小学校入学が待ち遠しくなる! 魔法の声かけ

更新日: 公開日:

来春には小学校入学を控えているのに、いつもソワソワして落ち着きがない、そうでなければのんびりマイペース…。そんなわが子にイライラして、「そんなんじゃ小学生になれないよ!」などと声をかけてしまうママパパも多いのではないでしょうか。ついネガティブな声かけをしてしまうのは、子どもを心配する気持ちの裏返し。けれども、「子どものためを思って」かける言葉は、本当に子どものためになっているの? そんな疑問に、キッズコーチングのスペシャリスト・竹内エリカ先生が答えてくださいました。ネガティブワードに頼ることなく、子どもの「できる力」がどんどん伸びていく声かけのコツも、たっぷり教えていただきました。

文/松田明子

目次

【1】ネガティブワードを使った声かけは子どもにとって逆効果

マイナスなイメージをもたらす言葉が、子どもによい影響を与えるとは、あまり考えられていません。反対に、ネガティブワードの影響で、親の心配どおりになってしまう可能性も高いのです。例えば、「そんなことしていると転んじゃうよ」と言っていると、子どもが本当に転んで、「ほらね?」となった経験はありませんか? 実は、「転ぶよ」と言われると、子どもの頭に“転ぶ”というイメージがインプットされて、実際に転ぶ可能性が高くなってしまうのです。同様に、「小学校に行くと困るよ」「勉強ができなくなるよ」などとネガティブな言葉をかけ続けられると、子どもは「自分はできない」と思いこみ、本当にできなくなることがあります

もちろん、ママパパは心配のあまり、そういった言葉をかけてしまうもの。そんなときは心配していることを、できるだけポジティブな言葉に変えて伝えましょう。親や周囲が期待してプラスの要素の言葉をかけると、子どもは本当にそうなっていきます。これを「ピグマリオン効果」といいます。反対にネガティブな言葉をかけることは、「ゴーレム効果」と呼ばれています。

子どもに、小学校に入学するという自覚を持ってもらいたいなら、できるだけ前向きなイメージで伝えましょう。「小学校が楽しみだね! すごくたくさんお友だちができるよ。100人できるかもしれないよ」「勉強って、すごく楽しいんだよ。本もたくさん読めるようになるよ」などと、ポジティブワードを散りばめるのです。その上で、「だから小学校に遅れないように、朝のしたくを少しスピードアップしてみよう」などと誘ってみるとよいでしょう。

●ピグマリオン効果
親や教師が子どもに期待してポジティブな言葉をかけると、子どもがその期待を察知して実際に伸びていくこと。

●ゴーレム効果
周囲が子どもに見込みや可能性がないと感じ、ネガティブな言葉をかけ続けると、実際にその通り悪い方向に進んでいくこと。

【2】ポジティブに伝えることで子どもは変わる!

例えば、人の話を聞かない子どもに、親が「どうしてあなたは人の話が聞けないの?」と叱っていると、子ども自身も自分は聞かない子だと思いこみ、話を聞かなくなってしまいます。そうではなく、親がタイミングを見計らって「あなたは目を見てしっかり聞くよね」「すごく話しやすい」などとほめてあげることが大切。子ども自身も「自分は目を見て話を聞く子だ!」と思って学校に行くので、先生の目を見て話を聞くようになります。すると先生も、「この子はよく話を聞いている」と思って話すので、さらに話が聞けるようになるのです。

同じように、比較的のんびりしている子どもでも、親がいつも「片づけが早くてえらいね」とほめている子は、小学校で自分がみんなより遅いことに気づくと、「あれ? 自分は早いはずなのに」と思って、もっとがんばることもあります。いつも「あなたは遅いよ」と言われている子どもは、自分だけ遅くても気にしません。

そうはいっても本当にのんびりしている、という子には、目線を変えて、「ていねいだね」と伝えてあげましょう。時間がかかってもていねいに作業をするようになり、結果的にその子の長所となるはずです。または、「昨日よりも速くできたね」など、達成度をほめてあげるのもよいですよ。

【3】さらにステップアップ!具体的に伝える&視覚にも訴える

そうはいっても、子どもの日頃の習慣をガラッと変えるのは、なかなか難しいもの。そんなときは、より具体的に伝えることが大切です。例えば、ただ「早くしよう」と言われても、子どもにはまだ時間の感覚が身についていないので、どれくらい早くすればいいのかわかりません。「時計の針が6のところにくるまでに食べ終わろう」「ママ(パパ)がお皿を洗い終わるまでに片づけて」などのように、具体的にわかりやすく伝えましょう。

声かけに加えて、「目で見てわかる」しくみをつくるとさらによいでしょう。例えば、朝の準備がなかなか進まない場合は、ホワイトボードとマグネットを使った「おしたくボード」なども効果的。マグネットにすることの項目を書き、終わったらひっくり返す・移動させるなどして、「終わった」ことがひと目でわかるようにします。続けるコツは、やるべき項目を3~5つくらいに絞ること。多すぎると子どもは混乱します。「着替え」「朝ごはん」「歯みがき」「ハンカチ・ティッシュ・マスクを持つ」など、必ずやるべきことをメインにしましょう。

