❝子どもを寝かせること(寝かしつけ)❞は、毎日のことだからこそ大変で悩みはつきないもの。体調や生活リズム、次の日のことを思うと「○時までに寝かせなきゃ!」と、つい焦ってしまう保護者も少なくありません。いったいどうすれば子どもはスムーズに寝てくれるのでしょうか――。
ここでは、乳幼児から小学生の❝睡眠❞に大切なことと、親子で過ごす❝寝る前の時間❞にできることについて、乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやさんに話を伺いました。
取材・文/細川麻衣子
子どもの睡眠のためにママ&パパができることとは?
睡眠は、脳の発達や学習・記憶、感情の安定、免疫システム、注意力や集中力など、心身のさまざまな働きと関係しています。これは、赤ちゃんから大人まで、すべての人に言えることです。
大人になると、自分自身で生活のリズムや体調を気にしながら、睡眠をとることが出来ますが、赤ちゃんや子どもは、そうはいきません。赤ちゃんの場合、夜泣きや授乳・おむつの交換などがありますし、幼児~小学生になってくると今度は体力がついてくるので「もっと遊びたい!」となって寝ない……などで、なかなか保護者の思うようにならないこともあるでしょう。
まずは知って意識しておけるとよいことをお伝えします。
年齢別に知っておきたい1日の推奨合計睡眠時間
まずは❝睡眠に必要な時間❞です。いったい子どもにはどれくらいの睡眠時間が必要なのでしょうか。目安としてお伝えしている、年齢ごとの「1日の推奨合計睡眠時間」はこちらです。
赤ちゃんのころは、1日のほとんどを寝て過ごします。それが成長とともに少しずつ変化し、幼児期になると昼寝をする子・しない子が出てきます。そして小学生になると、基本的には夜にまとまった睡眠をとる生活へと変わっていきます。
ただ、ここで大切なのは「○時間寝かせなきゃ」と数字だけにとらわれないことです。睡眠時間の目安を知っておくことは大切ですが、これだけで「うちの子は睡眠が足りていない」と判断する必要はありませんので安心してください。
子どもが充分に睡眠をとれているか? チェックポイント
このとき、起きているときの子どもの様子を見てみてください。以下の様子が問題なさそうであれば、前出の推奨合計睡眠時間より、実際に寝ている時間が少なくても問題ありません。「何時間寝たか」だけではなく、「その睡眠によって日中をどう過ごせているか」を見ることが大切です。
【チェックポイント】
●朝、すっきり起きられているか?
●日中、元気に過ごせている?
●機嫌よく過ごせている?
●集中力に変化はないか?
など
寝る前のルーティンを整える
睡眠について科学的にも大切だと言われているのが、寝る前のルーティンです。寝る前に、毎日同じルーティンをくり返すことは、子どもにとって寝ることへの❝合図❞につながります。
【ルーティンの例】
●絵本の読み聞かせをする
●優しく触れ合う(ギュッとハグ、背中やおなかをトントンする、など)
●いっしょに今日の出来事の話をする
など
1日の流れは毎日違っても、寝る前のルーティンだけはなにか「コレ」と決めておくと◎。子どもは自然と「寝る時間だ」と感覚で理解し、安心して眠ることができます。
睡眠を妨げる❝光❞をコントロールする
寝室の環境づくりでは、❝光❞も大切なポイントです。光は睡眠に大きく影響するため、寝る時間にはできるだけ暗くし、朝も早すぎる時間に光が入らないようにするとよいでしょう。
たとえば、朝方に日差しが入る部屋で寝ていると、まだ起きる時間ではないのに、4時や5時など早い時間に目が覚めてしまうことがあります。そいういう場合は遮光カーテンや遮光シートなどを活用して、なるべく❝光❞に左右されない寝室の環境づくりをしてみてください。
【寝室の光のポイント】
●夜はできるだけ暗くする
●朝、早すぎる時間に光が入らないよう、遮光カーテンや遮光シートなどを活用する
●真っ暗を怖がる場合は、赤やオレンジなど暖色系のライトを足元に使う
夜、暗いことが怖くない年齢であれば、寝室は❝真っ暗❞がベストです。豆電球など、頭上から明るく照らす常夜灯は明るすぎる場合があるので、暗いのが怖い場合には、足元をほんのり照らす程度の暖色系のライト、間接照明などを使うとよいでしょう。
寝室の温度を整える
寝室の環境で、もうひとつ大切なのが❝室温❞です。目安は20~22℃くらい。特に、暑いと子どもは寝つきにくくなったり、睡眠の質にも影響します。暑い季節は冷房、寒い季節は暖房を使って、子どもが心地よく眠れる室温に調整することが大切です。
