ランドセル選びの際には、まずはデザインや色に目が行きがち。けれども毎日使うものだからこそ、機能性もしっかり考えてから選びたいもの。ランドセルの機能は、親や子どものニーズに合わせて、年々進化しています。そこで今回は、ランドセルで人気の4ブランド「フィットちゃん(ハシモト)」「ふわりぃ(協和)」「池田屋」「かるすぽ(イオン)」の機能性に注目。各社独自のこだわりポイントを、3回にわたってご紹介します。
文/松田明子
「軽さ・背負いやすさ」に注目!
荷物でいっぱいのランドセルは「重くて当たり前」。そんな固定観念はありませんか? 確かに、教科書のA4化やページ数の増加などで、ここ数年で小学生の荷物はぐっと重くなりました。また現在、政府の「GIGAスクール構想※」による全学年へのパソコンやPCタブレット端末配布も進んでいます。猛暑やコロナ禍の影響で、水筒持参も必須に。特に身体の小さい低学年の子どもには、荷物の重さが毎日の通学の負担になる傾向があります。そのため、各社で軽量化や背負いやすさに着目した製品づくりが行われています。
※2019年12月に文部科学省から発表されたプロジェクト。高速大容量の通信ネットワークを整備し、小・中学校の児童・生徒1人に1台タブレット端末かコンピューターを配布することにより、子どもたちの能力・創造性を育む教育を実現する構想。
素材や形状の開発・改良で軽量化が進む!
ランドセルの「軽さ」の基準の1つが、まずは本体の重量。重量を左右する第一の要素は「素材」です。一般的に、人工皮革の重量は軽く、コードバン(馬革)や牛革は重くなる傾向があります。近年では、「クラリーノ®」などが代表する人工皮革も改良が進み、機能面では本革を上回るほどです。一方で本革のよさは、その素材感。重量面では人工皮革よりも重い傾向にありますが、その差は200~300g程度。ノート2冊分ほどの差になります。
また、従来の「学習院型」から側面のヘリをなくした「キューブタイプ」など、形を改良した軽量化モデルも人気です。
フィットちゃん
子どもの肩への負担軽減のため、軽くて傷に強い人工皮革「クラリーノ®」が製造の主流。シリーズ中で最も軽いランドセルは、シンプルなつくりにこだわった「フィットちゃん201」(1,100g前後※)。ただし、全てのモデルに「フィットちゃん背カン」(肩ベルトの付け根の部分)が使われているため、ランドセルが背中にフィットし、軽く感じるつくりになっているそう。
※2022年2月からは更に軽量なモデルが発売予定。
ふわりぃ
全てのランドセルに共通する機能「コンパクトワイド」は、背中回りの出っ張り(ヘリ)をなくすことで約50gの軽量化を実現。特殊製法で軽量と丈夫さを両立した設計となっています。大容量かつ軽量で人気のモデル「グランコンパクト」は約990g。
池田屋ランドセル
全てのランドセルが本革と人工皮革のミックスモデル。牛革モデルも、防水力が必要な「背あて」や「カブセ」裏に人工皮革を使用したハイブリッド構造のため、総牛革のランドセルよりも100~200g軽いことが特長。一方で、強度が必要な「肩ベルト」の表側には、全モデルで牛革を使用しています。人工皮革は1,100g、牛革は1,300gが標準。
かるすぽ
背あてのヘリをカットした「フラットキューブ」型を採用し、軽量化を実現。「かるすぽ」シリーズ最軽量の「はなまるランドセル24」は、約980g。
素材の違い
コードバン(馬革)
馬のお尻から取れた革。牛革よりも耐久性があり、見た目・触った感触などに高級感・重厚感があります。
重さ:1500g前後 価格帯:10万円前後
牛革
見た目・触った感触などに、素材の高級感があります。
重さ:1,300~1,500g前後 価格帯:7~10万円前後
人工皮革(クラリーノ®など)
水や汚れに強く、お手入れが簡単。本革に比べて軽く、素材自体が丈夫なのでデザインやカラーの幅も広いのが特徴です。
重さ:900g~1,300g前後 価格帯:3~7万円前後
形の違い
学習院型
ランドセルの背中に当たる部分(背当て)と、側面(大マチ)を外側で縫い合わせた「縁(ヘリ)」がある、伝統的な形。
キューブ型
ヘリのないデザイン。特殊なミシンを使って、背当てと大マチを内側から縫い合わせています。すっきりとした見た目と、軽量化に成功。
「軽さ」のキモは、重量だけではなく背負ったときのフィット感!
