本来は、誰もが“できる子”です。でも、心のブロックが“できない子”を作っているとしか私には思えません。
保護者が「勉強しなさい」「どうしてできないの」と、ムキになって勉強に向かわせようとすればするほど、“できない子”は自ら「勉強ができない子」を演じるようになります。
わからなくてつまらない勉強をするより、親に諦めてもらうほうがずっとラクだからです。
※『入学前から低学年のための 陰山流 新・おうち学習戦略』(Gakken)より一部内容を抜粋してご紹介します。
おうち学習に成功する親・失敗する親

焦らず年齢に合った教育を
ちまたでは、よく早期教育の是非について侃々諤々(かんかんがくがく)と意見が飛び交っています。しかし、人によって「早期教育」という言葉が指す意味の認識が違っているのではないでしょうか。
たとえば「絵本の読み聞かせ」を「早期教育」とするならば、私はだんぜん推進派です。0歳からやったほうがいいと思います。
しかし、いわゆるペーパーテストで100点を取る対策を「早期教育」とするなら、小学校に入学してからで十分です。幼児期は成長に個人差があるので、その個人差を考慮して入学の半年から1年前くらいから始めるのが適正時期ではないでしょうか。
あまりに早いうちから多くの学習内容を取り入れるのはデメリットもあります。その年齢に応じた経験をする時間を減らしてしまうからです。
日本で最難関とされる東京大学の理科三類(主に医学部に進学するコース)には、面接試験があることで知られています。医学部の志望者としての適性を見るために行われる面接です。その他の学部にはありません。
最初に面接が導入されたきっかけは、ペーパーテストの点数が抜群によくても、医者に向くとは限らないことがわかったからだと言われています。勉強だけできればよいわけではない、ということです。
子どもが小さいうちからあまり焦らず、ゆったりと構えることを大切にしていただきたいです。
明るくゆったりと子どもと触れ合う
江戸時代、福岡藩で活躍した儒学者、貝原益軒の『和俗童子訓』は、おうち学習のヒントになると言えるでしょう。これは、毒舌で笑いを交えながら家庭のしつけについて書かれた本です。
この本によると、子どもを甘やかすとダメにしてしまう。親が甘やかしすぎるぐらいなら、優秀な乳母を雇ったほうがよいというのです。
そして、優秀な乳母の条件を「物静かでギャーギャー言わない、ゆっくり話す女性」とたった一行で言い切っています。子どもの教育係として必要な資質として、実に言いえて妙です。
現代でおうち学習を進めるのは保護者であって、乳母ではありません。ですから、お子さんとの心理的距離を保つことがむずかしく、ついつい声を荒らげてしまったり、イライラしてしまったりすることがあるのではないでしょうか。
「早くやりなさい!」
「どうしてできないの!?」
「さっきも言ったでしょう?」
このように保護者がイライラしてしまっては、お子さんにとっておうち学習が嫌な時間になってしまいます。勉強が嫌いになるのは間違いありません。
だいたい、保護者が子どもにイライラしてしまうのは、心のどこかで「うちの子どもは勉強ができない子なんじゃないか」と疑っていたり、逆に「もっとできるはずなのに、どうしてやらないんだ」と期待しすぎていたりするからです。その結果子どもを勉強嫌いにしてしまっては、元も子もありません。
私は、できないと言われている子に指導するときも、イライラしません。それは、絶対に学力は伸ばせることを知っているからです。どんな子も、絶対に伸びることをわかっているからです。だから、焦る必要がないのです。
お父さん、お母さんも、信じてください。おうち学習をお子さんにとって楽しい時間にすることを大切に。お子さんができたことをほめながら、明るく語りかけましょう。特に、学習習慣を身につけるまでは欠かせないポイントです。
新学習指導要領は個人差への対応を強める

個人の進度・理解度に合わせた学習
学習指導要領は、文部科学省が法律に沿って、学校で何をどこまで教えるかを指定する基準です。教科ごとの内容や、算数であればかけ算は2年生、割り算は3年生で学習することなどを決めています。
批判が多かったゆとり教育や、ゆとり教育から脱却することを定めたのも学習指導要領です。
この学習指導要領は約10年前後で改訂されるのが慣例で、次の学習指導要領が全国的に実施されるのが2030年。2026年度中には答申(最終案)が発表され、その内容が明確になります。2026年度中には、新しい学習指導要領に沿った学習を始める学校が増え始めます。変化はすでに始まっているわけです。
新学習指導要領の大きな変化は、個人差への対応を強めていることです。これまでは一斉授業が前提でしたが、個別最適な学びを本格化することになっています。
ざっくりご説明すると、これまで学校は「同じことを同じ速さで」学習していたけれど、「一人ひとりの進度・理解度に応じた」学習を行う、ということです。これは、子どもの様子をよく見て、その子にジャストフィットする学習を与えようという、おうち学習の考え方によく似ていると言えるのではないでしょうか。
学校では、おうちと違って、多人数の進度・理解度を把握するのが課題です。しかし現在は、ICT技術の進化によって、個人の学習履歴を管理できるようになりました。このように個別最適な学びが実現するなら、授業についていけない子どもが減るでしょう。
学習の他にも大切な「おうち」でできることとは

