お子さんが家庭で勉強に集中するには、それに適した学習環境が必要です。「学習環境といっても、何をどうしたらいいかわからない」という保護者の方のために、一級建築士のしかまのりこ先生に「低学年のお子さんに適した学習環境のつくり方」を教えていただきました。
前編では、お子さんがリビングやダイニングテーブル(食卓)で勉強する「リビング学習派の学習環境づくり」をお届けします。
文/こそだてまっぷ編集部 パースイラスト制作/しかまのりこ イラスト/湯沢知子
小学生のうちは学習に家族の存在が大切
お子さんがご家庭で無理なく学習に取り組む場所としては、まず「集中できる空間であること」が重要です。学習に集中するためには、ゲームなど遊びに誘われるものが視界に入るとよくありません。また、「換気がしやすい空間」というのも、集中力アップに欠かせません。そして、低学年のお子さんの場合は、ある程度「家族の気配が感じられる空間」のほうが、見守られている安心感があり、学習に集中しやすくなります。
これらの条件を満たすのが、リビングやダイニングルームでの学習です。ゲームなど遊び道具を置かないようにして、テレビのスイッチを切れば、学習に集中できる空間をつくることができます。また、リビング学習には、保護者にとって「目が届く」「学習のサポートができる」などのメリットもあります。勉強でわからないことをそばにいる家族にすぐに聞けたり、学習の成果をほめてもらえたりする家族とのコミュニケーションは、お子さんの学習意欲の向上につながります。
リビングの一角に学習スペースをつくろう
リビング学習、あるいはダイニングテーブルで学習する際、保護者の方が気になるのは、リビングやダイニングテーブルの周りが学習用品などで散らかってしまうことではないでしょうか。
リビング学習を行っても部屋が散らからないコツは次の3つです。
1 空間を分ける
2 収納を分ける
3 動線を分ける
まず、リビングの一角にお子さんの学習スペースをつくって、空間を分けることから始めましょう。学習机を置く、あるいはダイニングテーブルに学習用のサイドテーブルなどを並べて、学習スペースを確保します。そして、収納を分けるために机の近くに学習用品専用の収納を設置します。
学習スペースの設置場所は、お子さんが学習に集中しやすいように、家族との動線が重なりにくいコーナーが望ましく、さらに換気がしやすい窓の近くがいいでしょう。
このように部屋を「リビングダイニングゾーン」と「リビング学習ゾーン」のように機能ごとに空間分けをするのです。
《リビングダイニングゾーン》ごはんを食べる、テレビを見てくつろぐ…など
《リビング学習ゾーン》勉強をする、学校の準備をする…など。
物が散らかるのは、くつろぐリビングや食事をするダイニング、お子さんが勉強をする場所など、機能ごとに空間分けができていないからです。物が入り交じらないように、それぞれのゾーンごとに収納を設置すると、お子さんも自分で学習道具を片づけやすくなります。
機能ごとに空間を分け、それぞれの空間に専用の収納を設置した例
ダイニングテーブルに学習用のサイドテーブルなどをプラスした例
空気中の二酸化炭素濃度が高くなると集中力が下がる
お子さんの学習環境を整えるにあたって注意していただきたいのは「換気」です。部屋の「二酸化炭素濃度を低くすること」は、作業効率や集中力の向上に欠かせません。空気中の二酸化炭素の濃度が高くなると、眠くなったり、頭がぼーっとしたりして集中力が低下するなどよくない影響を及ぼすことがあります。お子さんが快適で健康的な空間で学習に取り組めるように環境を整えてあげましょう。
建築基準法の改正(2003年7月施行)により、シックハウス対策のひとつとして、家全体を24時間換気する換気システムの設置が義務化されています。設置されているご家庭は稼働させておきましょう。設置されていないご家庭では、冬でも給気口を閉めず、さらに定期的に窓を開けて換気しましょう。エアコンや空気清浄機では、「空気の入れ替え=換気」を行うことは基本的にできません。きちんと窓を開けて空気を入れ替えるようにしてください。(メーカーによっては部屋の換気を部分的に行えるエアコンもあります。)
ダイニングテーブルの高さはイスで調節しよう
●ダイニングテーブルとイスの高さ
リビングに学習机を設置する場合は心配ありませんが、食事が目的のダイニングテーブルは、お子さんが学習するのに適した高さとはいえません。保護者の方がイスなどを利用して高さを調節してあげましょう。たとえば、学校と同じ環境を用意するなら「新JIS規格」を参考にすることができます。
《子ども用イスと机の適合サイズ一覧の一部》
(新JIS規格に基づく JIS S 1021)
身長120cmのお子さんの場合、机面の高さは52cmですが、その高さのダイニングテーブルを探すのは難しいので、高さが変えられる可動式のテーブルを選ぶか、座面の高さを調節できるイスを選びましょう。
テーブルと座面の高さを調整する目安は、次の式で求められます。
になるようにします ※これを差尺と言います。
たとえば、ダイニングテーブル(高さ72㎝)をリビング学習に使う場合、
に調節します。イスの座面が高すぎて、足が床面につかずふらふらしていると、お子さんは学習に集中できません。低学年のお子さんは、足置きがついているイスや座面の高さを変えられるイスをオススメします。
●ダイニングテーブルの大きさ
奥行きは少なくても50cmあるといいでしょう。教科書や教材などを広げられるので、お子さんが学習しやすいです。テーブルの幅は100~120cmあると、デスクライトなども置くことができます。
●照明
ダイニングルームでは、ペンダントライトを使っているご家庭が多いようです。ペンダントライトは、狭い範囲に強い光が届くため、部屋全体の明るさとの差が大きく、学習や読書をすると目が疲れてしまいます。リビング学習には、部屋全体を照らせるシーリングライトのほうが適しています。さらに、学習や読書をするには、天井のシーリングライトだけでは照度が足りませんので、デスクライトを追加するといいでしょう。
★後編では、お子さんが子ども部屋で勉強しているご家庭のための「低学年ママ必見!学習に集中しやすい子ども部屋とは?【学習環境 後編】」をお届けします。
この記事の監修・執筆者
COLLINO一級建築士事務所代表。大手ゼネコンに勤務し、マンションやビルなどの設計・建築に従事。結婚退職後、子育てをしながら住宅の設計などに携わる。
家の外側だけなく内側までトータルで考えた部屋づくりを目指す事務所COLLINOを設立。模様替えの普及を目指し、一般社団法人日本模様替え協会による模様替えアドバイザー検定を設立。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