「軽いランドセル」とひと口に言っても、実際の重量だけではなく、背負ったときに感じる重さ(体感重量)をできるだけ軽くする機能も大切。ランドセルは、子どもの背中にほどよくフィットすることで、おのずと軽く感じるものです。
「背負いやすさ」を重視したランドセル選びの際にチェックしたい機能は、主に「背カン」「肩ベルト」「背あて」の3つ。各社、「軽く感じさせる」工夫が施されています。
【軽く感じる】ポイント①「背カン」
肩ベルトとランドセル本体をつなぐパーツ。金属製や樹脂製があり、ランドセルへの体への密着感を決める重要なパーツです。動かない「固定背カン」と、体の動きに合わせて動くタイプの背カンがあります。現在では、動くタイプの背カンを採用するブランドがほとんどです。
【軽く感じる】ポイント②「肩ベルト」
肩に直接触れる部分なので、クッション材・生地によって、背負い心地に違いが出てきます。
また、形としては、大きく分けて、肩ベルトが背カンから「立ち上がっている」タイプと、「立ち上がっていない」タイプがあります。「立ち上がっている」タイプでは、背カンにベルトの立ち上げ機能がついていたり、肩ベルトそのものに芯材を入れて湾曲させ、立ち上げていたりします。
肩ベルトの立ち上がり機能については、採用しているブランドが分かれます。立ち上がっていることの主なメリットは、ランドセルと子どもの背中がフィットしやすいこと。一方、立ち上がっていないタイプのよさは、それぞれの子どもの体型に合わせて、ベルトが自然なカーブを描くこととされます。どちらがよいかは、子ども個人の感覚にもよるので、実際にフィッティングして確かめることがおすすめです。
フィットちゃん
右と左が自由に動く立ち上がり背カン「フィットちゃん®背カン」を採用。肩ベルトを25度立ち上げることで、ランドセル本体と子どもの背中との接触面積が10%アップ。ランドセルがしっかりフィットすることで、肩への負担が軽減され、軽く感じることができます。
肩ベルトの「楽ッション(らくっしょん)®」は、肩ベルトの厚みが従来品の2倍以上にアップ。背負い心地がよりソフトになり、フィット感もアップしています。
2022年度から新機能の「くるくるフィット」が登場。肩ベルトのダイヤルを回すだけで、ミリ単位でベルトの長さを調節することができます。厚着や薄着の時など服装に応じて、ぴったりな長さに調整可能(2022年度は200本限定)。
ふわりぃ
肩ひも付け根の立ち上げ機能で、ランドセルが背中にフィットする「ふわりぃ背カン」。成長に合わせて左右に広がります。髪の毛や洋服のえりなども、はさまりにくい設計になっています。
従来のものよりもクッション性を大幅に高めた「ふわりぃ肩ひも」。モデル別機能の「ハイクッション」は、クッションをリブ構造に成型し、肩への接地面を凸凹にすることで、ズレ防止も追求しています。
全モデルに「チェストベルト」つき。肩ひものズレを防止し、体へのフィット感をアップ。肩・背中・腰への負担が軽減することで、ランドセルが軽く感じる効果があります。必要に応じて着脱も自由自在です。
池田屋ランドセル
自然に立ち上がる「池田屋背カン」により、どんな体型の子どもにもすき間なく肩ベルトがフィット。重い荷物も軽く感じるように工夫されています。また、引裂きの力に強く、身体に優しくフィットする「牛革ベルト」を全モデルで採用。
かるすぽ
「ミラクルin EVERフィット」モデルには、肩ベルトをワンタッチで簡単に微調整できる「ラチェットアジャスター」付き。5mmピッチで38段階に調整できるので、季節や天候によって服装が変わっても、簡単に調整できます。
「背カン」の機能の違い
固定背カン
可動部分が少ないため、構造がシンプルになり壊れにくいのがメリットですが、肩ベルトの可動部分が少なくなるので、体が大きくなると背負う時に窮屈な思いをすることも。
動く背カン(左右非連動型・左右連動型の2種類)
体格に合わせて背カンが動くので、ランドセルが体に密着しやすくなります。
※主に左右非連動型(左右が別々に動くタイプ)と、左右連動型(左右が同時に動くタイプ)の2種類があります。どちらがよいかは一概には言えないので、子どもが背負いやすいほうを選んであげましょう。
「背カン&肩ベルト」の機能の違いもチェック!
