夏休みの定番の宿題のひとつ「絵日記」。絵と文章で構成される「絵日記」をかくことは、体験を振り返り、思考力や感情理解を育てる大切な学びの時間になります。教育評論家の親野智可等先生に、「絵日記」の本来の目的と、親子で楽しく取り組むコツ、そして関わり方の注意点を伺いました。
取材・文/細川 麻衣子
「絵日記」は何のためにあるの?
「絵日記」の本来の目的は、かくことによって自分の❝体験❞を振り返り、それを❝経験❞まで昇華させることです。
子どもは毎日いろいろなことを❝体験❞しています。ただそのままにしていると、起きた出来事のひとつで終わってしまいます。ここでいう❝経験❞とは、体験したことを昇華して自分自身の知識や知恵として身につけること、です。
「絵日記」に取り組むことで、さまざまな出来事や感情を思い出し、それを言葉や絵にしていくことで、「自分は〇〇に対してこう感じたんだ」「もっと別の言い方をすればよかった」と振り返ることができます。そうして初めてその出来事を理解でき、自分の中に残る❝学び❞になるのです。
ですから、ただ出来事をなぞる記録としてではなく、「なぜそう感じたのか」「どんな気持ちだったのか」と思い出したり、「どうすればよかったのか」と考えたりすることが大切です。
だからこそ自分の言葉と絵で振り返る「絵日記」は、そのプロセスそのものに価値があるのです。

「絵日記」で育まれる力 ~メタ認知力~
「絵日記」に取り組むことは、子どもの成長に大切な力がいくつも育まれます。
中でも最も育つ力は❝メタ認知力❞です。
❝メタ認知力❞とは「自分の考え方や行動を、自分で客観的に見て調整する力」です。
「絵日記」はまさに、自分に起きた出来事を思い出し、「何があったか」「どう感じたか」「どうすればよかったか」を言葉や絵で振り返る取り組みです。この過程で子どもは、自分の考えや行動を客観的に見つめ直し、理解のズレや気づきを得る力➡❝メタ認知力❞を育んでいきます。まさに、体験をただ終わらせず経験に変え、次につなげる学びへと深める大切な取り組み、とはこういうことです。
また、メタ認知力が育つ中で、以下のような力も共に養われていきます。
【絵日記で育まれるさまざまな力】
●振り返り力(体験を思い出し整理する力)
●気づく力(自分の考え・感情・ミスに気づく力)
●言語化力(感じたことや考えを言葉にする力)
●自己理解力(得意・苦手や考え方のクセを知る力)
●調整力(次はどうするか行動を変える力)
●計画力(次の行動や工夫を考える力)
●感情コントロール力(気持ちを客観視して整える力)
「あのとき自分はこう思っていたな」と振り返ることで、自分の感情や行動を客観的にとらえられるようになります。このような力は、将来的に自分自身をコントロールして整えていく力にもつながっていきます。
さらに、出来事や気持ちを「相手に伝わるように言葉で組み立てる」過程では、言語化する力や論理的に考える力も育ちます。どの順番で書けば伝わるか? どんな言葉が適切か? …を考えること自体が、国語力の土台になるのです。
このように「絵日記」は、子どもの成長に欠かせないさまざまな力を養うことができる学習なのです。
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絵日記のかき方のコツ ~4ステップ~
私がおすすめしている絵日記のかき方は、まず親子で出来事について話すことです。親子で「今日は何があった?」「何が一番楽しかった?」といった会話をするところから始めてみてください。
こうしたやりとりの中で、子どもは出来事や気持ちを思い出しながら、頭の中で整理していきます。そして、「それをかいてみようか」と促すことで、自然とかく内容が見えてきます。
【絵日記に取り組むときの親子の会話のコツ~4ステップ~】
①「心に残っている思い出は何かな?」と会話をしながら夏休みの出来事を振り返る
②「一番心に残ったものはどれ?」と聞いてテーマをひとつに絞る
③「誰といっしょにいた?」「誰が何て言った?」「そのときどう思った?」など、具体的に内容を膨らませていく
④かくのは絵からでも文章からでもOK。子どもがやりやすい方から。
このコミュニケーションをとるだけで、「絵日記」をかき出しやすくすることができるでしょう。

写真や動画をいっしょに見ながら話をすることもおすすめです。具体的に思い出すことで、よりいっそう鮮明に膨らますことができるでしょう。
このとき、話の中に出てきた出来事の全部をかこうとする必要はありません。
ポイントは❝核になる部分を決める❞ことです。絵については特に、↑①②③の具体的な内容が固まってくると、かき出しやすいです。ある程度、具体的な話が出てきたら「じゃあ、何をかいてみたい?」と聞いてみると、絵のイメージをつくりやすいでしょう。

絵日記が苦手な子は多くの場合、いきなりかこうとしていることが多かったり、漠然とし過ぎていて、かきたいものが決まっていない状態のことが多いです。そんな状態で紙に向かっても手が止まるのは当然です。
苦手意識のあるお子さんの場合は、特に、いっしょに寄り添って思い出話を楽しみながら親子で取り組むように心がけてみてください。
親が陥りがちなNGな関わり方 ~4点~
「絵日記」に取り組む時間が❝学び❞になるかどうかは、親の関わり方次第だといっても過言ではありません。
子どもがかきすすめる絵日記を見て、アドバイスしたくなる気持ちはよくわかります。しかし、以下のような関わり方だと、場合によって子どもの主体性を損なってしまうこともあります。
【保護者が陥りがちなNGな関わり方~4点~】
●「もっときれいに」「丁寧にまとめて」と仕上がりを重視する
→評価を気にする声掛けは、現状を否定しているように捉えられてしまう
●「それじゃ伝わらないよ」「こう書いたほうがいい」と書き方を指示する
→子どもがかきたいことが制限され、自分の言葉で表現することに自信が持てなくなる
●「楽しかったことをかこうね」と気持ちを誘導する
→本当にかきたかったことに触れられず、振り返りの意味が薄れる
●「まだ終わらないの?」「早く書きなさい」とせかす
→考える時間が奪われ、ただの作業になってしまう
一番大事にしたいことは、子ども本人が「感じ、思い、見たことがかけている絵日記」であることです。
たとえば「楽しかった」ではなく、「悔しかった」「泣いた」といった気持ちでも、それが本音でその出来事に向き合うことが出来ているのなら、十分価値があります。
会話の中での問いかけを通して、子どもの記憶や感情を引き出し、それをそのまま認めてあげるという姿勢でいることが大切です。
そして、「絵日記を」かきあげたときには、ぜひたくさんほめてあげてください。子どもはできた! 認められた! という実感を積み重ねることで、「自分はできる」という❝自己効力感❞を育んでいきます。上手や下手ではなく、取り組んだ過程や工夫、感じたことに目を向けて言葉をかけることが、次の意欲や主体的に学ぶ力へとつながっていきます。
これから夏休みを迎え、「絵日記」に取り組むご家庭も多いことでしょう。ぜひ、どんなふうに感じたか? を大切にしながら、お子さんといっしょに楽しんで取り組んでみてください。
「絵日記」に取り組む時間が、親子のコミュニケーションの時間となり、子どもの成長を支える豊かな経験につながっていくとよいですね。
この記事の監修・執筆者
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOk』などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Instagram、Threads、X、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
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