目安は20~22℃くらいですが、その日の体調や、気温、湿度などで感じ方は人それぞれです。「何℃にしなければいけない」と数字だけにとらわれすぎる必要はありません。子どもの様子を見ながら、眠りやすい環境を整えてあげてください。
いちばん大切にしたいのは❝寝る前の親子コミュニケーション❞
寝る前の親子のコミュニケーションは、親子お互いにとって幸せな時間になります。特に子どもは、ママやパパとの楽しいやり取りや声かけを受けて、「生まれてきてよかった」「愛されている」と感じ、自分の存在を肯定することにつながります。こうしたやりとりの積み重ねが、親子の愛着形成を支える大切な土台になります。
これは睡眠の観点からもとても大切なことです。寝る前にあたたかい気持ちになることで、「ママやパパがそばにいる=ここは安全」と、安心して眠りにつくことができるからです。
では具体的に、どのように関わればよいでしょうか。
「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう」を言葉にする
「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう」という言葉は、子どもにとってとても幸せなことです。毎日の寝る前に言葉にして伝える習慣ができればベスト◎です。
ただ、日本人のママ&パパのなかには、こうした言葉を口にすることを少し恥ずかしく感じる方も比較的多いようです。そういう場合は、絵本の読み聞かせなどを利用してみるのもおすすめ。「絵本に書いてあるから言ってみよう」と抵抗なく、言葉にして伝えられるでしょう。
1日を振り返って「今日は怒ってしまった」「あまり優しくできなかった」と感じる日こそ、寝る前、子どもが起きているあいだに「○○ちゃん、大好きだよ」と伝えてあげてください。これで、親子ともに穏やかな気持ちで寝ることができます。
お互いに「今日うれしかったことを3つ」伝え合う
寝る前に「今日うれしかったことを3つ教えてくれる?」「ママはね……♪」と親子で話すこと。これは本当におすすめのコミュニケーションです。うれしかったことを実際に書いたり言葉にしたりすることで、幸福度が高まることは科学的な研究でも示されています。
毎日の中にある小さな「うれしい」を意識して見つけることは、親自身が前向きな気持ちを育てていくことにもつながります。
【ママ&パパの❝うれしかったこと❞の例】
●「離乳食(昨日は食べなかったのに)今日は一口食べてくれたよね、うれしかったよ」
●「お昼寝してくれたから、ママはチョコレートケーキを食べられてうれしかった」
●「いっしょにお風呂にゆっくり入れてうれしかったよ」
●「仕事が早く終わって、まだ起きてる○○ちゃんに会えたのがうれしかった!」
●「いつもより1本早い電車に乗れたんだよ」
など

ママ&パパは育児に関することだけでなく、自分自身の「うれしかったこと」でOKです。
また、子どもに「うれしかったこと」を聞くと、何も話せなかったり、ひとつしか言えない……など、最初はうまく答えられない子はたくさんいますので、がっかりしないでくださいね。それでも毎日続けていると、だんだんと「給食がおいしかった」「友だちと遊んだ」「晴れててうれしかった」など、日常の中からうれしかったことを見つける習慣が少しずつ身についていきます。
これまでは❝普通のこと❞やむしろ❝嫌なこと❞と感じていたことでも、捉え方を変えて❝うれしかったこと❞と捉え始めることもあります。
うちは赤ちゃんの頃から、今もこの会話を寝る前にしています。今では息子は「空を見たら雲がクジラみたいでおもしろかった!」など、うれしかったことや楽しかったことを、息子自身の視点でたくさん見つけられるようになりました。しだいに私は「それがうれしかったんだね」と、自分とは違う視点や感覚を肌で感じ、日々学ばせてもらっている――というように感じたり。このように、お互いの感じ方を知るきっかけになるので、一人の人間としての視野が広がりますし、親子で日常の中にある❝幸せ❞を見つけるのが上手になると思います。
この会話は何歳からでも・何歳になっても、おすすめです。乳幼児の場合は、ママ&パパが話しかけるように「自分の今日うれしかったこと」を語りかけてあげてください。
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「もっと遊びたい!」「寝たくない!」小学生の睡眠、どうする?
