう。でも、宿題が出される理由をお子さん自身がよく考えるようにうながすと、だんだんと答えが変わってくるはずです。
「自分のために必要だから」
「いつか自分がやりたいことにチャレンジするときのためにやっておいたほうがいいから」
宿題は、先生や親のためにやるのではなく、自分のためにやるのだ、ということをお子さん自身が納得すれば、自分から進んでやるようになります。
過度な干渉にならないように注意を!
低学年のお子さんが宿題に取り組む際、そばについて見ている保護者の方もいるようです。お子さんが何を学んでいるのか、どんな宿題が出されているかを把握するのは悪いことではありません。ですが、過度な干渉にならないように注意しましょう。
「そこ、間違っているよ」
「字をもっときれいに書きなさい」
などいちいち指摘するのは禁物です。お子さんにとって、「宿題をやると怒られる」といった体験はネガティブな感情に結びついてしまうからです。
よほど重大な間違いを見つけたら、本人に伝えたほうが良いケースもありますが、あまり細かくマイナス面を指摘するのは避けたほうが良いでしょう。
それよりも宿題が終わったときに「よくがんばったね!」「しっかり宿題ができて、えらいね!」とお子さんの努力を評価してほめてあげることが大切です。
学童利用者は学童の時間内に宿題を終わらせる
学童に通わせている方は、宿題を学童の時間内で終わらせるようにすると良いでしょう。学童では、たいてい宿題に取り組む時間を設けています。宿題は学童で終わらせておくというルールをお子さんとの話し合いの中で決めておくと、毎日の学習習慣を身につけることにもつながります。学童から帰ってきてからは、夕食、お風呂、明日の準備、寝る準備……などがあって、実はお子さんも結構忙しいはずです。眠くなって宿題どころではなくなってしまうので、学童を上手に活用するといいでしょう。
お子さんの学習環境を整えるのも保護者の役目
お子さんが自分から宿題に取り組むためには、それに適した学習環境を整えてあげることも保護者の大事な役目です。子ども部屋があるご家庭では、そこにゲーム機やマンガなどが置いてあるのではないでしょうか。学習に関係のない遊びの道具が目に入ると、どうしても気が散って学習の邪魔になります。子ども部屋で宿題をさせるご家庭では、余計なものを学習机付近の視界に入る場所に置かないといった配慮も必要です。
その点、リビングや食卓を利用して宿題をするご家庭のほうが、テレビのスイッチさえオフにしてしまえば、学習の邪魔になるものが多くないはずです。低学年でしたら、お子さんと相談の上で、宿題はリビングや食卓でやる、と決めておくのも有効な手段です。
宿題をやりたくない理由に学習の遅れがあるのかも!?
学校から出された宿題の量が多すぎる、あるいはお子さんが負担だと感じているようでしたら、まずは担任の先生に相談しましょう。
宿題をやりたがらない、あるいはやってこない児童も実際はいます。それには、宿題に取り組めない家庭の事情が関係しているケースが多いのですが、お子さんが授業についていけていないというケースもあります。「学習の内容がわからないから、宿題をやりたくない」という可能性もあるので注意が必要です。
教員は、子どもたちがやってきた宿題を確認して、その子の理解度などを把握する材料にしている側面もあります。ですから、たとえ、お子さんの宿題が不完全だったとしても、保護者の方が代わりに完璧に仕上げてしまうことは避け、そのまま提出してください。もし、何らかの事情があって宿題をできなかったら、連絡帳などを利用してその旨を率直に先生に伝えたほうが賢明です。
この記事の監修・執筆者
東京学芸大学教育学部卒業。放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了。公立小学校で22年間教諭を務め、現職。他に相模女子大学学芸学部非常勤講師、人間総合科学大学人間科学部非常勤講師なども務める。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進め、保護者や教員向けに執筆や講演活動を行う。
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