【発達障害の子どもが学校生活で輝くためには?】大人が知っておきたいこと[小児科専門医監修]

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【発達障害の子どもが学校生活で輝くためには?】大人が知っておきたいこと[小児科専門医監修]

「発達障害のある子には、特別な才能がある」――そんな言葉を聞いて、わが子にも何かすごい才能があるのでは、と探したことはありませんか? でも、子どもが学校で自分らしく過ごすために必要なのは、特別な才能を見つけることではありません。

大切なのは、その子が力を発揮できる条件を知ること。そして、その子を分かろうとしてくれる大人がいることです。

今回は、小児科医の森博子先生に、発達障害のある子どもの「好き」や「得意」の捉え方、学校との関わり方について伺いました。

取材・文/細川 麻衣子

目次

❝特別❞と捉えない――まずは❝発達障害❞を知る

発達障害のある子どもについて「何か特別な才能があるのでは?」と聞かれることがあります。また「発達障害の子って、すごい能力を持っている子が多いよね」といった周囲の言葉に、違和感を覚える保護者もいるようです。そうした風潮のなかで「うちの子にも隠れた才能があるはず」と、無理に才能を探そうとするケースもあります。

発達障害があることを❝特別な才能❞と結びつけすぎると、親子ともにプレッシャーを感じてしまうことも……。その先に期待するような才能が見つからなければ、「うちの子には何もない」と、できないことばかりに目が向いてしまうかもしれません。

発達障害とは、脳機能の発達に関係する特性によって、日常生活や社会生活で困難が生じることがある状態です。主なものには、次のようなものがあります。

発達障害の主な種類

●自閉スペクトラム症(ASD):人とのコミュニケーションや対人関係に難しさがあったり、特定のことに強い関心を持ったり、こだわりが見られたりする。

●注意欠如・多動症(ADHD):注意を持続することや、順番を待つこと、衝動的な行動をコントロールすることなどに難しさが見られる。

●限局性学習症(SLD):全般的な知的発達に大きな遅れがなくても、読む・書く・計算するなど、特定の学習に難しさが見られる。

※特性の現れ方や程度は一人ひとり異なり、複数の発達特性が重なることもあります。また、知的発達症を伴う場合もあれば、知的発達に大きな遅れが見られない場合もあり、その組み合わせはさまざまです。

子どもの❝力❞は診断名や数値だけではわからない

発達障害の子どもの❝力❞や得意・不得意は、一人ひとり異なります。

知的な力や認知の特徴を把握する検査のひとつにWISC(ウィスク)※があります。この検査では、言語理解、空間認識、推理、記憶、情報処理能力など複数の側面から子どもの力を捉えることができます。検査結果は子どもの得意・不得意の傾向を知り、どのような支援が必要かを考えるための手がかりにはなります。

例えば知的面(IQ)でみたとき、知的な力が高い子もいれば、知的発達症や境界知能の子、知的な力が一般的な範囲にある子もいます。他の能力の数値に関しても人それぞれです。さらにはIQが高いからといって他の数値も高いわけではなく、むしろそれに凸凹がある場合が多いのです。

また、このような検査では表しきれない芸術性や創造性などの❝力❞もあります。

発達特性の表れ方も一人ひとり異なり、日常生活や学校生活で困難を感じる場面もさまざまです。検査結果だけでは、実際の生活でどのようなことに困り、どのような場面で力を発揮しやすいのかまではわかりません。

大切なのは、診断名や検査の数値だけで「この子はこういう子」と決めつけないことです。

例えば、学校では集中できない子が、家では好きなことに夢中になっていることがあります。集団の中では自分の気持ちを伝えられなくても、1対1なら豊かに話せる子もいます。これは単に❝できる・できない❞の問題ではなく、その子が力を発揮できる条件が違うのです。

「この子は何ができる?」だけではなく、「どんな条件なら、この子の力が出てくる?」と考えることで、子どもの見え方も周囲の大人ができることも変わっていきます。

※WISC(ウィスク):ウェクスラー式知能検査のひとつ。5歳0カ月~16歳11カ月の児童の知能を測定する臨床検査の呼称。この検査では知的能力や記憶・処理能力をはかることができるため、発達障害の評価を補助し、支援を考える際に活用されている。(知的能力の特徴を把握する検査であり、WISCの結果だけで発達障害を診断するものではありません)

家庭でできること① 子どもの❝好き❞に気づく

発達障害の子どもは、周囲から❝できないこと❞や❝苦手なこと❞に目を向けられがちです。もちろん苦手なことをサポートすることも必要ですが、保護者だからこそ❝我が子が何を好きで、どんなことなら夢中になれるのか?❞に、ぜひ目を向けてあげてください。