知的好奇心は人生を豊かにする
幼児から小学校低学年の頃は、知的好奇心であふれる年頃です。大人にとっては当たり前のことでも、子どもにとっては不思議でいっぱい。世の中の不思議なものに触れて目を輝かせます。
大人になってからも子どもの頃の知的好奇心を持ち続けられると、豊かな人生を歩むことができます。おもしろいこと、楽しいことをたくさん知っていると人生の楽しみが増えますし、人も集まってくるのです。
知的好奇心は、教養を深めるのにもつながります。旅行先の文化や歴史を知っていればより深く楽しむことができますし、文学や音楽などの楽しみも広がるでしょう。
保護者が刺激し続ける
知的好奇心は、保護者が刺激し続けることでより大きくすることができます。何より大切なのは、生活の中で、保護者自身が知的好奇心を持つことです。本を読む、良質なテレビ番組を楽しむ、博物館に出かけるなど、大人が教養を身につけようとする姿を見せると、子どもも自然とその姿にならうようになります。
そのうえで、生活に仕かけを作りましょう。たとえば、リビングのテレビの横に地球儀や図鑑を置くと、気になったことをすぐに調べられる環境ができます。テレビ番組などで知らないことがあれば、「調べてみようか」「こういうことなんだね」とコミュニケーションを取りながら、調べることを一緒に楽しむと、子どもも乗ってきます。
一緒に楽しむのがコツ
家族旅行の前後には、旅先のことを一緒に調べてみましょう。旅程はもちろん、訪れる観光スポットの由来など、楽しく学習できるはずです。
都心部に住んでいて自然に触れる機会が少ないのであれば、ベランダ菜園をしてみるのもおすすめです。植物の成長を学んだり、季節感を知ることができます。ベランダ菜園でとれた野菜を使って料理を教えることも楽しいひと時でしょう。
子どもには、さまざまな経験をさせたいものです。お金をかけずともできる経験はたくさんあります。地域で開催している勉強会、自治体が主催するイベント、博物館、図書館、スポーツ大会など、調べるとさまざまな機会が用意されているはずですし、 子どもが好きなことを見つけて、保護者が一緒に楽しむのもよいでしょう。一緒に楽しむことで、興味の輪をつなげていくのです。

子どもは必ず成長するものです。
学力は、正しい方法なら簡単に向上するものです。
子どもの成長を阻害するものがあるとしたら、『うちの子はこれで大丈夫だろうか』などといった保護者の焦りです。お子さんの力を信じてください。適切に導きながら、大らかに見守る、です。
真剣に子育てしている保護者の方ほど簡単なことではないと思うかもしれませんが、お子さんを信じることです。できない子どもなどいないのです。
入学前から低学年のための 陰山流 新・おうち学習戦略

陰山英男(著)
価格 1,760円 (税込)
★★★音読、漢字、百ます計算を使った個別指導+反復学習。
基礎学力を底上げする陰山英男先生の
家庭学習マニュアル「新・おうち学習戦略」を
入学準備時期~低学年用に徹底解説!★★★
【主な内容】
●序章 おうち学習は学力をつける最高の寺子屋
Part1 低学年の学力が、高学年、中学、高校受験に影響してくる
Part2 入学準備は年中からゆっくり始め、年長秋から本格化させるとスムーズ
Part3 つまずきは早めの対処で十分にリカバリー可能 ほか
●1章 陰山メソッド①音読をマスターする
Part1 陰山メソッドの要かなめとなるのは音読・漢字・百ます計算
Part2 陰山メソッドの要①音読の目的
Part3 脳の働きを高める音読のやり方
●2章 陰山メソッド②漢字学習をマスターする
Part1 陰山メソッドの要②漢字学習の目的
Part2 漢字学習の思い込みを捨てよう
Part3 漢字が苦手な子も短期間で得意にできる ほか
●3章 陰山メソッド③百ます計算をマスターする
Part1 陰山メソッドの要③百ます計算の目的と進め方
Part2 間違えた問題への対応
Part3 タイムの目安とスピードアップのコツ ほか
●第5章 2年生・3年生の学習ポイント
Part1 筆算を正確に、早くするコツは線の引き方にある
Part2 小学2年生の秋、幼児から少年・少女へと成長する
Part3 小学3年生はつまずきポイントが多い難儀な学年!? ほか
●第6章 子どもの健やかな成長のために
Part1 「早寝早起き朝ごはん」は脳と体にエネルギーを与える
Part2 お手伝いは「手」で「伝える」生活の知恵
Part3 子どもの知的好奇心を刺激し続けよう
この記事の監修・執筆者
かげやま ひでお/岡山大学法学部卒業後、教職に就く。兵庫県朝来町立(現・朝来市立)山口小学校在職時に反復学習で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。2003年広島県尾道市立土堂小学校長に全国公募により就任。2006年立命館大学教授及び立命館小学校副校長を経て、現在、隂山ラボ代表、NPO法人日本教育再興連盟代表理事。教育クリエイターとして、全国各地で学力向上アドバイザーを務め、講演会活動を行っている。『本当の学力をつける本』(文藝春秋)、『学校を変える15分 常識を破れば子どもは伸びる』(中村堂)ほか、著書多数。
隂山メソッドを教材化したドリルは「徹底反復シリーズ」(小学館)、「早ね早おき朝5分ドリルシリーズ」(Gakken)など、累計1500万部に及ぶ。
隂山英男HP
http://kageyamahideo.com/
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