小学生になると、体力がついてきて「まだ遊びたい!」「もう少しテレビを見たい!」と、なかなか寝たがらないこともありますよね。また、ゲームやスマートフォンなど、子ども自身が「もっとやりたい!」と思うものも増えてきます。
でも、小学生になったからといって、乳幼児の頃と睡眠の基本的な考え方が大きく変わるわけではありません。ただ、特に意識してほしいのが次の2点です。
スマホやゲームは寝る2時間前までに
スマホやゲームを使うようになったら、親子で話し合って、家庭内での一定のルールをつくることをおすすめします。睡眠の観点からは「寝る2時間前には終わりにする」ということが睡眠の妨げにならない最低限の環境づくりといえるでしょう。
これは、スマートフォンやゲームの画面から受ける光だけでなく、ゲームの刺激やSNSなどの情報によって脳が活性化し、眠りにつきにくくなることがあるからです。

「もう少しだけ」となりやすいので、寝る時間になってからやめさせるのではなく、あらかじめ「○時になったらおしまいにしよう」などと、親子で決めておくとよいでしょう。
自然と起きられるリズムをつくる&見直す
そもそもしっかり眠れていれば、大人も子どもも、本来はアラームに頼らなくても自然と起きられるものなんです。学校など決まった時間に起きる必要があるため、目覚ましアラームを使うこともあると思いますが、毎朝何度も起こさなければならないのであれば、現在の睡眠そのものを見直してみることも必要です。
【自然と寝て起きるリズムになっているか? チェックポイント】
● 毎朝、何時に起きているか?
● 日中しっかり体を動かしているか?(外で遊ぶ時間がとれているか?)
● 3食の食事のリズムが整っているか?
睡眠には、食事と運動が密接に関係しています。「睡眠×食事×運動」が整った生活がおくれていれば、夜には自然と眠くなります。
「夜、寝てくれない」「朝、なかなか起きてくれない」なら、夜だけをなんとかしようとするのではなく、朝起きる時間から1日の過ごし方を見直すことから始めてみましょう。子ども自身の体内時計が整ってくると、夜に自然と眠くなり、朝もすっきり目覚められるリズムにつながっていきます。
――ここまで子どもの睡眠についてお伝えしてきました。
ただ、ここまでお伝えしたことを毎日完璧にできなくても大丈夫です。「早く寝かせなくちゃ」と焦ってしまう日があっても、寝る前にぎゅっと抱きしめたり、「大好きだよ」と一言伝えるだけで大丈夫。親子で気持ちを通わせる時間が、子どもにとっての安心と、良い睡眠へとつながります。
できることから、親子で幸せな❝寝る前の時間❞をつくっていけるといいですね。
親子の「ねんねのまえ」に寄り添う絵本『まるまるまるー』

今回お話を伺った乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやさんが原案を考えた絵本『まるまるまるー』。本書は、睡眠について悩むことの多い子ども期に、“親子が少しでも心穏やかに「ねんね」の時間を迎えられるように”という想いから生まれた「おやすみ絵本」です。
寝る前に行いたいルーティーンはさまざまですが、すべてを毎日続けるのは、忙しい子育てのなかではなかなか難しいもの。そこで、今回お伝えした「大好きだよ」と伝えることや、「今日うれしかったことを3つ教えて」と親子で話すことなど、毎日続けてほしい習慣を絵本のなかに取り入れました。1~2分で読める『まるまるまるー』なら、忙しい日にも無理なく、親子の「ねんねのまえ」の時間に取り入れられます。
「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう」――。そんな親子のあたたかなコミュニケーションを、毎日の「ねんねのまえ」に取り入れるきっかけとして、親子で楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事の監修・執筆者
日本人初の乳幼児睡眠コンサルタント。国際資格認定機関SSIA代表、Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。2児の母。これまで累計10万人以上の親子の睡眠改善をサポート。企業・自治体・医療機関での講演実績も豊富。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社)、『赤ちゃん超ぐっすり育児』(KADOKAWA)など。
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