虫が好き、石が好き、電車が好き、ゲームが好き……など、いっけん学習とは程遠いと感じるものでも、子どもの❝好き❞にはさまざまな可能性があります。好きなことがあるからこそ、意欲が湧き、生き生きと自分の力を発揮できることもあるのです。

子どもの❝好き❞を大切にするときのポイント

●好きなことをまずはそのまま認める
➡「そんなことが好きなの?」と否定せず、子どもが夢中になっていることを尊重する

●子どもの話に興味を持って耳を傾ける
➡大人が知らないことを教えてもらったりいっしょに調べたりして、子どもの世界を楽しんでみる

●好きなことを将来の才能や役立つことに結びつけすぎない
➡得意分野に育てようと焦らず、今、好きでいることそのものを受け止める

●親子で楽しむ時間をつくる
➡いっしょに楽しむ時間を通じて、子どもが安心して自分らしくいられる関係を育む

自分の❝好き❞を身近な大人に認めてもらえることは、子どもにとって大きな安心につながります。また、好きなことを必ずしも特別な才能に育てる必要はありません。まずは大人もいっしょに楽しみながら❝好き❞を大切に育ててあげてください。

そして、子どもの❝好き❞にはもう一つ大切な役割があります。それは、人とつながる入口になることです。発達特性のある子どもの中には、特定のことについて同年代の子どもたちを大きく上回る知識や熱量を持っている子もいます。同級生とはなかなか話が合わなくても、年齢の違う子や大人ならその興味を共有できることがあります。

❝好き❞を伸ばすことは、必ずしも能力を高めることだけではなく、人とのつながりによってその子の世界を広げていく可能性を秘めているのです。

≪関連記事≫好きな遊びに夢中なとき、子どもの脳では何が起きている?【脳科学者に聞く】“好き”が脳育になる理由

家庭でできること② 子どもの力が発揮される条件を知る

同じ子どもでも、場面や環境によって本来持っている力を発揮できるかどうかが大きく変わることがあります。

「力を発揮しやすい環境・状態」でみられる姿の例

●静かな場所なら、深く集中できる
●目で見た情報は素早く捉え、記憶できる
●興味のあることには、人一倍豊富な知識を持っている
●1対1なら自分の思いを伝えられる           など

このように、子どもが力を発揮しやすい条件は、一人ひとり異なります。

学校生活では、環境が合わないために本来できることがうまくできず、周囲から「できない」と捉えられてしまうことがあります。そうした経験が重なると、子ども自身も「自分はできない……」「ダメな人間」と思い込んでしまう場合があります。

だからこそ、まずは保護者が子どもの味方となり「〇〇くんはこういう環境なら、こんなことができるね」と、力を発揮できた場面に目を向けてあげてください。そして、どうすれば力を発揮しやすくなるのか? という視点をもつことが大切です。

家庭で気づいた❝うまくいく条件❞を学校の先生や専門機関とも共有することで、子どもに合った関わり方や環境づくりを、周囲の大人がいっしょに考えられるようになります。

学校連携でできるとよいこと①子どものポジティブな情報を伝える

子どもが学校生活を安心して送るためには、家庭と学校が連携し、子どもへの理解を深めていくことも必要です。先生に相談するときは、困っていることや苦手なことだけでなく、家庭で見られる得意なことやうまくいっているときの様子も伝えてみましょう。

学校の先生と共有したいこと

●どんな場面や環境なら、落ち着いて過ごせるか
●どんな話題や活動に興味を持ち、意欲を示すか
●どんなときに困りやすく、どのような声かけなら受け入れやすいか
●どんな条件なら、自分から行動できるか
●何をしているときに、生き生きするのか
●どんな話題や活動が、その子と人をつなぐきっかけになるか など

例えば、「大勢の前では話しにくいけれど、1対1なら自分の思いを伝えられます」「好きな話題なら、楽しそうにたくさん話せます」といった具体的な姿を伝えることは、先生がその子を理解するための大切な手がかりになります。

子どもが周囲に合わせられるようできることを求めるだけではなく、周囲が子どもの特性や得意なことを知り、関わり方を工夫していけるよう具体策を知ってもらう――「困った子の説明書」ではなく、「この子の力が出る取扱説明書」を先生に伝えることです。

こうした積み重ねが子どもにとって安心できる環境をつくり、子どもの味方を増やす学校連携につながると思います。

学校連携でできるとよいこと②味方や仲間を探す

学校生活の中で自分を理解してくれる人がいることは、子どもにとって大きな安心につながります。困ったときに助けを求められる先生や、好きなことをいっしょに楽しめる友だちがいることで、学校での居場所が少しずつ広がっていくこともあります。