立ち上がり肩ベルト
あらかじめ肩のカーブに沿って、ベルトが立ち上がっています。
立ち上がり機能を持たない肩ベルト
使いこむうちに、革が自然にその子の肩の形になじみます。
【軽く感じる】ポイント③「背あて」
ランドセルと背中が接するクッション部分のこと。背中に密着させる「フィット感」重視のものは、ランドセルを背負ったときに体への負担を減らす効果があります。また、夏場のムレ対策に、背中との間にあえてすき間を作ることで、「通気性」や「吸放湿性」をアップさせたものも。近年では、フィット感と通気性を両立させたものも増えています。
フィットちゃん
背あては、ウェーブ形状の凸凹をつくることで、背中がムレにくい「ウェービータッチ®」。素材は、通気性・透湿性に優れていてムレにくい、「エアーフレッシュ®」素材を使用。
ふわりぃ
背あてのクッションのベーシックモデルは、通気性とクッション性を両立させた「エアリーフォーム」。また、体に直接触れる肩ひもと背中部分には、クッション内の空気を通気させ、ムレにくい素材「スーパーブレスター」を全モデルで使用。夏場でも快適に過ごせます。
池田屋ランドセル
背あてには、防水力&通気性に優れた「ピンホール人工皮革」を全モデルで使用。背中クッション内部の空間「エアクルゾーン」には常に新鮮な空気が循環し、通学時もムレずに快適です。また、ステッチで縫わない自然な凹みの「ナチュラルフィットクッション」は柔らかく、背中への違和感もありません。
かるすぽ
人間工学に基づいた設計され、圧力が分散されて軽く感じる、3点背あての「かるくなーれ」を採用。同じ重さでも軽く感じます。
ブランド紹介
フィットちゃん
https://www.fit-chan.com/
ランドセル国内製造販売本数No.1ブランド。ランドセルの形状がくっきり浮かび上がる反射材「安ピカッ®︎」や、肩ベルトの厚みを増して肩への負担を軽減した「楽ッション®」など、安全性や背負いやすさへの機能も充実。デザインも豊富で、190種50色の中から選べる。
ふわりぃ
https://fuwarii.com/
早くから軽くて丈夫なランドセルの研究開発を行い、クラリーノ®をランドセル素材に初めて採用。キューブ型の「コンパクトワイド」は、軽量ながらもA4フラットファイル&タブレットPC対応の大容量。子どもの楽しい学校生活を応援したいという想いから、カブセ(ランドセルのふた)部分が替えられる「きせかえランドセル」や、3年生の多感な時期に合わせて届く「未来へつなぐタイムレター」などのきめ細やかなサービスも。
池田屋
https://www.pikachan.com/
1950年創業。耐久性や防水性にこだわった自社開発の革素材と、6年間飽きずに使えるシンプルなデザインが人気。ランドセルは全モデル、パーツによって牛革と人工皮革を使い分ける「ハイブリッド構造」。どれを選んでも機能と性能は変わらず、使い勝手も同じ。牛革か人工皮革かというメインの素材によって、重さと価格が違うだけなので、子どもが好きな色のランドセルを自由に選ぶことができる。
かるすぽ
https://www.aeonretail.jp/kidsschool/
イオンのオリジナルブランドのひとつ。「かるがる背おえて、すっぽり入る!」ことをコンセプトに背負いやすさと収納力を追求。小マチが8cmまで伸びる「みらいポケット」などの大容量モデルが人気。本体やスティッチの色などを24種類から選べる「はなまるランドセル24」のほか、本体やかぶせの色・デザインを自由に選ぶことで、最大269万通り※の組み合わせにカスタマイズできるランドセルも。色やデザイン選びの自由さも魅力。
※2022年度入学モデルの場合
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