また、人の話を聞き流しがちな子どもに、「ちゃんと話を聞きなさい」といっても、その言葉自体が心に響いていないこともよくあることです。例えば、絵本などを読んでいるときに、みんなが話を聞いている場面が出てきたら、そのタイミングで「みんなよく聞いているね」「よく聞くと勉強わかるらしいよ」などと、さし絵を示しながら情報を与えてあげましょう。視覚・聴覚両方に訴えかける、効果的な方法です。また、声かけのタイミングで、肩や背中をポンポンとたたいてあげるなど、触覚に訴えることも有効です。

とはいえ、本来はリラックスできるはずの家庭という空間で、いつも注意深く人の話を聞くことは難しいもの。現在、幼稚園や保育園で特別に問題がなさそうであれば、小学校入学後も、そこまで不安視することはないでしょう。

具体的な言葉かけの例

ごはんをなかなか食べ終わらない

×「早く食べなさい!」
→「時計の針が6のところにくるまでに食べ終わろう」

朝の支度が遅い

×「まだ準備できてないの?」
→「●●と△△は終わったね。あとは何をすればいいんだっけ?」

人の話を聞いていない

×「ちゃんと話を聞きなさい」
→「人の話をよく聞くと、勉強ができるようになるらしいよ」

【4】子ども自身の不安な気持ちは…いったん受け止めてから解消してあげる!

小学校入学に、多少なりとも不安な気持ちを抱いているお子さんもいるでしょう。そのような場合は、まずは子どもの不安な気持ちを受け入れてあげてから、ポジティブに言い換えて伝えることが大切です。このように、物事のとらえ方を変えることで感じ方を変えることを、心理学では「リフレーミング」といいます。

子どもの様子に保護者の方も不安を感じるかもしれませんが、子どもの対応力は大人が思うよりも高いもの。それに、新1年生は本人だけではなくみんな、新しい環境に慣れようと一生懸命のはず。いざ学校生活が始まると、慣れるのにあまり時間はかからないと思います。ただ、子どもは「不安なのは自分だけ」と、心細く思っているかもしれません。そういった面も含めて、ポジティブにフォローしてあげられるといいですね。

●リフレーミング
対象をとらえる枠組み(フレーム)を変えて、ポジティブな視点で解釈できるようにすること。

具体的な声かけの例

「お友だちと別れることになってさびしいな」

→「そうだね、さびしいね。でも小学校って、もっとたくさんお友だちができるんだって」

「小学校の先生って怖いのかな」

→「怒ることもあるかもしれないけど、できるとすごくほめてくれるらしいよ」

「知らない場所に行くのがいやだ」

→「お友だちもみんな、新しい場所でドキドキしているはずだよ。だから一人じゃないよ。きっと楽しくなるよ」

【5】入学後もこれで安心!今日から始められる入学前準備


幼稚園・保育園と比べると、小学校は全く別の場所。子どもだけでやらなければならないこともぐんと増えます。ひと口に「入学前準備」といっても、ランドセルの準備や通学路の確認などの大きなことから、おたよりを折りたたんでランドセルに入れる、体操服は体操袋に入れる、といった小さな習慣づけまで、とてもたくさんのことがあると思います。いずれにしても、昨日まで幼稚園・保育園に通っていた子どもにとって、「今日から小学生」といわれても実感がわかないもの。事前に小学校がどんなところか・どんなことをするのか、家庭でもお子さんにできるだけ情報を教えてあげたり、練習したりしておくとよいでしょう。

親子で小学校を見に行ったり、通学路を確認したりすることも大切です。また、小学校を舞台にした絵本などを用意して「お友だちといすに座るんだよ」「姿勢よく座れるとカッコいいよ」「これは黒板といって、先生が大切なことを書くんだよ」などと、少しずつ情報を与えてあげるようにして。そうすると、子どもが実際に経験するときに、記憶と行動が一致して、スムーズに行動できるようになります。このときも、なるべくポジティブな情報を多めに与えてあげましょう。子どもも入学を楽しみに待てるようになるはずです。

こまごまとした準備は急には難しいので、理想は入学の3か月前頃から少しずつ。少なくとも1か月前から始めると安心です。
また、入学前だけでなく、入学後すぐはいつも以上に手をかけてあげる必要がある、ということも覚えておいてください。何から何まで初めての場所で、入学直後の子どもが戸惑うのは当たり前。急に自立させようと無理はさせず、毎日ランドセルの中身を確認して準備する、前日の夜に明日着る服を選んで枕元に置いておく、などの作業は、親もしばらく一緒にやってあげましょう。親子で習慣づけをするうちに、いずれ自分一人でもできるようになりますよ。

この記事の監修・執筆者

幼児教育者。一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長 竹内 エリカ

たけうち えりか/幼児教育者。一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長。2児の母。

お茶の水女子大学大学院修士課程修了。20年にわたり講演・作家業をメインに多動症・不登校の克服、giftedと呼ばれる子ども達の心のケアなど育児・教育の専門家として約2万人の親子と関わる。「男の子の一生を決める0〜6歳までの育て方」他著書多数。

HP
https://linktr.ee/takeuchi_erika

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事

この記事の監修・執筆者の記事