特に同じものが好きな友だちとの出会いは、人とのつながりをつくるきっかけになります。大人が子どもの❝好き❞を知り、そこから関係を築いていくことで、やがて仲間とのつながりへと広がっていくこともあるのです。

これは中学校で講演した際、ある先生から伺ったお子さんのエピソードです。

【❝大好きな釣り❞が先生や友だちとのつながりに/Aさん】
五月雨登校になっていたAさんが❝釣りが大好き❞と知った先生が、釣りの話をするようになったそうです。するとAさんは少しずつ先生に自分から話をするようになり、先生との関係が深まっていきました。そしていつの間にか毎日登校するようになったそうです。

このケースでは、釣りの話をしたことだけが登校につながったとは限りませんが、Aさんの❝好き❞が、先生とつながる入口になったことは確かでしょう。

このように、子どもにとって自分の好きなことをおもしろがってくれる大人がいること――そして困っている自分だけでなく、夢中になっている自分も知ってくれる人がいることこそが、学校での安心や居場所につながることもあるのです。

子ども自身が❝自分の専門家❞になる未来へ

「僕は音が多いところでは疲れやすい」「私は見通しがあると安心して行動できる」「僕はこうすると集中しやすい」など、子ども自身が自分の特徴を最初から説明できる子は多くありません。だからまずは周囲の大人がその子を知ることが大切です。

「今日は疲れたね。何があったんだろう?」「昨日はできたのに今日は難しかったね。何が違ったかな?」などと、いっしょに考えてみてください。そうした経験を重ねることで、子ども自身が少しずつ自分の特徴や力を発揮できる条件を理解していきます。

大人が❝子どもの専門家❞になろうとすることから、やがて子ども自身が❝自分の専門家❞になっていことが、子どもの将来の自立につながっていくことでしょう。

このように、自分の得意、苦手、どんな環境なら過ごしやすいのか、などを知っていくことを自己理解といいます。

また、学校で友だちから障害や特性について聞かれることがあるかもしれません。保護者が学校に居るとき、子どもの友だちから「〇〇くんはどうしてこうなの?」と聞かれることも、あるかもしれません。これは子どもならではの「なんで?」という率直な疑問で、逆手をとると❝知ってもらうチャンス❞でもあるのです。

しかしこういった場合、急でうまく答えられなかったり、どう答えたらよいか迷うという悩みをよく聞きます。ではどう対応していけばよいでしょうか?

まずは❝子どものことを周囲に伝える前に、本人の気持ちを確かめること❞が大切です。

聞かれたことを想定して「先生にこう説明しようと思うんだけど、どうかな?」「あなたのことをお友だちに聞かれたとき、どこまで話してもいい?」「ママはどう伝えればいいかな?」と、子どもに聞いてみてください。

保護者の方にとっては伝えるべきだと思う情報でも、子どもは伝えたくないと感じることもあるからです。年齢や理解の程度に合わせて、本人の思いを尊重しながら❝どう対応すればよいか❞を具体的に話し合っておきましょう。その中で、(子どもが直接質問された場合)子ども本人が自分から話せそうであれば、自分の言葉で答えられるよう、家庭で伝え方を練習してみましょう。

このように小学生のうちから親子で話を重ねておくことは、自然と子ども自身の自己理解につながり、それが将来の自立などに向けても役立ってきます。

――発達障害のある子どもが学校で自分らしく過ごすために必要なことは、特別な才能を見つけることでも、みんなと同じようにできるようになることでもありません。大切なのは、その子が力を発揮できる条件を知ることです。そして、うまくいかないときにもいっしょに考えてくれる大人がいることで、子ども自身も少しずつ自分の得意や苦手、困ったときの対処方法を知っていくことができます。

そしていつか「自分はこういうときに困る」「こんな方法ならできる」「困ったときには、この人に助けてもらおう」と自分で考えて選べるようになり、子ども自身が❝自分の専門家❞になっていくこと――それが、❝その子らしく輝く❞という未来につながっていくのです。

この記事の監修・執筆者

親子のミカタオンラインクリニック院長 小児科専門医 森 博子

2010年熊本大学大学院医学教育部卒業。新生児集中治療室(NICU)での大学病院等勤務を経て、2022年に発達診断専門の「親子のミカタオンラインクリニック」を開院。全国の親子から発達相談を受ける。

自身もADHD(注意欠如多動症)の長男と、発達グレーゾーンの次男を育てる母親。

医療者としての専門知識と、発達凸凹のある子どもを育てる当事者としての経験を生かし、子ども一人ひとりの特性や力を発揮できる条件を見つけ、親が自分で考え、選び、動けるようになることを支援している。

親子がそれぞれ自分らしい未来を選べることを目指している。

https://oyakonomikata.com

 

 

 

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