【言葉の遅れ・かんしゃく・多動】『アイコンタクト+笑顔』で発達特性のある子が変わる!

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今日、わが子の目を見て笑いましたか? 何か声かけするとき、お子さんはママ、パパの目を見てくれますか?
「どうだったっけ…?」と思う方が多いはず。子どもと目を合わせるアイコンタクトは、意識しないとなかなかできないのです。
発達特性のある子のための最新のプログラムでは、「目・視線を合わせること(アイコンタクト)」が重要視されています。
小児科での診察や発達専門外来での臨床経験と、特性のある子の子育て体験をもとにしたアドバイスや指導で人気の西村佑美医師初の著書『発達特性に悩んだらはじめに読む本』から、一部内容を抜粋してご紹介します。

目次

感受性豊かで発達特性のある子は、自分を肯定する力を保ちにくい

「自己肯定感」という言葉を聞いたことがあると思います。英語でself-esteemと言い、自己肯定感、自尊心、自尊感情、自己有用感などさまざまに訳されています。
テストの点数では測ることができない生きるための力(非認知能力)の土台とされ、自分の存在を認め「自分は自分でいいんだ」と思える心の状態を指します。自信をもち、心のゆとりをもてるような子どもに育つために不可欠な力です。

人間は、ほめられたり感謝されたりといった心地よい刺激や行動があると、脳の報酬系回路と呼ばれる部位が活性化され、快感をもたらすドーパミンの分泌を増やします。
「ほめられる」ことは、子どもにとって「ごほうび(報酬)」なのです。

しかし、発達特性のある子は感受性が豊かだったり、本質的にまじめで一生懸命な子ですが、集団生活(保育園、幼稚園、小学校など)に入ると自己肯定感が下がってしまうことがあります。

そのため、たとえば1~3歳までは1日50回、4歳以上は1日 30回、行動に注目しながらほめる習慣をつけましょう。

子どもの〝行動〟を見て肯定的な注目を与える

普段、みなさんはお子さんにどんな表情で声かけをしているでしょうか。

「かんしゃくをよく起こす困った子だ」「こだわりが強いのは発達特性があるからだ」そんなふうに心の中で思っていると、〝困り顔〟か〝怒り顔〟の表情に。いくらほめ言葉のテクニックを使っても子どもはその言葉を信じられません。反抗的になり、親の言うことを聞きたくなくなります。

発達特性のある子の親向けのプログラム(ペアレント・プログラムなど)は、子どもの特性や性格ではなく、〝行動〟をポジティブな視線で見る、肯定的な注目=ほめることが基本です。

「眠くてお腹が空いていたから、イライラしてかんしゃくを起こしたのかも」「同じことにこだわりたいのは不安だからかな」と行動の理由を考えてみましょう。
すると、「子どもは親を困らせたいわけではなく、きっかけ、原因があるんだ」と気づき、お子さんと向き合うときの表情や声かけにもゆとりが出てやさしくなっていくのです。

「子どもと目が合ったらニコッ!」は言葉を使わない最高の注目ほめ習慣

目が合ったときに、ママ、パパがニコッと笑ってくれた! 

ただそれだけで、子どもは「ママ、パパは自分のことが好きなんだ」と喜びを感じます。人は、好きな相手と目が合うことで注目されたと気づきうれしくなるものです。

例えば、学生時代、好きな人と目が合って笑ってくれたとき、ライブで推しのアイドルと目が合い笑顔を向けてくれたとき…ふふ、想像しただけでうれしくなりますよね。

ASDタイプの子は、人の目を見ることが苦手な傾向があります。人の目は動いたり、まばたきをしたり常に変化するので、視覚情報のアンテナが強くて感受性豊かな子は、目を見ると緊張して疲れやすいようです。また、ADHDタイプの子は、人の目を見ることには抵抗がなくても好奇心アンテナの矢印がいろいろな方向に向いているので、気になるものが目に入ると視線がそれやすく、表情に注目できないことがあります。

子どもと目が合ったら意識的に口角を上げる「アイコンタクト+笑顔」を習慣にすると、子どもは「ママ、パパの目を見る=うれしい」となり、人の目を見てコミュニケーションをとる習慣の種まきになります。

子どもと目を合わせて笑顔でほめ言葉をかけるようにすれば、〝ごほうび〟としてうれしさが倍増。「大好きなママ、パパの言うことを聞いてがんばってみよう」という素直さが育まれていくのです。

「アイコンタクト+笑顔」の習慣で伸びる力

「アイコンタクト+笑顔」の習慣は、ほめ言葉が伝わりやすくなるだけでなく、ほかにもいいことがたくさんあります。

おしゃべりの力

人の目を見るのが苦手な特性をもつ子、コロナ禍で口元が隠れるマスク生活になってから生まれた子たちの中には、言葉がゆっくり伸びる子がいるようです。言葉は聞くだけではなく、相手の表情、口元の動きもセットで見て理解し、発語につながっていくのです。目を合わせる習慣を強化すれば、相手の表情、口元の動きを見る機会が増え、おしゃべりの力も少しずつ伸びていきます。

感情理解の力

「目は口ほどに物を言う」ということわざがありますが、目を見ると相手が今どんな気持ちなのかが伝わって、感情の理解・共有ができるようになります。「空気を読まない発言」「一方的にしゃべり続けてしまう」のは、相手の目、表情を見ていないから。
好きなことを一方的に話し続ける時は、こちらの目を見るまで待ち「相手の表情を見ながら話そうね」と伝えて、理解力を伸ばしましょう。

視線を追う力

親子の目が合う習慣がついてくると、お子さんはママのほうを見たときに「大好きなママが何か見て指さしているぞ」と気づき、その視線の先を追えるようになります。このような、いっしょに同じものを見る共同注意・三項関係の成立は、人と情報、感情を共有する楽しさを経験するコミュニケーションの発達の大きな一歩! 相手の目線を追うことで状況を理解する力にもつながっていきます。

模倣(マネ)する力

模倣する力は、相手に注目する(注意を向ける)力から伸びていきます。ママが「バイバイ」と手を振ったら、子どももマネしてバイバイする。「はーい!」と手を挙げたら、子どもも手を挙げる…そんな動きを模倣(マネ)できることも、コミュニケーションが上達しているということ。相手の言葉をそのまま返す「オウム返し」も、言葉の模倣ができるようになったということなのです。

安心する力

人見知り、場所見知りで泣いてしまうのは、周りを見て「いつもと違う」と気づいて不安だから。そんなときに備えて日頃からママ、パパの目を見て安心する経験をたくさん積んでおきましょう。知らない人に会ったり、新しい場所に行ったりして緊張したとき、ふとママ、パパのほうを見ると「大丈夫」と笑っている。信頼している「ママ、パパが笑顔なら、ここはきっと大丈夫」と安心できるようになっていきます。

指示を理解する力

子どもと目を合わせず後ろから「着替えようね」と声をかけたときと、視界に入って目を合わせてから同じように声かけをしたときで反応の違いを確かめてみてください。目を合わせてから指示を出したほうが、反応がいいはず。親子で目を合わせてからやりとりする習慣は、やがて子どもが集団生活(保育園、幼稚園、小学校など)で先生に注目し、一斉指示を理解して動く力にもつながっていきます。

この記事の監修・執筆者

発達専門小児科医/一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会 代表理事 西村佑美(にしむら・ゆみ)

1982年、宮城県仙台市出身。日本大学医学部卒。小児科専門医。子どものこころ専門医。一般社団法人 日本小児発子育て支援協会 代表理事。三児の母。Instagram @mamatomo_doctor

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